固定資産の相続税はいくら?固定資産税評価額からの計算方法を解説

固定資産である不動産を相続した場合、固定資産税評価額から相続税評価額を計算するケースがあります。
固定資産税評価額は固定資産税や都市計画税などの計算だけでなく、相続税評価額の計算でも利用する場合があるのです。
また、不動産を相続する場合、相続開始後は相続人が固定資産税の納税義務を承継します。
本記事では、不動産の固定資産税評価額と相続税評価額の違いや、固定資産税評価額から相続税評価額を計算するケースとその計算方法などを解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
固定資産税評価額と相続税評価額の違い
固定資産税評価額と相続税評価額は、どちらも不動産の価値を示す指標ですが、目的や算出方法が大きく異なります。
そのため、同じ土地・建物であっても評価額が一致するとは限りません。
まずは、それぞれの違いを整理しておきましょう。
関連記事
相続税評価額とは?土地や建物ごとの計算方法・調べ方と固定資産税評価額との違い
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、市区町村(東京23区は都)が算定・登録する不動産の評価額であり、固定資産税や都市計画税の計算に用いられます。
この評価額は「固定資産課税台帳」に登録されており、不動産取得税などの地方税の算定にも利用されます。
固定資産税評価額を確認する際は、毎年4~6月ごろに送られてくる「固定資産税・都市計画税の納税通知書」の「評価額」の欄や、市区町村が発行する「固定資産評価証明書」を見てみましょう。

なお、通知書には「課税標準額」もありますが、これは固定資産税評価額に軽減措置などを適用したもので、固定資産税評価額とは別物です。
固定資産税評価額はどのように決まるのか
固定資産税評価額は、総務省が定める「固定資産評価基準」に基づき、市区町村が個別に算定します。
土地の固定資産税評価額は、総務省の固定資産評価基準に基づいて市区町村が評価するのです。
一般的には、公示地価等のおおむね7割程度を目安とした水準となるよう評価されています。
評価は3年ごとに行われる「評価替え」により見直され、直近では令和6年度に実施されています。
建物(家屋)については、構造・築年数・床面積などをもとに算定され、こちらも同様に3年ごとに評価替えが行われているのです。
相続税評価額とは
相続税評価額とは、相続税や贈与税を計算するために用いる財産の価額であり、相続税法に基づき、実務上は国税庁の「財産評価基本通達」に従って評価されます。
固定資産税評価額が地方税の計算に用いられるのに対し、相続税評価額は国税である相続税・贈与税の計算に用いられます。
つまり、同じ不動産であっても、同じ評価額ですべての税金が計算できるわけではないのです。
ただし、建物の相続税評価額は固定資産税評価額をもとに計算を行います。
土地については路線価方式・倍率方式を使うため、固定資産税評価額とは異なる金額になることが多いでしょう。
関連記事
固定資産税評価額は相続税を計算する際に利用することがある
固定資産税評価額は相続税の計算をする際に利用する資料の一つです。
固定資産税評価額から相続税評価額を算出することで、土地や建物の相続税の金額を明らかにできるケースがあります。
具体的には、倍率方式という方法で土地の相続税評価額を計算する場合、「固定資産税評価額×評価倍率」で計算するため、固定資産税評価額の変動が相続税評価額に反映されるのです。
固定資産税評価額が下がれば相続税は安くなりますが、固定資産税評価額は市区町村が算定するものであり、納税者側の意向で下げられるものでありません。
相続税を抑えたい場合は、後述する小規模宅地等の特例など、相続税独自の制度を活用する必要があります。
土地・建物の相続税評価額の計算方法
ここからは、固定資産税評価額を手がかりにして、実際に相続税評価額をどのように求めるのかを具体的に見ていきます。
(1)土地の相続税評価額|固定資産税評価額から計算するケースあり
土地の相続税評価額は、原則として「路線価方式」と「倍率方式」の2つの方法のいずれかで計算します。
- 路線価方式
国税庁が毎年公表する「路線価」をもとに計算する方法になります。
主に市街地の土地に適用され、計算式は「路線価 × 各種補正率 × 土地の面積(地積)」です。 - 倍率方式
固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに定める「評価倍率」を掛けて計算する方法になります。
路線価が設定されていない地域(農村部や山間部など)で適用され、計算式は「固定資産税評価額 × 評価倍率」です。
つまり、路線価方式では、固定資産税評価額を計算式には使用せず、路線価などを用いて相続税評価額を算出します。
一方、倍率方式は固定資産税評価額から相続税評価額を計算を行うのです。
