建物(家屋)の相続税評価額は簡単に計算できる|建物の相続税対策も紹介

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建物の相続税評価額

自宅などの不動産を相続した場合は、「建物」と「建物が建っている土地」にわけて、それぞれ相続税評価額を計算します。

相続税評価額とは、相続した財産の「相続税法上の時価」です。

現金や預貯金であれば、相続した金額がそのまま相続税評価額になりますが、建物を相続した場合は、決められた計算式で相続税評価額を算出しなければなりません。

とはいえ計算式といっても複雑なものではないのでご安心ください!

この記事では、建物の相続税評価額の計算方法と、建物の相続税評価額を下げて相続税を節税する方法を解説します。

建物の相続税評価額の計算方法

家やアパート、マンションなどの建物を相続した場合、「建物」と「建物が建っている土地」の相続税評価額を別々に算出します。

この記事では「建物部分の相続税評価方法」を詳しく解説します。

土地の相続税評価額を調べたい方は、関連記事『土地を相続したら相続税はかかる?相続税の計算や土地の評価方法を解説』をお読みください。

(1)被相続人が利用していた建物の相続税評価額

被相続人(故人)が居住用や事業用として利用していた建物の相続税評価額は、次の計算式で算出します。

被相続人が利用していた建物の相続税評価額

固定資産税評価額×1.0

つまり、建物の固定資産税評価額(※)がそのまま相続税評価額になります。シンプルですね。

※固定資産税評価額とは

固定資産税評価額は、固定資産税をはじめとするいろいろな税金を課税する際に基準とされる評価額のことです。時価を上回ることがないように考慮され、建物については基本的に建築費の60%ほどで評価されています。

また、固定資産税評価額は、建物が古くなり築年数が経過するほど少しずつ低くなっていきます。

固定資産税評価額を確認するには、毎年4月に市町村役場から送付される「固定資産税課税明細書」を見るのが手っ取り早いです。

また、固定資産税課税明細書が手元にない場合には、不動産所在地の市区町村役場で取得できる、「固定資産評価証明書」にも記載されています。

固定資産税課税明細書の見方

固定資産税評価額は、固定資産税課税明細書の「価格(評価額)」という欄に書かれています。

固定資産税標準額という欄もありますが、ここの金額ではありません。近い金額が書かれていることもあるため、間違えないように注意してください。

【固定資産税課税明細書】

固定資産税課税明細書の見方

参考:国税庁『固定資産税評価額

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相続税評価額とは?固定資産税評価額との違いは?調べ方や減額例を解説

(2)有償で貸している一軒家の相続税評価額

次に、第三者に有償で貸している建物の相続税評価額です。アパートやマンションではなく一軒家を貸している場合です。相続税評価額は次の計算式で算出します。

有償で貸している一軒家の相続税評価額

固定資産税評価額×(1-借家権割合)

借家権割合は全国一律で30%と決められています。

原則、不動産は人に貸すことで相続税評価額が下がります。賃借人(借りた側)に借家権(建物を借りて使用する権利)がありますので、その借家権割合に応じて相続税評価額を減額することとされています。

すなわち、建物を第三者に有償で貸していた場合、被相続人が利用していた建物の相続税評価額と比べて30%減されるということです。

貸している建物の相続税評価額の計算例

固定資産税評価額が2,000万円の建物を第三者に貸していたとします。

借家権は30%なので、この建物の借家権の評価額は「2,000万円×0.3=600万円」です。

この借家権の評価額を建物の評価額から差し引けます。

「2,000万円-600万円=1,400万円」

第三者に貸していたこの建物の相続税評価額は1,400万円です。

貸家の相続税評価について詳しくは、関連記事『貸家の相続税評価方法|評価額が低くなる理由も解説』をお読みください。

(3)賃貸アパートやマンションの相続税評価額

被相続人が賃貸アパートやマンションを所有していた場合、その物件も相続の対象となり、相続税が課税されます。

賃貸アパートやマンションの建物部分の相続税評価額は、次の計算式で算出します。

賃貸アパートの相続税評価額

固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は、上記の通り全国一律30%です。

賃貸割合は、賃貸している部分の床面積の割合のことです。たとえば、同じ床面積の部屋が10室あるアパートで、7室貸し出していて、3室が空室の場合、賃貸割合は70%となります。

