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保護観察処分を受けたら?少年と大人の違い、期間と再犯リスクまで解説

初めて「保護観察処分」を受けることになった本人やそのご家族のなかには、「保護観察って何?」「処分期間はどれくらい?」「再犯したらどうなるの?」と不安や疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「保護観察とは何か」をわかりやすく解説するとともに、対象となる年齢(未成年・大人)、処分の内容と期間、保護観察付き執行猶予の仕組み、そして保護観察中に再犯した場合のリスクについてわかりやすく解説します。
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目次
保護観察とは?わかりやすく解説
保護観察とは、犯罪や非行をした人が社会生活を送りながら再び罪を犯さないよう更生を目指す制度です。刑務所や少年院のように隔離するのではなく、家庭や地域での生活を続けながら立ち直りを支援します。
犯罪や非行をした人が社会の中で健全な一員として更生するように、保護観察官と保護司が協働して、保護観察対象者と面接を行うなどして生活状況を把握し、保護観察の決まりごと(遵守事項)を守るよう指導することや、自立した生活ができるように住居の確保や就職の援助等を行います。
法務省:Q&A
保護観察官は専門的な指導や評価を行い、保護司(ほごし)は地域で活動する民間ボランティアとして生活に寄り添い助言や見守りを行います。
保護観察の対象者は少年と大人でどう違う?
保護観察は、少年も大人も対象になります。
対象者が少年の場合は更生を目的とした「保護処分」ですが、大人の場合は「刑罰」の一環という明確な違いがあります。
少年(未成年)が対象となる場合
少年法、更生保護法に定められた保護処分のひとつです。
- 保護観察処分少年:家庭裁判所で保護観察の処分が決定された場合
- 少年院仮退院者:少年院から仮退院を許された場合
大人(成人)が対象となる場合
少年法、更生保護法に定められた保護処分のひとつです。
- 仮釈放者:刑務所から仮釈放を許された場合
- 保護観察付執行猶予者:執行猶予中に保護観察を付される判決を受けた場合
この記事では主に、初めて保護観察を受けることになる少年の「保護観察処分」と大人の「保護観察付き執行猶予」について詳しく見ていきます。
「保護観察処分」は原則として未成年が対象
保護観察処分は、少年(原則として20歳未満)が家庭裁判所の審判で受ける処分を指します。
たとえば、窃盗や傷害など比較的軽い内容の非行と判断された場合、少年院ではなく、家庭での生活を続けながら保護観察を受けることになります。
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大人の「保護観察付き執行猶予」と「通常の執行猶予」の違い
大人の場合、「保護観察が付くかどうか」は非常に大きな違いです。
通常の執行猶予 | 保護観察付き執行猶予 | |
---|---|---|
生活上の義務 | 特になし。再犯などせず期間が過ぎれば刑務所に行く必要がなくなる。 | 保護観察官・保護司との定期的な面談や指導監督を受ける義務がある。 |
ルール | 法的なルールは特になし。 | 「遵守事項」と呼ばれるルールを守る必要がある。 |
目的 | 刑の執行を一定期間見送る(猶予する)。 | 社会の中で、専門家のサポートを受けながら積極的に更生を促す。 |
通常の執行猶予は、「もう二度と罪を犯しません」という本人への信頼に基づいて、刑の執行を待つ制度です。
一方、保護観察付き執行猶予は、「専門家のサポートがあった方が、より確実に更生できる」という判断のもと、指導監督という形で立ち直りを積極的に支援する制度なのです。
保護観察の期間はいつまで?少年と大人で異なる仕組み
保護観察がいつまで続くのかは、対象者の年齢や処分の内容によって異なります。
少年の場合は20歳になるまで、大人の場合は執行猶予に基づく期間が設定されます。
少年の保護観察処分は何歳まで続く?期間と解除の条件
家庭裁判所の審判で保護観察処分となった場合、原則として20歳に達するまで(その期間が2年に満たない場合には2年間)が保護観察の期間です。
例えば、中学3年生(15歳)が保護観察になった場合、最大で約5年間続くことになります。
しかし、生活態度が良好で、更生が進んだと判断された場合は、期間の途中で保護観察が解除されることもあります。これを「仮解除」といいます。
保護観察を継続しなくとも確実に改善更生することができると認められるに至ったときは、保護観察所の長の判断により、解除の措置がとられて保護観察は終了する。
また、保護観察所の長の判断により、一定期間、指導監督、補導援護等を行わず経過を観察する一時解除の措置がとられることもある。
令和6年版 犯罪白書 第3編/第2章/第5節/4
一方で、非行やルール違反が続くと、20歳を超えても期間が延長されるケースもあります。
大人の保護観察付き執行猶予は何年?期間の決まり方
大人が刑事裁判で「保護観察付き執行猶予」の有罪判決を受けた場合、保護観察の期間は裁判所が決定した執行猶予期間と同じです。一般的には1年〜5年程度となっています。
たとえば、「懲役1年6ヶ月、執行猶予3年、その猶予期間中、保護観察に付する」という判決であれば、保護観察の期間は「執行猶予期間である3年間」となります。この3年間、後述するルール(遵守事項)を守り、再犯がなければ、期間満了と共に保護観察は終了し、刑の言い渡しの効力も失われます。
