離婚問題で内容証明郵便はどう活躍する?文例や送り方を紹介
配偶者に対して離婚を求めたり、それに関わるお金を請求する際に、内容証明郵便を送付することがあります。内容証明郵便とは、どんな内容の手紙が、いつ、誰から誰に差し出されたかを証明してくれる郵便局のサービスです。
今回は、内容証明郵便がどんな場面で役立つか、どのように送るのかを解説します。また、相手に請求する内容に合わせた内容証明郵便の文例・テンプレートもご紹介します。
目次
離婚の内容証明郵便の文例・テンプレート
内容証明郵便は、配偶者に離婚を申し入れるときや、養育費や婚姻費用を請求するとき、不倫相手に慰謝料を請求するときに使われることがあります。ここでは、3つの文例をご紹介します。
離婚を申し入れるとき
通知書
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇
アトム太郎 殿
貴殿とは、平成〇年〇月〇日より現在まで婚姻関係にあります。しかしながら、貴殿は婚姻当初より、私に対して怒鳴りつける、物を投げつけるなどの行為を繰り返したため、3年前に別居するに至りました。
別居開始時より、貴殿に対して何度も話し合いを申し入れてきましたが、貴殿が話し合いに応じることはありませんでした。以上のことより、夫婦関係は既に破綻しており修復は不可能であるとの結論に至りました。
つきましては、離婚に向けて協議を持ちたいと思いますので、すみやかにご連絡くださるようお願い致します。令和〇年〇月〇日までにご返答がない場合は、家庭裁判所に対して離婚調停の申し立てを行いますのでご承知おきください。
〇〇県〇〇市〇〇
アトム花子
養育費を請求するとき
催告書
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇
アトム太郎 殿
貴殿とは、令和〇年〇月〇日に協議離婚しましたが、貴殿は、長女さくらの養育費として、さくらが20歳になる月まで1か月5万円を支払う旨を約束されました。
しかしながら、令和〇年〇月以降、貴殿は養育費の支払いをされず、すでに30万円が未納となっています。
つきましては、本書到着後2週間以内に、令和〇年〇月以降の養育費30万円を、下記口座にお振込みください。
2週間以内にお振込み頂けなかった場合は、ただちに法的手続きを講じますので、ご承知おきください。
記
〇〇銀行〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇
名義人 アトム ハナコ
〇〇県〇〇市〇〇
アトム花子
不倫相手に慰謝料を請求するとき
通知書
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇
〇〇〇〇 殿
私は、アトム太郎の妻であるアトム花子です。先般、夫である太郎の不貞行為を疑い、調査を行ったところ、貴殿が令和〇年〇月頃から反復継続して太郎と不貞行為を行っていたことが判明しました。貴殿の行為が発覚した後、太郎との婚姻関係は破綻し、私は多大な精神的苦痛を受けています。
貴殿の行為は、民法709条に定められる不法行為にあたり、貴殿は損害を賠償する責任を負います。
よって、私は、貴殿に対し、精神的苦痛の慰謝料として金〇〇〇万円を請求します。
つきましては、本書到着後2週間以内に下記口座にお振込みください。2週間以内にお振込み頂けなかった場合は、ただちに法的手続きを講じますので、ご承知おきください。
記
〇〇銀行〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇
名義人 アトム ハナコ
〇〇県〇〇市〇〇
アトム花子
内容証明郵便とは?
内容証明郵便とはどんなもの?
内容証明郵便とは、どんな内容の手紙が、いつ、誰から誰に差し出されたかを証明してくれる郵便局のサービスです。
所定の方式で郵便を作成して郵便局に持っていけば、誰でも送ることができます。内容証明郵便は、一般書留の方式で送付されるため、普通郵便よりも確実に送り届けることができます。
そのうえ、文書の内容やいつ送ったかの情報が郵便局に記録されるため、話し合いの中で「そんなことは聞いていない」といった言い逃れを防ぐことができるというメリットがあります。
内容証明郵便は、離婚のほかにも、残未払い代金の請求や契約解除の通知などにもよく使われています。
離婚で内容証明郵便が活躍する場面は?