床面積が違う部屋が混在しているアパートでは、単純な部屋数の割合では計算できないので注意しましょう。

(4)新築の建物の相続税評価額

ここでは「固定資産税評価額が付される前」の、新築の建物の相続税評価額の計算方法を解説します。

新築の建物でも、固定資産税評価額が付されている場合には、上記で解説した評価方法を用いて相続税評価額を計算してください。

固定資産税評価額は新築後1〜3か月以内に、自治体の家屋調査によって決定されます。

建物が完成してから固定資産税評価額が付される間に被相続人が死亡した場合、以下の計算式で相続税評価額を算出します。

新築の建物の相続税評価額

(再建築価格-償却価格)×70%

もし近隣に「同種類で同規模かつ、固定資産税評価額が付されている新築の建物」があれば、その建物の固定資産税評価額をもとに算出します。

しかし、ここまで条件がそろった建物が近隣にあることは現実的に考えて非常にまれです。そのため、実務では上記の計算式で相続税評価額を算出することがほとんどです。

(5)建築中の建物の相続税評価額

次に、建設中の建物を相続した場合です。相続税評価額は次の計算式で算出します。

建築中の建物の相続税評価額

費用現価×70%

建築中の建物にはまだ固定資産税評価額が付されていません。そのため、建築中の建物を評価する場合には、費用現価を使用します。

費用原価とは、相続税の課税時期までに建物の建設に投下された費用の額を、課税時期の価格に引き直した額の合計額のことです。要するに死亡した日までの建築費、という認識で問題ありません。

(6)死亡前にリフォームした建物の相続税評価額

被相続人が死亡する前に建物をリフォームした場合、建物の固定資産税評価額が改訂されていないことがあります。

建物の固定資産税評価額は、3年に1度、評価額を適正な価格に見直す作業である「評価替え」が行われます。

そのためリフォーム後、評価替えの前に相続が発生した場合は、相続人自身でリフォームを加味した総勢評価額を算出する必要があります。

死亡前にリフォームした建物の相続税評価額

リフォーム前の建物の固定資産税評価額+(リフォーム費用-死亡日までの償却費)×70%

死亡前までの償却費は、「リフォーム費用×90%×リフォームから死亡日までの年数÷耐用年数」で算出します。

耐用年数については、国税庁『主な減価償却資産の耐用年数表』で確認できます。

建物の相続税評価額を下げて節税する方法

建物は原則として時価よりも低く評価されますので、建物を所有することは相続税対策として有効です。ここでは、建物の相続税評価額をより低く抑え、相続税を節税する方法を解説します。

建物を第三者に貸し出す

生前に建物を第三者に貸し出して相続税評価額を下げることで、かかる相続税を低くできます。

使用していない建物を保有している場合は、第三者に有償で賃貸することによって、相続税評価額から借家権割合(30%)相当額を減額できます。

ただし、第三者に有償で賃貸していたとしても、賃料が相場に比べて著しく低く設定されているような場合には、相続税評価額の減額が認められないことがあるため注意しましょう。

賃貸アパートの空室を減らす

保有している建物が賃貸アパートの場合には、空室を減らすことによって賃貸割合を高くして、建物の相続税評価額を減額できます。

なお、相続時点で空室であっても、「一時的な空室」と判断される場合は賃貸割合に含んで良いとされています。一時的な空室かどうかの判断基準は、以下の項目が目安になります。

一時的な空室の判断基準

  1. 各部屋が課税時期より前から継続して賃貸されていた
  2. 前の入居者の退去後、すぐに次の入居者を募集した
  3. 空室の期間、賃貸以外の目的で使われていなかった
  4. 空室期間が課税時期の前後で短かった(たとえば1か月程度)
  5. 課税時期後の賃貸が一時的なものではない

