会社に慰謝料を請求したい|パワハラや怪我など労災の責任を問う | 事故慰謝料解決ナビ

会社に慰謝料を請求したい|パワハラや怪我など労災の責任を問う

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会社に慰謝料を請求したい!パワハラ、怪我の労災責任

「労災認定は受けたけれど、どうしても会社にも責任を取ってほしい」

労災認定を受けられても、労災保険から慰謝料は支払われません。労災について慰謝料を請求する相手のひとつに会社があります。

この記事は、会社への慰謝料請求に関して、パワハラやいじめで精神疾患を発症してしまったケースと、骨折などの怪我を負わされた場合のケースについて解説しています。

労災事故について会社に慰謝料を請求したいという方は最後までお読みください。

会社に労災の慰謝料を請求できる?

パワハラやいじめで精神疾患を発症した場合や、仕事で怪我をしてしまった場合、会社に対する慰謝料請求が認められる場合があります。

ただし労災認定を受けることと、会社への慰謝料請求が認められることは別問題です。会社に対する慰謝料の請求は、労災発生の原因が会社にある場合に限られます。

いったいどんなときに会社への慰謝料請求が認められるのかを検証していきましょう。

パワハラやいじめを受けたことへの慰謝料

会社でのパワハラやいじめが原因となってうつ病や適応障害などの精神疾患を発症した場合や上司に殴られて怪我をした場合、労災認定を受けられる可能性があります。 そして、労災と認定された場合は会社に慰謝料を請求できる可能性が高いです。

たとえば、上司によるパワハラやモラハラでうつ病を発症して労災認定を受けたとします。会社がこの事実を認識していたのに適切な対応を取らなかった場合には、労働安全衛生法で定めるところの「労働者にとって安全で快適に働ける環境」ではないとして、会社の責任を問うことが可能です。

また会社がパワハラやモラハラを認識していなかったと主張する場合でも、把握していなかったこと自体に問題があり、監督者である会社の落ち度として慰謝料の請求が認められる場合もあります。

会社への慰謝料請求については、安全配慮義務違反の有無が重要です。

精神疾患の労災認定基準

労災における精神疾患は、独自の認定基準が設けられています。大まかな認定基準は次の通りです。

精神疾患の労災認定基準(要旨)

  • 対象疾病を発症していること
  • 疾病の発病のおおよそ6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や労働者の要因によって発症していないこと

精神疾患が労災と認められれば、疾病と業務の関連を示しやすくなり、会社に慰謝料を請求する際の根拠にもなりえます。

精神疾患の労災認定基準について知りたい方は、関連記事を参考にしてください。

労災認定がないと精神疾患に対する慰謝料を請求できない?

労災認定されていなくても、精神疾患と仕事の因果関係が明らかな場合は、慰謝料の請求が認められる可能性があります。

病院で診断書をもらうこと、具体的な損害の内容がわかる記録、会社や上司がパワハラやいじめを見過ごしていたことなどがわかる証拠の提示など、会社側との交渉がポイントです。

労災認定の申請を検討中という方は、関連記事を参考にしてください。労災認定の申請書類には会社の証明欄がありますが、どうしても会社が協力してくれない場合には、証明がなくても申請自体は可能です。

仕事中に怪我をしたことへの慰謝料

会社側に労災事故発生の責任が認められれば、慰謝料を請求できる場合があります。

たとえば、仕事中に自分の不注意で階段を踏み外してしまい足の骨を骨折した場合、労災保険の給付は受けられても、会社側に慰謝料を請求するのは難しいでしょう。

しかし階段が濡れて滑りやすくなっていたり、老朽化した手すりが原因となって階段を踏み外した場合などは、会社の施設設備に問題があったとして、会社に慰謝料を請求できる可能性があります。

あくまで一例にはなりますが、労災事故発生に会社側の落ち度がある場合には、慰謝料を請求できる可能性があると理解しておいてください。

会社に請求できる慰謝料の相場

会社に請求できる慰謝料として、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3つを紹介します。

入通院慰謝料

精神疾患や怪我の治療にあたって入院や通院を余儀なくされた場合には、入通院慰謝料を請求できます。基本的には、治療にかかった期間に応じて金額を算定する仕組みで、治療が長期にわたるほど慰謝料相場が高額になる見込みです。

たとえば、入院1ヶ月・通院3ヶ月のとき入通院慰謝料の相場は115万円です。一方で、入院なし・通院3ヶ月のとき入通院慰謝料の相場は73万円となります。

重篤な怪我のために手術を繰り返したり、生命が危険な状態が続いた場合などは、もっと高額になる可能性があります。その一方で、怪我の程度が軽傷だったり、通院頻度が低いと判断された場合には、もうすこし低額になる見込みです。

