離婚の引っ越しにはいくらかかる?夫に引っ越し費用を請求できる?
離婚や別居に伴って引っ越しをする場合、ある程度まとまった費用が必要です。しかし、自分の貯金だけでは足りなかったり、夫婦の口座にお金を入れてしまっているために、離婚をためらっているという方もいるでしょう。
そういった方でも、引っ越し資金を用意できる方法はあるのでしょうか。
また、夫のせいで離婚することになったのだから夫に引っ越し費用を請求したいと考える方は多いですが、それは可能なのでしょうか。
離婚する時の引っ越し費用は、少なくとも家賃の5倍程度の初期費用と平均4~8万円程度は見ておく必要があり、引っ越し人数や距離、お子様にかかる費用などにもよります。
この記事では、離婚時の引っ越しに必要な費用がいくらなのか、夫に費用を請求することができるか、費用を用意する方法はあるかなどについて解説します。
目次
夫に引っ越し費用を請求できる?
離婚時に夫に引っ越し費用を請求できる?
離婚・別居の原因が夫にある場合や、夫の収入が自分より多い場合、夫に引っ越し費用を請求したいと思うのは自然です。
夫が同意するのであれば、引っ越し代を支払ってもらうのは問題ありません。離婚に応じる条件として、引っ越し代を負担したり、財産分与や慰謝料を上乗せしてもらうように交渉することも可能です。
ただし、配偶者に別居費用や引っ越し費用を請求できる法律上の権利はなく、夫にも応じる義務はありません。
したがって、財産分与や慰謝料、養育費などのように、法的な手続きによって強制的に支払わせることはできません。
婚姻費用に引っ越し費用は含まれる?
離婚前に別居している場合は、別居中の生活費として婚姻費用を受け取ることができますが、引っ越し費用は婚姻費用に含まれないとされています。
別居中の婚姻費用は、夫婦の扶助義務に基づき、収入の多い方から少ない方へ毎月決まった額を送金する形で支払われます。
相手が支払いに応じない場合は、婚姻費用分担請求調停・審判を申し立て、最終的には強制執行によって支払いを実現させることができます。
引っ越し費用を婚姻費用として請求できれば理想的ですが、それは原則としてできません。
とはいえ、毎月の生活費として受け取る婚姻費用を引っ越し費用に充てることは可能ですし、交渉次第では、引っ越し費用を含めた婚姻費用の支払いに同意してもらえる可能性もあります。
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引っ越し費用を払ってもらいやすいタイミングはいつ?
引っ越し代を払ってもらえる可能性を少しでも高めたいならば、引っ越しは離婚届を提出する前に行うことをおすすめします。
先に離婚すると、引っ越し用に貯めていた費用も財産分与の対象だと主張され、自分の貯金が減ってしまう可能性があります。
また、交渉次第では引っ越し費用を婚姻費用に含めて払ってもらえる可能性がありますし、引っ越し費用の負担を離婚に応じる条件としている場合には、確実に支払わせる動機になります。
なお、離婚が成立した後で引っ越し費用を払うように頼んでも、応じてもらえないことがほとんどでしょう。
特に、離婚時に清算条項(これ以上の金銭の請求をしない旨の約束)を盛り込んだ離婚協議書や公正証書を作成している場合は、後から引っ越し費用を請求するのはほぼ不可能です。
離婚したいけど引っ越し費用がない!
離婚・別居したいけれど引っ越しができるほどの資金がないという方でも、以下の方法で引っ越し費用を確保できる可能性があります。
夫に引っ越し費用の負担を頼む
夫が引っ越し費用の負担に同意してくれそうであれば、夫に頼んでしまいましょう。分担の割合も自由に決めることができます。
「引っ越し費用を払ってくれるなら、離婚してもいい」などと、離婚交渉の切り札として使うことも可能です。
財産分与や慰謝料から支払う
離婚時には、財産分与や慰謝料といった形で、夫からお金を受け取れる場合があります。
財産分与や慰謝料の支払いは、離婚前にしても離婚後にしても構いませんので、先に受け取ってそこから引っ越し費用を支払うこともできます。
支払いの時期については、引っ越しのタイミングを踏まえて相手と相談しましょう。
国や自治体の支援制度を利用する
母子家庭や寡婦(夫と死別・離婚した女性)が受けられる支援制度が、国や自治体によって用意されています。
母子父子寡婦福祉資金貸付金
母子父子寡婦福祉資金貸付金とは、20歳未満の子どもを扶養している母子家庭や父子家庭、寡婦の経済的自立を支援するために、自治体から資金を貸付する制度です。
一定の条件を満たせば様々な用途で貸付を受けることができ、転宅資金としては最大26万円を借りることができます。
貸付金ですので、6か月の据置期間ののち3年以内に償還する必要があります。据置期間中は、利息のみの返済が可能です。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度とは、所得の少ない世帯や障害者、高齢者のいる世帯が安定した生活を取り戻せるよう、自治体が資金の貸付を行う制度です。
住宅入居費として最大40万円を借りることができます。
貸付金ですので、6か月の据置期間ののち10年以内に償還しなくてはなりません。据置期間中は、利息のみの返済が可能です。
自治体の住宅助成制度
自治体によっては、ひとり親家庭や低所得世帯の引っ越し費用や家賃を補助する制度を用意しています。
まずは、ホームページや役所でお住まいの自治体の制度について調べてみてください。
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引っ越し費用を用意するタイミングはいつ?