以下のような場面で、内容証明郵便が活躍します。これらをまとめて1通の内容証明郵便として送付することもあります。
- 離婚を請求するとき
- 慰謝料を請求するとき
- 養育費・婚姻費用を請求するとき
- 面会交流を請求するとき
これらは口頭で請求しても良いのですが、既に別居・離婚しており顔を合わせる機会がないような場合には、内容証明郵便の方が確実に意思を伝えることができます。
また、配偶者だけでなく、その不倫相手に慰謝料を請求する際にもよく使われており、います。相手の氏名や住所さえ分かっていれば、顔を合わせることなく慰謝料を請求することができます。
内容証明郵便を送付するためには、相手の氏名と住所が判明している必要があります。氏名・住所が分からない場合は、探偵(興信所)を利用すれば調べることができます。
内容証明郵便のメリットは?
内容証明郵便には、このようなメリットがあります。
- 請求したことの証拠になる
- 本気度が伝わる
- 慰謝料請求の時効を延ばすことができる
1.請求したことの証拠になる
慰謝料や養育費、財産分与などを口頭で請求しても、「そんなことは聞いていない」と言われてしまうと証明のしようがありません。しかし、内容証明郵便を送れば、自分の手元にも郵便局にも記録が残るため、そういった言い逃れを防ぐことができます。
さらに内容証明郵便は、裁判においても請求を送って相手がそれを受け取った証拠として有効です。
2.本気度が伝わる
内容証明郵便は、普通の郵便とは違った見た目をしていますし、普通はなかなか送られてくるものではないので、突然届いたら驚くでしょう。そういった物が届けば、こちらの本気度や事態の重大性が相手にも伝わるはずです。
このように、相手に心理的な圧迫感を与えることができます。
3.慰謝料請求の時効を延ばすことができる
内容証明郵便を送ることで、慰謝料請求の時効を延ばすことができます。
慰謝料の請求には、離婚の成立から3年という時効があります。離婚した後から慰謝料を請求しようとする場合は、時効に気を付けなければいけません。
調停や裁判を提起すれば、調停・裁判が終了するまでの間は時効の完成が猶予されるのですが、提起の準備をしている間に時効が完成してしまうおそれもあります。
そこで、催告が有効です。催告とは、支払いを求める旨を通知することです。催告を行うと、時効の完成が6か月間猶予され、その間に調停や裁判を起こせるようになります。
催告は一般的には内容証明郵便で行われます。このように、時効完成間近の慰謝料請求には、内容証明郵便が有効です。
内容証明郵便のデメリットは?
一方で、内容証明郵便には以下のようなデメリットもあります。
内容証明郵便のデメリットを補うためには、調停や審判、裁判を起こす必要があり、手間や時間がかかります。したがって、手間と効果を比べて、自分の状況に合った手段を選ぶのが良いでしょう。
- 手間や費用がかかる
- 法的な拘束力を持たない
- 債務名義にはならない
- 相手との関係が悪化する可能性がある
1.手間や費用がかかる
内容証明郵便は、通常の郵便と異なりポストに投函することはできないため、郵便局に出向いて発送の手続きを行います。しかし、内容証明郵便はどの郵便局からでも送れるわけではなく、扱っている郵便局まで行く必要があります。
また、決まった形式で3通も文書を作成する必要があるため、手間がかかります。
さらに、内容証明郵便は普通郵便に比べて費用がかかります。とはいえ、1,000〜2,000円程度ですので、何通も送らない限りは大きな負担ではないでしょう。
2.法的な拘束力を持たない
内容証明郵便はあくまで文書の内容を証明するサービスであって、内容証明郵便を送ったからといってただちに金銭の支払いなどの義務が生じるわけではありません。また、郵便局は文書の内容が正しいかまでは保証してくれません。
支払いを受けるためには、相手方が支払いの義務があることを認めるか、調停・審判で支払いの義務を認めさせることが必要です。
養育費や婚姻費用を請求する場合は、内容証明郵便を送るよりも、すぐに調停・審判を起こして裁判所を通して話し合いをした方が、支払いの義務を課せる上に、話し合いもスムーズに進む可能性もあります。
3.債務名義にはならない
債務名義とは、義務が履行されなかったときに強制執行(差し押さえ)ができる権利のことを言います。例えば、養育費を支払う義務があるにも関わらず支払いに応じなかった場合、債務名義を持っていると、裁判を経ずに強制執行を行って支払いを実現させることができます。
債務名義を得るには、調停・審判や裁判をするか、公正証書によって取り決めを行う必要があります。内容証明郵便を送っただけでは債務名義は得られないため、ただちに強制執行をすることはできません。
