離婚後の親権の決め方と争いで有利になるポイントを弁護士が解説

離婚後の親権者は、令和6年度司法統計によると調停・審判の約93.6%で母親に指定されています。厚生労働省の令和2年人口動態統計によると、未成年の子どもがいる離婚のうち約84.7%で母親が全児の親権を持ち、父親が持つケースは約11.8%にとどまっています。
もっとも、親権者の決定は「子どもの利益」を最優先に判断されるものであり、実際に子どもの世話を担ってきた父親が親権を得るケースもあります。
法務省の「協議離婚に関する実態調査」(令和2年度)では、別居にあたって子どもとどちらが暮らすかについて争いを経験した人が約44%にのぼっており、親権の問題は離婚を検討する多くの夫婦にとって重要な課題となっています。
この記事では、以下の内容を弁護士の法的見解を交えて解説します。
- 親権・監護権の法的な意味と内容
- 裁判所が親権者を決める5つの原則と判断基準
- 親権争いで有利になるための行動と避けるべき行動
- 親権者の決め方と手続きの流れ
- 2026年4月1日施行の民法改正(共同親権)の内容と影響
なお、2026年4月1日施行の民法改正により、離婚後に共同親権を選択できるようになりました。共同親権の詳しい内容は、本記事の後半で解説します。
目次
離婚後の親権とは
親権に含まれる2つの権利(監護権と財産管理権)
親権とは、父母が未成年の子どもに対して持っている権利・義務の総称です。
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
民法820条
親権とは、単に子どもと一緒に暮らすための権利ではありません。日常生活の世話や財産の管理など、幅広い権利と責任のまとまりを指します。その内容は大きく「監護権(身上監護権)」と「財産管理権」の2つに分けられます。

財産管理権は、子どもの財産を守るためのものです。具体的には、財産全体を管理する権限や、子どもがお金を使ったり契約を結んだりする際に同意を与える権限が含まれます。
一方、監護権には、子どもの生活に直接関わる次のような権限が含まれます。住む場所を決める居所指定、働く際に必要となる職業の許可、養子縁組など身分に関わる手続きへの同意や代理です。
「子どもと一緒に暮らす」という点に関しては、特に監護権が重要な役割を担います。
かつては親の権利として「懲戒権」が認められていましたが、体罰の正当化につながるおそれがあったため、令和4年12月の民法改正で削除されました。これにより、体罰や児童虐待を認めない姿勢が法律上も明確になっています。
親権は子どもが何歳まで?
親が子どもの親権を持てるのは、子どもが成人(18歳)になるまでです。2022年4月の成人年齢引き下げに伴い、親の持つ親権も18歳までとなりました。
したがって、子どもが18歳以上の場合は、親が離婚しても親権者を定める必要がありません。また、成人した子どもは、離婚時にどちらの親についていくのか、どちらの戸籍や苗字を選ぶのかを自分で決めることができます。
親権がないとできないこと
親権がないとできないことの主な例は以下のとおりです。
- 子どものパスポートを作成する
- 子ども名義の預貯金口座を作る
- 子どもの財産を管理・処分する
一方、親権がなくても、子どもと会って交流すること(面会交流・親子交流)は可能です。したがって、親権を手放したからと言って、二度と子供に会えなくなるわけではありません。
なお、親権を持たない親にも子どもを扶養する義務はあるため、子どもを養育する親権者に対して養育費を支払わなければいけません。
親権者と監護権者を別々に定めることも可能
親権を持つ人を親権者、監護権を持つ人を監護権者といいます。親権者と監護権者を別々に定めることも認められています。
この場合、財産管理権を親権者が、身上監護権を監護権者が持つことになります。親権者は預貯金や不動産などの財産管理を行い、監護権者は子どもと一緒に住み、衣食住の世話、教育、医療などを担います。
双方が親権を譲らないために話し合いが難航する場面では、親権と監護権を分けることで解決の糸口になる場合もあると考えられます。
なお、2026年4月1日施行の民法改正により、離婚後に父母双方を親権者(共同親権)とした場合でも、父母の一方を監護者と定めることができます。
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離婚後の親権はどちらが取りやすい?
