公務員の夫と離婚したい|財産分与や年金分割はどうなる?

市区町村役場の職員や警察官、自衛隊、教職員などに代表される公務員は、一般企業に比べて安定した収入や退職金を受け取ることができます。
公務員との離婚では、退職金で1000万円以上、年金分割で将来の年金が月数万円増えるなど、財産分与で受け取れる金額が大きくなる可能性があります。
そのため、離婚時の財産分与や年金分割において、これらは重要なポイントとなります。
また、公務員には普通の会社員とは異なる年金や福祉の制度が用意されているため、特別な手続きが必要になる可能性があります。
この記事では、公務員の夫との離婚で気を付けたい注意点について解説します。
目次
公務員は離婚が多い?
公務員は離婚率が高いって本当?
「公務員は離婚率が高い」とよくいわれますが、国内の公務員の離婚率に関する明確な統計はありません。
しかし、公務員は、安定した収入や社会的地位を有する一方で、過酷な労働環境や責任の重さから、ストレスを抱えやすい職業です。
職種によっては休みが取りづらかったり、長期間家を空けることもあり、夫婦関係に亀裂が生じやすい傾向にあると考えられます。
公務員の離婚が多い理由
公務員は離婚が多いと言われている背景には、以下のような事情が関わっていると考えられます。
- 多忙・激務で家庭を顧みない
- 転勤が多い
- 妻との間に収入格差や価値観の違いがある
- 社会的地位やプライドが高い
もちろん職種や勤務形態にもよりますし、全ての公務員がこうではありませんが、一般的にこういったイメージがあるのは否定できません。
公務員との離婚の注意点①共済年金の年金分割について
共済年金とは?
共済年金とは、国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員などが加入していた公的年金制度で、会社員でいうと厚生年金にあたる部分です。
共済年金は、平成27年10月に厚生年金に一元化されたため、現在は公務員も厚生年金に加入しています。
公務員の年金分割の手続き
年金分割とは、離婚した夫婦が婚姻期間中の標準報酬(年金額の計算の基礎となる報酬)を分け合う制度です。厚生年金・共済年金のどちらの加入期間も対象になります。
手続きには、年金事務所などに「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」をはじめとする必要書類を提出します。
以前は、共済年金の部分についてはそれぞれの共済組合で年金分割の手続きをしなければいけませんでしたが、一元化以降は、共済組合だけでなくお近くの年金事務所などでも手続きが行えるようになりました。
共済年金と厚生年金の両方に加入期間があった場合も、いずれか一か所の窓口で手続きすれば、すべての加入期間について分割が行われます。
年金分割によって将来の受取額がどれくらい変わるかは、婚姻期間の長さや夫婦間の収入差によって異なります。たとえば婚姻期間が長く、夫婦間の収入差が大きいほど、分割後に受け取れる年金額が増えやすい傾向があります。
年金分割後の年金見込額は、「年金分割のための情報通知書」を請求する際に、一定の条件を満たしていれば、あわせて試算してもらえます。詳細は年金事務所でご確認ください。
関連記事
・離婚時の年金分割手続きとは?必要書類は?共働き・拒否した場合も解説
公務員との離婚の注意点②共済貯金の財産分与について
財産隠しに注意!
離婚の際には、婚姻中に協力して築いた財産を分け合う財産分与が行われます。
婚姻中に貯めた貯金は財産分与の対象ですが、財産を渡したくないと考えた相手方が、貯金を隠してしまうこともあります。これでは正当な額の貯金を受け取ることができません。
公務員との離婚で注意しなければならないのが、共済貯金の存在です。
関連記事
・離婚の財産分与とは?割合はどうなる?夫婦の財産の分け方を解説
共済貯金とは?
公務員は、共済組合の運営する共済貯金に加入することができます。
共済貯金は比較的有利な利率であるため、貯金を行っていればその額はかなり大きくなっている可能性があります。
しかし、共済貯金の積立金は、毎月の給与やボーナスから天引きされているため、妻は貯金の存在に気づいていないケースもあります。
本来は家族のために用いられるはずであった給与や貯金を持ち逃げされてしまわないように、公務員と離婚する際は、共済貯金の有無や金額を忘れずに確認しましょう。
共済貯金の残高はどうやって確認する?
共済貯金に加入していると、基本的に半年に一度、残高通知書が発行され、加入者本人に手渡しまたは郵送されます。相手方が受け取った残高通知書を確認できれば、残高を把握する手がかりになります。
それ以外のタイミングでは、加入者本人からでなければ残高確認の手続きができません。
共済貯金に加入しているかどうかすら分からない場合は、給与明細を確認してみましょう。積立金が天引きされていれば、共済貯金に加入している可能性が高いといえます。加入の事実が判明したら、相手方に残高の開示を求めることが先決です。
相手方が資料の開示を拒否している場合は、裁判所の「調査嘱託」という手続きを通じて、共済組合に直接残高の開示を求めることができます。
ただし、調査嘱託は「その財産が存在する合理的な理由」を示す必要があり、根拠なく請求することはできません。給与明細などで天引きの事実をあらかじめ確認しておくことが、手続きをスムーズに進めるうえで重要です。
また、2026年4月の法改正により、家庭裁判所が当事者に対して財産情報の開示を直接命じる「情報開示命令」の制度が新設されました。正当な理由なく開示を拒んだり、虚偽の情報を申告したりした場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
調査嘱託と合わせて、相手方に財産状況を明らかにさせるための手段として活用できます。
公務員との離婚の注意点③退職金の財産分与について
公務員との離婚は退職金が重要
公務員の特徴として、ほぼ確実に退職金を受け取れる点や、退職金の金額が大きいという点があります。また、勤続年数が短くても退職金が出る点も特徴的です。
公務員・会社員に関わらず、離婚時の財産分与では、退職金も分与の対象にすることができます。
退職してすでに受け取った退職金はもちろんですが、将来確実に退職金が支給される見込みがあれば、退職前でも退職金の分与を受けられる可能性があります。
将来退職金が支給される見込みがあるかどうかは、ケースバイケースで判断されます。公務員は、業績悪化などによる退職金カットのリスクが限りなく低く、ほぼ確実に退職金を受け取れるといってよいため、退職金の財産分与を受けられる可能性が非常に高いといえます。
関連記事
公務員との離婚の注意点④養育費について
養育費を増額できる可能性あり!