引っ越し費用は、以下のタイミングで用意する必要があります。
家の初期費用は、入居審査通過から1〜2週間ほどの期限内に一括で支払うのが一般的です。支払いは現金、銀行振り込みのほか、クレジットカードが使えることもあります。
引っ越し業者の代金は、引っ越し作業当日に支払うのが一般的です。クレジットカードで決済できる引っ越し業者もありますが、カード決済を利用したい場合は、必ず見積もり時に申し出るようにしてください。
なお、国や自治体の公的支援は、引っ越した後で支給・貸付を受けるものが多いため、いったんは自分で引っ越し費用を支払う必要があります。
離婚時の引っ越し費用はいくら?
賃貸の初期費用は家賃の5倍程度
賃貸物件を借りる場合は、敷金、礼金、仲介手数料だけでなく、火災保険料や鍵の交換費用などの初期費用が必要になります。
これらを合わせると、家を借りる際の初期費用は1か月の家賃の5倍程度になると言われています。例えば、家賃が5万円の物件を借りるとすると、25万円程度の初期費用が必要になります。
家やマンションを買う場合は、頭金、手付金、仲介手数料などの初期費用が必要になります。住宅ローンを組んで戸建て住宅を購入する場合の初期費用は物件価格の10〜15%程度、新築マンションを購入する場合は物件価格の3〜5%程度、中古マンションを購入する場合は物件価格の6〜10%と言われています。
したがって、4,000万円の新築マンションを購入する場合、初期費用として120万〜200万円程度が必要になります。
引っ越し費用の相場は4万~8万円程度
引っ越しには、業者に頼む方法と、自力で荷物を運ぶ方法があります。
引っ越し業者に依頼する場合の費用は、荷物の量、移動距離、時期によって大きく異なります。単身の場合の引っ越し費用の相場は、4万〜8万円程度といわれています。
3、4月は引っ越し業者の繁忙期で、費用も高くなります。繁忙期を避けることで費用を抑えることができます。
自分で引っ越しする場合は、レンタカーやダンボールなどの費用が必要になります。例えば、軽トラックを24時間レンタルする場合、5,000~9,000円程度が相場となっています。
ダンボールは購入してもよいですが、スーパーやドラッグストアなどで無料で貰ってくることもできます。
人手や時間が確保できるのであれば、自分で引っ越し作業をする方が費用を抑えられるでしょう。
保育園・幼稚園の費用
引っ越しに伴って保育園・幼稚園を転園したり、新たに入園する場合、初期費用が必要になります。
認可保育園の場合は、入園費用はかかりません。認可外保育園の場合は1万〜5万円程度の入園料がかかることが多いようです。制服のない園がほとんどですが、上履き、お弁当箱、通園バッグ、お昼寝布団などの用意が必要です。これらは5,000~1万円程度で揃えることができます。
幼稚園の場合、園によって5万〜30万円という高額な入園料がかかるほか、制服代、教材費などが必要になります。このように、幼稚園は保育園に比べて費用が高額であることが分かります。
なお、保育園・幼稚園の月々の利用料については、令和元年10月より無償化がスタートしています。3〜5歳は基本的には無料(上限あり)になったほか、住民税非課税世帯であれば0〜2歳も無料になっています。
ただし、施設費、給食費、通園送迎費、PTA会費、行事費等は無償化に含まれないため、完全に無料になる訳ではない点には注意してください。
転校・学童保育の費用
引っ越しにより転校が必要になった場合、公立の学校であれば転校自体に費用はかかりませんが、制服や体操服などを買い揃える必要があります。合わせて8〜10万円程度は見ておいた方がよいでしょう。
ただし、転校前の体操着などを引き続き使ってよいとしている学校もあります。
私立の学校に転入したい場合は、検定料や入学金・学費などのほか、制服や体操服などの購入も必要です。また、子どもを学童保育などに預ける場合の費用は、公設の学童保育であれば月に3,000〜7,000円程度、民間であれば3万〜5万円程度が相場となっています。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
なお、婚姻費用は婚姻中の生活費ですので、離婚後には一切請求することができません。