公務員の夫と離婚したい|財産分与や年金分割はどうなる?

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公務員の夫

市区町村役場の職員や警察官、自衛隊、教職員などに代表される公務員は、一般企業に比べて安定した収入や退職金を受け取ることができます。

そのため、離婚時の財産分与や年金分割において、これらは重要なポイントとなります。

また、公務員には普通の会社員とは異なる年金や福祉の制度が用意されているため、特別な手続きが必要になる可能性があります。

この記事では、公務員の夫との離婚で気を付けたい注意点について解説します。

公務員は離婚が多い?

公務員は離婚率が高いって本当?

「公務員は離婚率が高い」とよくいわれますが、国内の公務員の離婚率に関する明確な統計はありません。

しかし、公務員は、安定した収入や社会的地位を有する一方で、過酷な労働環境や責任の重さから、ストレスを抱えやすい職業です。

職種によっては休みが取りづらかったり、長期間家を空けることもあり、夫婦関係に亀裂が生じやすい傾向にあると考えられます。

公務員の離婚が多い理由

公務員は離婚が多いと言われているのには、以下のような事情が関わっていると考えられます。

  • 多忙・激務で家庭を顧みない
  • 転勤が多い
  • 妻との間に収入格差や価値観の違いがある
  • 社会的地位やプライドが高い

もちろん職種や勤務形態にもよりますし、全ての公務員がこうではありませんが、一般的にこういったイメージがあるのは否定できません。

公務員との離婚の注意点①共済年金の年金分割について

共済年金とは?

共済年金とは、国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員などが加入していた公的年金制度で、会社員でいうと厚生年金にあたる部分です。

共済年金は、平成27年10月に厚生年金に一元化されたため、現在は公務員も厚生年金に加入しています。

公務員の年金分割の手続き

年金分割とは、離婚した夫婦が婚姻期間中に納めた厚生年金・共済年金の保険料を分割して、それぞれに分け合う制度です。

年金分割を行うには、年金事務所等に「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」などの必要書類を提出します。

以前は、共済年金の部分についてはそれぞれの共済組合で年金分割の手続きをしなければいけませんでしたが、一元化以降は、共済組合だけでなくお近くの年金事務所などでも手続きが行えるようになりました。

共済年金と厚生年金の両方に加入期間があった方でも、どれか一か所の機関で手続きを行えば、全ての加入期間について年金分割が行われます。

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公務員との離婚の注意点②共済貯金の財産分与について

財産隠しに注意!

離婚の際には、婚姻中に協力して築いた財産を分け合う財産分与が行われます。

婚姻中に貯めた貯金は財産分与の対象ですが、財産を渡したくないと考えた相手方が、貯金を隠してしまうこともあります。これでは正当な額の貯金を受け取ることができません。

公務員との離婚で注意しなければならないのが、共済貯金の存在です。

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共済貯金とは?

公務員は、共済組合の運営する共済貯金に加入することができます。

共済貯金は、利率が非常に高いことで知られていますので、貯金を行っていればその額はかなり大きくなっている可能性があります。

しかし、共済貯金の積立金は、毎月の給与やボーナスから天引きされているため、妻は貯金の存在に気づいていないことがあります。

本来は家族のために用いられるはずであった給与や貯金を持ち逃げされてしまわないように、公務員と離婚する際は、共済貯金の有無や金額を忘れずに確認しましょう

共済貯金の残高はどうやって確認する?

共済貯金の財産分与を請求するには、貯金残高を把握しなければなりませんが、夫が残高の開示に積極的であるとは限りません。

その場合は、どのような方法で共済貯金の残高を確認できるのでしょうか。

共済貯金に加入していると、基本的に半年に一度のタイミングで残高通知書が発行され、加入者に手渡しまたは郵送されます。夫が受け取った残高通知書を見ることができれば、共済貯金の残高を確認できます。

それ以外のタイミングでは、加入者本人からでなければ残高確認の手続きができません。

共済貯金があるかどうかすらも分からない場合は、給与明細を見れば、積立金が天引きされているかどうかを確認することができます。共済貯金があることが判明したら、夫に残高の開示を求めましょう。

夫が共済貯金の資料の開示を拒否している場合は、裁判所の調査嘱託という手続きを用いて、共済組合に直接残高の開示を請求することができます。

公務員との離婚の注意点③退職金の財産分与について

公務員との離婚は退職金が重要

公務員の特徴として、ほぼ確実に退職金を受け取れる点や、退職金の金額が大きいという点があります。また、勤続年数が短くても退職金が出る点も特徴的です。

公務員・会社員に関わらず、離婚時の財産分与では、退職金も分与の対象にすることができます。

退職してすでに受け取った退職金はもちろんですが、将来確実に退職金が支給される見込みがあれば、退職前でも退職金の分与を受けられる可能性があります。

将来退職金が支給される見込みがあるかどうかは、ケースバイケースで判断されます。公務員は、業績悪化などによる退職金カットのリスクが限りなく低く、ほぼ確実に退職金を受け取れるといってよいため、退職金の財産分与を受けられる可能性が非常に高いといえます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

退職金を受け取り損ねてしまわないように、公務員の夫と離婚する際には、忘れずに退職金の財産分与についての取り決めを行いましょう。

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公務員との離婚の注意点④養育費について

養育費を増額できる可能性あり!

養育費は離婚時に決定した額を払い続けるのが通常ですが、離婚後でも事情の変更があれば養育費の金額を増額できることがあります

事情の変更とは例えば、支払う側の収入増加や、受け取る側の収入減少、子どもの学費の増加などです。

一般的に、公務員は勤続年数が長くなるにつれて大幅に給与が増えていきますので、後から養育費を増額できる可能性があります。

養育費の金額を変更するには、当事者間で話し合いを行うか、家庭裁判所にて養育費請求調停・審判を起こして話し合います。

養育費の算定基準は子どもが15歳以上か未満かによって変わるため、15歳を迎えた時に話し合って額を見直すのもよいかもしれません。

とはいえ、給与が増えたといっても、それが養育費を決定した時に予測できる範囲であれば、養育費の増額は認められづらいようです。

給与の増額だけでなく、子どもが私立の学校に進学したなどの理由があれば、養育費の増額が認められやすくなるでしょう。

また、将来の養育費の増額について、離婚時に話し合っておくのもよいでしょう。

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養育費の取り立てがしやすい

離婚時に養育費の支払いを取り決めたにも関わらず、支払いが履行されなかった場合は、強制執行(給与などの差し押さえ)によって強制的に養育費を支払わせることができます。

公務員は将来も安定して給与を受け取れる見込みが高いですし、転職によって勤務先が分からなくなるリスクも低いため、給与の差し押さえによって養育費の支払いを実現させられる可能性が高いと言えます。

なお、離婚時に養育費の取り決めを行う場合は、強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておくことをおすすめします。公正証書によって養育費の支払いを取り決めておくと、支払いが滞ったときに裁判を経ずに強制執行を行えるようになるからです。

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公務員との離婚は弁護士に相談!

このように、公務員との離婚は、財産分与・年金分割などの手続きが一般的な会社員とは異なるため、注意が必要です。

公務員の夫との離婚についてご不明な点があれば、弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士はこのような活動であなたの利益を守ります。

  • 財産の調査や評価
  • 相手方との離婚交渉の代理
  • 離婚手続きの代行
  • 離婚協議書・公正証書の作成サポート

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了