夫源病で離婚できる?旦那がストレスでしかない悩みの解決法

「旦那といるのがストレスでしかない」「もう離婚したい」といった悩みが体調不良を引き起こすことがあります。
- 夫の休日には決まって体調が悪くなる
- 夫といるとめまいや動悸がする
- 慢性的な胃痛や不眠に悩まされている
そんな違和感が続いていませんか? もし思い当たる症状があれば、それは「夫源病(ふげんびょう)」かもしれません。
夫源病から抜け出したいと考える方にとって、離婚はひとつの大切な選択肢となります。
当記事では、夫源病を理由に離婚は可能か、法的な可否と離婚を有利に進めるための準備、そして離婚以外の選択肢まで詳しく解説します。
目次
夫源病とは?主な症状と傾向
夫源病は医師も認識する心身の不調
夫源病とは、夫の言動や存在そのものが原因で妻が強いストレスを感じ、その結果、心身に不調をきたす状態を指します。
夫が家にいるときに様々な不調が現れ、夫がいないときには症状が消失するというのが夫源病の特徴です。
夫源病は医学的な病名ではなく、ある循環器科医が更年期の患者の診察を行う中で発見した症状に名前をつけたものといわれています。
夫源病の主な症状はめまいや不眠、動悸
以下のような症状の原因が夫にあるなら、夫源病にあてはまるかもしれません。
夫源病の主な症状
- 原因不明の頭痛やめまい
- 不眠や慢性的な疲労
- 動悸、息苦しさ
- 情緒不安定、抑うつ的な気分
こういった症状は、自律神経の乱れが原因であることが多く、ストレスとの関連性が強いとされています。
夫源病は中高年の女性に多い?更年期障害との違い
夫源病は中高年の女性に起きることが多いといわれています。
特に更年期以降の女性は、ホルモンバランスの変化によりストレスへの耐性が下がったり、体調を崩しやすくなっている状態です。
更年期障害と区別がつきづらいですが、夫が近くにいるときに症状が出る点で更年期障害とは異なるでしょう。
また、夫が定年を迎えて家にいる時間が長くなったことで、夫源病を発症するケースも多いです。
もっとも、近年では20代や30代の夫源病も増えているようです。
夫源病になりやすい夫婦の特徴とは?
夫源病を引き起こしやすい夫の特徴
夫源病を引き起こしやすい夫には、以下のような特徴があります。
- 妻に対して感謝や労いの言葉がない
- 自分の価値観を押しつけてくる
- 家事や育児に非協力的、評価しない
- 妻の話に興味を示さない、無視する
夫のこういった言動は程度によっては精神的DVやモラルハラスメント(モラハラ)にあたるケースもあり、夫婦関係に重大な悪影響を与える行為です。
夫源病になりやすい妻の特徴
一方、夫源病になりやすい妻には、以下のような特徴があります。
- 真面目で我慢強く、弱音を吐かない
- 完璧主義で几帳面、家事や育児に手抜きができない
- 「いい妻」「いい母」でいたいという気持ちが強い
- 些細な問題を深刻に受け止めやすい
「妻とはこうあるべき」という考え方の強い人ほど、夫が努力を認めてくれないことに対し強いストレスを感じやすいのではないでしょうか。
夫源病を理由に離婚できる?法的な可否を解説
協議離婚や調停離婚では同意があれば離婚可能
相手が離婚に合意している場合は、協議離婚というかたちで、夫源病を理由に離婚することができます。
協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。
話し合いがまとまらず離婚調停に進んだ場合でも、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができます。
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裁判離婚には法定離婚事由が必要
