遺産相続の割合の決め方は?相続割合のシミュレーションや相続税計算への影響も解説

遺産相続の割合は、遺言がある場合は原則としてその内容に従います。
遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意できれば法定相続分とは異なる割合で分けることも可能です。話し合いで決まらない場合などには、民法が定める法定相続分が分割の基準となります。
この記事では、家族構成別に相続割合を計算するシミュレーションを示しながら、相続割合の決め方や、決めた割合が相続税額にどう影響するかまで解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
遺産相続の割合の決め方は3つ
相続割合の決め方には、以下の3つがあります。
相続割合の決め方
- 遺言
被相続人が生前に有効な遺言書を残している場合は、遺言内容に沿った相続割合が優先される。 - 遺産分割協議
相続人全員の話し合いで相続割合を決める。 - 法定相続分
民法で定められた相続割合。遺言がなく、遺産分割協議もしない場合に採用される。
有効な遺言書がある場合は遺言の内容が優先されますが、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議で相続割合を決めたり、法定相続分どおりに分割したりすることも可能です。
なお、遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があり、法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言や、秘密証書遺言では検認という手続きが必要になります。
遺産分割協議では、相続人全員で話し合って相続割合を決めます。ただし、一人でも反対すると成立しない点に注意が必要です。
また、実務上、話し合って決めた内容を記した「遺産分割協議書」の作成が必要になります。
法定相続分は民法で決められた相続割合です。具体的な分割については、次から解説していきます。
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民法に従った「法定相続分」の割合とは?
相続人の組み合わせ別・法定相続割合一覧
法定相続分を確認するにあたり、まずは誰が法定相続人になるかを確認しなければなりません。法定相続人は以下のように決定されます。

法定相続人を判断するときのポイントは、以下の通りです。
- 配偶者は常に相続人になりますが、離婚した元配偶者は相続人になりません。
- 養子や離婚した元配偶者との子は、実子と同じように法定相続人になります。
- 子が相続開始前に死亡した場合や、欠格・廃除によって相続権を失った場合は、代襲相続で孫が代わりに相続人になります。孫は、その子が受け取るはずだった相続分を引き継ぎます。
- 相続第1位、第2位の人がおらず、第3位である兄弟姉妹も死亡または欠格により相続人になれない場合は、代襲相続でその子(甥・姪)が相続人になります。
代襲相続については、関連記事『代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは?どこまで代襲相続できる?相続順位や割合を解説』が参考になります。
上記を踏まえて法定相続人を確認したら、法定相続分がわかります。法定相続分は以下の通りです。

法定相続分のポイントは、以下の通りです。
- 子や直系尊属、兄弟姉妹が相続人になる場合、複数人いれば法定相続分を均等に分けます。
- 直系尊属は、被相続人に世代が近い人が優先します。父母が健在であれば祖父母は相続人にならず、父母がいない場合に祖父母が相続人になります。
- 兄弟姉妹の中に全血兄弟と半血兄弟がいる場合、半血兄弟の取り分は全血兄弟の1/2となります。
法定相続分に沿った遺産分割については、以下の関連記事でも詳しく解説しています。
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【注意】法定相続人の確認は確実に
法定相続人になる人を見落としたまま法定相続分で遺産分割し、申告・納税してしまうと、あとからやり直しが必要になったり、相続人の間でトラブルが発生したりする可能性があります。
よって、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、法定相続人になる人を漏れなく確認しておきましょう。
法定相続人について詳しくは、関連記事『法定相続人とは?範囲や順位、遺産分割の割合から確定方法までわかりやすく解説』が参考になります。
法定相続分どおりの相続割合のシミュレーション
ここでは、法定相続人の組み合わせ別に、遺産総額3,000万円を例として相続割合の計算方法をシミュレーションしていきます。相続割合は法定相続分に沿うこととします。
ケース(1)配偶者+子2人
相続割合は、配偶者1/2、子それぞれ1/4(1/2を等分)です。
| 相続人 | 割合 | 取得額(遺産総額3,000万円) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2 | 1,500万円 |
