不貞行為の証拠を出す最適なタイミングは?注意点も解説

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「夫の不貞行為の証拠を集めたけれど、いつ、どのように相手に提示すれば良いか迷っている」

そんなお悩みをもつ女性に向けて、この記事では、夫の不貞行為の証拠を出す最適なタイミングについて詳しく解説します。

最適なタイミングは、離婚したいのかどうか、離婚するとして離婚調停や離婚裁判も視野に入れているのかなどの事情によって変わってきます。

自分にとって最適な証拠提出のタイミングを知っておけば、離婚や慰謝料請求をスムーズに実現できる可能性が高くなります。

法的手続での証拠の使い方や、相手方の反応への対処法について事前に知識を身につけ、自分の実現したいゴールに向けて着実に歩みを進めていきましょう。

不貞行為の証拠を出すタイミングの重要性と注意点

証拠を出すタイミングが重要な理由

夫の不貞行為(不倫、浮気)の証拠を出すタイミングが早すぎると、反論の準備をされやすくなります。

また、夫が、写真や動画、LINEのやり取りなどの有力な証拠を隠したり、処分してしまう可能性も大きくなります。

不倫相手を特定されないように、連絡先を消去してしまうおそれもかなり大きいでしょう。

そのため、夫の不貞行為の証拠をある程度集めたとしても、最初からすべての証拠を出すべきではありません。

夫を問い詰めたい気持ちをぐっと押さえ、あえて不貞行為に気付いていないふりを続け、言い逃れできない強力な証拠が得られるまで根気強く証拠を収集しましょう。

「この証拠で足りる?」と不安な方は、早めに弁護士に相談してみてください。

弁護士に相談すれば、現在持っている証拠で離婚できるか、慰謝料はいくら請求できるかなど気になる点がピンポイントでわかります。

追加の証拠が必要な場合は、その内容や証拠集めの方法についてもアドバイスをもらえます。

別居してしまうと証拠を集めにくいため、できる限り別居前の段階で相談にいくのがおすすめです。

以下では、不貞行為の証拠を出す際に必ず知っておいていただきたい注意点を4つご説明します。

注意点①証拠を出す前に目指すゴールをはっきりさせておく

夫に不貞行為の証拠を示す前に必ず決めておきたいのが、最終的に実現したいゴールです。

夫が不貞行為を認めた場合に修復を望むなら、すべての証拠を突きつけて徹底的に責任追及するよりも、まずは証拠を出さずに相手が謝罪するかどうか見た方が穏当な解決につながるでしょう。

一方、夫が不貞行為を認めるかどうかにかかわらず離婚をしたい場合は、財産分与や養育費などの離婚条件はどうするか考えておく必要があります。

夫に慰謝料請求する場合、他の離婚条件とのバランスをとることも大切です。

慰謝料請求にあまりにこだわりすぎると、離婚問題全体の解決が遠のく可能性がある点もふまえ、離婚条件の優先順位も考えておきましょう。

不倫相手にも慰謝料請求したい場合

さらに、不倫相手への慰謝料請求はどうするかも考えなければなりません。

証拠が十分そろっていれば、離婚するかどうかにかかわらず、夫や不倫相手に慰謝料請求することは可能です。

しかし、離婚するかどうかで慰謝料額は変わります。

また、不貞行為は、法律的には共同不法行為に当たります。

つまり、夫が慰謝料を支払えば、その分不倫相手から支払われる慰謝料額は減額される関係にあるのです。

不定慰謝料は二重取りできない

慰謝料請求するにしても、どちらにどれだけの金額を請求するか考えておく必要があります。

以上のとおり、不貞行為の証拠を示す前に考えておかなければならない問題はたくさんあります。

すべてを一人で決めるのは難しいため、まずは離婚するかどうかご自身の中でしっかりと方針を固めるところから始めてみましょう。

離婚について考えを明確にしてから弁護士に相談にいくと、その他の問題についてより具体的で有益なアドバイスがもらえるでしょう。

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注意点②不貞行為と言い切れない証拠は出さない

不貞行為が疑われるメールやLINEのやり取り、不倫相手宅と思われる場所へ2人が出入りする写真などを入手した場合、すぐに提示するのは避けましょう。

なぜなら、これらの証拠は、不貞行為を疑わせる証拠ではあるものの、決定的な証拠とは言いにくいからです。

不貞行為の証拠

このような決定的でない証拠を早期に出してしまうと、上述したとおり、相手に反論の余地を与えてしまいます。

例えば、夫が不倫相手と思われる女性に「大好きだよ」と送ったLINEのやり取りがスマホに残っているのを発見して問い詰めたとします。

この場合、夫は「冗談だよ」「他の人にも軽いのりでよく言ってるよ」などと反論してくることは十分あり得るでしょう。

警戒した夫が、不倫相手が写った写真などより有力な証拠を削除してしまったり、その後不倫相手とのやり取りを中断してしまうと、せっかくの証拠集めのチャンスを逃してしまうことになります。

