離婚したらもらえるお金は?手当や公的支援を解説!
離婚したことによって、経済的に困窮してしまう女性や母子家庭は少なくありません。
そういった方に対しては、国や自治体が支援制度を用意しています。
この記事では、離婚後に生活が苦しくなってしまう女性、特に子どもがいる方が離婚時にもらえる手当や貸付基金、支援制度について解説します。
ここで紹介するほかにも、各自治体が経済的に困っている女性やひとり親家庭に対する独自の支援制度を用意しています。
お住まいの地域の制度について、自治体のホームページなどで調べてみることをおすすめします。
目次
離婚したらもらえる子ども関連のお金
児童手当
児童手当は、中学校卒業までの子どもを育てている親であれば誰でも受け取れる手当で、離婚前も受け取っている方が多いでしょう。
離婚時には、受給者の変更を忘れずに行いましょう。親権者がどちらであっても、基本的には子どもと暮らす方の親が児童手当を受け取ることができます。
また、離婚前は世帯主の所得が高いために児童手当の受給対象外であったという方も、離婚によって新たに対象に入る可能性があります。
児童手当 | |
---|---|
もらえる人 | 中学校卒業までの児童を養育している人 |
月額(最大) | 3歳未満 一律15,000円 3歳以上 小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円) 中学生 一律10,000円 |
受給者の所得が一定額を超えると、児童手当の全部または一部が支給されなくなります。
たとえば、児童1人を扶養している場合、年収が660万円を超えると、受給できる児童手当の額は一律5,000円になります。さらに、年収が896万円を超えると、児童手当は支給されません。
所得制限について、詳しくはこども家庭庁や各自治体のホームページ等をご確認ください。
児童扶養手当(母子手当)
児童扶養手当は、18歳まで(18歳に達する日以降最初の3月31日まで)の子どもを育てるひとり親の方などが受け取れる手当で、以前は母子手当と呼ばれていたものです。
子どもが一定の障害を持っている場合は、子どもが20歳になる年まで児童扶養手当を受けることができます。
ただし、離婚後に異性と同棲していたり、事実婚関係のパートナーがいる方は、児童扶養手当を受給することができません。また、再婚した場合も受給資格を失います。
児童扶養手当(母子手当) | |
---|---|
もらえる人 | 18歳までの子どもを扶養しているひとり親 20歳までで障害を持つ子どもを扶養しているひとり親など |
月額(最大) | 児童1人 44,140円 児童2人 54,560円 児童3人 60,810円 以降1人につき6,250円加算 |
※2024年4月現在。児童扶養手当の金額は毎年変動するため、必ず最新情報を確認してください。
なお、受給者の所得が一定額を超えると、児童手当の全部または一部が支給されなくなります。また、障害基礎年金等の公的年金を受給している方は、児童扶養手当との差額のみを受給することができます。
基準となる所得は、総収入から必要経費を差し引いた「所得」と元配偶者から受け取る「養育費の8割」を足したものから、様々な条件ごとの控除額を控除して計算します。
たとえば、自身が扶養している子どもの人数が1人だった場合は、養育費の8割を足し、控除額を差し引いた所得が87万円未満であれば、全額の44,140円が支給されます。所得が230万円を超えると、児童扶養手当は受給できなくなります。
所得制限やその他の要件について、詳しくはこども家庭庁や各自治体のホームページ等をご確認ください。
児童育成手当
児童育成手当とは、東京都が独自で行っている支援制度で、東京都内で18歳までの子どもを扶養しているひとり親の方などが受け取れます。
この手当の対象は東京都内に住んでいる人のみです。しかし、それ以外の道府県でも同様の支援制度が整備されている場合もありますので、お住まいの自治体の制度について調べてみるとよいでしょう。
児童育成手当 | |
---|---|
もらえる人 | 東京都在住で18歳までの子どもを扶養しているひとり親など |
月額 | 児童1人につき13,500円 |
なお、受給者の所得が一定額を超えると、児童育成手当は支給されなくなります。
基準となる所得は、収入から様々な条件ごとの控除額を控除して計算します。たとえば、扶養している子どもが1人いる場合は、控除額を差し引いた所得が398万4,000円以下であれば児童育成手当を受けることができます。
所得制限について、詳細は各自治体のホームページをご確認ください。
児童扶養手当と児童育成手当の違い
児童扶養手当と児童育成手当の大きな違いは、手当を受給できる条件にあり、児童扶養手当の方が厳しい条件を設けています。
児童育成手当が受給者1人の所得のみを審査対象とするのに対し、児童扶養手当は同居している扶養義務者(祖父母など)の所得も審査対象にしています。