| 子A | 1/4 | 750万円 |
| 子B | 1/4 | 750万円 |
ケース(2)配偶者+親1人
相続割合は配偶者2/3、親1/3です。
| 相続人 | 割合 | 取得額(遺産総額3,000万円) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 2/3 | 2,000万円 |
| 親 | 1/3 | 1,000万円 |
ケース(3)配偶者+兄弟姉妹2人
相続割合は配偶者3/4、兄弟姉妹それぞれ1/8(1/4を等分)です。
| 相続人 | 割合 | 取得額(遺産総額3,000万円) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 3/4 | 2,250万円 |
| 兄弟A | 1/8 | 375万円 |
| 兄弟B | 1/8 | 375万円 |
ケース(4)子3人のみ(配偶者なし)
相続割合は子それぞれ1/3です。
| 相続人 | 割合 | 取得額(遺産総額3,000万円) |
|---|---|---|
| 子A | 1/3 | 1,000万円 |
| 子B | 1/3 | 1,000万円 |
| 子C | 1/3 | 1,000万円 |
ケース(5)代襲相続(子が先に亡くなっていた場合)
代襲相続によって孫が相続人になる場合、孫は子の立場を引き継ぎ、その子が受け取るはずだった相続分をそのまま取得します。同じ子を代襲する孫が2人以上いる場合は、その相続分を孫の人数で等分します。
よって、配偶者、子A、孫(子Bの代襲相続)が法定相続人となる場合、相続割合は、配偶者1/2、子A1/4、孫1/4(子Aと孫で1/2を等分)です。
| 相続人 | 割合 | 取得額(遺産総額3,000万円) |
|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2 | 1,500万円 |
| 子A | 1/4 | 750万円 |
| 孫(子Bの代わり) | 1/4 | 750万円 |
法定相続分以外の相続割合になるときの注意点
遺留分侵害によるトラブルのリスクがある
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・親など)に保証された、最低限の取り分のことです。
遺留分は、以下の通りです。
| 権利者 | 遺留分の割合(遺産全体に対して) |
|---|---|
| 配偶者のみ | 1/2 |
| 子のみ | 1/2 |
| 配偶者と子 | 配偶者1/4 子全員で1/4 |
| 配偶者と直系尊属 | 配偶者1/3 直系尊属全員で1/6 |
| 直系尊属のみ | 1/3 |
遺留分を侵害された場合、相続人は侵害した相手に対して遺留分侵害額請求(金銭で取り戻す請求)をすることができます。
例えば配偶者と子が相続人であるにもかかわらず、遺言で子にすべての財産を相続させるとされている場合、配偶者は遺留分である1/4にあたる金銭を求める請求ができるのです。
ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません。遺言で兄弟姉妹に何も残さないとされていても、遺留分を理由に金銭を請求することはできません。
遺留分について詳しくは、関連記事『相続税の遺留分とは?もらった場合の相続税や侵害額請求の方法を解説』をご覧ください。
相続税の軽減を目的にした分割も可能
相続税を抑えることを考慮して相続割合を決めても、節税目的であることだけを理由に遺産分割協議の成立が否定されるわけではありません。
実際に、遺産分割協議の内容が相続税の軽減を目的としていても、相続人やその代理人の意思に基づくものである以上、協議の成立を否定する理由はないと判断した裁判例があります(東京地判令2・12・25)。
ただし、この判決は、節税目的であれば偏った遺産分割でも当然に有効になると判断したものではありません。遺留分に満たない財産しか受け取らなかった相続人がいる場合でも、それだけで協議が無効になるわけではなく、協議の有効性は具体的な事情を踏まえて判断されます。
相続割合を決める際は、節税効果だけでなく、各相続人の意向も踏まえて合意を形成しましょう。一部の相続人が納得しないまま分割を進めると、後日の紛争につながる可能性があります。
兄弟姉妹・孫・第三者などは相続税の2割加算の対象
法定相続人ではない人でも、遺言で財産を譲るとされていれば、財産を受け取ることができます。これを「遺贈」といい、遺言で財産を受け取る人を「受遺者」といいます。
原則として、配偶者および一親等の血族以外の人が財産を取得した場合は相続税額の2割加算の対象になります。
なお、孫については、「代襲相続人ではなく、遺言で財産を受け取る場合」に加え、「代襲相続人ではなく、孫養子として法定相続人になり財産を受け取る場合」も2割加算の対象となります。
代襲相続人として法定相続人になり、財産を受け取る孫は2割加算の対象外です。
2割加算について詳しくは、関連記事『相続税の2割加算とは?孫・兄弟・養子など対象者一覧や計算方法をわかりやすく解説』をご覧ください。
相続割合は相続税計算にどう影響する?