夫婦間の話し合いや離婚調停を行っても夫が離婚に同意しない場合は、離婚裁判を起こして裁判官に離婚を認めてもらう必要があります。
夫源病そのものは法定離婚事由ではない
裁判で離婚を認めさせるためには、民法770条に定められる5つの法定離婚事由のうち少なくとも一つが存在していなければなりません。
(裁判上の離婚)
民法 第七百七十条
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
夫源病そのものが理由で裁判離婚が認められることはありませんが、夫源病のもとになった夫の行動が法定離婚事由にあたるのならば、裁判で離婚が認められるでしょう。
例えば、夫に長期間無視されているケースや経済的DVを受けているケース、夫から酷い暴力や暴言を受けているために夫源病を発症したケースなどでは、裁判離婚が認められる可能性があります。
夫源病で離婚できないケースの対処法
夫が離婚に応じず、法定離婚事由もない場合、夫源病を理由に離婚することは難しいといえます。
そのような場合は、以下の対処法が考えられます。
- 弁護士などの第三者を挟んで交渉する
- 別居する
当事者同士の話し合いで離婚に合意できないときは、弁護士に依頼したり知人や親などを交えて話し合いを行うことで、交渉が進む場合があります。
それも難しい場合は、別居するという手段があります。別居のメリットは、夫と離れることができるだけではありません。夫婦が長期間にわたり別居している場合、婚姻関係が破綻しているとして裁判離婚が認められる可能性が高まります。
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夫源病で離婚する前にすべき3つの準備
夫源病から抜け出すために離婚を決意した方も、すぐに実行に移すのは避けた方がよいでしょう。
しっかりと準備をしてから離婚を切り出す方が、より有利に話し合いを進めやすくなります。
1. 医師の診断を受ける
まずは症状に合わせて心療内科や内科、婦人科などを受診し、医師の診断を受けましょう。
受診の際には、「夫が原因で心身に不調がある」と医師に伝えることが大切です。
医師の作成する診断書は、DVやモラハラで精神的苦痛を受けていたことの証拠として調停や裁判でも役立ちます。
2. 夫の言動の記録や証拠を残す
離婚時に有利になるためにも、日々の夫の言動や体調の変化を記録として残しておくとよいでしょう。
以下のようなものを証拠として残しておくと、のちに調停や裁判を起こしたときに夫の言動を証明することができます。また、証拠があれば慰謝料請求をしやすくなる可能性もあります。
- 体調を記録した日記やメモ
- 夫の発言を記録した録音・動画
- LINEやメールなどのやり取り
3. 財産分与や養育費の交渉に備える
離婚を切り出す前に、夫婦の財産や相手の収入を把握しておきましょう。
女性が離婚後に安心して生活するためには、財産分与や養育費をしっかりと取り決めることが重要です。その際に、相手の持っている財産を正確に把握することができなければ、正当な額を受け取れなくなってしまいます。
離婚後のお金や住まいの不安を解消するために
離婚後の生活設計については、離婚の決断をする前に考えておかなければなりません。特に、長年専業主婦だった方や、パート・アルバイトとして働いていた方は、離婚後の生活費や住居、仕事の不安が大きいでしょう。
だからこそ、法的に正当な財産分与や養育費を確実に受け取ることが不可欠です。
どの程度の財産分与が見込めるか知りたいという方や、最大限の財産分与を受け取りたいと考えている方は、弁護士に相談するとよいでしょう。
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・離婚の財産分与とは?割合はどうなる?夫婦の財産の分け方を解説
夫源病で悩んでいるとき、離婚以外の選択肢はある?
