岡野武志弁護士

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

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保護観察中の再犯で刑務所・少年院は確定?執行猶予取り消しは防げる?

更新日:

保護観察期間中の再犯は、裁判所から与えられた社会での更生を損なう行為とみなされ、法的に極めて重いペナルティが課されます。

成人の場合、執行猶予の取り消しが検討されやすく、実刑に至るリスクが高まります。少年の場合は「少年院送致」への処分変更が現実味を帯びてきます。

ただし、保護観察中に再犯をしても、必ずしも刑務所・少年院が確定するとは限りません

この記事では、「保護観察とは何か」という基礎知識から、再犯時に執行猶予が取り消される可能性、さらには刑務所・少年院送致を回避するための方法を分かりやすく解説します。

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保護観察とは?わかりやすく解説

保護観察とは、犯罪者・非行少年を施設に収容せず社会内で生活させながら、更生と再犯防止を図るための指導・援助を行う制度です。刑務所や少年院のように隔離するのではなく、家庭や地域での生活を続けながら立ち直りを支援します。

犯罪や非行をした人が社会の中で健全な一員として更生するように、保護観察官と保護司が協働して、保護観察対象者と面接を行うなどして生活状況を把握し、保護観察の決まりごと(遵守事項)を守るよう指導することや、自立した生活ができるように住居の確保や就職の援助等を行います。

法務省:Q&A

国家公務員である保護観察官が処遇計画の立案、面接、違反時の措置の提案など専門的役割を担います。加えて民間ボランティアの保護司が、対象者と日常的に面接・訪問を行い、生活支援や助言を行います。

保護観察の対象となるのはどんな人?

保護観察の対象者は、大きく分けて成人3種類・少年2種類の5つのグループに分類されます。

  • 保護観察付き執行猶予(成人)
    裁判で執行猶予がついた際、同時に保護観察に付された人。
  • 仮釈放者(成人)
    刑務所の刑期満了前に、仮釈放を許された人。
  • 一部執行猶予者(成人)
    刑期の一部を刑務所で過ごし、残りの期間を社会内で保護観察付きで過ごす人。
  • 保護観察処分少年(少年)
    家庭裁判所の審判により、社会内での更生が適当と判断された少年。
  • 少年院仮退院者(少年)
    少年院での教育を終え、仮釈放された少年。

【成人・少年の違い】保護観察の目的

「保護観察」という言葉は同じでも、成人と少年ではその性質が大きく異なります。対象者が少年の場合は更生を目的とした「保護処分」ですが、成人の場合は「刑罰」の一環という明確な違いがあります。

成人が対象となる場合

主な目的は「再犯の防止」です。刑罰(執行猶予)の一部として課されるため、ルール違反(遵守事項違反)に対しては「執行猶予の取り消し=刑務所収監」という非常に厳しい制裁が待っています。

少年が対象となる場合

主な目的は「健全な育成(教育)」です。少年院送致を避けるための「教育的配慮」としての側面が強く、成人の場合よりも柔軟、かつ密接な指導が行われます。

成人と少年の保護観察の違い

成人(執行猶予付)少年(保護観察処分)
法的性質刑罰の執行猶予教育的な保護処分
期間執行猶予の期間と同じ原則20歳まで(または2年間)
主な目的再犯の防止・監視性格の矯正・環境調整
違反時のペナルティ執行猶予の取り消し・実刑少年院送致への変更

保護観察の期間はいつまで?少年と成人で異なる仕組み

保護観察がいつまで続くのかは、対象者の年齢や処分の内容によって異なります。少年の場合は20歳になるまで、成人の場合は執行猶予に基づく期間が設定されます。

少年の保護観察処分は原則20歳まで

家庭裁判所の審判で保護観察処分となった場合、原則として20歳に達するまで(その期間が2年に満たない場合には2年間)が保護観察の期間です。

たとえば、中学3年生(15歳)が保護観察になった場合、最大で約5年間続くことになります。

しかし、生活態度が良好で、更生が進んだと判断された場合は、期間の途中で保護観察が解除されることもあります。これを「仮解除」といいます。

保護観察を継続しなくとも確実に改善更生することができると認められるに至ったときは、保護観察所の長の判断により、解除の措置がとられて保護観察は終了する。

また、保護観察所の長の判断により、一定期間、指導監督、補導援護等を行わず経過を観察する一時解除の措置がとられることもある。

令和6年版 犯罪白書 第3編/第2章/第5節/4

一方で、非行やルール違反が続くと、20歳を超えても期間が延長されるケースもあります。

成人の保護観察付き執行猶予は執行猶予と同じ年数

成人が刑事裁判で「保護観察付き執行猶予」の有罪判決を受けた場合、保護観察の期間は裁判所が決定した執行猶予期間と同じです。一般的には1年〜5年程度となっています。

たとえば、「拘禁刑1年6か月、執行猶予3年、その猶予期間中、保護観察に付する」という判決であれば、保護観察の期間は「執行猶予期間である3年間」となります。この3年間、後述するルール(遵守事項)を守り、再犯がなければ、期間満了と共に保護観察は終了し、刑の言い渡しの効力も失われます。