相続税計算の基本の流れ
相続割合が相続税計算にどう影響するか知るために、まずは相続税の計算の流れを確認しましょう。
相続税計算の流れ
- 相続人と相続財産を確認する
- 課税遺産総額(課税価格の合計額から基礎控除を引いた金額)を計算する
- 法定相続分で分けた場合の金額を算出
- 各人の仮の相続税額を計算
- 相続税額の合計を計算
- 各人の課税価格が課税価格の合計額に占める割合に応じて税額を割り振る
相続税計算のポイントは、実際の相続割合がどうであっても、いったん「法定相続分どおりに分割するもの」として課税遺産総額を分け、それぞれの金額に応じた税率をかけて税額を計算することです。
その後、計算した相続税額を合計し、各人の課税価格が課税価格の合計額に占める割合に応じて、相続税額を割り振ります。
課税価格とは、各人が取得した財産に一定の生前贈与などを加え、その人が負担する債務や葬式費用を差し引いた金額のことです。
【注意】遺産総額が基礎控除以下なら相続税はかからない
相続税には、基礎控除が設けられています。
ここでいう遺産総額とは、相続財産に生命保険金などのみなし相続財産や一定の生前贈与を加え、非課税財産・債務・葬式費用を差し引いた金額(課税価格の合計額)です。この金額が基礎控除以下であれば、相続税はかからず相続税申告も不要です。
相続税の基礎控除
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
- 相続放棄した人も、法定相続人の数に含められます
- 養子がいる場合、実子がいれば1人まで、いなければ2人まで法定相続人の数に含められます(特別養子など、実子として扱われる養子は制限を受けません)
相続税の総額をどう分けるかに影響する
相続税の総額は、実際の遺産分割割合ではなく、法定相続人が法定相続分どおりに取得したものとして計算します。その相続税の総額を、実際に各人が取得した財産の課税価格が課税価格の合計額に占める割合に応じて按分します。
そのため、実際の相続割合が変わっても、相続税の総額そのものは変わりません。一方、各人に按分される税額は、実際に取得した財産の割合によって変わります。
例えば相続税の総額が6,000万円、相続人が配偶者、子A、子Bの3人の場合、相続割合によって相続税の振り分けは以下のように変わります。
例(1)法定相続分(配偶者1/2、子A1/4、子B1/4)で分ける場合
| 相続人 | 相続税額 |
|---|---|
| 配偶者 | 3,000万円 |
| 子A | 1,500万円 |
| 子B | 1,500万円 |
例(2)遺言によって配偶者2/3、子A1/6、子B1/6で分ける場合
| 相続人 | 相続税額 |
|---|---|
| 配偶者 | 4,000万円 |
| 子A | 1,000万円 |
| 子B | 1,000万円 |
上記の例は債務や葬式費用、生前贈与加算などがなく、取得した財産の割合がそのまま課税価格の割合となる前提で計算しています。実際には特例を適用して、各相続人が負担する税額を下げられる場合があります。
よって、上記の相続税額がただちに各相続人の負担額となるわけではありません。
相続税の詳しい計算方法や節税できる控除制度については、以下の専門記事をご覧ください。
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特例を使った相続税対策に影響する
相続税の総額を各相続人に按分した後、特例を使って相続税額を抑えられる場合があります。
例えば以下のような特例が挙げられます。
- 配偶者の税額軽減
配偶者の取得財産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当の金額のいずれか多いほうまでは非課税になる特例
※相続税がゼロでも申告書の提出は必須。遺産分割の完了も原則要件だが、期限後の分割でも適用できる場合がある。 - 未成年者控除
未成年者が負担する相続税額から、「(18歳 − 相続開始時の年齢)×10万円」が控除される特例
※年齢は1年未満切り捨てで計算し、18歳までの年数に1年未満の端数がある場合は切り上げる - 障害者控除