相続する不動産の評価方法が路線価方式なのか倍率方式なのか、また路線価や倍率はいくらなのかは、財産評価基準書を確認するとわかります。
路線価方式の場合(固定資産税評価額からは計算できない)
路線価方式が適用される土地(主に市街地)では、相続税評価額は「路線価×各種補正率×地積」で算出します。
この計算に固定資産税評価額は使用しないため、固定資産税評価額がわかっていても、そこから相続税評価額を求めることはできません。
相続税評価額を知るには、国税庁が公表する路線価を別途調べる必要があります。
倍率方式の場合(固定資産税評価額×評価倍率で計算できる)
路線価が定められていない地域(農村部・山間部など)では、倍率方式が適用され、「固定資産税評価額×評価倍率」で相続税評価額を計算できます。
評価倍率は地目・地域によって異なります。
地目によっては倍率方式ではなく、宅地比準方式など別の評価方法が適用される場合があるでしょう。
対象の土地の評価倍率・評価方式は財産評価基準書で必ず確認してください。
詳しくは以下の関連記事もご覧ください。
関連記事
(2)建物の相続税評価額|固定資産税評価額から相続税評価額を計算
建物の相続税評価額は、原則として「固定資産税評価額 × 1.0」で計算します。
ただし、一定の分譲マンションでは、区分所有補正率による補正が必要になる場合があります。
貸家なら評価額が低下する
一般的な建物については、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。
ただし、建物を他人に貸している場合は評価額が低下することとなるのです。
貸家は人に貸している建物を指すため、たとえ所有者であっても自宅ほど自由に出入りしたり使ったりできません。
このような制限があるため、貸家や貸家建付地の評価額は、自宅や自用地よりも低くなる仕組みになっています。
貸家の相続税評価額=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は原則30%、賃貸割合とは、その不動産のうち課税時期(相続開始時)に実際に賃貸されている部分の割合を表すものです。
たとえば全部を貸し付けていて賃貸割合が100%の場合は、固定資産税評価額×70%となります。
関連記事
固定資産税評価額から相続税額を計算
ここでは、固定資産税評価額をもとに相続税額を概算する手順を、具体的な数字を使って確認していきます。
あくまで概算であり、実際の申告額は特例の適用状況や財産の全体像によって変わる点にご注意ください。
以下の前提でシミュレーションを行います。
- 土地:固定資産税評価額1,500万円、評価倍率1.1(倍率方式が適用される地域)
- 建物:固定資産税評価額800万円(固定資産税評価額=相続税評価額)
- 預貯金:3,000万円
- 相続人:配偶者、子2人(法定相続人3人)
- 遺産分割は法定相続分どおりに行われたと仮定
路線価方式が適用される土地は固定資産税評価額から相続税評価額を計算できないため、以下は倍率方式の土地・建物を想定したシミュレーションです。
まず、土地・建物の相続税評価額を求めます。
- 土地:1,500万円×1.1=1,650万円
- 建物:800万円(そのまま)
これに預貯金3,000万円を加えた遺産総額は、1,650万円+800万円+3,000万円=5,450万円です。
次に基礎控除額を差し引きます。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数(3人)」=4,800万円です。
課税遺産総額は、5,450万円-4,800万円=650万円となります。
これを法定相続分(配偶者1/2、子1/4ずつ)で仮に分けると、配偶者325万円、子はそれぞれ162.5万円です。
相続税の税率(1,000万円以下は10%)を掛けると、配偶者32.5万円、子は各16.25万円となり、相続税の総額は65万円になります。
実際の納付額は、相続税の総額を各相続人が実際に取得した財産の割合に応じて配分し、その後、各種税額控除などを適用したうえで確定します。
たとえば配偶者の取得分に配偶者の税額軽減が適用されれば、配偶者の相続税額はゼロになる可能性もあります。
相続税額がゼロになる場合でも、これらの特例を適用するには原則として期限内に相続税の申告が必要です。
関連記事
土地の相続税はいくらまで無税?親の土地の計算方法と特例を解説
土地の相続税評価額を下げて節税する方法
小規模宅地等の特例の利用
土地の相続税評価額を下げる方法として、最も代表的なのが「小規模宅地等の特例」です。
この特例は、被相続人が居住や事業に使っていた土地について、一定の要件を満たす場合に評価額を大幅に減額できる制度です。
主な内容は次のとおりです。
- 自宅の敷地(特定居住用宅地等):最大330㎡まで80%減額