また、ラブホテルなど性交渉を目的とする場所以外へ出入りする写真も言い逃れされやすいです。

不倫相手宅へ2人が出入りする写真を示したとしても、短時間の訪問で宿泊をしていない場合は、「知り合いの家に用事があって行っただけ」などとはぐらかされてしまう可能性が高いでしょう。

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注意点③探偵などが作成した調査報告書を出すのは慎重に

夫の不貞行為を疑った場合、探偵事務所や興信所に浮気調査を依頼する方も少なくありません。

この場合、探偵事務所などが作成した調査報告書をすぐに証拠として相手方に示すのは危険です。

なぜなら、プライバシーや人格権侵害など法律上問題をはらんだ調査報告書もあり得るからです。

例えば、相手方のことを誹謗中傷するような表現がされていたり、住居侵入して撮影された写真などが使用されている場合です。

そのような調査報告書を何の検討もせずに相手方に見せてしまうと、名誉毀損などを理由に損害賠償請求されるおそれがあります。

調査報告書を入手した場合は、相手方に示す前に弁護士に内容を確認してもらい、法的に問題がないことを確かめた方が安心です。

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注意点④法的手続をとる気があるかどうかで証拠を出すタイミングは変わる

あなたが夫の不貞行為を理由に離婚を考えている場合、あくまで協議離婚を目指すのか、離婚調停や離婚裁判まで視野に入れているのかによって、証拠を出すタイミングが変わります。

協議離婚の合意ができなかった場合に調停や裁判まで見越しているのであれば、法的手続のために証拠をとっておいた方が良いでしょう。

協議の段階で証拠を出してしまうと、夫に反論の準備をされてしまい、結果的に調停や裁判で不利になるおそれがあるからです。

しかし、離婚調停や離婚裁判まで考えていないのであれば、協議の段階で決定的な証拠を含めてすべての証拠を出してしまうことも考えらえます。

そうすれば、夫は言い逃れできず、不貞行為を認める可能性が高いでしょう。

ただし、不倫相手への慰謝料請求を考えている場合、夫に証拠を見せることで不倫相手にも伝わってしまい反論の余地をつくってしまうおそれがある点に注意してください。

離婚手続ごとの証拠提出の最適なタイミング

ここでは、夫婦の話し合い、離婚調停、離婚裁判のそれぞれの場合、どのタイミングで不貞行為の証拠を出すべきか、予想される相手の反応と適切な対処法、追加で集めておきたい証拠について解説します。

夫婦間の話し合いで協議離婚を目指す場合のタイミング

夫婦間の話合いで離婚を目指す場合、まずは証拠を出さずに夫に不貞行為をしたかどうか確認しましょう。

①夫が不貞行為を認めた場合

協議段階で夫が不貞行為を認めたら、その自白内容を録音するか、少なくとも念書などを作成してしておきましょう。

夫が任意で不貞行為を認めたことがわかるように、できれば録音しておくのがおすすめです。そうすれば、後で「妻に不貞行為を認めるよう強く言われて仕方なく認めた」という弁解が通じなくなります。

自白を記録化する場合のポイントは、不倫相手と知り合った時期や経緯、不貞行為の日時、場所、不貞行為の内容、回数などできるだけ具体的に残しておく点です。

単に「浮気しました」「不倫しました」という内容では信用性が低く、後で否認に転じた場合に証拠として不十分です。

②夫が不貞行為を認めなかった場合

夫が認めなかった場合は、夫の反論をすべて引き出すと良いでしょう。

その後、決定的な証拠を突きつければ弁解の余地がなく、不貞行為を認めざるを得なくなります。

ただ、不貞行為を否定する配偶者は、一筋縄ではいかないケースが多いです。

妻が相手である限り、手を変え品を変え不合理と思える言い訳を続け、離婚や慰謝料責任を逃れようとすることも予想しておかなければなりません。

そのような場合は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士が関与した上で再度交渉すれば、夫の態度が変わり不貞行為を認める可能性もあります。

