離婚の解決金とは?請求方法や相場を解説
- 離婚の解決金とは?
- 離婚の解決金の請求方法は?
- 離婚の解決金の相場は?
離婚時には、慰謝料や財産分与などのお金のやり取りが生じます。また、解決金という名目で金銭を支払うこともあります。
離婚の解決金とは、夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金のことです。
離婚の解決金には法律上の定めがなく、離婚条件を調整する目的で、当事者間の合意によって金額を自由に決めることができます。
一方で、法律上の定めがないからこその注意点が、離婚の解決金にはあります。
この記事では、離婚で解決金を受け取る立場の目線で、離婚の解決金とはどのようなものか、相場はいくらなのか、注意すべきことは何かを解説します。
目次
離婚の解決金はどんな時に払われる?
離婚の解決金とは?
離婚の解決金とは、離婚時に夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金です。
協議離婚や調停離婚の際、「解決金」という名目で金銭の支払いを合意するケースがあります。
解決金には、法的根拠はなく、離婚の際に必ず支払う金銭でもありません。しかし、解決金には、離婚条件の調整という重要な役割があります。
解決金の代表的な役割としては、たとえば、以下のような離婚条件の調整があげられます。
- 離婚に同意してもらうための条件
- 財産分与や養育費の上乗せ
- 精神的な苦痛に対する補償
- 離婚後の生活費の支援
解決金は、双方が納得するのであれば、どんな目的でどんな額を支払っても問題ありません。
解決金には、支払いの理由を示さないという特徴があるので、離婚条件の調整がしやすくなるメリットがあります。
解決金・和解金をもらえるのはどんな時?
解決金には、慰謝料などと違って法律上の根拠がないため、どんな目的で支払っても構いませんし、その目的や内訳を特定する必要もありません。また、離婚するときに必ずしも払わなければならないわけではありません。
それでは、一体、どのような時に、離婚の解決金をもらえるのでしょうか。
離婚以外の男女問題、例えば内縁関係や不倫関係を解消する時などに、手切れ金として解決金を支払うこともあります。
いわば、お金を払ってでも別れてほしい時に支払うものです。
離婚の場合も同様です。
離婚を求める側から「解決金として〇〇万円払うから早く離婚してほしい」と申し入れたり、離婚を求められた側が「解決金として××万円払ってくれるならすぐに離婚してもいい」などと提案したりします。
このように解決金を交渉することで、協議離婚や調停離婚をスムーズに進められる効果が望めます。
なお、解決金には、請求の法的根拠があるわけではないため、裁判で請求することはできません。
ただし、離婚裁判をおこした後、判決を待たずに、和解で裁判を終了させる場合、「和解金」が支払われることがあります。この和解金は、離婚の解決金に類似の性質を有するものといえるでしょう。
場面 | |
---|---|
手切れ金 | 男女間トラブル |
離婚の解決金 | 協議離婚・調停離婚 |
離婚の和解金 | 裁判提起後(和解離婚) |
なお、上記では、解決金は、協議や調停によって離婚する場合に発生しうるお金である一方、和解金は、裁判手続を進めているなかで和解離婚する場合に発生しうるお金である、と区別してします。しかし、このような区別をせず、解決金と同じ意味合いの言葉として「和解金」という言葉が使用される場合もあります。
実務では、性質の違いを意識しないで、上記の用語をつかう場合もあるので留意が必要です。
解決金と慰謝料との違いは?
離婚時にやり取りされるお金には、慰謝料、財産分与、婚姻費用、養育費などがあります。
これらのお金と解決金との最大の違いは、法律に根拠があるかどうかです。解決金は法律に定められているお金ではないため、「支払う義務・受け取る権利」は存在しません。
慰謝料や財産分与など、法律に定めのあるものは、支払う義務と受け取る権利があるため、調停や審判、裁判、強制執行を使って、強制的に支払わせることが可能です。
一方で、解決金には法律上の権利・義務は存在せず、当事者間の合意によってのみ支払われます。
なお、通常はそれぞれを個別に計算しますが、こういったお金を全部まとめて支払うための名目として、解決金を使うこともあります。その場合は、解決金と別に慰謝料や財産分与を請求しないという旨を約束するのが一般的です。
慰謝料と解決金の違い
慰謝料は、離婚や離婚原因となった行為によって被った精神的苦痛を補償するためのお金です。解決金は、慰謝料の性質を持つことがよくあります。
慰謝料は、相手に不法行為(不貞行為や暴力など)があった場合にしか請求できません。しかし、解決金は、相手が悪くない場合や、双方に責任があるような場合でも受け取ることができます。
例えば、性格の不一致は双方の相性の問題であり、どちらかに非があるものではないため、慰謝料を請求することはできませんが、スムーズに離婚するために解決金を設定することができます。
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財産分与と解決金の違い
財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合うことです。
解決金の中に財産分与を含めてまとめて支払うこともできますが、わざわざ解決金という名目で支払わなくても、財産分与を多く分け与えることで調整することも可能です。
まれに、扶養的財産分与といって、離婚後も元配偶者の生活を支援する目的で、毎月一定の金額を支払うと取り決めることがあります。
実際の調停で扶養的財産分与が認められることは少ないですが、解決金という名目で生活費を支払うことで、近い効果を得られるでしょう。
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婚姻費用と解決金の違い
婚姻費用とは、別居中の生活費のことをいい、離婚前の別居期間中に、収入の多い方の配偶者からもう一方に対して支払われます。
婚姻費用は離婚前に、解決金は離婚時に支払うという点で異なりますが、未払いだった婚姻費用を解決金に含めて、離婚時に清算するケースもあります。
婚姻費用と解決金は、よく天秤にかけられます。例えば、婚姻費用を払い続けるのを避けるために、「解決金を支払うからすぐに離婚してくれ」と交渉するケースがあります。
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養育費と解決金の違い
養育費とは、離婚後に子どもを扶養するために非監護親が支払うお金で、毎月決まった額を送金するのが一般的です。
養育費は、離婚後もずっと支払うものですから、解決金とは別で請求することが多いでしょう。
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離婚の解決金の相場は?
