会社売却の流れを解説!手続きや手順の注意点は?
- 会社売却の流れとは?
- 会社売却で注意すべき手続き・手順は?
- 買い手探しの段階でつまずいている…
このようなお悩みをお持ちではありませんか。
会社売却を検討していても、その後の手順が分からなければ、なかなか手をつけることができないものだと思います。
会社売却にとって適切な時期を逃さないためにも、会社売却の流れをつかんでおきましょう。
この記事では、早期リタイアや先行き不安、後継者不在、相続した会社を運営できないなど、さまざまな事情によって、会社・事業をやめたいと考えている方を対象にしています。
会社売却の流れや、注意すべき手続き・手順、買い手探しの方法などを解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
会社売却手続きの流れは?各手順の注意点は?
はじめに
会社売却の流れは、以下のようなものになります。
この記事では、おおまかな流れに沿って、個別に要所を取り上げて説明していきます。
①会社売却の目的・方針を検討
まずは、会社売却の目的や方針を検討するところから始めます。
ご自身が何のために会社売却をするのか、どのようなM&Aを望むのかを明確にして、会社売却で成し遂げたい具体的な目標をたてることが大切です。
いったん会社売却をすれば数年間は競業避止義務を負い、同種・同業をおこなえない可能性も高くなります。
そのため、会社売却の準備段階としては、会社運営から完全に離れる決意を固めることも重要です。
▼この手順の注意点
会社売却をする場合、M&A手続きは複数考えられますが、中小企業が会社売却をする場合、代表的な手続きは株式譲渡になるでしょう。
株式譲渡は、自社の株式を買い手に売却するというM&Aの手法です。
株式譲渡であれば、基本的には、個別契約や許認可の申請手続きなどを経なくても、従来どおりの会社の組織、権利、経営状態をそのまま引き継ぐことができるメリットがあります。
しかし裏を返せば、資産状況について十分な調査ができなければ、売り手企業にとって有利な資産がいつの間にか移転してしまうというデメリットが考えられます。
また、買収監査で不測の負債が発覚した場合、その後の交渉で不利になるというデメリットも考えられます。
関連記事
②買い手探しはM&A仲介会社に相談
会社売却をおこなうには、買い手を探す必要があります。
買い手探しには、M&A仲介業者の活用がおすすめです。
たしかに、買い手を自力で探すことができれば、M&A仲介手数料はかかりません。
しかし、現実問題として、自分ひとりで買い手を探すには限界があり、非効率です。
また、買い手探しという言葉が独り歩きして、信用不安情報が広まることは避けたいものです。
そのため、M&Aでは仲介をしてもらうのが最善の方法でしょう。
M&Aの仲介は、民間のM&A仲介会社、金融機関、各都道府県の事業承継・引継ぎセンターといった機関でおこなってくれます。
M&A仲介会社の場合は、全国規模で買い手を探すことができ、サービスも手厚い印象があります。
金融機関や事業承継・引継ぎセンターを相談先とした場合は、地元企業に強い仲介をしてくれる可能性が高いでしょう。
▼この手順の注意点
民間のM&A仲介業者は、サービス内容によって仲介手数料が変わります。
①M&Aのマッチングと必要最低限の手続きサポートを提供する業者や、②売り手と買い手の両者の相談に乗りつつ仲介を行う業者、③売り手・買い手のいずれかの専属アドバイザーとして仲介をする業者など様々です。
仲介手数料は通常、①<②<③の順に高額になる傾向があります。
かりに自社に顧問税理士などがいるのであれば、①でも足りる可能性があります。その場合は仲介手数料をおさえることができるでしょう。
一方で、企業価値を詳しく分析・評価してもらいたい、自社だけのアドバイザーをつけたい等のニーズがある場合は、仲介手数料が高額になりやすいものです。
M&A仲介業者を選ぶ際には、ご自身のニーズや予算を加味して選びましょう。
関連記事
③企業価値を評価する・ノンネームシート(NN)の準備
M&Aを進めるにあたって、企業価値の評価は非常に重要です。
企業価値の算定をすることにより、会社売却価格を想定することが可能になります。
また、ノンネームシートの作成の前提としても必要です。
ノンネームシートとは、具体的な企業名を特定できないかたちで、売り手の業種、所在地、財務情報、社員数などの企業概要について、まとめた書面です。
買い手候補が見つかったら、ノンネームシートを提示して、自社の情報を確認してもらいます。
そして、買い手候補となる企業に、会社売却に応じる意思があるかどうかを確認します。
▼この手順の注意点
企業価値評価の算定方法については、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどがあります。
アプローチごとに注目する要素が異なり、計算方法も異なります。
中小企業の場合は、時価純資産+営業利益の3~5年分という計算式が多用されることも多いでしょう。
関連記事
- M&Aの企業価値評価(バリュエーション)とは?会社の価格を決める要因と指標を分かりやすく解説
- M&Aの企業価値はどう計算する?会社の価格算出方法と計算式を解説!
