個人事業主の廃業のデメリットは?廃業手続きと廃業以外の選択肢まとめ

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  • 個人事業主の廃業のデメリットは?
  • 個人事業主の廃業手続きとは?
  • 廃業手続き以外の個人事業主の選択肢は?

個人事業の後継者がいないまま、高齢化により、廃業するケースは多いものです。しかし、せっかく今まで続けてきた個人事業を、自分の代で廃業するのは惜しいものですよね。

この記事では、個人事業主の廃業のデメリット、廃業のタイミング、廃業手続き、廃業以外の選択肢などについて解説しています。

現在、廃業手続きをするかご検討中の個人事業主の方など、是非さいごまでご覧ください。

個人事業主の廃業とは?

個人事業主の廃業とは?

個人事業主の廃業とは、税務署に廃業届などを出して、個人事業を終了することをいいます。

高齢となり後継者もいないことから自主的に個人事業をやめる場合や、事業が立ち行かなくなり破産して廃業せざるを得ない場合もあるでしょう。

個人事業主の廃業の理由

  • 経営者の高齢化・後継者の不在
  • 経営不振
  • 法人成り
    etc.

個人事業主の場合、会社をたたむためのいわゆる「解散」や「清算」といった手続きではなく、一定の方法で廃業手続きをおこなう必要があります。

個人事業主の廃業のタイミング

個人事業主の廃業のタイミングについては、特に急ぐ必要性がない場合、年末を目安にするとよいでしょう。

個人事業主の場合、毎年1月1日~12月31日までの1年間に生じた所得税や消費税の確定申告をおこないますが、廃業する年は1月1日~廃業日までとなります。

設備や在庫の処分などの廃業費用を経費として計上し、所得を圧縮して節税を狙うには、それらに対処できるだけの十分な時間を確保することがマストです。

仮に9月1日に廃業した後、9月30日に廃業費用が発生しても、基本的には経費として計上できません。

場合によっては、例外的に「事業を廃止した場合の必要経費の特例」により、廃業後の必要経費を計上できるケースもあります。しかし、税務署によって見解が異なり必要経費として認められないおそれがあります。また、更生の請求という特別な手続きをおこなう必要が生じます。

そのため、廃業日はできる限り12月31日に近づけて、確定申告とともに廃業手続きを進めるのが無難といえるでしょう。

個人事業の廃業費用の相場は?

個人事業主が、廃業のために税務署などへ届出を提出する場合、費用は発生しません。

設備・在庫の処分、店舗・工場の現状回復、廃業にともなう転居、違約金や解約金、金融機関への返済などに、費用がかかります。

廃業の費用総額についてのある調査では、廃業した個人事業主のうち、100万円以上の廃業費用が掛かったと回答した割合は全体の18.4%にのぼりました。

廃業の費用総額

廃業費用割合
0円31.0%
1円~50万円未満35.8%
50万円~100万円未満14.7%
100万円~500万円未満13.6%
500万円~1000万円未満2.9%
1000万円~1.9%

みずほ情報総研(株)「中小企業・小規模事業者の次世代への承継及び経営者の引退に関する調査」(2018 年 12 月)のリサーチ資料をもとに、中小企業庁編「2019年版小規模企業白書」72ページに掲載されている「第2-1-42図」を参考に作成しました。

廃業するにもある程度費用がかかります。個人の資産でまかなうリスクがあることを肝に銘じて、廃業手続きを進める必要があります。

廃業費用の負担を軽減するためにも、たんに個人事業をたたむのではなく、個人事業を売却するという方法を検討してみてもよいでしょう。

個人事業主の廃業…3つのデメリットとは?