母親が親権者になる割合
離婚後の親権者は、令和6年司法統計によると調停・審判の約93.6%で母親に、約8.1%で父親に指定されています。
また、厚生労働省の令和2年人口動態統計によると、未成年の子どもがいる離婚全体では、約84.7%で母親がすべての子どもの親権を持ち、父親が全児の親権を持つケースは約11.8%にとどまっています。
これらの統計からわかるように、離婚後の親権者は母親となるケースが圧倒的に多い状況にあります。ただし、統計には争いなく話し合いで決まったケースも多く含まれており、親権争いにおいて常に母親が有利とは一概には言えません。
親権争いで母親が有利になる理由
離婚後に母親が親権者となることが多い背景には、「母性優先の原則」と「継続性の原則」という考え方があります。
母性優先の原則は、特に乳幼児について母親の養育が子どもの利益にかなうとするものです。ただし現在は、生物学的な母親かどうかではなく、実際に育児の中心を担ってきたかが重視されます。そのため、主に子育てをしてきた父親が有利に判断されることもあります。
継続性の原則は、子どもの安定した生活環境や精神的なつながりを維持することを重視する考え方です。監護の実態や日常的な関わりを踏まえ、親としての適格性に大きな差がなければ現状維持が優先される傾向にあります。
裁判所は、父母や家庭の状況など一切の事情を考慮し、「子の利益」を最優先に親権者を判断します(民法819条)。形式ではなく、誰が主に監護を担い、子どもと強い信頼関係を築いているかが重視されます。
父親が不利になる理由と親権を取れるケース
父親が親権を取りにくい主な理由は以下のとおりです。
- 仕事で子育ての時間が取りづらい
- 母親が主に世話をしていたケースが多い
- 子どもが母親になついている場合が多い
一方、以下のようなケースでは父親が有利になります。
- 父親が継続的・安定的に監護を行ってきた場合
- 母親が子どもを虐待していたり、母親の監護能力に問題がある場合
- 子どもが父親と暮らすことを望んでいる場合
- 父親と暮らした方が、現状の生活環境を維持できる場合
- 子どもがある程度大きい場合(母性優先の原則の影響が薄れる)
なお、2026年4月1日施行の民法改正により、「どちらが親権を取るか」という争いだけでなく、父母双方が親権を持つ共同親権という選択肢も生まれています。共同親権の詳しい内容は本記事の後半で解説します。
法務省の調査にみる親権争いの実態
法務省の「協議離婚に関する実態調査」(令和2年度)によると、別居にあたって子どもとどちらが暮らすかについて何らかの争いを経験した人は約44%にのぼっています。内訳は「激しくあった」12.8%、「あった」17.2%、「どちらかといえばあった」14.2%です。
また、親権について話し合いを行った人のうち、合意に至れなかったケースは約20%にのぼっています。
親権の問題は、離婚を検討する夫婦の約半数が何らかの形で直面する課題であることがわかります。
裁判所が親権者を決める5つの原則と判断基準
裁判所が親権の判断をするときに最も重視するのは子の利益です。
親権の判断基準が法律で定められているわけではありませんが、裁判では以下の5つの原則と具体的な要素が考慮されます。
親権の判断に用いられる5つの原則
- 継続性の原則
- 母性優先の原則
- 子の意思の尊重
- きょうだい不分離の原則
- 面会交流に対する寛容性の原則
1.継続性の原則
今まで子どもの世話を主として行っていた親に、継続的に監護をさせることを裁判所は非常に重視しています。
特段の事情がない場合は、それまで子どもの世話を主として行っていた親がそのまま親権者に指定されることが多い傾向にあります。
東京家判令和3年3月26日判決
長男が3年近くにわたり母親と同居して監護養育を受けていたことを根拠に、子の福祉の観点から母親を親権者とすることが相当と判断されました。
2.母性優先の原則
母性優先の原則とは、特に乳幼児(0〜5歳程度)については、母性的な関わりをしてきた方の親に親権を認めるべきだという考え方です。
重要なのは、母親が必ずしも有利なのではなく、母性的な関わりを持ってきた方の親が有利であるという点です。現代の家庭裁判所実務では、性別よりも実際の監護実態が重視されるため、主に育児を担ってきた父親が有利に判断されるケースもあります。
3.子の意思の尊重