養育費は離婚時に決定した額を払い続けるのが通常ですが、離婚後でも事情の変更があれば養育費の金額を増額できることがあります。
事情の変更とは、たとえば支払う側の収入が増えた、受け取る側の収入が減った、子どもの学費が増えたといったケースです。一般的に公務員は勤続年数に応じて給与が上がる傾向があるため、後から養育費の増額を求める余地が生じることがあります。
養育費の金額を変更するには、まず当事者間で話し合い、まとまらない場合は家庭裁判所で養育費請求の調停・審判を利用する流れになります。
なお、養育費の算定基準は子どもが15歳以上かどうかで異なります。15歳以上になると算定表上の子どもの生活費の割合が引き上げられるため、15歳の節目に金額を見直す話し合いをするのも一つの方法です。
ただし、給与が増えたとしても、離婚時点で予測できる範囲の変動であれば、増額が認められづらい点には注意が必要です。給与の増加だけでなく、子どもの進学で学費の負担が増えたといった事情が重なる場合は、増額が認められやすくなるでしょう。
また、将来の増額に備えて、離婚協議書に「特別の出費が生じた場合は別途協議する」などの条項をあらかじめ盛り込んでおくことも、実務上有効な手段です。
関連記事
・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
養育費の取り立てがしやすい
養育費の支払いが取り決め通りに履行されない場合は、強制執行(給与などの差し押さえ)によって強制的に支払わせることができます。
公務員は将来にわたって安定した給与を受け取れる見込みが高く、転職で勤務先が不明になるリスクも低いため、給与の差し押さえによって養育費の回収を実現できる可能性が比較的高いといえます。
なお、2026年4月1日施行の民法改正により、養育費債権に「先取特権」と呼ばれる優先権が付与されました。これにより、父母間の合意文書に基づいて、公正証書などがなくても直接、給与等の差し押さえ手続きを申し立てることが可能です。
ただし、先取特権で差し押さえられる養育費の上限は子ども1人あたり月額8万円までです。8万円を超える額の全額について差し押さえを求める場合には、引き続き公正証書や調停調書などの「債務名義」が必要となります。
そのため、月額8万円を超える養育費を取り決める場合や、より確実に回収手続きを進めたい場合は、強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておくことをおすすめします。公正証書があれば、支払いが滞った際に裁判を経ずに強制執行へ移行でき、回収までの手続きをスムーズに進めることができます。
関連記事
・養育費の強制執行はどうやる?未払いの時の選択肢と手続きの流れ
公務員との離婚に関するよくある質問
Q. 公務員と離婚すると年金分割でいくらもらえる?
婚姻期間や収入差によりますが、婚姻期間20年で夫が公務員、妻が専業主婦の場合、分割割合を50%とすると、将来受け取る年金額が月3万円から5万円程度増える可能性があります。
年金分割後の年金見込額は「年金分割のための情報通知書」を請求する際に、一定の条件を満たしていれば、あわせて試算してもらえます。
Q. 公務員の退職金はどれくらい財産分与できる?
退職金は「退職金見込額×婚姻期間÷勤続年数×2分の1」で計算されます。例えば勤続30年で退職金2400万円、婚姻期間20年の場合、約800万円が財産分与の目安です。
公務員は退職金の支給がほぼ確実なため、退職前でも分与対象になる可能性が高いといえます。
Q. 共済貯金の残高を夫が教えてくれない場合は?
離婚調停や訴訟を通じて、裁判所の「調査嘱託」という手続きを利用すれば、夫の同意なしに共済組合へ直接残高の開示を求めることができます。
ただし、調査嘱託は財産の存在に合理的な根拠がある場合に限り認められるため、事前に給与明細で共済貯金の天引きを確認しておくことが重要なステップとなります。
また、2026年4月1日より新設された「情報開示命令」を活用すると、裁判所から相手方に対して直接、財産情報の開示を命じてもらうことも可能です。正当な理由なく開示を拒んだり、虚偽の申告をしたりした場合には10万円以下の過料が科されるため、相手方への強力な対抗手段となります。
給与明細で天引きの事実を確認したうえで、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
公務員との離婚は弁護士に相談!
このように、公務員との離婚は、財産分与・年金分割などの手続きが一般的な会社員とは異なるため、注意が必要です。
公務員の夫との離婚についてご不明な点があれば、弁護士にご相談されることをおすすめします。
弁護士はこのような活動であなたの利益を守ります。
- 財産の調査や評価
- 相手方との離婚交渉の代理
- 離婚手続きの代行
- 離婚協議書・公正証書の作成サポート

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
退職金を受け取り損ねてしまわないように、公務員の夫と離婚する際には、忘れずに退職金の財産分与についての取り決めを行いましょう。