離婚の種類は?6種類の離婚と各手続の違い
離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚、和解離婚、認諾離婚の6つの種類があります。それぞれの離婚の種類には、メリット・デメリットや手続きの流れが異なるため、自分の状況に合った離婚方法を選ぶことが大切です。
そこで、今回は、離婚の種類6種類について、特徴や手続き、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
離婚を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
離婚は6種類ある
離婚の種類
離婚には、6つの種類があります。
- ①協議離婚
- ②調停離婚
- ③審判離婚
- ④裁判離婚
- ⑤和解離婚
- ⑥認諾離婚
それぞれの離婚方法によって、特徴や手続、メリット・デメリットが大きく異なります。
原則として、夫婦として離婚の合意ができれば「協議離婚」を、合意できない場合には「調停離婚」手続、その調停も成立しない場合には「裁判離婚」にて離婚をしていくことになります。
この際、調停内で裁判官から命じられる「審判離婚」、裁判中に和解を行う「和解離婚」、さらに裁判中に被告が言い分を全面的に受け入れる「認諾離婚」という形で離婚をする方法もあります。
この中で、本人同士で決める「協議離婚」以外の5つの離婚方法である「調停離婚」、「審判離婚」、「裁判離婚」、「和解離婚」、「認諾離婚」については裁判所が関与することになります。
種類別の離婚成立件数は以下の通りです。
離婚の種類 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
協議離婚 | 170,603 | 88.3% |
調停離婚 | 16,134 | 8.3% |
審判離婚 | 2,229 | 1.2% |
裁判離婚 | 1,740 | 0.9% |
和解離婚 | 2,545 | 1.3% |
認諾離婚 | 2 | 0% |
合計 | 193,253 | 100% |
(厚生労働省 令和4年度 離婚に関する統計の概況 離婚の種類別にみた離婚件数の年次推移(令和2年))
6種類の離婚の中では、協議離婚が圧倒的に多く、全体の約90%を占めます。
その次に多いのが調停離婚で約8%、審判離婚・和解離婚は1%程度、裁判離婚、認諾離婚は1%にも満たないのが現状です。
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協議離婚
離婚の種類①協議離婚とは
協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって行う離婚方法です。
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
民法第七百六十三条
夫婦間で離婚の合意が成立すれば、離婚をすることができます。
離婚をするための要件は、離婚の合意と離婚届を作成して役所に提出することのみです。
未成年の子がいる場合には親権者をどちらにするか離婚届に記入する必要がありますが、離婚理由について記入する必要はありません。
日本で成立する離婚の約9割が協議離婚であるため、最も一般的な離婚方法であるといえます。
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協議離婚のメリット・デメリット
協議離婚のメリットはなにより手続が最も簡単なことです。
夫婦間の合意さえできれば、離婚届を提出するだけで離婚ができます。
他の離婚方法では、これほど容易に離婚をすることができません。
一方で、養育費や財産分与、慰謝料などのお金に関する取り決めが口約束のみで行われたり、そもそもそういった取り決めをせずに離婚をしてしまうような場合があります。
離婚後に相手がお金を支払ってくれないなどのトラブルが生じた際には、泣き寝入りするような事態になることも考えられます。
そのようなトラブル防止のためにも取り決めた内容は強制執行認諾文言付き公正証書にしておくようにしましょう。
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・離婚時に公正証書を作成するメリットは?どうやって作成する?
また、合意ができなければいつまでたっても離婚をすることができないため、なかなか離婚条件についての協議が進まないことがあることもデメリットとしてあげられます。
そのため、協議離婚における話し合いの段階から弁護士に相談する人も増えています。
費用はかかりますが、取り決めの内容の漏れや法律的な不備を回避できるため弁護士に相談することのメリットは大きいです。
調停離婚・審判離婚
離婚の種類②調停離婚とは
調停離婚とは、離婚の協議が成立しない場合に、家庭裁判所で行われる調停を経て離婚をする方法です。
協議離婚と違って、当事者だけでなく、男女各1名ずつの調停委員が間に入って、話し合いを進める「調停」を行うことが特徴です。
協議離婚ができない場合、いきなり離婚裁判を起こせるわけではなく、必ず、訴訟提起前に「調停」を経る必要があります。
離婚調停の流れ
調停では、夫婦が直接話し合うわけではなく、調停委員会を通じてやりとりを行います。
調停の申し立てがされた際には、申立人、その相手方それぞれに対して、調停に至った経緯や夫婦関係、子どもの養育状況などについて調停委員から質問がされます。
夫婦のうちどちらかが調停室で話をしているときは、もう一方は待合室で待機する方法で行うことも多いため、相手と顔を合わせることなく、自分の意見を調停委員に聞いてもらうことができます。
調停委員会は双方の言い分を聞き、解決策を提示します。双方が離婚とその条件について合意をすれば、調停が成立します。
また、調停中、離婚をする必要がないと感じた場合は取り下げることもできます。
調停で離婚が成立したあとは、10日以内に調停調書の謄本とともに離婚届を提出する必要があります。
数回の話し合いを経たにもかかわらず合意に至らなかったような場合には、調停が不成立となり、終了します。