解決金の相場は年収で決まる?
解決金の価格には、明確な相場はありません。
金額は当事者間の合意があれば自由に設定することができますし、その夫婦の事情によって大きく変化するでしょう。
養育費や婚姻費用などと異なり、年収に応じて相場が上下するものではないともいえます。
解決金の金額を決定するにあたって一般的に考慮されるのは、離婚によって被る精神的苦痛の程度や、双方の収入・財産、離婚原因などですが、どういった事情を加味するかは夫婦の自由です。
このように、双方が納得するのであれば、どのような理由でどのような金額を設定しても構わないのです。
解決金の相場は?500万円の事例も?
参考に、離婚慰謝料の相場を挙げておきます。離婚慰謝料は、50万~300万円程度のことが多いですが、場合によっては500万円を超えることもあります。
このことからすれば、どうしても離婚をしたい場合は、500万円の解決金で、相手方が離婚に納得してくれる事例もあるといえるでしょう。
また、財産分与なども加味した場合、離婚の解決金が1000万円を超えるケースもあるかもしれません。
ただし、あまりに高額になると課税対象になる可能性があるため、注意してください。
離婚の解決金は分割払いできる?
離婚の解決金は、一括払いが基本です。とはいえ、当事者が合意するのであれば、分割払いにすることもできます。
分割払いにする場合は、未払いのリスクが高くなるため、必ずその旨を離婚協議書や公正証書にして残しておきましょう。
解決金を受け取るメリット・デメリット
離婚の解決金を受け取るメリット
納得して離婚できる
一方的に離婚を突きつけられたようなケースでは、「こちらは悪くないのになぜ離婚しなければならないのか」と感じ、簡単に納得することはできないでしょう。
相手に不貞行為や暴力などがあったならば、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できますが、「一方的に離婚を突きつけられた」という理由では、慰謝料を請求することもできません。
そこで、慰謝料に近い性質のものとして解決金を受け取ることで、納得して離婚しやすくなります。
また、相場通りの慰謝料や財産分与、養育費では割に合わないと感じる場合も、解決金を受け取ることで、より納得感が高まるでしょう。
理由が不明確でもお金を受け取れる
慰謝料を請求するためには、相手の不法行為のせいで精神的苦痛を被ったという事実が必要です。したがって、性格の不一致や価値観の違いなど、どちらにも非がない、あるいはどちらにも責任があるようなケースでは、相手に慰謝料を請求することができません。
しかし、解決金の請求に特別な理由は必要ありませんので、支払う方が納得するのであれば、慰謝料を請求できる理由がなくてもお金を受け取ることができるというメリットがあります。
また、相手にとって、慰謝料を支払うというのは自分の非を認めることになります。しかし、名目を解決金とすることで、支払う側のプライドを守ることもできるでしょう。
離婚後の生活の支えになる
本来であれば、配偶者の離婚後の生活を保障する義務はないため、離婚後に受け取れるのは子どもの養育費のみです。
扶養的財産分与として、離婚後一定期間は毎月生活費を送金するという取り決めをすることも可能ではありますが、実際にそういった取り決めがされることは多くはありません。
そこで、離婚後の生活費を、解決金として支払ってもらうという方法があります。
離婚後の生活の不安解消につながり、離婚に応じるハードルが下がるため、支払う方・受け取る方どちらにとってもメリットがあります。
細かな計算をしなくてよい
通常、財産分与を行う際には、2人の財産をリストアップし、その価値を調べ、どの割合で分け合うかを決めなければなりません。これは非常に手間がかかるうえ、割合などをめぐって争いが生じます。
財産分与や慰謝料など全てをひっくるめて解決金とする場合は、細かな計算をしたり、相場を気にしたりする手間がありません。
離婚の解決金を受け取るデメリット
受け取る金額が少なくなる可能性がある
解決金は、その内訳を細かく決める必要がないというメリットがあります。しかし、内容が不明確な分、相場を考慮して慰謝料や財産分与を計算した場合よりも、金額が少なくなってしまうおそれがあります。
また、相手が、婚姻費用の支払いを少なくするために、解決金を提示して早く離婚を成立させようとしてくるかもしれません。
もちろん、それで納得して離婚できるならば問題ありません。しかし、離婚していなければ婚姻費用を受け取り続けることができたと考えると、結果的には受け取れる金額が少なくなる可能性があります。
離婚の解決金を受け取る時の注意点
裁判で解決金を請求することはできない