相続後に小規模宅地等の特例を適用する

小規模宅地等の特例は、土地の相続税評価額を下げる特例ですが、建物を相続するときには、その敷地もあわせて相続することになるのが通常なので、ここで紹介します。

小規模宅地等の特例とは、相続した宅地等が居住用や事業用に使われていた場合に、限度面積までの部分について、その評価額の一定割合(最大80%)を減額できる制度です。

一定の要件を満たす相続人が、被相続人が居住していた宅地を取得して居住する場合、または、被相続人の不動産貸付用や事業用の宅地を取得してその事業を承継して営む場合には、この小規模宅地等の特例の適用を適用できます。

相続税の相続税の無料相談

相続税の計算方法

ここで相続税の計算についても、確認しておきましょう。相続税の計算は次の手順で行います。

また、相続税を簡単に試算できる『相続税計算機』もご用意しています。利用料無料・個人情報の登録不要で使えるのでぜひお役立てください。

相続税計算の流れ

  1. 課税される遺産の総額(課税遺産総額)を計算する
  2. 相続税が合計でいくらかを計算する
  3. 相続税の総額を実際の相続分で按分して各種控除を引く

手順1 課税される遺産の総額(課税遺産総額)を計算する

課税遺産総額は、遺産総額から基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」を差し引くことで算出できます。

算出された課税遺産総額が0円以下なら相続税はかかりません。相続税申告も不要です。

遺産総額

被相続人のすべての財産から非課税の財産と控除できる財産を除いたもの

手順2 相続税が合計でいくらかを計算する

①各人の法定相続分に応じた取得金額を計算

相続税の総額を出すために、まずは「手順1」で計算した課税遺産総額に法定相続分をかけて各人の法定相続分に応じた取得金額を計算します。

法定相続分は以下の表をご参照ください。

【参考】法定相続分

②各人の仮の相続税額を計算

次に、以下の【相続税の速算表】に①で計算した各人の法定相続分に応じた取得金額をあてはめ、各人の仮の相続税額を計算します。

表中の法定相続分に応じた各取得金額に対応する「税率」をかけた後「控除額」を引くことで求められます。たとえば、ある相続人の法定相続分に応じた取得金額が3,000万円なら、3,000万円に税率の15%をかけた後、控除額50万円をひいて400万円が当該相続人の仮の相続税額となります。

3,000万円×0.15-50万円 = 400万円

相続税の税率 早見表

③各人の仮の相続税額をすべて足す

各人の仮の相続税額をすべて足したものが「相続税の総額」です。

手順3 相続税の総額を実際の相続分で按分して各種控除を引く

手順2で出した相続税の総額を実際の相続分で按分して各人の相続税額を計算します。

その計算結果から各種控除(配偶者の税額軽減・障害者控除・未成年者控除など)があれば、各人の相続税額から控除して個人の相続税額を出します。

※兄弟・姉妹などの相続税額は2割加算される

相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)や配偶者以外の場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

よくあるケースだと、被相続人の兄弟・姉妹や、おい・めいが2割加算の対象です。

なお、被相続人の養子は一親等の法定血族であることから、2割加算の対象とはなりません。

ただし、被相続人の養子となっているのが被相続人の孫(いわゆる孫養子)の場合は、その孫が代襲相続人となっているときを除き、相続税額の2割加算の対象になります。

相続税の相続税の無料相談

建物の相続税評価額に関する相談は税理士へ

建物の相続税評価額と、建物の相続税評価額を下げる方法について解説しました。

被相続人が使用していた建物の相続税評価額は、固定資産税評価額がわかっていれば、複雑な計算も必要なく求めることができます。

しかし、第三者に貸している建物や、部屋数の多い賃貸アパートを相続した場合は相続税評価額を計算する難易度が上がります。

さらに、建物の相続税評価額は高額なことが多く、相続税に大きな影響を与えるため、しっかり節税対策することが重要です。それにはさまざまな特例を適用できるかどうかの判断も必要になるでしょう。

そのため、適切な節税対策を行い、追徴課税などがないように正しく相続税申告するためには、早めに相続税に強い税理士にご相談されることをおすすめします。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

全国/電話相談可能

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