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調停離婚のメリット・デメリット
調停は第三者が間に入って解決策を提示してくれるため、感情的な言い争いにならずに、冷静に離婚に関しての話し合いを進められることが期待できます。
また、調停で離婚が成立したときに作成される調停調書には強制力があります。
加えて、調停費用は3,000円程度と公正証書作成よりも安く、公正証書同様に強制執行力があります。
一方で、1カ月に1度程度の頻度で数回にわたって話し合いが行われるため、協議離婚と比べて時間がどうしてもかかります。
また、調停では離婚の合意の斡旋だけでなく、離婚を回避するための解決策が提示されるようなこともあります。
相手と離婚をしたい意思が固い場合に、そのような手続を経ることを面倒に感じるかもしれません。
また、調停が成立するために当事者が合意することが必要であるため、結局相手との話し合いに決着がつかないこともあります。
たとえば、相手が調停に応じないといった、明らかに相手方が調停に非協力である場合でも、夫婦間で合意ができていないことには変わりがないため、調停は不成立となります。
離婚の種類③審判離婚とは
審判離婚とは、調停でわずかな離婚条件の違いで、合意が成立しない場合であっても、離婚を認めるのが適当だと判断された場合に、家庭裁判所が、離婚を認める審判をする方法です。
夫婦間で離婚について異存はないものの、財産分与や子どもの親権などをめぐってわずかに対立があるような場合や、単なるいやがらせで調停期日に出頭しないような場合に、審判がされることがあります。
審判後、異議申し立てがなければ離婚が成立します。その後、10日以内に離婚届とともに審判書と確定証明書を役所に提出する必要があります。
しかし、審判に対して当事者から異議が出た場合には、理由を問わず審判の効力が失われるなど、効力自体は極めて弱いです。
また、調停の後そのまま家庭裁判所で離婚裁判に進むことができることから、審判離婚が行われることはまれです。
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裁判上の離婚
離婚の種類④裁判離婚とは
裁判離婚とは、夫婦の一方が家庭裁判所に離婚訴訟を起こし、判決によって成立する離婚方法です。
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
民法第七百七十条
調停が不成立で終了した場合、または審判離婚の異議が認められた場合に裁判を検討することになります。
裁判離婚するためには法定離婚原因が必要
いちばんの特徴は、離婚が認められるためには法定離婚原因が必要となることにあります。
法定離婚原因とは、以下の各事実があった際に認められます。
- (ⅰ)配偶者に不貞な行為があったとき
- (ⅱ)配偶者から悪意で遺棄されたとき
- (ⅲ)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- (ⅳ)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- (ⅴ)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
(ⅴ)「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」は、婚姻共同生活が破綻し、その修復が著しく困難な状態を指します。
具体的な事情にもよりますが、性格の不一致、浪費やギャンブル等の経済的問題、暴力や侮辱等のDV、配偶者の親族との不和といったケースでこの状態にあたると判断される場合があります。
また、(ⅰ)〜(ⅳ)の事由があるときでも、婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができます。
裁判離婚の特徴
一方で、裁判離婚は、協議離婚や調停離婚とは違って、夫婦間の合意は必要ありません。
裁判離婚では、裁判をする関係上、相手のどのような点が離婚原因にあたるのか証明する必要があるため、証拠の提出をする必要があります。
この点も協議離婚や調停離婚とは異なる特徴となります。
判決が確定すれば離婚が成立します。その後、離婚届に判決書の謄本と確定証明書を添えて役所に届ける必要があります。
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裁判離婚のメリット・デメリット
離婚を認める判決が言い渡されれば、相手が何を主張しても強制的に離婚できることがいちばんのメリットです。
また、離婚裁判では、子どもの親権や養育費、財産分与、慰謝料についても申し立てることができます。
一方で、判決が出るまでに1年~2年以上かかってしまうこともあり、裁判をする中で精神的負担も大きくなります。
裁判の手続自体にも訴訟費用という形で費用がかかるほか、不貞行為などの証拠を集める際に調査会社に依頼した場合には調査費用がかかることも考えられます。
また、裁判離婚は自力で手続を進めることもできますが、弁護士を立てるのが一般的であることからも、弁護士費用を用意しておく必要があります。
さらに、裁判は原則として公開されるため、夫婦間のプライバシーが公になることを覚悟する必要もあります。
離婚の種類⑤和解離婚とは
和解裁判とは、離婚裁判中に当事者の話し合い(和解)によって離婚をする方法です。
裁判所から和解勧告が勧められた際に、夫婦が離婚について合意すれば和解は成立し、判決を待たずに和解調書が作成され、和解離婚が成立します。
和解後には、離婚届に和解調書の謄本を添えて役所に届ける必要があります。
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離婚の種類⑥認諾離婚とは
認諾離婚とは、訴えを起こされた被告が原告の請求をすべて認めて、離婚をする方法です。
認諾離婚ができるのは、親権問題や財産分与、慰謝料の訴えがない場合に限られるため、成立するケースはまれです。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
裁判の前に、必ず調停を行わなければならないルールを「調停前置主義」といいます。