財産分与における子ども名義の預貯金と学資保険の扱い

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子ども名義の預貯金や学資保険でも、夫婦の収入が原資であれば財産分与の対象になります。財産分与の対象かどうかは、財産の名義ではなく「誰のお金が原資か」という実質で判断されます。

法務省が実施した「協議離婚に関する実態調査」では、財産分与の取り決めで「子どもの養育」を考慮したと回答した人は全体の43.3%でした。

この記事では、子ども名義の預貯金・学資保険・児童手当それぞれの財産分与における扱いと、子どもの固有財産であることの証明方法を、裁判例に基づいて解説します。

子ども名義の預貯金は財産分与の対象になる?

子ども名義の預貯金については、預貯金の原資(もとになったお金)の出どころや、そのお金の目的(子ども自身が自由に使うことを予定しているか、親が子どものための支払いに使うのか等)によって、財産分与の対象となる共有財産かどうかが決まります。

預貯金が財産分与の対象になるか

原資財産分与
夫婦の収入子どものために使う場合は対象※1
出産祝い個別事情により判断※2
入学祝い個別事情により判断※2
お小遣い対象外※3
お年玉対象外※3
バイト代対象外※3

※1 子どもが自分で管理できる場合、子どもに贈与する趣旨の場合は、夫婦の収入を原資とする預貯金でも、夫婦の共有財産とはならず、財産分与の対象にはならない。

※2 子どものために使う目的で、夫婦が出産祝い・入学祝い等の援助・贈与をうけた場合、財産分与の対象になる。

※3 金額がそこまで高くなく、子ども自身が自由に管理・処分できるお金の場合、子どもの固有財産と見る傾向がある。

【夫婦の収入】が原資の子どもの預貯金

夫婦の収入などから積み立てた子どもの預貯金は、財産分与の対象になる可能性が高いです。これは、子どもが自由に使うお金ではなく、将来の教育費として親が管理し、子どものために使うことを想定しているためです。そのため、夫婦の収入を原資とする預貯金は、共有財産と判断されやすいといえます。

実際の裁判でも、子どものために積み立てた預金を原資とする生命保険について、対象外とする主張が退けられた例があります(大阪高判令3・8・27)。裁判所は、将来のための預金であっても実質は夫婦の共有財産であると判断し、解約返戻金の全額を財産分与の対象としました。契約者が自由に解約できる立場にあった点も考慮されています。

もっとも、子どもが成人して自分で口座を管理している場合や、贈与として積み立てられた場合には、夫婦の収入がもとであっても財産分与の対象にはなりません

【出産祝い】が原資の子どもの預貯金

出産祝いについて、子ども名義の預貯金として貯めておいたという方もいらっしゃると思います。

子どもの養育費がかかることから、夫婦を援助するために、夫婦あてに出産祝いが贈られたような場合は、出産祝いも財産分与の対象となります。

ただし、実務上、出産祝いについては、生まれた子どもへのお祝い金であり、子ども本人への贈与ととらえ、財産分与の対象にしないことも多いです。

【入学祝い】が原資の子どもの預貯金

入学祝いについても、基本的には、子ども本人に使わせる目的で与えることが多く、子どもの固有財産となります。

ただし、入学祝いが、子どもの親(夫婦)を援助する目的で、夫婦に贈られる場合は夫婦の共有財産となり、財産分与の対象になると考えられます。

【お小遣い・お年玉】による預貯金

お小遣いやお年玉も、基本的には、財産分与の対象にはなりません。

子どものお小遣いは、原資がたとえ夫婦の収入(共有財産)であっても、子どもに自由に使わせる目的で、子ども本人に与えるお金です。

お小遣いやお年玉を子どもにあげたら、そのお金は、基本的には、子ども固有の財産となります。

したがって、お小遣い、お年玉を出どころとする子ども名義の預貯金は、夫婦の共有財産にはあたらず、財産分与の対象ではなくなります。

【アルバイト代】が原資の子どもの預貯金

子どもが自分で稼いだアルバイト代は、夫婦が協力して築いた財産ではなく、子ども自身が築いた財産です。

したがって、子どものアルバイト代を原資とする子ども名義の預貯金も、夫婦の共有財産にはあたらず、財産分与の対象にはなりません。

子どもの学資保険は財産分与の対象になる?