障害者が負担する相続税額から、「(85歳 − 相続開始時の年齢)×10万円または20万円」が控除される特例
※年齢は1年未満切り捨てで計算し、85歳までの年数に1年未満の端数がある場合は切り上げる
※一般障害者は10万円、特別障害者は20万円を対象年数にかける
たとえば節税効果の大きい「配偶者の税額軽減」を使える配偶者が多くの財産を相続すれば、その分非課税となる財産が多くなります。
このように、どのような相続割合で遺産を分割するかにより、特例による節税効果が変わり、最終的な相続税額に影響が出るのです。
配偶者への集中は二次相続まで見据える
配偶者に相続財産を集中させすぎると、配偶者が亡くなった際の二次相続で、その財産が再び相続税の対象になります。
二次相続では、一次相続より相続税の負担が重くなることがあります。そのため、目先の相続税だけでなく、二次相続まで見据えて相続割合を検討する必要があります。
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相続割合についてよくある質問
Q1. 子が複数人いる場合、相続財産を不均等に分けることはできますか?
できます。相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けられます(民法907条)。
1人でも反対すると遺産分割協議は成立しないため、必要に応じて家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停でも合意できなければ、審判で分割方法が決められます。
Q2. 養子は実子と同じ割合で相続できますか?
はい、養子の法定相続分は実子と同じです。
ただし、相続税の基礎控除などを計算するときに法定相続人の数へ算入できる養子は、原則として実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までです(相続税法15条)。特別養子など、実子として扱われる養子は制限を受けません。
Q3. 非嫡出子(婚外子)の相続割合は?
婚外子の法定相続分は、婚姻関係にある夫婦の子と同じです。
以前は、婚外子の法定相続分は婚姻関係にある夫婦の子の2分の1とされていましたが、2013年の民法改正によって同等になりました。
なお、2013年9月4日以前に遺産分割協議や審判などで法律関係が確定していた場合には、この変更によってその結果が覆ることはありません。
Q4. 相続割合が決まらないまま申告期限を迎えたらどうなりますか?
遺産が未分割でも、相続税の申告期限は延長されません。未分割の財産は、法定相続分などに従って取得したものとして期限内に申告します(相続税法55条)。
未分割の財産については、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を当初の申告では原則として適用できません。
ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付し、その後一定の期限内に分割するなどの要件を満たせば、特例を適用できる場合があります。その結果、納め過ぎとなった相続税がある場合は、原則として分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求を行います。
まとめ|相続割合の確認は早めに
相続割合は、遺言・遺産分割協議・法定相続分のいずれかによって決まります。
有効な遺言がある場合はその内容が優先されますが、相続人全員が合意すれば遺産分割協議によって自由に割合を決めることも可能です。
一方で、法定相続人の確認を誤ると、遺産分割や相続税申告のやり直しが必要になるおそれがあります。また、相続割合は相続税の負担割合や、配偶者の税額軽減などの特例の活用にも影響します。
さらに、配偶者に財産を集中させる場合は二次相続まで見据えた検討が重要です。
相続が発生したら、まずは戸籍を収集して法定相続人を正確に確認し、自分たちに適した相続割合を早めに検討しましょう。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士