ある程度の年齢になると、子どもがどちらの親と暮らしたいかも尊重されるようになります。15歳以上であれば子どもの意思は必ず確認されます(家事事件手続法第152条第2項)。また、10歳程度でも子どもの意思を確認することがあります。
千葉家判令和4年12月14日判決
長男は父親との生活を望み、二男は母親との暮らしを希望していました。二男には長男と一緒にいたいという思いもありましたが、父親の暴力を恐れている事情も認められています。こうした点を踏まえ、二男の親権者は母親、長男については父親が親権者と判断されました。
4.きょうだい不分離の原則
きょうだいは精神的にも情緒的にも強いつながりを持っているため、むやみにきょうだいを分離させるべきではないとされています。
5.面会交流に対する寛容性の原則
両親と交流して愛情を受けることは、子どもの健全な成長のために必要不可欠です。積極的に相手との面会交流(親子交流)を認める姿勢は、親権者を判断するにあたってプラスに評価されます。この原則は「フレンドリーペアレントルール」とも呼ばれています。
親権争いで重視されるその他の要素
5つの原則のほかにも、裁判所は以下のような要素を総合的に考慮して判断します。
- これまでの監護実績
どちらが食事を作って食べさせていたか、一緒に入浴していたか、保育園・幼稚園の送り迎えをしていたかなど、具体的な監護の実績が確認されます。 - 子どもに対する愛情
実際にどのくらい子どもと一緒に過ごしていたかで判断されることが多く、ネグレクトや虐待があればマイナスの要素になります。 - 心身の健康状態
身体的・精神的に、子どもの監護ができる健康状態であるかが見られます。 - 子どもと一緒に過ごせる時間
子どもの年齢が低い場合は特に、子どもと過ごす時間を多くとれるかが重視されます。 - 居住・教育環境
子どもを住まわせる予定の住居や周辺環境、近くの学校などが子どもの養育に適切かどうかも考慮されます。 - 監護補助者の有無
実家の両親(子どもから見ると祖父母)や友人が手伝ってくれたり、保育園に入園できる見込みがあるならば有利に働きます。 - 経済状況
子どもを安定して養えるだけの経済力があるかは判断材料の一つとされます。
離婚原因は親権争いにどう影響するか
「離婚の原因がどちらにあるか」と「親権者をどちらにするか」は別問題です。親権は、あくまで子どもの利益の観点から決めるべきものだからです。
したがって、妻の不倫が原因で離婚に至った場合でも、妻が親権者となることは十分にあり得ます。ただし、不倫のせいで子どもの世話がおろそかになっていたなどの事情があれば、親権の判断にネガティブな影響を与える可能性があります。
親権争いで有利になるためにすべきこと
調停や裁判で親権を得るためには、以下の3つの行動が有効です。
- 自分が親権者としてふさわしいという証拠を用意する
- 相手が親権者としてふさわしくないという証拠を用意する
- 相手との面会交流(親子交流)を積極的に認める
自分が親権者としてふさわしいという証拠の集め方
裁判所は、今まで子どもの世話をしてきた親に引き続き監護をさせることを重視しています。自分がこれまで子どもの監護を担ってきた事実と、今後も監護できる見込みを、調査官・調停委員・裁判官にアピールすることが重要です。
監護実績を示す証拠としては、以下のものが有効です。
- 子どもの監護に関する陳述書
- 母子手帳
- 幼稚園や保育園の連絡帳
- 通知表
- 健診の記録
また、今後の監護能力を示すためには、以下のような点もアピールすることを検討してください。
- 仕事を調整して早く帰宅できる、または在宅勤務に切り替えられる見通し
- 実家の両親(子どもから見ると祖父母)など、監護を手伝ってくれる人がいる
- 子育てに適した居住環境が整っている、または引っ越しを検討している
家庭裁判所の調査官が祖父母への聞き取りを行うこともありますので、事前に準備しておくことが重要です。
相手が親権者としてふさわしくないという証拠の集め方
相手が子どもを虐待している、不倫相手の家に入り浸って家事・育児をおろそかにしている、病気で子どもの世話ができない状態であるといった事情を証明できれば、相手が親権者としてふさわしくないと判断してもらえる可能性が高まります。
証拠としては、以下のようなものが有効です。
- 子どもが虐待によって負った怪我の写真や診断書
- 虐待の様子を映した写真や動画、音声