また、児童扶養手当は、元配偶者から受け取る養育費も所得に算入する点や、公的年金を受給している場合に受け取れる額が少なくなるという点でも、児童育成手当より厳しい条件があるといえます。
なお、双方の要件を満たしているのであれば、両方とも受給することが可能です。
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当は、心身に障害をもつ子どもを育てる親が受給できる手当で、離婚前でも受け取ることができます。
離婚前は世帯収入が上限を超えていたために受給できなかった方でも、離婚後なら受給できる可能性があるため、確認してみてください。
特別児童扶養手当 | |
---|---|
もらえる人 | 心身に障害をもつ20歳未満の子どもを扶養する親 |
月額 | 1級 53,700円 2級 35,760円 |
障害の程度に応じて1級と2級に分かれており、それぞれ支給額が異なります。
なお、受給者の所得が一定額を超えると、特別児童扶養手当は支給されなくなります。
障害の程度や収入制限については、厚生労働省や各自治体のホームページなどをご確認ください。
障害児福祉手当
障害児福祉手当は、心身に重度の障害をもつ20歳未満の子どもに対して支給される手当です。
障害児福祉手当 | |
---|---|
もらえる人 | 心身に重度の障害をもつ20歳未満の子ども |
月額 | 15,690円 |
※令和6年4月現在。支給額は毎年改定されます。
なお、受給者本人や配偶者、扶養義務者の所得が一定額を超えると、障害児福祉手当は支給されなくなります。
親が離婚していなくても受給できますが、離婚前は親の所得が上限を超えていたために受給できていなかった方も、離婚によって支給の対象に入る可能性があります。
障害の程度や収入制限については、厚生労働省や各自治体のホームページなどをご確認ください。
就学援助
就学援助は、経済的な理由で就学が難しい子どもの保護者に対し、学用品や給食、修学旅行などの費用の援助を提供する制度です。離婚前でも援助を受けられますが、離婚によって援助の対象になる方は多いでしょう。
就学援助 | |
---|---|
もらえる人 | 経済的な理由で就学が難しい小・中学生の保護者 |
月額 | – |
就学援助制度は自治体ごとに行われているため、自治体ごとに援助の対象となる条件や援助の内容が異なります。まずは通っている学校や自治体にご確認ください。
離婚した家庭が利用できる貸付金
母子父子寡婦福祉資金貸付金
母子父子寡婦福祉資金貸付金は、20歳未満の子どもを扶養している母子家庭や父子家庭、寡婦の経済的自立を支援するために、自治体から資金を貸付する制度です。
事業開始資金や就学資金、生活資金、転宅資金など様々な用途でお金を借りることができ、まとまったお金が必要な場面で役立つでしょう。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度は、所得の少ない世帯や障害者、高齢者のいる世帯が安定した生活を取り戻せるよう、自治体が資金の貸付を行う制度です。
収入や就労状況が一定の条件を満たすと利用できます。
女性福祉資金貸付制度
女性福祉貸付資金制度は、配偶者のいない女性の経済的な自立生活を支援するために自治体が資金の貸付を行う、東京都独自の制度です。
その他の支援制度
ひとり親家庭の医療費助成
18歳以下の子どもを持つひとり親家庭であって、所得が一定以下の場合、自治体から医療費の助成を受けることができます。
自治体ごとに助成を受けられる要件や助成の内容が異なりますので、お住まいの自治体のホームページ等をご確認ください。
生活保護
世帯収入が一定基準を下回る世帯は、生活保護を申請することができます。
基準額や支給額は、地域によって異なります。
関連記事
・離婚後に生活保護は受給できる?申請できる条件や注意点を解説
養育費に関する公正証書等作成支援
自治体によっては、離婚時に養育費に関する公正証書を作成するための費用を負担する制度を設けています。
公正証書とは、養育費や面会交流、財産分与などの取り決めの内容を記す公文書で、公証役場に手数料を支払って作成することができます。
養育費の取り決めを公正証書にしておくと、相手が養育費の支払いを怠ったときに、強制執行(財産や給与の差し押さえ)を行えるようになります。
離婚後しばらくして養育費の支払いが途絶えるケースは少なくないため、離婚時に公正証書を作成しておくと安心です。
公正証書の作成には、本来であれば数千円~数万円程度の公証人手数料がかかりますが、そのうち全部または一部を自治体に負担してもらえます。
自治体ごとに制度が異なるため、まずは各自治体のホームページなどをご確認ください。
関連記事
・離婚時に公正証書を作成するメリットは?どうやって作成する?
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了