デメリット①個人事業を続けられない

個人事業主が廃業する場合、廃業以後、個人事業を続けられないというデメリットがあります。

たしかに、個人事業を廃業することで、いままで感じていた事業運営の責任から解放されるメリットはあります。

しかし、愛着のある事業をたたむことで、寂しさを感じることでしょう。いままで築いてきた事業がなくなってしまうのは、非常につらいものです。

あとから再開したいと思っても、廃業にともない事業に必要な許認可などは返納してしまうので、再開するには、あらためて許認可をとることが必要です。また、設備や備品の準備も一から始めなければなりません。

また、将来性のある事業や地域貢献できる事業など、価値のある事業の廃業は、社会にとっても大きな損失となります。

ほかにも、個人事業を廃業することで、取引先にも影響を与える可能性もあります。従業員がいる場合は、従業員の今後の食い扶持をどうするかという問題も浮上します。

デメリット②資産を高額売却できない

廃業にともない、必要なくなった在庫や設備、不動産については売却や廃棄することになります。

処分費用がかかるよりは、売却できたほうがよいという考えて、資産の売却にのぞむ個人事業主は多いものです。その場合、足元を見られ、安値で資産を買いたたかれてしまうことがあります。

一方、個人事業そのものを、第三者に売却する(事業承継をおこなう)という方法であれば、資産価値を適切に評価してもらえることも多いものです。

たんなる廃業ではなく、事業承継という選択を検討してみる価値はあるでしょう。

デメリット③廃業後の生活資金の不安

廃業後の生活資金の確保は、多くの個人事業主にとって大きな不安といえます。

廃業すれば、事業収入が途絶えてしまいます。ですが、廃業後も、ご自身の生活費、借入金返済、ご家族の養育費など、当然お金が必要です。

老後資金といえば、貯金のほかにも、小規模企業共済や年金に頼るという方法が考えられますが、それだけではこのご時世、不安を解消することはできないでしょう。

この点、たんなる廃業ではなく、個人事業を第三者に会社売却することができれば、売却益を手にすることができ、老後の生活資金の不安の解消につながります。

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個人事業主の廃業手続き①税務関係の届出

税務関係の提出書類・期限・提出先

個人事業主が廃業する場合、税務、雇用保険、社会保険、労働保険、許認可などについて届出をする必要があります。

ここでは、税務関係で問題になる提出書類について確認します。

個人事業主が廃業する場合、税務関係については、以下のような届出が必要になります。

以下の表は、届出の種類と、提出期限をまとめたものです。

書類期限
個人事業の廃業等届出書事業廃止から1か月以内
事業廃止届出書(個人事業税)事業廃止から10日以内
事業廃止届出書(消費税)事業廃止後すみやかに
所得税の青色申告の取りやめ届出書青色申告をやめる年の翌年3月15日まで
給与支払事務所等の廃止届出書事業廃止から1か月以内
所得税の予定納税額の減額申請書第1期分は7/15まで
第2期分は11/15まで

2024年3月26日現在の情報です。最新の情報については、ご自身でご確認ください。

廃業等届出書

個人事業主が廃業する場合、個人事業の廃業等届出書(正式名称「個人事業の開業・廃業等届出書」)を、所轄税務署に提出して、所得税の納税義務がなくなったことを国に通知する必要があります。

記入内容については、後ほど解説します。

個人事業の廃業等届出書の提出期限は、事業廃止から1か月以内です。

事業廃止届出書(個人事業税)

個人事業主が廃業する場合、都道府県税事務所にも、個人事業税の納税義務がなくなったことを通知するために、廃業の届出が必要です。

届出書の名称としては、都道府県で若干異なり「個人の事業の開始等の報告書」、「事業開始等申告書(個人事業税)」など呼ばれています。

都道府県によって書式が異なりますが、事業所の所在地、屋号、事業の種類、氏名、廃止の年月日、廃止の理由などを記入することになるでしょう。

個人事業税に関する事業廃止届出書の提出期限は、事業廃止から10日以内です。

所得税の青色申告の取りやめ届出書

個人事業主が、廃業のため青色申告を取りやめる場合は、「青色申告の取りやめ届出書」も提出する必要があります。

記入内容

  • 青色申告書を取りやめる年
  • 青色申告をしていた期間
  • 取りやめる理由
    etc.

青色申告取りやめ届出書は、事業を廃止しようとする年の翌年3月15日までに、所轄税務署に提出する必要があります。通常は、廃業等届出書と同時に提出することが多いでしょう。

事業廃止届出書

消費税の納税義務がある個人事業主は、廃業する事業のほかに課税売上にあたる所得がない場合、「事業廃止届出書」の提出も必要です。

記入内容

  • 事業を廃止する日
  • 納税義務者となった日
    etc.