成人の「保護観察付き執行猶予」と「通常の執行猶予」の違い

成人の場合、「保護観察が付くかどうか」は非常に大きな違いです。

通常の執行猶予保護観察付き執行猶予
生活上の義務特になし。再犯などせず期間が過ぎれば刑務所に行く必要がなくなる。保護観察官・保護司との定期的な面談や指導監督を受ける義務がある。
ルール法的なルールは特になし。「遵守事項」と呼ばれるルールを守る必要がある。
目的刑の執行を一定期間見送る(猶予する)。社会の中で、専門家のサポートを受けながら積極的に更生を促す。

通常の執行猶予は、「もう二度と罪を犯しません」という本人への信頼に基づいて、刑の執行を待つ制度です。

一方、保護観察付き執行猶予は、「専門家のサポートがあった方が、より確実に更生できる」という判断のもと、指導監督という形で立ち直りを積極的に支援する制度なのです。

保護観察中に守るべきルールとは?遵守事項と違反時のリスク

保護観察中は、生活を送る上で守らなければならない遵守事項(じゅんしゅじこう)が定められます。これには、全員に課される「一般遵守事項」と、その人の状況に応じて個別に定められる「特別遵守事項」の2種類があります。

一般遵守事項とは?保護観察中に全員が守る基本ルール

一般遵守事項は、保護観察中のすべての対象者に共通して課されるルールです。

一般遵守事項の例

  • 再び罪を犯さないよう、真面目に生活すること
  • 決められた住居に住み、正業に就くこと
  • 保護観察官や保護司からの呼び出しや訪問に応じ、面談を受けること
  • 引っ越しや長期の旅行は事前に許可を得ること

これらを守ることで、社会復帰への信頼を積み重ねます。

特別遵守事項とは?個別に定められるルールの具体例

特別遵守事項は、事件の内容や本人の課題に応じて具体的に定められます。

特別遵守事項の例

  • (薬物事件の場合)定期的に尿検査を受けること
  • (窃盗症の場合)専門のカウンセリングに通うこと
  • 被害者やその家族への連絡・接触をしないこと
  • ギャンブルをしないこと
  • 特定の繁華街など、再犯のきっかけになり得る場所に立ち入らないこと

状況に応じた支援と制限により、再犯を防ぎ更生を後押しする仕組みです。

保護観察中のルール違反とペナルティ

遵守事項を守らないと、保護観察官から面接調査などが行われ、その程度に応じてペナルティが科される可能性があります。

保護観察中のペナルティ

  • 警告
    軽微な違反では、口頭や書面による警告で改善を促されます。
  • 執行猶予の取消し(成人の場合)
    警告に従わず、違反の程度が重いと判断されると、検察官が裁判所に執行猶予の取消しを請求することがあります。これが認められると、猶予されていた刑務所への収容が実行されてしまいます。
  • 少年院送致など(少年の場合)
    少年が遵守事項を破った場合も、まずは警告がなされますが、改善が見られない場合は「不良措置」として、少年院送致など、より重い保護処分が下される可能性があります。

「少しくらいなら…」という甘い考えが、取り返しのつかない事態を招くことがあるため、遵守事項は誠実に守る必要があります。

保護観察中に再犯したらどうなる?少年院や刑務所のリスク

保護観察中に最も避けるべきなのが、新たな犯罪行為(再犯)です。社会内での更生の機会を与えられていたにもかかわらず、再び罪を犯すことは、極めて重く受け止められます。

成人が保護観察中に再犯した場合(執行猶予の取消しリスク大)

成人の「保護観察付き執行猶予」は、いわば裁判所から与えられた「刑務所の外で更生する最後のチャンス」です。そのため、保護観察期間中に再犯を犯すと、法律上非常に厳しいペナルティが課されます。

(1)拘禁刑判決となれば執行猶予は取り消される可能性が高い

再犯で裁判になり、拘禁刑の判決が出た場合、前回の執行猶予は取り消される可能性が高いです。

もっとも、かつての刑法では、保護観察付き執行猶予中の再犯に対して「再度の執行猶予」を付けることは法律上不可能でした。しかし、2022年の刑法改正(2025年6月1日施行)により、この制限が撤廃され、現在では保護観察中の再犯であっても、条件を満たせば「再度の執行猶予」を付与することが可能になっています。

ただし、「今回の判決が2年以下の拘禁刑であること」「情状に特に酌むべき事情があること」という非常に厳しい条件を満たす必要があります。

執行猶予がつくための条件について詳しく知りたい方は『執行猶予がつく条件とは?つかない罪や罰金刑・禁錮刑との関係をわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

