車は離婚時に財産分与の対象になる?分け方や手続きを解説

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離婚時の財産分与において、車の分け方が問題になることがあります。

車の財産分与の主な争点は、どちらが車を受け取るか、どのように自動車ローンを分けるか、車の価値をどのように評価するかなどです。

この記事では、車の財産分与の基本的な考え方、具体的な分け方、必要な手続きなどを解説します。

離婚したら夫婦の車はどうなる?

車も財産分与の対象

離婚時には、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を公平に分け合う財産分与を行います。

財産分与の対象となる財産は、預貯金や有価証券などの金融資産だけでなく、土地や住宅などの不動産、家財道具や骨董品などの動産のように多岐に渡ります。夫婦の持っている自動車も財産分与の対象です。

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対象になる場合とならない場合

離婚の時に夫婦が所有している車であっても、財産分与の対象にならない場合があります。

以下のようなものは、財産分与の対象にはなりません。

  • 婚姻前から所有していた車
  • 一方が親族から譲渡された車
  • 一方が相続した車
  • 独身時代から持っていた預貯金で購入した車

こういったものは、夫婦が協力して築いた財産であるとはいえないため、財産分与の対象ではありません。

ただし、これらにあたる車でも、夫婦が車検代や修理代を分担するなどして共同で維持していた場合には、夫婦の財産と捉えることもあります。

なお、車の名義は問われません。どちらか一方の名義の車であっても、婚姻中に取得したのであれば、基本的には財産分与の対象になります。

車の財産分与の方法

原則として、財産分与の割合は2分の1ずつとされています。例えば、夫婦の預金が合わせて1000万円あるならば、それぞれが500万円ずつ受け取ります。

しかし、車を半分に分けたり、2人で共有するのは現実的ではありません。

そのため、どちらかが車を受け取り、その半分の価値の財産をもう一方に渡すという方法でバランスを取るのが一般的です。

例えば、査定額が100万円の車を夫が取得する場合、代償金として半分の50万円を夫から妻に渡すことで、双方が同じ分(50万円分の価値)の財産を受け取ったということになります。

また、離婚後に車を使う予定がないならば、車を売却して売却代金を半分ずつに分けるのもよいでしょう。

車にローンが残っていたら?

ローンのある車の分与方法

ローンが残っている車の財産分与は、通常よりも複雑です。

アンダーローンの場合

アンダーローンとは、現在の査定価格がローンの残債を上回る状態をいいます。

自動車がアンダーローンの場合、実質的な車の価値は、査定価格からローンの残債を差し引いた額です。したがって、その部分を半分ずつに分け合うことで財産分与を行います。

例えば、査定額が150万円、ローン残債が100万円の車を、夫が受け取るとします。この場合、実質的な車の価値は50万円です。その半分である25万円を夫から妻に渡せば、双方が25万円分の財産を受け取ったことになります。

オーバーローンの場合

オーバーローンは、車の価値がローンの残債を下回る状態です。

自動車がオーバーローンの場合、車の価格からローンを差し引くと、価値がマイナスになってしまいます。

この場合、マイナスの部分を2人で分担するという考え方と、車の財産分与自体を行わないという考え方がありますが、後者の方が一般的なようです。

いずれの場合も、離婚後にローンを返済し続けるのは、ローンの名義人です。

名義の変更

離婚に伴い車の持ち主を変える場合は、車検証の名義変更手続きが必要です。しかし、自動車ローンの返済中は、車の所有者が自分ではなくディーラーやローン会社になっている場合が多いです。

自分が所有者ではない場合、勝手に車の名義を変更したり、売却することができません。勝手に売却する行為は契約違反にあたり、残りのローンの一括返済を求められる可能性もあります。

車の名義を変更するには、ローンを完済して所有権解除手続きを行わなければなりません。

または、所有者の名義はそのままにして、車の使用者のみを変更するという方法があります。この場合も、所有者であるローン会社などに所有者名義変更の相談をしておく必要があります。