- 虐待を公的機関へ相談した際の記録
- 家事を怠ったために荒れてしまった部屋の写真
- 配偶者の病気の診断書
配偶者に対する対抗心など、子どもの利益とは無関係な動機から親権を主張するケースも少なくありません。そのような場合は、当初から弁護士に依頼し、相手に子どもの監護が本当に可能かどうかを冷静に確認していくことが重要です。
面会交流を積極的に認める姿勢を示す
父母との面会交流(親子交流)は、子どもが健やかに育つために非常に重要です。面会交流を積極的に認める姿勢を示すことで、自分が子どもの利益を最優先にしていることをアピールでき、調停や裁判において有利に働きます。
モラハラや暴力など子どもに危害が及ぶような事情がないにもかかわらず面会交流を拒み続けている場合、子どもの利益よりも自分の心情を優先する行為として不利に評価される可能性があります。
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親権争いでやってはいけない4つの行動
以下のような行為は子どもの利益に反するものであり、調停・裁判でも不利に働くため避けるべきです。
- 子どもの連れ去り
- 子どもを置いて家出する
- 子どもに相手の悪口を吹き込む
- 面会交流を拒む
子どもの連れ去り
相手が監護している子どもを黙って連れ去ったり、面会交流のあとに子どもを返さずに連れ去る行為は、子どもの利益を害するだけでなく、未成年者誘拐という犯罪行為になってしまう可能性があります。そのような行為があると、親としての適格がないと判断されかねません。
相手のもとにいる子どもを取り返したいと思ったら、自力で実現するのではなく、法的な手段を用いて正当に取り返すことを目指すことが重要です。
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子どもを置いて家出する
相手とこれ以上暮らしたくないと思っても、子どもを置いて家出・別居をするのは得策ではありません。
相当な理由がない限り、子どもを置いての家出は育児放棄とみなされて親権争いで不利に働く可能性があります。
子どもに相手の悪口を吹き込む
ある程度の年齢になると、調停や裁判で子どもの意思も重視されるようになります。しかし、自分に有利な発言をさせるために子どもに相手の悪口を吹き込むのは避けるべきです。
子どもにとっては大切な親への悪口を聞かされることで心に傷を作ってしまうだけでなく、裁判所の調査官や調停委員・裁判官の心証も非常に悪くなります。
面会交流を拒む
離婚前の別居中でも面会交流(親子交流)は可能であり、積極的に認めるべきです。
モラハラや暴力など、子どもに危害が及ぶような事情がないにもかかわらず面会交流を拒み続けている場合、子どもの利益よりも自分の心情を優先する行為として、調停や裁判において不利に働く可能性があります。
養育費の不払いをちらつかせた親権の要求には応じなくてよい
親権争いの場面で、相手が「親権をこちらに渡さないなら養育費は払わない」などと言ってくることがありますが、その主張に応じる必要はありません。
養育費は父母それぞれが負担する義務を負っており、子どもは受け取る権利を持っています。親権の代償として消滅するような性質のものではないため、調停や裁判ではそのような主張は認められません。
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離婚時の親権者の決め方と手続きの流れ
離婚時に親権者を決める手続きは、大きく分けて「協議」「離婚調停」「離婚裁判」の3つです。また、離婚後に親権者の変更を希望する際は、別の手続きが必要です。
父母の協議(協議離婚)
親権者だけでなく離婚に伴うあらゆる取り決めは、夫婦で話し合って決めるのが基本です。当事者間の話し合いで離婚を決めることを、協議離婚といいます。
協議離婚の場合は、親権者を決めるための特別な手続きや書類は必要なく、離婚届の提出だけで手続きが完了します。離婚届の「未成年の子の氏名」の欄に、親権を持つことになる子どもの名前を記入します。
2026年4月1日施行の民法改正により、未成年の子どもがいる場合、離婚届には親権の種類(共同親権または単独親権)の選択と、「親権行使の意味を理解し、真意に基づいて合意した」旨のチェック記入が必要になりました。