後遺障害慰謝料

また、完治せずに一定の後遺障害が残ってしまった場合は後遺障害慰謝料の請求が可能です。労災認定時の障害等級を元にすると、後遺障害慰謝料の相場は下表となります。

後遺障害等級と慰謝料相場

後遺障害等級相場
第1級2,800万円
第2級2,370万円
第3級1,990万円
第4級1,670万円
第5級1,400万円
第6級1,180万円
第7級1,000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

死亡慰謝料

死亡慰謝料は2,000万円~2,800万円が相場で、亡くなったご本人の精神的苦痛や残された家族の精神的苦痛を加味して金額が算定されます。

死亡慰謝料の相場

死亡者の属性相場
一家の支柱2,800万円
母親、配偶者2,500万円
その他2,000万円~2,500万円

※その他とは独身の男女、子ども、幼児などをいう

労災で請求できる慰謝料の相場や慰謝料以外の請求項目も詳しく知りたい方は、関連記事を参考にしてください。

労災で仕事を辞めさせられたことへの慰謝料

労災だけを理由にして、会社がとつぜん従業員を辞めさせることはできません。不当解雇や退職勧奨にあたる場合には、慰謝料の請求が認められる場合があります。

不当解雇

不当解雇を受けた場合も慰謝料を請求できる可能性があります。不当解雇とは労働基準法や就業規則の規定を守らず、会社の一方的な都合で解雇を言い渡すケースが多いです。

具体的には、解雇の手続に不備があったり、就業規則で定められていない理由によって解雇を行ったりする状況が考えられます。不当解雇が疑われる場合、通常は解雇無効の主張が行われます。

注意すべきは、解雇の無効が認められたからといって、慰謝料を請求できるとは限らない点です。不当解雇の慰謝料は、パワハラやいじめなど、解雇が悪質・かつ違法性も高い場合に限って認められます。

退職勧奨

会社が従業員に退職を促す行為を退職勧奨と呼びます。退職勧奨は社会通念的に限度を超えた手段・方法、もしくは半強制的、執拗な様態で行われたものは違法と判断される可能性が高いです。

退職勧奨に応じるかどうかは従業員の判断に委ねられるので、従業員の意思を妨げるような悪質な退職勧奨は法に反します。従業員は会社から退職勧奨を迫られても、応じる義務はまったくないのです。

なお、退職後であってもさかのぼって労災の申請や慰謝料の請求が可能です。ただし請求する権利には期限があるので、早めに対応しましょう。

会社への慰謝料請求には証拠と因果関係が重要

会社に労災の慰謝料を請求するには、証拠を集めること、因果関係を示すことが極めて重要です。ここからはパワハラに対する慰謝料を会社に請求する場合を例にして、慰謝料請求の方法を解説します。

会社に慰謝料を請求する方法

会社に慰謝料を請求できるケースのうち、パワハラで慰謝料を請求するための方法を紹介します。パワハラの慰謝料を勝ち取るには、証拠の存在が何よりも重要です。

普段の仕事でパワハラだと思われる言動を受けたら、逐一記録するように努めましょう。パワハラで慰謝料の請求に必要な具体的な手続は次の通りです。

ステップ(1)証拠を集める

何かと隠匿されやすいパワハラの事実を裁判で証明するには、客観的な証拠を集められるかどうかがポイントです。

具体的には音声やメール、病院の診断書、同僚の証言などが考えられます。パワハラを受けていると精神的にとても辛いですが、適切に慰謝料を請求するためにも今のうちから証拠収集に努めましょう。

パワハラで損害賠償が認められるには、十分な証拠の存在が必須だといっても過言ではありません。

ステップ(2)社内で解決のための行動を取る

裁判の勝率を高めるには、自分でやるべきことはすべてやった状況を作ることが大切です。

たとえば、上司に直談判してパワハラを止めてほしいと主張したり、会社の相談窓口を利用したり、現状を改善するための行動を取ったかという部分が大切です。本人に伝える、もしくは会社に相談したことで状況が改善し、また仲良く一緒に働けるようになれば、訴訟を提起する必要もなくなるかもしれません。

もし、上司が激高し、行為がエスカレートするのであれば、それもパワハラの証拠になります。1人で立ち向かうのが怖ければ、仲がよい同僚の助けを借りて、複数で勝負を挑むのがいいでしょう。