- 企業価値向上でM&Aを成功させる!企業価値を高める5つの視点
④秘密保持契約(NDA)の締結
買い手候補となる企業から、会社売却に応じる旨の回答が得られたら、具体的な交渉を開始することになります。
会社売却の前段階では、売却先候補に対して、自社の事業や財務状況などの秘密を開示しなければなりませんが、どれも重要な機密情報です。
そのため、知った秘密を外部にもらさないことを約束する「秘密保持契約」を締結する必要があるのです。
▼この手順の注意点
秘密保持契約書は、企業間で開示された情報の扱いについてのルールや、万が一情報漏洩した場合の当事者の責任などが規定される契約書です。
そのため、法的な不備がない契約書面を作成する必要があります。
会社売却についてM&A仲介業者や専門家に依頼している場合は、秘密保持契約書のひな型などを準備してくれることも多いので、確認してみましょう。
⑤企業概要書(IM)の提示
秘密保持契約を締結したら、いよいよ企業概要書を、売却先候補に対して提示する段階となります。
企業概要書(IM)とは、会社の事業内容、業績、会社売却の理由、将来の事業計画など売却したい会社の情報を記載した書面です。
▼この手順の注意点
売却先候補に、会社売却の話をうけたいと思わせるためには、会社の強みが伝わる魅力的な企業概要書を提示することが必須です。
⑥意向表明書(LOI)
意向表明書(LOI)とは、譲受を希望する企業から、譲渡する側の企業に対して、会社売却の提示条件を記載した書面のことです。
意向表明書では、譲受企業が譲受を希望する理由や、譲渡価格、そのほか一般的な諸条件についての意向を表明します。
譲受を希望する企業が複数の場合は、売り手企業は意向表明書を見ながら、譲渡先候補を1社にしぼります。
その後は、基本合意書の締結に向けて話し合いをおこないます。
▼この手順の注意点
意向表明書の段階で、売却価格が低いと感じた場合には、買い手に対して、売却価格について見直しが可能かどうかを再度検討してもらったり、柔軟に交渉していく必要があるでしょう。
⑦経営者のトップ面談
トップ面談(TOP面談)とは、売り手と買い手のトップ同士が面談をおこなうことです。
トップ面談には、株式会社の場合、社長以外の筆頭株主や議決権の過半数を有する株主や、関係する部門の責任者が出席することもあります。
トップ面談では、これからのビジョンを共有したり、M&Aにともなうシナジー効果などについて話し合ったりして、実際にこのままM&Aをすすめていくかどうかが検討されます。
▼この手順の注意点
トップ面談が実施された後に、現地視察をおこなう場合もあります。
売り手企業としては、混乱を招かないよう、現場で働いている社員に話を通しておく必要があるでしょう。
関連記事
⑧基本合意書(MOU)
トップ面談がおこなわれ、M&Aを実施する意向が固まった場合、会社売却価格、支払条件、残留条件などの条件について、基本合意書を締結します。
なお一般的に、基本合意書に規定されている条項については(独占交渉権などを除いて)、法的拘束力が生じません。
しかし、基本合意書は、今後の条件交渉の基礎となるものです。
そのため、会社売却において譲れない条件などがあれば、基本合意書への落とし込みをこころみてもよいでしょう。
▼この手順の注意点
基本合意書を締結する際、買い手候補となる企業からは「独占交渉権」について条項を盛り込むよう要求されることは多いでしょう。
具体的な基本合意書の内容にもよりますが、一般的には、M&Aの諸条件については法的拘束力を持たせない一方、独占交渉権は法的拘束力が生じさせるケースが多いものです。
独占交渉権が基本合意書に規定されると、多くの場合、売り手企業は、基本合意書を締結した買い手候補の同意なしには、ほかの買い手候補との交渉を数か月間、法的拘束力をもって禁止されます。
そのため、売り手としては、基本合意書を締結する相手としてふさわしい企業か否かについて、慎重に検討する必要があるでしょう。
⑦デューデリジェンス(DD・買収監査)の実施
買手候補が、売り手企業の財務状況、事業内容、将来性などについて、詳細な調査を行うことをデユーデリジェンスといいます。
デューデリジェンスでは、買手候補は、売り手企業の価値を評価し、最終的な条件交渉を行うための情報を収集します。
デューデリジェンスは、買い手企業がM&Aを実行するかどうかの判断をくだすために、必須の手順です。
財務DD、法務DD、環境DD、労務DDなどの種類があります。
中小企業の場合は財務DDと法務DDのみおこなわれるケースも多いでしょう。
DDで問題が発覚した場合は、交渉決裂となる可能性もあります。
不透明なお金の流れ、未払いの買掛金、簿外の借入金などが問題になりやすい傾向があるでしょう。
▼この手順の注意点
売り手がDDの手順で重要な事は、買い手に協力すること、リスクを意図的に隠すのではなく開示して買い手に把握してもらうことなどです。
DD前に改善できるリスクがある場合は、早期に対処しておくことも重要でしょう。
関連記事
⑧最終条件交渉