夫源病の解決策は離婚だけではありません。婚姻関係を維持しながら夫源病を改善するために、次のような解決策も検討してみてください。
病院で治療を受ける
身体に不調を感じるのであれば、まずは医療機関を受診して心身の症状に対して治療を受けることをおすすめします。
夫源病そのものを病院で治療することはできませんが、身体的・精神的な症状は薬などを使って和らげることができるかもしれません。
夫婦間のコミュニケーションを工夫する
夫源病を克服し、夫婦関係を再構築するには、双方のコミュニケーション方法を変えてみるのが有効です。
妻のできる工夫
- 要求を「I(アイ)メッセージ」で伝える
「あなたは家事を手伝わない」→「家事を分担してくれると、私のストレスが減るの」と、自分の感情を主語にした伝え方で攻撃性を抑えることができる - 即時フィードバックの徹底
不満をため込まず、イラっとした瞬間に「今の発言は傷ついた」とその場で伝える - 具体的な解決案の提示
「ゴミ出しを週3回やってほしい」「子どもの送迎を分担したい」など、数値化可能な要求に落とし込む
夫源病の克服には、夫婦双方の協力が欠かせません。このようなコミュニケーション技法を活用し、夫にもコミュニケーション方法の工夫を依頼してみるとよいでしょう。
夫のできる工夫
- 傾聴モードの徹底
妻の話を遮らず、「それで?」「なるほど」と相槌を打ち、最低3分は否定せずに聞く - 行動改善の数値目標設定
「週2回は夕食の後片付けをする」「子どもの習い事の送迎を月4回担当する」など、測定可能な約束を具体化 - 「気づき」の言語化
「君がこんなに家事をしているとは知らなかった」と認識の変化を伝え、謝罪と感謝をセットで表現
一時的に別居する
一時的に別居して互いに冷静になるという選択肢もあります。
新たに住居を用意して別居するのは大変ですが、数日間実家に帰ったり、旅行で家を離れるだけでもリフレッシュ効果があるでしょう。
別居中、夫と離れることで妻は心身を休めることができ、また夫への接し方や物事の捉え方を見直すきっかけになります。夫は、妻が家にいないことで妻のありがたみに気づくかもしれません。
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・離婚前に別居するメリットは?別居したい時の注意点、離婚と別居どちらが得かも解説
夫婦カウンセリングを受ける
夫婦カウンセリングを利用して、第三者の立場からアドバイスを受けることも夫源病克服のためには有効です。
夫婦関係を専門的に取り扱うカウンセラーは多く存在し、自分一人でカウンセリングを受けることも、夫婦二人で受けることもできます。
夫婦でカウンセリングに出席すれば、カウンセラーに話し合いを取り持ってもらうことができるため、感情的にならず建設的な話し合いがしやすくなるでしょう。
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夫源病での離婚に関するよくある質問
夫源病の診断書があれば離婚できる?
医師の作成する診断書だけで離婚が認められるわけではありません。しかし、離婚調停や裁判において、有力な証拠の一つになります。
夫の具体的な言動を記録したメモや録音など、他の証拠と組み合わせることで、交渉を有利に進められる可能性が高まります。
夫源病で離婚する場合、慰謝料は請求できる?
夫源病になった原因が、夫のモラハラ、DV、浮気といった不法行為にあると法的に認められれば、慰謝料を請求できる可能性があります。
単なる性格の不一致や「夫の存在がストレス」といった理由だけでは、慰謝料請求は認められにくいです。
不法行為があった事実を証明する診断書や日々の記録といった客観的な証拠が極めて重要になります。
離婚慰謝料の相場や請求方法について詳しくは関連記事『離婚慰謝料の相場は?慰謝料がもらえるケースとは?』で解説しています。
夫がストレスで離婚したいのに応じてもらえないときは?
夫婦間の話し合いで夫が離婚に応じてくれない場合、次のステップとして家庭裁判所に離婚調停を申し立てるのが一般的です。
調停とは、裁判所の調停委員会のもとで、離婚条件などについて話し合う手続きです。
調停でも話がまとまらなければ、離婚裁判に進むことになります。
まとめ:夫源病から抜け出すには
夫源病の克服には、夫婦間のコミュニケーション改善や一時的な別居、夫婦カウンセリングなどが役立ちます。
これらを試みても状況が変わらない場合、ご自身の健康で充実した生活のために、離婚という選択を検討する時期かもしれません。
離婚を検討する際は、夫の行為が法定離婚事由に該当するかどうかが重要なポイントとなります。また、財産分与や養育費、将来の生活設計など、様々な問題について専門的な判断が必要です。
- 夫源病で離婚は可能?
- 夫が離婚に応じてくれなかったらどうすればいい?
- どのような条件で離婚できる?
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ離婚に強い弁護士にご相談ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