この確認がないと、離婚届が即日受理されない場合があります。手続きの詳細は自治体によって異なる場合があるため、提出前に窓口でご確認ください。
なお、子どもが複数人いる場合、夫と妻がそれぞれ別の子どもの親権を持つことも制度上は可能ですが、きょうだいと離れ離れになってしまう子どもたちの心情への配慮が必要です。
離婚調停
当事者間の話し合いで決着がつかなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
離婚調停とは、調停委員会が夫婦それぞれと面談を行い、双方の意見を調整する手続きです。調停委員会は家庭裁判所の裁判官および2名以上の調停委員によって構成されます。
離婚調停では親権だけでなく、慰謝料や財産分与、養育費や面会交流など、さまざまな条件について話し合うことができます。双方が離婚の条件に合意すれば調停は成立となり、その時点で離婚が成立して親権者が定まります。
調停での解決が困難だと調停委員会が判断した場合は、調停は不成立となって終了します。
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調停に代わる審判
離婚調停が不成立になりそうな場合、家庭裁判所が調停委員の意見を聴いたうえで、職権で調停に代わる審判を行うことがあります。調停に代わる審判によって審判離婚が命じられる場合、親権者も併せて決められます。
ただし、調停に代わる審判は、当事者が審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てると効力が失われます。そのため、親権の帰属について争いがある事案で調停に代わる審判が行われることは通常なく、このような場合は離婚訴訟の中で解決を図ることが一般的です。
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離婚裁判(訴訟)
調停が成立しなかった場合は、離婚裁判(離婚訴訟)を起こして争うこともできます。
訴訟では、裁判官が夫婦から話を聞いたり証拠を調べたりしながら、離婚を認めるかどうか、父母の双方を親権者とする共同親権とするか父母の一方を親権者とする単独親権とするかなどを判断します。
訴訟中に裁判官から和解を勧められることもあります。双方が同意すれば和解が成立して訴訟は終了します。和解ができなかった場合は、裁判官によって判決が下されます。判決は2週間以内に控訴をしなければ確定し、覆すことができなくなります。
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家庭裁判所調査官の調査について
調停や裁判で親権を争うことになると、多くの場合家庭裁判所調査官が子どもたちの様子や家庭環境などの調査を行います。
調査官は心理学や社会学の専門家であり、調停や裁判ではこの調査結果が非常に重視されます。調査の主な手段は、子どもや親との面談、家庭訪問、学校や保育園・幼稚園への訪問などです。調査官はこれらを通じて子どもの身なりや健康状態、監護状況、成績や生活態度、表情などを確認し、調査報告書を作成します。
子どもが現在の監護者のもとで健全に育っていると証明されれば、現在子どもを監護している親にとって有利に働きます。
離婚後の親権者変更と共同親権への切り替え
離婚時に決めた親権者をあとから変えるには、親権者変更調停・審判を申し立てる必要があります。離婚後は父母の合意だけで親権を変更することはできません。
親権者変更調停が不成立になった場合は自動的に審判に移行し、裁判所の判断で親権者が決まります。親権者の変更は、子の利益のために必要があると認められる場合に限り認められます(民法第819条第6項)。
一方、監護権者は、父母の合意があれば変更することができます。当事者間の話し合いで合意ができなかった場合は、子の監護者の指定調停・審判を申し立てて争うことになります。
なお、2026年4月1日施行の民法改正により、家庭裁判所に親権者変更を申し立てることで、離婚後でも単独親権から共同親権へ切り替えることが可能になりました。
DVや虐待のおそれがある場合や父母が共同して親権を行うことが困難な場合は、共同親権への変更は認められません。また、養育費の支払いを長期間にわたって合理的な理由なく怠っている場合は、共同親権への変更が認められにくいと考えられます。
共同親権の導入で離婚後の親権はどう変わる?