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車の財産分与の手続き

車の査定額を調べる

財産分与の話し合いを始める前に、車の査定額を調べましょう。

車の査定額を知るには、レッドブックを参照する方法や、中古車査定サイトを利用する方法、実際に査定に出す方法などがあります。

レッドブックは、正式名称を「オートガイド自動車価格月報」といい、自動車販売業者、金融機関、損害保険会社、法曹関係者など、幅広い業界で利用されている自動車価格情報誌です。

ただし、レッドブックは個人での入手が難しいほか、掲載されている価格が実際の取引価格とは異なる可能性があるため、査定サイトを利用したり、ディーラーや中古車買取店などに査定を依頼するほうが簡単で確実かもしれません。

査定の方法や査定額は、夫婦の間で争いになりやすい部分です。

査定額が高いほど、車を受け取った側からもう一方へ支払う代償金も高くなります。したがって、車を受け取る側からすれば、なるべく安い査定額を出して、相手に支払う金額を少なくしたいと思うでしょう。

反対に、代償金を受け取る側は、なるべく高い査定額を採用すれば、多くの代償金を受け取れます。

査定についての争いに決着がつかない場合は、弁護士に依頼したり、調停を起こしたりして、第三者を挟んで話し合いを行うのがよいでしょう。

自動車ローンの残高を調べる

自動車ローンが残っている場合は、ローンの残高を調べておく必要があります。

現在のローン残高は、ローン会社の会員サイトや、契約時に受け取った支払金一覧表、電話などで確認することができます。

また、ローンの名義人や契約内容も把握しておきましょう。

財産分与の話し合いを行う

現在の車の価値が分かったら、夫婦でどのように分けるかの話し合いを行います。車だけでなく、他の財産の分与についても併せて話し合いましょう。

財産分与の話し合いを離婚前に行い、離婚と同時に手続きを済ませるのが一般的ですが、離婚後も2年以内であれば財産分与の請求が可能です。

夫婦の話し合いで決めるのが難しければ、弁護士に依頼して交渉を頼んだり、家庭裁判所の調停で話し合うこともできます

離婚前であれば、離婚に関する問題について総合的に話し合う離婚調停(夫婦関係調整調停)を、離婚後であれば財産分与請求調停を利用できます。

離婚協議書・公正証書を作成する

財産分与やその他の離婚条件が決まったら、離婚協議書公正証書を作成しておくことをおすすめします。

口頭での取り決めだけでは、自動車の引き渡しや名義変更手続きをきちんと履行してくれない可能性があるため、このように約束を書面にしておくことは重要です。

離婚協議書の記入例

第〇条(財産分与) 財産分与は、次のとおり合意した。

(1)現金

・・・・・・・・・・。

(2)自動車

甲は乙に対し、財産分与として下記の自動車を譲渡し、令和〇年〇月〇日までに所有権移転登録手続をする。登録手続き費用は甲が負担するものとする。

     登録番号 〇〇〇〇〇〇〇〇

     種  別 普通

     車  名 〇〇

     形  式 〇〇〇〇〇〇

     車台番号 〇〇〇〇〇〇

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車の名義変更をする

車の持ち主が変わる場合は、車検証の名義変更が必要です。

車検証の名義変更は、正式には移転登録といい、管轄の運輸支局または軽自動車検査協会に書類を提出することで行えます。

名義変更の手続きには、旧所有者が捺印した委任状や譲渡証明書が必要ですので、配偶者にも協力してもらわなければなりません。

名義変更の手続きには、以下の書類が必要です。

  • 申請書
  • それぞれの印鑑証明書
  • 有効期限内の車検証
  • 譲渡証明書(旧所有者が作成)
  • 新使用者の車庫証明書
  • 委任状

なお、名義の変更が生じた日から15日以内に車検証の名義変更を行わなければ、50万円以下の罰金が科されるとされています。実際に罰金が科されるケースは稀ですが、早めに手続きを行いましょう。

ローンが残っている車の名義変更については、まず車の所有者であるディーラーやローン会社に確認を取ってください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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