- 事業用の土地(特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等):最大400㎡まで80%減額
- 貸付事業用の土地:最大200㎡まで50%減額
たとえば、評価額が5,000万円の自宅の土地であっても、特例が適用されれば評価額を1,000万円まで下げられる可能性があります。
ただし、同居要件や保有継続要件など細かい適用条件があるため、事前に確認しておくことが重要です(納付額がゼロになる場合でも相続税の申告書を提出することが適用要件)。
また、相続税にはほかにも様々な特例などがあるため、うまく活用することで不動産を含めた相続財産にかかる税額を抑えられることがあります。
関連記事
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減とは、亡くなった方(被相続人)の配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか大きいほうの金額まで、相続税がかからなくなる制度です(相続税法19条の2)。
配偶者の税額軽減の具体的な要件は、以下のようなものとなります。
- 戸籍上の配偶者であること
- 相続税の申告書を提出すること
- 原則として相続税の申告期限までに遺産分割が確定していること
非常に大きな減税が可能な制度ですが、この制度を利用するために配偶者に土地を含めた多くの財産を相続させると、配偶者が亡くなった場合に相続人である子供への相続税の負担が大きくなってしまう恐れがあります。
このような二次相続における負担を考慮しつつ配偶者の税額軽減を利用すべきであるため、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
関連記事
配偶者の税額軽減とは?1億6,000万円まで相続税がかからない要件とデメリット
固定資産税や固定資産税評価額に関する疑問点
Q.相続した不動産の固定資産税は誰が払う?
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課税されます。
被相続人がその年の1月1日より後に亡くなった場合は、相続人が固定資産税の納税義務を承継します。実務上は代表者が納付し、後に相続人間で精算することが一般的です。
遺産分割が完了していない場合も、固定資産税の納税義務は法令に従って相続人が負うことになります。
なお、被相続人の死亡時点で未払いだった固定資産税は「債務」として相続財産から差し引ける(債務控除)ため、相続税の計算上、遺産総額を減らす要素になります。
Q.固定資産を相続放棄すれば固定資産税は負担しなくてよいか?
相続放棄をすれば、固定資産税につて負担する必要はなくなります。
ただし、相続放棄をする場合は相続財産すべてを放棄する必要があります。
また、一定の場合には相続財産の管理義務が残ることがあるのです。
相続できる財産の価値と、固定資産税の負担の程度を比較したうえで、相続放棄を行うべきかを決めるべきでしょう。
関連記事
相続放棄で相続税は払わなくていい?ほかの相続人への影響も解説
Q.固定資産税評価額がわからない場合はどうする?
固定資産税評価証明書や名寄帳の取得を行いましょう。
固定資産税評価証明書は、市区町村役場の窓口や郵送により請求することができます。
請求に必要な書類は、事前に市区町村役場に連絡したりホームページで確認しましょう。
地域によってはコンビニで交付請求することも可能です。
名寄帳(なよせちょう)は、その市区町村に納税義務者が1月1日時点で所有しているすべての不動産の一覧を記載した書類をいいます。
相続人本人や代理人は、市区町村の窓口で取得できます。代理人が取得する場合は委任状が必要となることがあります。
固定資産税評価証明書が見当たらない場合は、これらの方法で固定資産税評価額を知ることができます。
まとめ|相続税の計算に不安がある場合は専門家へ相談を
固定資産税評価額から相続税を概算する方法はご説明しましたが、実際の相続税額は以下のような要因によって大きく変わります。
- 土地の形状・接道状況・利用状況(自用・貸宅地・貸家建付地など)による補正
- 小規模宅地等の特例(一定の要件を満たす土地は評価額が最大80%減額)
- 配偶者の税額軽減などの各種控除
- 相続財産の全体像(不動産以外の財産・負債の状況)
補正が加わった場合の相続税の計算や、小規模宅地等の特例が利用できるかどうかの判断は困難となりやすいので、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
アトム相続税理士事務所では税理士に無料相談することが可能です。
相談予約は24時間いつでも受け付けているので、土地や建物を相続したが、相続税の計算に不安があるという方は、一度ご連絡ください。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
