兄弟から2000万円相当の遺産を相続するときに知っておきたいこと

更新日：2024/03/27

ケース別の相続税

故人に配偶者や子がなく、親も他界している場合は兄弟で相続します。2000万円相当の遺産があるとき、相続税がいくらかかるのか気になる方もいるでしょう。結論として、2000万円相当の相続で相続税はかかりません。なぜなら、相続の際に最低でも3600万円以上が基礎控除として差し引かれるためです。

この記事では、2000万円相当の遺産を兄弟同士で相続するときの基礎知識について、わかりやすく解説します。

『兄弟による2000万円相当の遺産相続』に関する基本事項
『兄弟による2000万円相当の遺産相続』に関するよくある質問
他にもおさえておきたい相続の基本

『兄弟による2000万円相当の遺産相続』に関する基本事項

法定相続分による相続割合【兄弟で相続する場合】

相続人の間で遺産分割協議を行う際に、法律上の分け方の目安となるのが法定相続分です。兄弟で相続する場合は、兄弟の人数で均等に分割します。

【相続割合】

兄弟1人：全額
兄弟2人：1人あたり1/2
兄弟3人：1人あたり1/3

兄が亡くなって2000万円の遺産が発生し、2人の兄弟で相続する場合は1000万円ずつで分けます。

ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することも可能です。

2000万円相当の遺産相続で相続税はかからない

相続税は遺産のすべてに対して課税されるわけではなく、課税対象となる遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に申告の義務が発生します。

基礎控除の最低額は3600万円のため、1000万円相当の遺産相続で相続税の申告は不要です。

【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額＝3000万円＋（600万円×法定相続人の数）

【相続人数別の基礎控除額】

法定相続人	基礎控除額
1人	3600万円
2人	4200万円
3人	4800万円

法定相続人が兄弟1人の場合は3600万円、兄弟2人の場合は4200万円が基礎控除として遺産総額から差し引かれます。遺産の総額が基礎控除額を下回る場合は相続税は発生せず、申告の必要もありません。

・相続税はいくらから生じる？｜基礎控除額も解説

・相続税は基礎控除以下なら無税！計算方法やその他の控除も解説

相続税がかかる財産

相続税とは、被相続人が亡くなり、相続や遺贈によって取得した財産にかかる税金です。相続税の課税対象となる財産は、大きく3つに分類されます。

本来の相続財産

本来の相続財産とは、被相続人が生前に所有していた財産を指します。たとえば、現金や預貯金、不動産、有価証券、自動車、貴金属、美術品、著作権などが該当します。

みなし相続財産

みなし相続財産とは、死亡保険金や死亡退職金などの、被相続人の死亡をきっかけに取得した財産を指します。みなし相続財産には非課税枠（500万円×法定相続人の数）があり、非課税金額を超えた分が相続税の課税対象となります。

生前贈与された財産

生前贈与された財産とは、被相続人が亡くなるまでの3～7年以内（※）に相続人に対して贈与された財産と相続時精算課税制度により贈与した財産を指します。

※現行は3年以内の贈与が相続税の対象。2027年1月1日以降の相続より順次延長され、2033年1月1以降の相続では亡くなる前7年以内の贈与が相続税の対象となる。

相続税がかからない財産

相続税の課税対象に含まれない財産には、以下のものなどがあります。

墓地や仏壇仏具、祭祀用品などの祭祀財産
公益事業用の財産
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の受給権
特定の公益法人などに寄附した相続財産

相続税の計算方法

相続税は、以下の手順で計算します。

1.取得財産の課税価格を算出する

取得財産の課税価格は、預貯金や不動産などのプラスの財産のほか、債務や葬式費用といったマイナスの財産を含めて算出します。計算式は以下のとおりです。

①不動産や預貯金などの財産＋②みなし相続財産－③みなし相続財産の非課税金額－④債務や葬儀費用など＋⑤相続時精算課税の適用を受けた贈与財産＋⑥被相続人が亡くなるまでの7年間に贈与された財産