交渉では埒が明かないようであれば、早期に離婚調停を申し立てることも考えられます。

離婚調停を行う場合のタイミング

離婚調停を申し立てた場合も、不貞行為の証拠を最初からすべて出すのは避けるべきです。

もし相手方(夫)が不貞行為を否定すれば、離婚裁判も視野に入れる必要があります。

裁判では、自分の主張を裏付ける証拠の提出が必須であるため、そのときのために決定的な証拠はとっておく方が有利です。

まずは証拠を出さずに夫の不貞行為を主張し、相手方の出方を見ましょう。

①夫が不貞行為を認めた場合

証拠の有無に関わらず、夫が不貞行為を認めて離婚に応じる場合、調停離婚が成立します。慰謝料についても合意に至れば、調停調書に記載してもらいます。

夫が調停での合意に反して慰謝料を支払わなければ、強制執行可能です。

慰謝料額について合意できない場合は、裁判になった場合に認められるであろう慰謝料額をお互いに認識した上で、歩み寄っていくことになるでしょう。

②夫が不貞行為を認めなかった場合

離婚調停で夫が不貞行為を認めなかった場合、離婚裁判の提起を検討します。この場合、裁判まで決定的な証拠を出さずに取っておくことが有効な戦略です。

ただ、夫が不貞行為を否定する理由が、「慰謝料」という法的責任が明確になる形でお金を支払いたくないという場合もあります。

この場合、「解決金」という責任の所在をあえてはっきりさせない形でお金の支払を受けるという解決方法もよくとられます。

夫が不貞行為を認めなかったとしても、感情的になってすぐに訴訟提起をするのではなく、夫の真意を冷静に把握することで調停で解決できる可能性もあります。

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離婚裁判を行う場合のタイミング

家庭裁判所に離婚裁判を提起する場合、夫とその不倫相手に対し、不貞行為を原因とする損害賠償請求を求めることができます。

(なお、離婚の前後を問わず、地方裁判所に対し、夫と不倫相手を被告として損害賠償請求を提起できます。この場合、不倫相手のみ被告とすることも可能です。)

裁判では、自分が主張する事実を証拠によって立証しなければなりません。

言い換えれば、「夫が不貞行為をした」といくら主張しても、証拠が十分そろっていなければ、不貞行為の存在が認められないのです。

ここが、協議離婚や離婚調停との大きな違いです。

実務では、原告が訴状を出す段階では、不貞行為に関する証拠はほぼ出さないことが多いです。

被告の反論態度を見て、最後に決定的な証拠を出すと効果的です。

決定的な証拠の例としては、性交渉の動画や写真、ラブホテルでの2ショット写真などがあります。

ここまで決定的でなくとも、ラブホテルに長時間滞在したことがわかる写真(入るときと出るときの写真)、肉体関係を持ったことがわかるLINEのやり取り、宿泊施設に2人で宿泊したことがわかる領収書なども有効な証拠です。

①夫が不貞行為を認める場合

不貞行為は法定離婚事由(民法770条1項1号)に当たるため、夫が不貞行為を認めれば裁判離婚が成立します。慰謝料額は、最終的には裁判官は証拠を見て判断します。

②夫が不貞行為を認めない場合

証拠上、不貞行為が認められるなら、たとえ夫が否定したとしても裁判離婚が成立します。この場合も、慰謝料は裁判官が判断します。

不貞行為の証拠を出すタイミングは弁護士に相談

配偶者や不倫相手との交渉が有利になることが期待できる

ご自分で配偶者や不倫相手と交渉すると、うまく言い逃れされてしまうおそれが高いです。

不貞行為を一度は認めたとしても、後日否認に転じるケースも少なくありません。

夫や不倫相手の不誠実な態度で苦しむ前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

弁護士が交渉段階から関与すれば、夫や不倫相手の言い逃れを許さない最適なタイミングで証拠を出すことができます。

離婚調停や裁判で有利になることが期待できる

裁判所が関係する法的手続で有利な進め方をするには、専門家である弁護士の関与が欠かせません。

弁護士は、豊富な実務経験や法的知識をもとに、最適なタイミングで証拠を提出します。

離婚裁判や民事裁判では、証拠提出のタイミングによって離婚や慰謝料請求が認められるかどうか大きく変わってくる可能性もあります。

訴訟提起をお考えの場合は、ぜひ弁護士への事前相談をおすすめいたします。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了