ステップ(3)弁護士に相談する

自分で状況の改善に努めても成果があがらないのであれば、いよいよ示談交渉や訴訟を検討しましょう。

訴訟で注意すべきは、金銭的に満足な報いを受けられる可能性は高いとはいえない点です。パワハラ訴訟では慰謝料が認められたとしても、100万円程度のケースが多いです。

訴訟には手数料や弁護士費用も生じるので、トータルで見れば、損してしまう可能性もあることを認識しておかねばなりません。

会社に慰謝料を請求するための最適な手段が示談交渉なのか訴訟なのか、具体的な進め方は弁護士に相談しましょう。

コラム|パワーハラスメントの定義

厚生労働省は、パワーハラスメントの定義として次の3つの要件を掲げています。

  1. 優越的な関係に基づき行われている
  2. 業務の適正な範囲を超えている
  3. 身体的・精神的に苦痛を与える、もしくは職場環境を害する行為である

上記の3要件をすべて満たしていれば、パワハラと判断されます。

優越的な関係とは実質的な間柄で考えるので、上司から部下に行われる行為だけでなく、状況によっては部下から上司への言動がパワハラに該当する場合もあります。

業務の適正な範囲を超えていると考えられる代表的なケースは、個人的に嫌いだからきつく当たる場面です。部下に慕われておらず腹立たしいからという理由で行われる言動は、個人的なものに過ぎず、業務の適正な範囲を超えています。感情論で無視したり、暴言を吐いたりすることで部下が精神的に強いストレスを受けた場合、パワハラの可能性が高いでしょう。

会社に請求する慰謝料は過失しだいで減る

労災保険から支払われる給付は、過失の影響を受けません。
つまり、労働者に一定の落ち度があって労災が発生した場合でも、労災保険の給付額が減ることはないのです。

一方で、会社に対して労災の慰謝料を請求した場合は過失の影響を受けます。
労働者側に一定の落ち度があった場合には、そのぶんだけ慰謝料が減額される仕組みです。

ある事故に対して、当事者同士の責任を割合で示したものを過失割合といいます。
この過失割合を話し合う上でも、先述した証拠や因果関係の立証が重要です。

裁判例から会社に対する慰謝料請求の実際を知る

ここからは会社への慰謝料請求が裁判でどれくらい認められているのか、事例と共に紹介します。

後遺障害・解雇の相当性を問う裁判例

プレス工場で勤務していた男性は、両手の親指と人差し指をいずれも切断するという労災事故にあいました。会社側は事故後の就労がないことから、男性を解雇したのです。

男性は会社側が安全管理を怠ったことや、解雇は相当性を欠くものとして損害賠償請求を起こしました。裁判では会社と男性の双方に過失があったものと認定したのです。

そして、解雇については社会通念上相当なものと認めました。この背景には、会社側が社内での他の仕事への就労を勧めたことに男性が復職の態度を示さなかったこと、会社側はいつ復職しても対応できるように社会保険料などの支払いをしてタイムカードを作成していたことなどをあげました。

裁判所は会社に対して、入通院慰謝料として244万円、後遺障害慰謝料として1,180万円などの支払いを命じました。(東京地方裁判所平成22年5月25日)

パワハラ・精神的苦痛による裁判例

担当案件の処理状況が良くない部下に対し、「やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います。これ以上会社に迷惑をかけないでください」と怒りのメールを送付した事案です。

この内容はまるで会社にとって不必要な存在だとでもいいかねない、行き過ぎた退職勧奨だと考えられます。また、部下の奮起を促す意味があったとしても、言葉が強すぎて許容範囲を越え、著しく正当性を逸脱しているといえるでしょう。

裁判所は上司の不法行為責任を認め、請求額100万円に対して5万円を認容しています。(東京高判平成17年4月20日)

パワハラ・人間関係の切り離しによる裁判例

配置転換の命令を部下が拒絶したために、上司から仕事を与えない嫌がらせを受けた事案です。

この上司は自分だけが仕事を与えないのではなく、他の従業員に対しても「あいつには仕事を頼むな」と告げ、仕事や人間関係からの切り離しを主導しています。最終的にはこの部下の電話を取り外し、他の従業員との間にキャビネットを置き、物理的にも隔離したそうです。

裁判所は、配置転換に応じないことに対する説得の範囲を超えた、社会通念上許容できない行為として60万円の慰謝料支払いを命じています。(神戸地判平成6年11月4日)

パワハラ・個の侵害に関する裁判事例

政治的な主張が異なることだけを理由に、職場の内外問わずに部下を監視したり、接触しないよう他の従業員に働きかけたりといった行為があった事案です。職場で人間関係を形成する自由を阻害し、かつプライバシーの侵害にも該当すると判断され、慰謝料80万円の支払いが命じられました。(最三小半平成7年9月5日)

会社に慰謝料を請求したいとお考えの方へ

アトム法律事務所では、労災保険から支払われない慰謝料について、会社に損害賠償請求をしたいと考えている方に向けた無料の法律相談を実施しています。

  • 労災認定を受けた精神疾患について、会社に慰謝料を支払ってほしい
  • 労災事故について会社にも落ち度があったと感じている

例えばこういったお悩みやお困りごとについて、弁護士によるアドバイスが役立つ可能性があります。
現時点では弁護士に依頼するとは決めていないという方でも問題ありません。
法律相談を通して弁護士依頼を検討していただければ十分です。

法律相談の利用については、まず予約からお願いしています。
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岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」「ネット削除依頼」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点