消費税の事業廃止届出書は、事業廃止後すみやかに、所轄税務署に提出する必要があります。

給与支払事務所等の廃業届出書

給与支払事務所等の廃止届出書(正式名称「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」)は、従業員や事業専従者等に給与を支払っている個人事業主が廃業する場合に、所轄税務署に提出する書類です。

記入内容

  • 事業を廃止する日
  • 廃止の理由について「廃業又は清算終了」にチェックをいれる
    etc.

給与支払事務所等の廃止届出書は、事業廃止から1か月以内に提出する必要があります。

予定納税額の減額申請書

所得税の予定納税額の減額申請書は、前年に比べて所得の減少が予想される場合に、納税の負担を軽減するために、所轄税務署に、予定納税額の減額申請をする書類です。

予定納税とは?

予定納税とは、前年度に所得税・復興特別所得税を15万円以上納税した場合、その翌年は、確定申告を待たずに前もって、予定納税基準額の3分の1にあたる金額を年2回、7月と11月に納付しなければならないという制度。

税金を払いすぎた場合は確定申告をおこなえば還付されますが、廃業する個人事業主にとって予定納税が経済的負担となることは否めません。

そのため、個人事業を廃業をする場合は、減額申請書は提出しておくべきでしょう。

記入内容

  • 予定納税の通知を受けた金額
  • 減額申請する金額
  • 減額申請の理由
  • 添付書類の名称
  • 申告納税見積額等の計算書
    減額申請する年の6月30日時点の所得金額・税額の見積もり、同年10月31日時点の所得金額・税額の見積もりを記入
    etc.

予定納税をする前に先立って申請する必要があるため、予定納税額の減額申請書については、第1期分については7/15まで、第2期分は11/15までが提出期限となります。

廃業届の書き方は?

廃業届を出す場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」の書式を入手し、書式名の「開業」に二重線を引きます。

まずは、確定申告をする所轄税務署、提出日、納税地、氏名、生年月日、職業(個人事業の職種)、屋号などを記入します。屋号が無い場合は、空欄にしておきます。

そして、廃業の内容について、以下のような項目を記入します。

廃業届に記入する項目(一例)

  • 廃業の理由
    法人成り、業績不振、高齢etc.
    事業の引継ぎの場合、譲渡先の住所・指名を記入
  • 所得の種類
    不動産所得・山林所得・事業所得から全部または一部を選択
  • 法人成りの廃業の場合
    設立法人名、代表者名、法人納税地、設立登記日
  • 廃業日
  • 廃業にともなう「青色申告取りやめ届出書」「消費税の事業廃止届出書」の提出の有無
  • 給与等の支払い状況
    専従者や使用人がいる場合に記入

個人事業の廃業届の書式については、国税庁のホームページでダウンロードすることができます。廃業届の書き方についても、紹介されています。

よく分からない場合は、チャットボットやタックスアンサー、国税相談専用ダイヤル、面接などの方法で、国税庁に相談できるので活用してみてください。

個人事業主の廃業手続き②税務以外

ここでは、個人事業主が廃業する際に必要となる手続きのうち、税務以外の届出について確認していきましょう。

書類期限
事業主事業所各種変更届変更があった日の翌日から10日間
事業所関係変更(訂正)届変更があった日から5日以内
各称・所在地等変更届変更があった日の翌日から10日以内
廃業届廃業後すみやかに

個人事業主が廃業する場合、税務以外には、雇用保険、社会保険、労働保険、許認可などの手続きが必要です。

雇用保険に関係する書類としては、個人事業主が廃業する場合、事業主事業所各種変更届出書を、ハローワークに、変更があった日の翌日から10日以内に提出する必要があります。

社会保険に関係する書類としては、個人事業主が廃業する場合、事業所関係変更(訂正)届を、社会保険事務所に、変更があった日の翌日から5日以内に提出する必要があります。

労働保険に関係する書類としては、個人事業主が廃業する場合、各称・所在地等変更届を、労働基準監督署に、変更があった日の翌日から10日以内に提出する必要があります。

許認可については、個人事業主が廃業する場合、廃業届を所轄行政機関に対して、廃業後すみやかに提出する必要があります。

個人事業主に廃業以外の選択肢はある?