子どもの学資保険も財産分与の対象となるのが原則

学資保険は、夫婦の収入など夫婦共有財産を原資とすることが多く、財産分与の対象になり得ます。被保険者や受取人の名義が誰であるかは問わない点に留意してください。

もちろん、「保険料を支払っているのが祖父母だった」といった場合には、財産分与の対象とはなりません。

学資保険の保険料の出どころ財産分与の対象となるかどうか
両親なる
祖父母など両親以外ならない

離婚で学資保険を財産分与するという場合は、離婚時(別居時)の解約返戻金額がその保険の価値ということになり、その保険の解約返戻金額を原則2分の1の割合で分けることになります。

学資保険の財産分与の仕方は2種類

保険を離婚で財産分与する方法としては、「保険を解約し、得られた解約返戻金を財産分与する」「保険を解約せず、保険を継続する側が解約返戻金相当額の半分を渡す」といった方法が採られます。

ただし、学資保険の解約返戻金を財産分与する場合、元本割れにより損をするリスクがあります。

また、子どもの親権者になる場合、養育費や進学費用に充てるため、学資保険を継続したいと考える方も多いでしょう。しかし、契約者や受取人が離婚した相手のままだと、満期保険金や解約返戻金を受け取れなかったり、無断で解約されたりするおそれがあります。

  • 契約者
    学資保険を契約し保険料を支払う人
  • 受取人
    学資保険の保険金を受け取る人
    ※契約者と受取人を同一人物に限定する保険もある

そして、学資保険の財産分与については、(1)受取人を親権者の名義に変更して、相手に解約返戻金に相当する額の半分を支払う、(2)学資保険を財産分与の対象ではなく、将来必要となる養育費の一部と考えて、契約者を親権者に設定する等の対処法が考えられます。

学資保険の財産分与の例

  1. 学資保険の受取人の名義を、親権者に変更。
    親権者から非監護親へ、解約返戻金に相当する額の半分を支払う。
  2. 学資保険の名義は、契約者・受取人ともに親権者にする。
    非監護親が親権者に支払う養育費は、学資保険の保険料もまかなえる金額にする。

夫婦間の話し合いや調停では、学資保険を財産分与の対象とせず、契約者の名義変更を望むことを相手方に伝えてみることが重要です。

保険の解約返戻金についての補足

なお、学資保険だけでなく、解約返戻金がある保険の場合は財産分与の対象となります。くわしくは『生命保険は離婚で財産分与の対象になる?保険の種類ごとに弁護士が解説』をご覧ください。

児童手当などの公的な給付金は財産分与の対象になる?

児童手当や出産育児一時金といった公的な給付金を子どもの将来のために貯蓄している場合、婚姻中に受給した給付金は夫婦の共有財産にあたるため、財産分与の対象になります。

ただし、公的な給付金は「子どもの成長を助けるために支払われている」という性質が強いです。そのため、別居後に受け取った児童手当については、子どもと一緒に暮らす親の特有財産となり、財産分与の対象とはなりません。

手当や給付金をもらった時期財産分与の対象となるかどうか
別居前なる
別居後ならない

子どもの給付金の留意点

なお、離婚時には、児童手当の受給者の変更を忘れずに行いましょう。親権者がどちらであっても、基本的には子どもと暮らす方の親が児童手当を受け取ることができます。

児童手当のほかにも、離婚したらもらえる手当や貸付基金、支援制度があります。くわしくは『離婚したらもらえるお金は?離婚補助金はある?手当や公的支援を解説』をご覧ください。

子どもの財産が共有財産でないと証明する方法

証明が必要な場面

子どもの固有財産か、夫婦の共有財産か、区別が難しい場合は、離婚相手から「子ども名義の財産も財産分与の対象になる」と主張されてしまうことがあります。

「子ども名義の預貯金は養育費や進学費用として大切にとっておきたい。財産分与の対象にはしたくない」と考えているのであれば、子どもの固有財産であり、財産分与の対象とならないことを主張立証する必要があります。

証明方法の具体例

通帳や銀行の取引履歴があれば、子ども名義の預貯金の出どころが、お年玉や贈与によるものだと主張できる可能性があります。たとえば、お年玉であれば毎年1月にまとまった入金が見られ、出産祝いであれば出産時期に近い入金が確認できることが多いでしょう。

離婚時の話し合いでは、子ども名義の預貯金は進学費用として親権者が管理し子どものために使うと合意するケースも少なくありません。子どもの財産を守るには、まず冷静に話し合うことが重要ですが、まとまらない場合は調停や裁判で解決を図ることになります。

裁判では「子どものお金だ」という主張だけでは不十分で、それを裏付ける客観的な証拠が求められます。証拠が不十分な場合、子どもの財産とは認められないこともあります。

実際に、元夫の母が出産祝いとして渡したお金をもとに学資保険が組まれたとして、元妻が「このお金は長女のものだ」と主張し元夫に不当利得の返還を求めた裁判では、請求は認められませんでした(東京地判令5・11・27)。