このように、内容証明郵便自体の法的な効力は、限定的であると言えます。
4.相手との関係が悪化する可能性がある
内容証明郵便を受け取った相手は、少なからずショックを受けるはずです。話し合いを拒絶されたと感じるかもしれません。そうなると、相手の態度が硬化して円滑な話し合いの妨げになる可能性があるため、注意が必要です。
過度に相手を刺激する内容は避けた方が良いでしょう。
また、不倫相手に慰謝料を請求するために内容証明郵便を送ると、さらに配偶者の反感を買ってしまう可能性もあります。
内容証明郵便の送り方
- 文書と封筒を作成する
- 郵便局で発送手続きをする
- 控えを保管する
- 配達証明を受け取る
1.文書と封筒を作成する
内容証明郵便を送る際は、同じ内容の文書を3通用意する必要があります。そのうち1通(原本)は相手方に送付され、2通(謄本)はそれぞれ郵便局と差出人が保管します。
用紙の大きさや縦横、手書き・印刷などは問われない一方で、謄本には1枚あたりの文字数の制限があります。内容証明郵便用のセットも市販されており、マス目がついているため便利です。
謄本とは、原本と全く同じ内容を写したものです。3通それぞれ書く必要はなく、コピーでも構いません。
謄本には1枚当たりの文字数に制限がある一方で、原本の書式には特に決まりはありません。とはいえ、別々に作らずに、謄本の書式で作成したものをコピーすれば手間が省けます。
謄本の文字数・行数の制限
縦書きの場合
- 1行20字以内、1枚26行以内
横書きの場合
- 1行26字以内、1枚20行以内
- 1行20字以内、1枚26行以内
- 1行13字以内、1枚40行以内
使用できる文字
内容証明郵便に使える文字には制限があります。
- 仮名
- 漢字
- 数字
- 英字
- 括弧
- 句読点
- その他一般に記号として使用されるもの
英字(ローマ字)は固有名詞にのみ使うことができます。したがって、英語などの外国語で文章を書くことはできません。
謄本の字数の計算方法
記号は原則として1文字と数えます。ただし、括弧はセットで1文字とし、上の括弧の属する行の字数に算入します。
「①」など、文字や数字を枠で囲んだものは、枠の中の文字と枠(1文字)の合計で計算します。ただし、文中の序列を示す記号として使用されているものは、全体として1文字と計算します。
例えば、以下のように数えます。
① → 2文字
(1)普通郵便 → 5文字
傍点や下線がついている字は、通常通り1文字として計算します。
謄本の訂正方法
書き間違えた部分に二重線を引いて、削除するか正しい文字を書き込みます。欄外か末尾の余白に「〇行目 〇字削除 〇字加入」と記入して訂正印を押します。
訂正するときは、消した文字も分かるようにしてください。
郵便局で誤りを指摘された場合もこの方法で訂正しますので、郵便局には印鑑を持っていくことをおすすめします。
謄本が2枚以上にわたる場合の契印
謄本が2枚以上になる場合は、綴じ目に契印を押します。印鑑は三文判でも問題ありません。
文書に必ず記載する事項
謄本には必ず差出人と受取人の住所・氏名を記入します。
封筒の書き方
封筒にも決まりはありません。差出人と受取人の住所・氏名を封筒に記入して、封はせずに郵便局へ持っていきます。切手を貼る必要もありません。
このとき、文書に記入された住所・氏名と、封筒に記入されたものが、必ず一致していることを確認してください。
なお、封筒に内容証明文書以外の物、例えば写真や請求書などを同封することはできません。
2.郵便局で発送手続きをする
文書と封筒の準備ができたら、郵便局へ出向いて発送の手続きを行います。
ただし、内容証明郵便は、どの郵便局でも扱っているわけではありません。
郵便局のホームページによると、「差し出すことのできる郵便局は、集配郵便局及び支社が指定した郵便局」とのことです。郵便局のホームページで、内容証明を取り扱っている郵便局を絞り込んで探すことができます。
郵便局の窓口にて内容証明郵便を送りたい旨を伝えると、手続きをしてくれます。
文書のチェックを受け、誤りがあったらその場で訂正します。最後に封をして、料金を支払います。これで窓口での手続きは完了です。
内容証明郵便を送る際の持ち物
- 文書3通(原本1通、謄本2通)
- 封筒(差出人と受取人の住所・氏名を記載する)
- 印鑑
- 料金
配達証明・その他のオプションサービス
内容証明郵便のオプションの中でも最もメジャーなのが、配達証明です。配達証明とは、郵便がいつ配達されたかを証明するサービスです。