保護観察中に守るべきルールとは?遵守事項と違反時のリスク
保護観察中は、生活を送る上で守らなければならない遵守事項(じゅんしゅじこう)が定められます。これには、全員に課される「一般遵守事項」と、その人の状況に応じて個別に定められる「特別遵守事項」があります。
一般遵守事項とは?保護観察中に全員が守る基本ルール
一般遵守事項は、保護観察中のすべての対象者に共通して課されるルールです。
以下のような生活上の基本行動が求められます。
- 再び罪を犯さないよう、真面目に生活すること
- 決められた住居に住み、正業に就くこと
- 保護観察官や保護司からの呼び出しや訪問に応じ、面談を受けること
- 引っ越しや長期の旅行は事前に許可を得ること
これらを守ることで、社会復帰への信頼を積み重ねます。
特別遵守事項とは?個別に定められるルールの具体例
特別遵守事項は、事件の内容や本人の課題に応じて具体的に定められます。
以下はその一例です。
- (薬物事件の場合)定期的に尿検査を受けること
- (窃盗症の場合)専門のカウンセリングに通うこと
- 被害者やその家族への連絡・接触をしないこと
- ギャンブルをしないこと
- 特定の繁華街など、再犯のきっかけになり得る場所に立ち入らないこと
状況に応じた支援と制限により、再犯を防ぎ更生を後押しする仕組みです。
保護観察中のルール違反とペナルティ
遵守事項を守らないと、保護観察官から面接調査などが行われ、その程度に応じてペナルティが科される可能性があります。
- 警告
軽微な違反では、口頭や書面による警告で改善を促されます。 - 執行猶予の取消し(大人の場合)
警告に従わず、違反の程度が重いと判断されると、検察官が裁判所に執行猶予の取消しを請求することがあります。これが認められると、猶予されていた刑務所への収容が実行されてしまいます。 - 少年院送致など(少年の場合)
少年が遵守事項を破った場合も、まずは警告がなされますが、改善が見られない場合は「不良措置」として、少年院送致など、より重い保護処分が下される可能性があります。
「少しくらいなら…」という甘い考えが、取り返しのつかない事態を招くことがあるため、遵守事項は誠実に守る必要があります。
保護観察中に再犯したらどうなる?少年院や刑務所のリスク
保護観察中に最も避けるべきなのが、新たな犯罪行為(再犯)です。社会内での更生の機会を与えられていたにもかかわらず、再び罪を犯すことは、極めて重く受け止められます。
大人が保護観察中に再犯した場合(執行猶予の取消し)
保護観察付き執行猶予中に再び罪を犯し、禁錮以上の刑(罰金刑より重い刑)に処せられた場合、原則として執行猶予は取り消されます。
この場合、新たな罪の刑に加え、猶予されていた刑も合わせて服役することになります。
刑務所での長期服役となる可能性があり、社会復帰が大きく遠のきます。
関連記事
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少年が保護観察中に再犯した場合(少年院送致の可能性)
保護観察中の少年が再び罪を犯した場合、家庭裁判所は「社会内での更生は困難」と判断する可能性が高まります。
その結果、多くの場合、少年院に送致されるという、より厳しい処分が下されることになります。
再非行のおそれが強く、社会内での更生が難しい場合には、少年院に収容して矯正(きょうせい)教育を受けさせます。
処分の種類 | 裁判所
「保護観察中 再犯 少年院」というキーワードで検索される方が多いことからも、この点への関心の高さがうかがえます。一度与えられたチャンスを失うことのないよう、強い意志を持つことが大切です。
保護観察処分のよくある質問(Q&A)
Q. 保護観察処分を受けたら学校や職場に知られますか?
原則として、学校や職場への通知義務はありません。保護観察は本人の更生と社会復帰を支援する制度であり、プライバシーは厳重に保護されます。
ただし、本人の更生のため、保護観察所が学校や職場に協力を求めることがあります。その場合でも、本人の承諾がなければ、一方的に連絡することはありません。
Q. 保護観察付き執行猶予はどんな場合に付けられますか?
裁判所が再犯を防ぐために保護観察による指導・監督が必要であると判断した場合です。
特に、以下のようなケースで保護観察が付されることがあります。
- 再犯リスクが高いと判断された場合
- 初めて罪を犯した者(初犯者)であっても、情状を考慮して更生を支援する必要があると判断された場合
Q. 保護観察中に反省文を書いたりする必要がありますか?
保護観察官や保護司が、更生を促す指導の一環として、反省文や日記の提出を求めることがあります。提出に応じることは、更生への強い意欲を示すことにもつながります。
まとめ|保護観察は更生へのサポート制度
保護観察は、単なる罰ではなく、再犯を防ぎ社会復帰をサポートするための制度です。特に未成年の少年にとっては、家庭や学校といった日常生活の中で更生を目指すチャンスでもあります。
ただし、ルールを守らなかったり、再犯をしてしまった場合、その後の生活に大きな影響が出る可能性があるため注意が必要です。
一人で悩みを抱え込まず、担当の保護観察官や保護司を信頼し、誠実にコミュニケーションをとることが、更生への一番の近道です。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了