離婚してくれない夫と離婚する方法|応じない夫の心理と対処法を解説

夫が離婚を拒否していても、離婚することは可能です。ただし、協議離婚や調停離婚には双方の合意が必要なため、相手が応じない場合は、最終的に裁判で離婚を認めてもらう必要があります。
離婚を拒む夫の心理には、妻への気持ちや親権へのこだわり、金銭的な不安など、いくつかのパターンがあります。こうした背景を理解することで、適切な対応策が見えてきます。
この記事では、話し合いによる説得のポイントから、別居と婚姻費用の請求、調停・裁判までの流れを段階的に解説します。また、感情的な対応や無断での離婚届提出など、かえって離婚を遠ざけてしまう行動についても注意点をお伝えします。
離婚に応じない夫と確実に離婚するための方法を、弁護士の実務経験をもとにわかりやすく解説します。
離婚してくれない夫の心理とは?
妻に愛情がある
夫が離婚したくないと思う代表的な理由は、妻に愛情が残っており、まだやり直せると思っているからです。
妻が今までの不満の積み重ねによって離婚を決意したのに対し、夫はまだ夫婦仲がうまく行っていた頃の気持ちのままなのかもしれません。
妻を見下している
妻を徹底的に見下している、妻は能力が低いと思い込んでいるというのは、典型的なモラハラ夫の心理です。
「妻は愚かだから、妻の考えることは間違っている。つまり、離婚をするのは間違いだ。」そう思っているから、離婚に応じないようです。
また、プライドが高く、妻を下に見ているからこそ、「妻の思い通りになったら悔しい」という思いから離婚を認めないケースもあると考えられます。
親権を取られたくない
親権争いは、基本的に母親が有利です。妻に親権を取られてしまう可能性が高いから離婚を拒む夫も多いようです。妻の経済状況などから子どもの養育が不可能だと主張して親権を求めてくることもあります。
また、本当に親権が欲しいかは別として、妻に親権を取られたら「負けた気がする」から、親権を手放そうとしないケースも見られます。
民法改正により、2026年4月以降に離婚する場合は、父母双方を親権者とする共同親権も選べるようになります。
離婚してお金を払いたくない
離婚をする際、相手に対して養育費や財産分与、慰謝料などのお金を請求することがあります。これらのお金は収入の多い男性の方が支払う場合が多いため、お金を払いたくないために離婚を拒否する夫がいます。
世話してくれる人がいなくなる
非常に身勝手な理由ですが、妻が家事などを担っていた場合、夫にとってはお世話をしてくれる人がいなくなるため、離婚するメリットがほとんどありません。
世間体が気になる
離婚したことが同僚や友人に知られたら恥ずかしい、職場での評価に響くから離婚したくないと言ってくる夫もおり、説得が難しいケースです。
特に、モラハラ気質を持った人は、プライドが高く外面も良いため、離婚によって自身の評判が傷つくことを恐れる傾向にあります。
夫が離婚してくれない時の対処法
話し合いで説得|理由の伝え方が鍵
離婚に応じてくれない夫は、離婚の理由に納得していなかったり、こちらが本気で離婚を望んでいることに気づいていない可能性があります。
交渉の際は、離婚を決意するに至った具体的な理由や、関係修復が不可能な理由を伝えると良いでしょう。
とはいえ、ただ相手を責めるのではなく、相手の気持ちに配慮した言葉選びを心がけましょう。こちらから一方的に責め立てると、相手の態度が硬化してスムーズに話し合いが進まない可能性があるからです。
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離婚条件で譲歩する|親権や金銭面の妥協
親権や財産分与、慰謝料の金額など、離婚条件の争いが原因で離婚を拒否されている場合は、譲歩する姿勢を見せることで相手の態度が軟化する可能性があります。
例えば、「親権を寄越さないなら絶対に離婚しない」と主張しているケースでは、面会交流を積極的に認めることで、相手が離婚に同意してくれる可能性が高まるでしょう。
また、財産分与や慰謝料についても、金額を譲歩したり、分割払いを認めるなどすれば、交渉が進みやすくなるかもしれません。
別居と婚姻費用請求で離婚を後押しする
夫が離婚に同意しない場合は、別居して婚姻費用を請求することも有効な手段です。婚姻費用とは夫婦の生活費のことで、婚姻中は別居していても、収入の多い方が少ない方を支える義務があります。
婚姻費用は、口頭や書面で請求できるほか、家庭裁判所に婚姻費用請求調停を申し立てて話し合うことも可能です。なお、支払いが認められるのは原則として請求した時点からであり、後からまとめて請求することは難しいため、別居と同時に内容証明郵便で請求するか、早めに調停を申し立てることが大切です。
婚姻費用の金額は、夫婦それぞれの年収や子どもの人数・年齢をもとに決まります。裁判所が公表している婚姻費用算定表を参考に、あらかじめ目安を把握しておくと交渉が進めやすくなります。婚姻費用の請求は、別居中の生活を支えるだけでなく、相手が離婚に応じるきっかけになることもあります。
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離婚調停・裁判を申し立てる|成立の条件と注意点
当事者間の話し合いでの解決が難しければ、家庭裁判所の離婚調停を利用して話し合うことができます。離婚調停とは、家庭裁判所の調停委員会が双方から話を聞き、中立的な立場から意見を調整して、夫婦の合意を目指す手続きです。
調停期日に夫婦が顔を合わせる必要はほぼないため、冷静に話すことができますし、調停委員をうまく味方につけることができれば、夫を説得してもらえるかもしれません。