内容証明郵便は、文書をいつ発送したかは証明してくれますが、配達されたことまでは証明してくれません。しかし、文書を送った側が一番知りたいのは、相手が文書を受け取ったかどうかです。そこで、ほとんどの場合はオプションとして配達証明が利用されています。
また、発送時に、速達や配達日指定、本人限定受取などのオプションサービスを付けることができます。
内容証明郵便の費用
内容証明郵便を送るには、通常の郵便料金のほか、枚数に応じた内容証明料金、書留料金がかかります。また、オプションをつける場合は追加で料金が必要です。
定形郵便物
25gまで | 84円 |
50gまで | 94円 |
定形外郵便物(規格内)
50gまで | 120円 |
100gまで | 140円 |
150gまで | 210円 |
250gまで | 250円 |
定形外郵便物(規格外)
50gまで | 200円 |
100gまで | 220円 |
150gまで | 300円 |
250gまで | 350円 |
内容証明料金
謄本 | 1枚 | 2枚 | 3枚 | 4枚 | 5枚 |
料金 | 480円 | 770円 | 1,060円 | 1,350円 | 1,640円 |
書留料金
損害要償額が10万円までのもの | 480円 |
損害要償額が10万円を超えるもの | 10万円を超える5万円までごとに23円増 |
オプションサービス料金
速達 | 250gまで 260円 |
配達証明(差し出しの際) | 350円 |
配達証明(差出後) | 480円 |
謄本が1枚の内容証明を、25g以内の定形郵便物として、配達証明をつけて差し出す場合の料金の例
84円(郵便料金)+480円(内容証明)+480円(一般書留)+350円(配達証明)
=1,394円
3.控えを保管する
3部作成したうちの1部は差出人用の控えです。控えは、持ち帰ってなくさないように保管してください。また、書留郵便物受領証も、後に必要になる場合があるため忘れずに受け取って保管してください。
4.配達証明を受け取る
配達証明を付けて内容証明郵便を送った場合は、後日配達した日付が書かれたハガキが届きます。これをもって、相手が内容証明郵便を受け取ったことが確認できます。
また、配達された後から配達証明を利用することも可能で、その場合は発送時の受領書を持って郵便局に行くことで、証明書を受け取ることができます。発送時に配達証明を付けるよりも少し手数料が上がりますが、自分の家族に内容証明郵便を送ったことを知られたくない場合などに役に立ちます。
相手が内容証明郵便を受け取ったらどうなる?
内容証明郵便を受け取った相手方の行動は、請求に対して何らかの対応をするか、無視するかです。
相手方からも内容証明郵便で返事がくるかもしれませんし、弁護士をつけて連絡をしてくる可能性もあります。
相手がこちらの請求を無視した場合や、請求に応じないと宣言してきた場合は、話し合いでの決着は難しいと思われます。弁護士などの第三者を通して交渉を図るか、調停・審判を起こすことになるでしょう。
弁護士などの専門家に任せることもできる
内容証明郵便を個人で作成するのが難しいと感じた場合は、弁護士など専門家に依頼して作ってもらうことも可能です。内容証明に弁護士の名前も併記してもらうこともでき、相手により強いプレッシャーを与えられるでしょう。
弁護士は、内容証明の作成代行ができるだけでなく、請求内容の検討や交渉や調停、裁判も任せることができます。調停や裁判を起こしたら勝てそうか、どういった請求をすれば交渉が有利になるかなどの、法的な判断を含むアドバイスを受けられます。
行政書士・司法書士も内容証明郵便の作成代行を行っています。ただし、弁護士と違って内容に関する法的な判断をすることができません。また、その後の交渉や裁判の業務も法律上取り扱えません。弁護士に比べて安価で依頼できるというメリットがありますが、できないことが多い点には注意が必要です。
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e内容証明(電子内容証明)といって、インターネットを通じて内容証明郵便を24時間発送することができるサービスがあります。Wordファイルで作成した内容証明文書をWebゆうびんのサイトにアップロードすると、自動で印刷して発送してくれます。
料金は、クレジットカードまたは料金後納で支払います。料金のシステムは郵便局で差し出す場合と少し異なり、枚数が多い場合はe内容証明の方がお得です。また、近くに内容証明郵便を扱っている郵便局がない場合にも便利です。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了