離婚の解決金は、法的な根拠がない、つまり支払う義務のないお金です。夫婦間の話し合いや調停において、任意で支払いを約束することはできますが、離婚裁判で解決金を請求することはできません。
離婚裁判を起こす場合は、解決金としてではなく、慰謝料や財産分与として金額を争うことになります。
離婚裁判では、個別の事情や相場を考慮して、慰謝料や財産分与の金額を決定します。
当初、慰謝料や財産分与の相場よりも高い額の解決金を提示されていた場合、裁判を起こすことで、かえって受け取れる金額が少なくなってしまうことも考えられます。
したがって、解決金という名目で相場以上の慰謝料や財産分与を受け取りたいのならば、裁判を起こさずに交渉で合意を目指した方がよいでしょう。
税金に注意
離婚時の慰謝料や財産分与には、原則として税金がかかりません。
慰謝料は、精神的苦痛というマイナスをゼロに戻すためのお金です。また、財産分与は、もとから2人の財産であったものを清算することが目的のため、通常はプラスもマイナスも生じないと考えられます。
このように、利益が生じるものではないため、よほど高額にならない限り、離婚時の慰謝料や財産分与には税金がかからないことになっています。
しかし、解決金は、慰謝料や財産分与の相場を著しく上回ることがあり、その場合は解決金に税金が課される可能性があります。
とはいえ、相場を上回ったら必ず課税対象になるというわけではありません。実際に税金が課されるケースはまれであると思われます。
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強制執行認諾文言付きの公正証書を作成
解決金を支払うことを約束させても、実際に支払いが実行されるとは限りません。
そこで、強制執行をできるようにするために、離婚時に強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくことをおすすめします。
強制執行認諾文言とは、定められた支払いを履行しなかった場合に、強制執行(財産の差し押さえ)を行うことを認める旨の文言です。
強制執行認諾文言の例
第〇条(強制執行認諾)
甲は、第〇条の債務の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
これを作成しておけば、本来であれば義務がない解決金の支払いに、強制力を持たせることができます。
なお、離婚調停において解決金の支払いに合意していた場合は、調停調書が同様の効果を持つため、ただちに強制執行を行えます。
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・離婚時に公正証書を作成するメリットは?どうやって作成する?
離婚協議書に清算条項を入れておく
離婚協議書や公正証書を作成する際は、清算条項を入れておきましょう。
清算条項とは、取り決め以外について、後から蒸し返して請求しないことを約束する文言です。
清算条項の例
第〇条(清算条項)
甲と乙は、上記の各条項のほかは、名目の如何を問わず、相互に何らの財産上の請求をしないことを約する。
慰謝料や財産分与をまとめて解決金として支払ったつもりでも、相手が後から財産分与としての金銭を別途請求してくるなどの可能性も捨てきれません。
清算条項を書面で締結していなければ、財産分与についても解決済みであることを証明できず、金銭の追加請求に応じなければならないリスクが生じます。
このようなトラブルの蒸し返しを防ぐために、離婚協議書や公正証書に清算条項をもうけて、離婚に関して金銭の追加請求ができない旨を、明らかにしておくことが重要です。
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ご自身がどうしても離婚した場合は、解決金を使うことで、離婚を成立させられることがあります。
また、一方的に離婚を切り出された場合でも、妥当な解決金があれば納得できることもあるでしょう。
解決金の金額は、夫婦の年収だけではなく、離婚の理由や、離婚に納得できる金額などを考慮のうえ、話し合って決めます。
提示された解決金の金額が妥当かどうか迷った時や、解決金をいくら請求できるかを知りたい時は、離婚をあつかう弁護士にご相談ください。
弁護士に相談すれば、離婚の具体的な見通しや、相手方との話し合いのアドバイスを聞くことができます。また、実際に依頼すれば、解決金など離婚条件の交渉や公正証書の作成など、弁護士に任せることができます。
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信頼できる弁護士を見つけて、まずは離婚のお悩みを相談してみましょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了