デューデリジェンスのあとは、売り手企業と買い手候補が契約締結に向けて、最終的な合意を目指して詳細な条件交渉をおこないます。
買い手からは、デューデリジェンスを踏まえて、あらたな提案をされることもあります。
たとえば、デューデリジェンスの結果、簿外債務が把握されてしまい、会社売却価格の見直しを提案されることもあります。
また、リスクを低減させるための施策実施を求められることもあるでしょう。
最終条件交渉では、売り手・買い手の双方にとって有益なM&Aになるよう、改善できる点は歩み寄り、反論できる点はきちんと主張していくという姿勢が重要です。
▼この手順の注意点
売り手側としても、会社売却の対価、社員・経営陣の処遇など、希望する詳細条件をつめる最後の交渉となります。
会社売却価格の交渉、従業員の処遇、取引先との関係、経営者の引退などについても、きちんと交渉しておかなければなりません。
⑨M&Aの最終契約書(DA)を締結
最終条件交渉がまとまったら、最終契約書を締結することになります。
売却価格、支払条件、残留条件など合意できたすべての条件について、最終契約書に落とし込みます。
▼この手順の注意点
最終契約書は、基本合意書と異なり、売却条件なども含め全面的に法的拘束力が生じるものです。
最終契約書に違反すれば損害賠償責任をおったり、不備があれば後日紛争になったりする可能性もあります。
専門性の高い業者にM&A仲介を依頼している場合は、最終契約書のひな型も準備してもらえる可能性があります。個別案件に応じて、適宜活用していくことが必要でしょう。
関連記事
⑩クロージング
M&Aにおけるクロージングとは、売却手続きを完了させることです。
会社売却成約となれば、会社売却代金の支払い手続き、株式譲渡や事業譲渡の引き渡し手続きなどをおこない、経営権の移転が完了し、クロージングとなります。
クロージングまでの手順は、すべて会社売却にとって重要な手続きです。
各手順の内容や目的を理解し、適切に対応をすることで、会社売却をうまく進めることができるでしょう。
▼この手順の注意点
M&Aはクロージングをすればそれで終わりというものではありません。
売却後にも、M&Aによるシナジー効果を最大化できるよう注意を払うことも重要です。
そのための取り組みのことをPMIと呼びます。
PMIは、買い手企業が取り組むべきものです。
しかし、売り手企業としても、自社の社員が新体制になじむためのケア、取引先へのケア、経営者としての引継ぎなど、事業承継に必要な協力をする必要はあるでしょう。
M&A手続き別 会社売却の注意点
株式譲渡による会社売却手続き
中小企業の場合、株主の保有する株式には譲渡制限がついていることが多いものです。
譲渡制限株式を譲渡する場合は、取締役会または株主総会において譲渡承認決議を受けなければなりません。
M&Aの流れの中では、多くの場合、最終契約書(DA)締結前に譲渡承認決議をおこない、譲渡承認決議の可決を契約の効力発生条件として規定しておくことになるでしょう。
承認決議を受けることができれば、株式譲渡を実行するとともに、株主名簿の書き換えをおこないます。
関連記事
事業譲渡による会社売却手続き
株式譲渡以外にも、事業譲渡という方法によって会社売却をおこなうこともできます。事業譲渡とは、会社の経営権を売り手に残したまま事業のみを売却するM&Aの手法です。
しかし、譲渡の対象が事業の全部または重要な一部に当たる場合は、譲渡する側の会社において、株主総会の特別決議による承認が必要になります。
株式譲渡の場合と同様に、最終契約書(DA)では、これらの決議で事業譲渡が承認されることを、契約の効力発生要件として規定しておく必要があるでしょう。
また事業譲渡の場合、従業員の雇用を継続するには、譲受会社が主導して雇用契約を締結し直す必要があります。
取引先との契約関係も、当然には承継されないので、譲受会社があらためて契約を締結します。株式譲渡と比べると、事業譲渡は煩雑な手続きとなるため、買い手としても不安が残るものでしょう。
譲渡益にかかる税金
そのほか税金の問題もあります。事業譲渡の場合は、譲渡益に法人税等が少なくとも約30%かかる可能性があり、このほか消費税もかかります。
一方、個人株主の株式譲渡ということであれば、所得税等が20.315%かかるにとどまります。
関連記事
会社売却手続き共通の注意点
会社売却を検討する動機として、会社の連帯保証や個人保証の責任から解放されたいというものもあるでしょう。
株式譲渡や事業譲渡をおこなうことによって、会社の経営者としての地位から離れることができたとしても、当然に個人保証などから解放されるわけではありません。各所との交渉が必要になります。
会社売却は手順を踏んで…まずは買い手探しから
いかがでしたでしょうか。
会社売却の手続きの流れは、つかめましたか。
会社売却の成功の第一歩は、買い手探しです。
自力で探すとなると、経営不振のうわさが広がったり、機密が漏洩するおそれもあるでしょう。
効率的に、安心して買い手探しをするのであれば、M&A仲介に依頼するのもひとつの手です。