①休業

将来的に事業再開を目指す可能性がある場合は、廃業ではなく、事業活動を一定期間、事業を休業するという方法が考えられます。

個人事業主が休業する場合、以下のような書類を関係各所に提出します。

個人事業の休業

  • 異動届出書/個人事業開業・休業・廃業・変更届出書
    所轄税務署・都道府県税事務所に提出
  • 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書
    所轄税務署に提出
  • 給与支払い事務所等の廃止届出書
    所轄税務署に提出
  • 健康保険・厚生年金保険適用事務所全喪届
    社会保険事務所に提出

なお、休業中であっても確定申告は必要になります。

赤字は3年間繰り越せるので、とくに純損失の繰り越しがある場合は、忘れずに確定申告をおこないましょう。

②個人事業の事業承継

個人事業主が高齢化などにより自身で事業を継続できない場合、事業承継という方法が考えられます。

事業承継には、親族内承継、従業員承継、M&Aによる第三者承継などがあります。

事業承継の種類

  • 親族内承継
    子どもや親戚に事業を引き継ぐもの
  • 従業員承継
    従業員に事業を引き継ぐもの
  • M&Aによる第三者承継
    事業を買いたい第三者に、事業を引き継ぐもの

近年では、M&Aによる第三者承継も増えています。

経営ノウハウのある第三者、新たに事業にチャレンジしたい第三者に個人事業を売却することで、事業の存続がかない、譲渡益を手にできるメリットがあります。

M&Aによる事業承継の手順としては、個人事業の後継者探し(買い手探し)をおこない、個人事業の売却価格の交渉を経て、最終契約を締結し、現経営者の廃業手続きと後継者の開業手続きをおこないクロージングとなります。

M&Aによる事業承継の手順

  • 個人事業の後継者探し
  • 売却価格などの交渉
  • 現経営者の廃業手続き・後継者の開業手続き

現経営者の廃業手続きについては、先ほど述べたのでここでは割愛します。

後継者の開業手続きについては、以下のような届出が必要です。

書類期限
個人事業の開業届出書事業開始から1か月以内
事業開始等申告書事業開始から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書事業開始日から2か月以内
1/1~1/15の開業は3/15まで
給与支払事務所等の開設届出書事業開始から1か月以内
所得税の減価償却資産の償却方法の届出書事業開始年度の確定申告の時期まで

上記のほか、消費税について課税事業者を選択する場合や、簡易課税制度を利用したい場合には、そのための届出が必要になります。

また、個人事業の許認可については、後継者があらためて申請する必要があります。

数か月で許認可の申請が通ることもありますが、業種・業態によっては1~2年程度の期間が必要になるケースもあります。

個人事業の事業承継については、円滑に事業を引き継げるよう計画的に進める必要があります。

廃業手続きを個人事業主が相談できる窓口

廃業について個人事業主が相談できる窓口としては、商工会や事業承継・引継ぎ支援センター、金融機関、税理士などの士業専門家、M&A仲介会社などがあります。

相談先の特徴、相談のメリットについては「M&Aの相談窓口は?無料相談できる相手は?相談相手に依頼できる?」の記事で、詳しく解説しています。

廃業手続きの進め方について、個人事業主が相談する場合、上記のような相談先のほか、所轄官庁などに直接問い合わせるという方法も考えられます。

たとえば「廃業届や青色申告取りやめ届出書の記入方法で悩んでいる」という場合、国税庁に問い合わせをおこないます。国税庁では、チャットボット、電話相談、対面相談などが実施されています(「国税に関するご相談について」)。

国税庁以外でも、難しい手続きについては関係各所に直接お問い合わせなさるほうが、より確実で早いといえるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、個人事業の廃業について、デメリット、廃業の手続き、事業承継のメリットなどをまとめました。

個人事業を廃業するにも、お金がかかります。また、廃業後の生活を考えたとき、第三者に事業承継をおこなうという選択肢には、非常にメリットがあります。

事業売却をおこなうことで、老後の生活資金の不安の解消でき、ご自身の事業も後世まで残すことができるからです。

第三者への事業承継に興味があるという方は、国が主導する事業承継・引継ぎ支援センターや、民間のM&A仲介会社に相談してみましょう。

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