会社員の夫との離婚|会社員特有の財産に注意!

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会社員の夫を持つ妻の離婚においては、離婚後の生活資金の確保が重要です。

そのためには、財産分与や年金分割について、有利な条件で離婚をする必要があります。しかし、会社員の場合、勤務先によって年金や退職金の制度が異なるため、ケースごとに個別の検討が必要になる可能性があります。

この記事では、会社員との離婚で財産分与の対象になり得る財産や、会社員との離婚で重要な年金分割、社会保険の制度について紹介します。

会社員との離婚の注意点①財産分与について

財産分与の対象になり得る会社員特有の財産

会社員の夫は、貯金や不動産などの一般的な財産に加えて、公務員や自営業にはない特有の財産を持っている可能性があります。例えば、以下のようなものです。

  • 自社株・ストックオプション
  • 社内積立・財形貯蓄
  • 確定給付企業年金(DB)
  • 企業型確定拠出年金(DC)
  • 厚生年金基金

これらを財産分与の対象にするのか、どのように価値を評価するのかは、個別の判断が必要になるでしょう。財産分与の対象にできたはずのものを見落としてしまったり、実際より低く評価してしまうと、受け取れる財産が少なくなってしまいます。

そもそも、全ての会社にこれらの制度があるわけではないため、夫の勤務先にこういった制度があるかどうかを調べるところから始めなければいけません。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

「年金」と名前のつくものがありますが、ここに挙げたものは年金分割ではなく財産分与の対象になります。年金分割の対象になるのは、厚生年金の部分のみだからです。

退職金は財産分与の対象?

すでに退職して退職金が支給されている場合は、当然に退職金も財産分与の対象になります。

さらに、将来確実に退職金が支給される見込みがある場合は、退職前であっても退職金の分与を受けられる可能性があります

また、勤務先自体には退職金の制度がなくても、会社が中小企業退職金共済や特定退職金共済に加入していれば退職金を受け取ることができ、これも財産分与の対象になり得ます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
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勤続年数が長いほど退職金の額は大きくなりますので、特に熟年離婚の夫婦は、離婚時に退職金の分与についても話し合っておきましょう。

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夫が財産を隠しているかもしれない!

公平に財産分与をするには、2人の財産を漏れなくリストアップすることが必要です。しかし、財産分与で財産を渡したくない配偶者が、財産を隠してしまうことがあります。

特に会社員との離婚の場合は、夫が妻の知らないところで社内積立や企業年金を積み立てている可能性に留意してください。

夫が財産の開示に応じない場合は、弁護士に依頼して弁護士会照会を用いて調査したり、裁判所の調査嘱託で開示を求めるという方法があります。

会社員との離婚の注意点②社会保険について

離婚したら社会保険はどうなる?

夫が会社員で、妻が主婦やパート勤務の場合、妻は扶養家族として夫の会社の社会保険に加入しています(第3号被保険者)。

会社員の夫と離婚すると、妻の第3号被保険者としての資格は失われるため、妻は別の健康保険・年金制度に加入することになります。

離婚後、正社員やパートとして会社に勤める場合は、勤務先で社会保険に加入します。

就職しない場合や、自営業・フリーランスとなる場合は、国民年金と国民健康保険に加入することになります。

国民年金・国民健康保険の加入手続きには、14日以内という期限があります。14日を過ぎてしまうと、手続きを行うまでの期間は医療費の給付を受けられなかったり、将来受け取る年金が減ってしまうなどの不利益があるため、速やかに手続きを行いましょう。

また、子どもがいる場合は、子どもの保険についても考えなければなりません。

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子どもを夫の社会保険に入れたままにできる!

離婚後に子どもを育てるのが母親であっても、子どもを父親の社会保険の扶養に入れたままにできる場合があります。

この場合、子どもを国民健康保険に入れて母親が保険料を支払う必要はありませんし、父親が支払う保険料が増えるわけでもありません。

また、父親が引き続き扶養控除を受けられるため、父親にとってもメリットのある方法です。

ただし、離婚した父親の扶養に子どもを入れたままにするには、父親が子どもを扶養している実態がなければいけません。子どもを扶養している実態とは、父親が一定以上の養育費を支払っていることなどです。

会社員との離婚の注意点③年金分割について

年金分割とは?

年金分割とは、離婚した夫婦が婚姻している間に納めた年金の保険料を分け合う手続きです。

婚姻中に、夫婦のどちらかまたは両方が厚生年金に加入していた期間があれば、その間の保険料を分割します。

年金分割を行えば、収入が少なかった方の配偶者は、将来受け取る年金を増やすことができます。

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会社員との離婚では年金分割を忘れずに!

主婦やパート・アルバイトの方は、会社勤めの方に比べて将来受け取れる年金が少なくなってしまいます。

婚姻したままであれば老後も夫と自分の年金で生活を支えることができますが、離婚すると将来は夫に比べて少ない年金しか受け取ることができず、生活が苦しくなってしまいます。

厚生労働省の資料によると、年金分割を行った人は、平均で1か月の年金が約3万2千円増額しています。

さほど大きな金額ではないと感じるかもしれませんが、10年、20年と経つとかなりの差になりますので、離婚後は忘れず年金分割の手続きを行ってください

年金分割の手続き

年金分割には、合意分割と3号分割という2種類の方法があります。

合意分割とは、夫婦の合意によって年金分割の按分割合を決める方法で、合意の内容を書面にして必要書類とともに年金事務所に提出します。

3号分割とは、平成20年4月1日以降に納めた年金について適用される制度で、夫の同意がなくても妻が1人で年金分割の手続きを行えます。按分割合は2分の1です。

平成20年4月1日以前に年金分割の対象となる期間がある場合は、合意分割の手続きが必要で、夫と按分割合について話し合って決めなければいけません。

岡野タケシ弁護士
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合意分割の手続きを行えば、同時に3号分割の手続きもしたとみなされます。

会社員との離婚は弁護士に相談!

会社員の夫と離婚を目指す場合は、離婚後の生活を守るために財産分与や年金分割などの条件についてよく話し合いましょう。

年金や退職金の制度は会社ごとに異なるため、ケースごとの検討が必要です。

判断に迷う場合や調査を任せたい場合は、弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士はこのような活動であなたの利益を守ります。

  • 財産の調査や評価
  • 相手方との離婚交渉の代理
  • 離婚手続きの代行
  • 離婚協議書・公正証書の作成サポート

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了