(2)罰金刑でも「裁量的取消し」のリスク

再犯した罪の判決が罰金刑などの場合、必ずしも執行猶予が取り消されるとは限りません。しかし、保護観察中の再犯という事実を重く見て、裁判官の裁量によって執行猶予が取り消される「裁量的取消し」のリスクが残ります。

執行猶予が取り消された場合には、「前回の事件で猶予されていた刑期」+「今回の事件の刑期」を合算した期間、刑務所に入る必要があります。長期間の身体拘束を余儀なくされるため、社会復帰が難しくなります。

執行猶予が取り消される条件や再度の執行猶予を獲得する方法については『執行猶予の取り消しとは?条件や再度の執行猶予(ダブル執行猶予)がわかる 』の記事で詳しく解説しています。

少年が保護観察中に再犯した場合(少年院送致の可能性)

少年の場合、成人の「刑罰」とは考え方が異なり、あくまで「教育」という視点で処分が決まります。しかし、保護観察中の再犯は、家庭裁判所から非常に厳しい評価を受けます。

「社会内での更生は限界」という判断につながりやすい

少年の保護観察は、「施設に入れなくても、社会の中で更生できる」と期待されて下された処分です。その期間中に再犯をしたということは、家庭裁判所にとって、前回の保護観察という教育手段では不十分だったという強力な証拠になってしまいます。

その結果、「次はより強力な教育環境が必要である」と判断され、社会から切り離して指導を行う少年院送致が選ばれる可能性が極めて高くなるのです。

少年院送致を回避するためには環境調整が重要

少年の再犯において、少年院行きを食い止めるためには、これまでの保護観察の問題点を洗い出し、「次はなぜ再犯しないと言い切れるのか」を客観的に証明しなければなりません。

  • 付き合う友人を完全に変える(引越しや転校を含む)
  • 親権者の監督体制を今まで以上に強化する
  • 専門のカウンセリングや教育プログラムを導入する

これら「環境調整」を審判の日までにどこまで具体的に進められるかが、少年院回避の分かれ道となります。

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保護観察処分のよくある質問(Q&A)

Q.保護観察処分を受けたら学校や職場に知られますか?

原則として、学校や職場への通知義務はありません。保護観察は本人の更生と社会復帰を支援する制度であり、プライバシーは厳重に保護されます。

ただし、本人の更生のため、保護観察所が学校や職場に協力を求めることがあります。その場合でも、本人の承諾がなければ、一方的に連絡することはありません。

Q.保護観察付き執行猶予はどんな場合に付けられますか?

裁判所が再犯を防ぐために保護観察による指導・監督が必要であると判断した場合です。

特に、以下のようなケースで保護観察が付されることがあります。

  • 再犯リスクが高いと判断された場合
  • 初めて罪を犯した者(初犯者)であっても、情状を考慮して更生を支援する必要があると判断された場合

Q.保護観察中に反省文を書いたりする必要がありますか?

保護観察官や保護司が、更生を促す指導の一環として、反省文や日記の提出を求めることがあります。提出に応じることは、更生への強い意欲を示すことにもつながります。

Q.保護観察付きでも「再度の執行猶予」がつく可能性はあると聞きましたが本当ですか?

2022年の刑法改正(2025年6月1日施行)により理論上は可能になりました。かつては保護観察付きの再犯に「再度の執行猶予」は認められませんでしたが、現在は再度の執行猶予がつく可能性はあります。

ただし、「今回の判決が2年以下の拘禁刑であること」「情状に特に酌むべき事情があること」という非常に厳しい条件を満たす必要があります。この「特に酌むべき事情」を裁判所に認めてもらうには、高度な弁護戦略が不可欠です。

Q.執行猶予の取り消しを防ぐために、弁護士は何をしてくれますか?

主に「示談交渉」「処分の軽減」「再犯防止策の立証」の3点を行います。 まず被害者との示談を成立させ、処罰感情を和らげます。

その上で、検察官や裁判官に対し、刑務所に入れるよりも社会で更生させるべき理由(就労先の確保や専門治療の開始など)を客観的な証拠と共に主張します。

自分一人では困難な「社会内での受け入れ態勢」を法的に構築し、必要な主張立証を行います。

まとめ|保護観察は更生へのサポート制度

保護観察中の再犯は、人生の重大な局面です。「もう後がない」「すぐに刑務所や少年院行きだ」と考えてしまいますが、再度の執行猶予や、少年院送致を回避できる可能性は残されています。

  • 成人の場合
    再犯が拘禁刑判決なら執行猶予取り消しの可能性が高い。しかし、「今回の判決が2年以下の拘禁刑であること」「情状に特に酌むべき事情があること」という厳しい条件を満たせば再度の執行猶予あり
  • 少年の場合
    少年院送致のリスクが極めて高いが、本人の深い反省に加え、「親権者の監督体制の強化」や「環境の劇的な変化(転居や転校など)」を具体的に提示すれば保護観察が継続されることもある

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了