元夫の母本人が「長女への贈与ではない」旨の証言をしており、学資保険の受取人が元夫名義になっていたため、贈与が長女本人に対してなされたと認める証拠が不十分と判断されました。

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子どもがいるときの財産分与の注意点

子どもがいても財産分与の割合は原則1/2

財産分与の割合は、原則2分の1です。これは、夫婦の間に子どもがいたとしても変わりません。

場合によっては、扶養的財産分与という形で、財産分与の割合が2分の1を超えることもあります。扶養的財産分与とは、離婚後に生活が困窮する配偶者を扶養する目的の財産分与です。

たとえば、「幼い子どもを引き取ることになったが、長い間専業主婦だったため、収入が安定しそうにない」といったときに認められることがあります。

ただし、裁判になっても扶養的財産分与が必ず認められるわけではありません。これは、夫婦で築いた財産を分ける「清算的財産分与」を補う位置づけにすぎず、認められるのは例外的な場合に限られます。

原則として、子どもがいても財産分与の割合は2分の1であるという点に留意してください。

なお、2026年4月1日施行の民法改正により、財産分与の請求期間は、従来の「離婚後2年」から「離婚後5年」へと延長されます。この改正は施行後に離婚した場合に適用されるため、それ以前に離婚した夫婦については、従来どおり2年のままとなりますので注意が必要です。

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財産分与は離婚協議書・公正証書を残す

財産分与をした場合の合意内容は、必ず書面化しておきましょう。どんなに相手を信用していたとしても、口約束では、合意内容が、後日あいまいになるリスクがあります。

言った・言わないの水掛け論を回避するためにも、離婚協議書や公正証書といった書面を作成しておくべきです。

  • 離婚協議書
    離婚当事者が締結する書面。
    離婚の意思、慰謝料、財産分与、親権、養育費、面会交流といった離婚条件など合意した内容を記載する。
  • 公正証書
    公証人が作成する書面。
    強力な証拠力を有する。
    協議離婚書を文案として、公証役場に持ち込む等して作成する。

学資保険の扱いを含む財産分与の協議が長引いた事例もあります。離婚後、夫名義の学資保険の解約返戻金を財産分与の対象とするかで折り合いがつかず、弁護士同士で書面のやり取りが続きましたが、最終的な合意文書は作成されませんでした。

裁判所は、こうしたやり取りを「合意に向けた調整段階」にすぎないと判断し、財産分与の合意は成立していないと認定しています(広島高判令4・1・28)。

この事例から、弁護士間の書面のやり取りだけでは合意が成立したとは認められない場合があることがわかります。

確実に内容を残すためにも、離婚協議書や公正証書として書面化しておくことが重要です。

離婚の公正証書については『離婚の公正証書の作り方・費用・必要書類』の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

財産分与と子ども名義の財産についてよくある質問

Q. 子ども名義の預貯金はどうやって財産分与する?

主な方法は2つあります。口座を解約して現金を分ける方法と、口座はそのままにして管理する側の親が半分相当額を相手に支払う方法です。

Q. お年玉やお小遣いの貯金も財産分与される?

お年玉やお小遣いを原資とする預貯金は、子どもが自由に使える固有の財産とみなされるため、財産分与の対象にはなりません。通帳の入金履歴で原資を証明することが重要です。

Q. 学資保険は解約しないと財産分与できない?

学資保険は解約しなくても財産分与できます。別居時の解約返戻金相当額の半分を相手方に支払い、保険を継続する方法が一般的です。解約による元本割れを避けられます。

Q. 財産分与の請求期間はいつまで?

財産分与の請求期間は、離婚後2年以内です(民法第768条)。ただし、民法改正により、2026年4月1日以降に離婚が成立した場合の請求期間は5年に延長されます。

子どもがいる夫婦の離婚・財産分与は弁護士まで

子ども名義の預貯金でも、夫婦で得たお金が出どころの場合、財産分与の対象になり得ます。

一方で、子どもへの贈与の趣旨がある場合、子どもが自分で管理できる場合などは、財産分与の対象からはずれます。

また、子ども自身が他人からもらったり、自分で稼いだりしたお金を預金している場合には、子ども自身の財産となり、財産分与の対象にはなりません。

具体的な判断で迷った場合、交渉が暗礁に乗り上げた場合などは、是非、離婚に詳しい弁護士の無料相談をご活用ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了