2026年4月1日施行の民法改正により、離婚後の親権制度が大きく変わりました。これまでは離婚後、父母のどちらか一方のみが親権者となる単独親権のみでしたが、父母の協議によって「共同親権」か「単独親権」かを選択できます。
話し合いがまとまらない場合や裁判離婚の場合は、家庭裁判所が子どもの利益の観点から判断します。DVや虐待のおそれがある場合など、共同親権とすることで子どもの利益を害すると認められるときは、必ず単独親権となります。
2026年3月31日以前に離婚して単独親権となっている場合、自動的に共同親権へ切り替わるわけではありません。共同親権への変更を希望する場合は、家庭裁判所への申立てが必要です。
離婚後の親権に関するよくある質問
Q. 親権争いは母親が有利?
離婚後の親権者は、令和6年度司法統計によると調停・審判の約93.6%で母親に指定されており、結果として母親が親権者となるケースが多い状況です。ただし、裁判所は「子の利益」を最優先に判断するため、監護実績のある父親が親権を得られるケースもあります。なお、2026年4月1日施行の民法改正により、父母双方が親権を持つ共同親権という選択肢も生まれています。
Q. 専業主婦でも親権を取れる?
専業主婦でも親権を取ることは十分に可能です。裁判所は経済力よりも監護実績・監護能力を重視しており、養育費や公的扶助の受給が期待できるため、収入が少ないことが直接的に不利になることはありません。
Q. 離婚後に親権を放棄できる?
相手方が親権者になることに合意していれば、実質的に親権を持たない形での離婚は可能です。ただし、父母の双方が同時に親権を放棄することはできません。離婚後にやむを得ない事情が生じた場合は、家庭裁判所への親権辞任の申立てが認められることがあります。
弁護士に相談して離婚時の親権争いを有利に進めよう
離婚時には、未成年の子どもがいる場合に必ず親権者を決めなければなりません。原則として父母の協議で親権者を決めますが、話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所に離婚調停を申し立てて解決を図ることになります。
親権争いは、離婚の交渉がこじれてしまう原因のひとつです。
法務省の「協議離婚に関する実態調査」(令和2年度)によると、別居にあたって子どもとどちらが暮らすかについて争いを経験した人は約44%にのぼっており、早めに専門家のサポートを受けることが重要です。
弁護士に依頼することで、以下のようなサポートを受けることができます。
- 法律の専門家として、有利な主張・立証を行うことができる
- 調停・審判・裁判の各手続きを熟知しているので、適切なアドバイスやサポートを受けることができる
- 感情的になりやすい紛争において、冷静に判断・行動することができる
- 煩雑な手続きを任せることで、自分の負担を軽減できる
親権のことで配偶者とぶつかってしまったら、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
「きょうだい不分離の原則」と「面会交流に対する寛容性の原則」はどちらかといえば補充的な考慮要素であり、継続性の原則や母性優先の原則ほど強く影響するものではありません。