①不動産や預貯金などの財産：相続や遺贈により取得した財産
②みなし相続財産：死亡保険金や死亡退職金など被相続人が亡くなったことがきっかけで受け取った財産
③みなし相続財産の非課税金額：みなし相続財産に適用される非課税分の金額（死亡保険金・死亡退職金それぞれにつき500万円×法定相続人の数）
④債務や葬儀費用など：借金、未払いの医療費や税金、葬儀費用などのマイナスの財産
⑤相続時精算課税の適用を受けた贈与財産：適用を受けた贈与財産は、取得時期を問わず全額を相続財産として加算
⑥被相続人が亡くなるまでの数年間に贈与された財産：2024年1月以降の贈与分からは、生前贈与の加算期間が3年から順次7年に延長される。ただし、延長された4年間で贈与により取得した場合は、総額100万円までは加算の対象外

2.課税遺産総額を算出する

取得財産の課税価格を合計したものから基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出します。

3.課税遺産総額を法定相続分で分割する

各相続人が法定相続分で財産を取得したと仮定して、課税遺産総額を配分します。

4.仮で相続人ごとの相続税額を算出する

法定相続分で配分した相続人ごとの取得金額に応じて税率をかけ、控除額を差し引きます。表のように、税率と控除額は取得金額によって決められています。

【相続税率の速算表】

法定相続分に応じた取得金額	税率	控除額
1000万円以下	10％	ー
1000万円超～ 3000万円以下	15％	50万円
3000万円超～ 5000万円以下	20％	200万円
5000万円超～ 1億円以下	30％	700万円
1億円超～2億円以下	40％	1700万円
2億円超～3億円以下	45％	2700万円
3億円超～6億円以下	50％	4200万円
6億円超	55％	7200万円

5.相続税の総額を算出する

各相続人の相続税額を合計し、相続税の総額を算出します。

6.実際の取得財産に応じて相続人ごとの按分割合を算出する

相続税の総額を実際の相続割合で按分し、各相続人が負担する相続税額を算出します。

7.各税額控除を適用して納付税額を確定する

配偶者控除などのように、相続人や相続財産に対して適用できる控除がある場合は適用し、実際の納付税額を確定します。

相続税の計算をする際には、計算シートも活用してみてください。

相続税計算シート（配偶者のみor子どものみor父母のみor兄弟のみ）

・相続税の「按分割合」とは？端数調整で賢く節税する方法も解説

・【計算例つき】自分で相続税を計算する方法｜自分で計算できるケースもわかる

早見表で相続税額をチェック【兄弟が相続人の場合】

被相続人の兄弟が相続人の場合に発生する相続税の概算額を、遺産の金額別にまとめました。こちらも参考にしてみてください。

【相続税額の早見表】

遺産額	兄弟1人	兄弟2人	兄弟3人
1000万円	0円	0円	0円
2000万円	0円	0円	0円
3000万円	0円	0円	0円
4000万円	48万円	0円	0円
5000万円	192万円	96万円（各48万円）	24万円（各8万円）
6000万円	372万円	216万円（各108万円）	144万円（各48万円）
7000万円	576万円	384万円（各192万円）	264万円（各88万円）
8000万円	816万円	564万円（各282万円）	396万円（各132万円）
9000万円	1104万円	744万円（各372万円）	576万円（各192万円）
1億円	1464万円	924万円（各462万円）	756万円（各252万円）
2億円	5832万円	4008万円（各2004万円）	2952万円（各984万円）
3億円	1億1016万円	8304万円（各4152万円）	6552万円（各2184万円）
4億円	1億6800万円	1億3104万円（各6552万円）	1億776万円（各3592万円）
5億円	2億2800万円	1億8252万円（各9126万円）	1億5576万円（各5192万円）
6億円	2億8800万円	2億3652万円（各1億1826万円）	2億376万円（各6792万円）
7億円	3億5184万円	2億9400万円（各1億4700万円）	2億5488万円（各8496万円）
8億円	4億1784万円	3億5400万円（各1億7700万円）	3億888万円（各1億296万円）
9億円	4億8384万円	4億1400万円（各2億700万円）	3億6288万円（各1億2096万円）
10億円	5億4984万円	4億7400万円（各2億3700万円）	4億2000万円（各1億4000万円）