調停を行っても合意に達しなかった場合や、相手が調停期日への出席を拒んだ場合は、調停は不成立となります。
その後は、離婚裁判を申し立てることが可能です。
ただし、裁判で離婚が認められるには、5つの法定離婚事由のうちいずれかが存在する必要があります。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
法定離婚事由に当たる理由がない場合、裁判まで進んでも離婚が認められないことがあるため注意が必要です。裁判で離婚を認めてもらうには、法律で定められた離婚理由があることを、証拠によって示さなければなりません。
特に「婚姻を継続しがたい重大な事由」を主張する場合は、長期間の別居を示す住民票や賃貸契約書、夫婦間の冷え切ったやり取りが分かるメールやLINE、DVやモラハラを裏付ける診断書・録音・日記、親族や友人、カウンセラーなど第三者の証言といった資料が有効になります。
十分な証拠がないまま裁判に進むと、離婚の請求が退けられるおそれがあります。そのため、調停の段階から弁護士に相談し、計画的に証拠を集めておくことが重要です。
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弁護士に依頼して交渉を進める
夫婦間の話し合いで決着がつかなそうな場合は、弁護士への依頼を検討してみてください。
弁護士は、依頼者の代理人となって相手と交渉することができるため、夫と直接顔を合わせずに離婚の話し合いをすることも可能です。離婚条件の取り決めに関しても、専門知識をもとに、依頼者のために最大限交渉してくれます。
弁護士から連絡が来れば、夫は事の重大さに気づくはずです。また、夫がこちらを見下しており、真剣に話し合ってくれない場合などには、第三者を挟んで相手が強く出られない状況を作ると効果的です。
離婚してくれない夫にやってはいけないこと
感情的な攻撃は有責と評価されるおそれ
離婚の話し合いの中で、感情的になって夫をけなしたり、攻撃的な言葉で責めるのは良くありません。相手の態度が硬化し、余計に話し合いが進みづらくなる可能性があります。
夫への暴言は、最悪の場合モラハラや脅迫にあたり、こちらが有責配偶者となってしまいます。有責配偶者からの離婚請求は、裁判では認められないため、離婚できる可能性が下がってしまいます。
勝手な離婚届提出は刑事責任の可能性
夫が離婚に応じないからと言って、勝手に離婚届を提出してはいけません。
離婚届には、夫婦の両方と証人の自筆の署名が必要ですが、仮に署名を偽って作成した離婚届を提出しても、その離婚届に効力はありません。それどころか、「有印私文書偽造罪」が成立して罪に問われる可能性もあります。
離婚届を提出した時点で偽造が発覚しなければ、離婚届は一旦受理されますが、提出に行かなかった方の当事者には後日「離婚届受理通知」が郵送されますので、相手に離婚届の提出がバレるのは時間の問題です。
無断での別居は悪意の遺棄と判断されることも
別居をする際に黙って出ていくことは避けましょう。正当な理由なく突然家出をして帰ってこないというのは「悪意の遺棄」という不法行為にあたり、離婚交渉にあたり不利になってしまう可能性があります。
置き手紙やメールなどでも良いので、離婚を前提に別居したい旨を伝えておきましょう。
とはいえ、DVやモラハラは別居の正当な理由であり、悪意の遺棄にはなりませんので、心身の危険を感じる時はためらわずに別居を始めましょう。
離婚前の不倫は離婚請求が認められなくなる原因に
いくら夫婦関係が冷え切っていたとしても、離婚が成立するまでの間は、絶対に不倫してはいけません。不倫をした場合、こちらが有責配偶者となってしまい、こちらからの離婚請求が認められなくなるほか、慰謝料を請求される理由になってしまいます。
この場合の不倫とは、夫以外の男性と肉体関係を持つことをいいます。
しかし、仮に肉体関係がなかったとしても、浮気をしていることが知られれば、夫の感情を逆なですることになってしまうでしょう。
「離婚後に不倫相手と一緒になるのは許せない」と感じ、ますます離婚を拒むようになる可能性もあります。
離婚してくれない夫についてよくある質問
Q.離婚に応じない夫と離婚できる?
可能です。夫が離婚を拒否していても、最終的には裁判で離婚が認められる場合があります。
ただし、裁判では、不倫や悪意の遺棄など、法律で定められた離婚理由が必要です。明確な理由がない場合でも、長期間の別居などにより「婚姻を続けることが難しい」と判断されれば、離婚が認められることがあります。
Q.離婚を拒否する夫を説得する方法は?
冷静な話し合いが第一歩です。離婚を決意した理由や、関係を修復できない事情を、感情的にならずに伝えることが大切です。一方的に責めるのではなく、相手の気持ちにも配慮した言葉を選びましょう。親権や財産分与などの条件面で柔軟な姿勢を見せることで、話し合いが進むこともあります。
交渉がうまくいかない場合は、弁護士を通じた話し合いや離婚調停の利用を検討してください。
Q.別居すれば離婚を認めてもらえる?
別居は重要な判断材料になります。別居期間が長くなるほど、裁判で「婚姻を続けることが難しい」と認められやすくなります。
また、別居中でも婚姻費用を請求できるため、その経済的負担から夫が離婚に応じるケースもあります。婚姻費用は請求した時点から認められるため、別居と同時に請求することが大切です。
なお、何も伝えずに家を出ると不利になる可能性があるため、事前に離婚の意思を伝えておきましょう。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
