会社の解散・清算の流れは?法人が解散する場合の手続きを解説

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会社の解散

会社の事業をやめて廃業する場合、解散と清算という手続きが必要になります。

会社法で定める要件を満たした場合に会社は解散され、債権債務の整理や残余財産の分配などを行って清算していく流れになります。

廃業を経験したことがない場合、どのように手続きを進めればいいのか不安になることでしょう。

この記事では会社の解散・清算について詳しく説明しています。

これから法人を解散させようとしている経営者の方は、最後までご覧ください。

会社解散・清算とは?

会社解散の定義

会社解散とは、営んでいた事業活動をやめ、法人格を消滅させる手続きに入ることを指します。

経営者が解散を選択するケースとしては、業績悪化により事業継続が困難になった場合や、後継者不在により事業承継ができない場合などがあるでしょう。

会社解散は株主総会による決議によって決定される場合が多いですが、定款で定める期間満了や、特別な事由の発生など、会社法には解散の要件が他にも定められています。

株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。

一 定款で定めた存続期間の満了

二 定款で定めた解散の事由の発生

三 株主総会の決議

四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)

五 破産手続開始の決定

六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判

会社法471条

しかし、会社解散をしたからといって即座に法人格が消滅するわけではありません。

会社の法人格を消滅させるためには、次に説明する清算を行う必要があります。

会社清算の定義

会社清算とは、解散した会社が所有する財産を換価し、債権者への弁済を行った後に、残余財産を株主または出資者に分配する手続きのことを指します。

解散を行った株式会社は、清算しなければならないと会社法に定められています。

株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。

一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)

二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

会社法475条

清算段階に入った会社は清算株式会社と呼ばれ、清算人を置かなければなりません(会社法477条)。通常、定款で定められている者や、株主総会決議によって選任された者などが清算人となります(会社法478条)。

清算人による現務の結了、残債権の取り立て、残債務の返済、残余財産の分配が完了し、清算手続きが終了することにより、会社の法人格は消滅します。

会社清算は、会社の残務整理を完了し、法的に会社を消滅させるために必要な手続きと言い換えることができるでしょう。

会社解散・清算の必要性とメリット

事業の継続が困難になってしまった場合に、解散・清算を行わないでいると、休業状態となるでしょう。

事業活動をしておらず休業していたとしても、会社の法人格が存続している以上、納税や登記など、法的に必要な手続きは継続しなければなりません。

しかし、法律に則って会社解散・清算を行うことで、税負担の解消や登記・決算申告の必要性がなくなるなどのメリットがあります。

税金の負担を解消できる

事業活動の有無にかかわらず、会社が存続する以上は法人税を支払わなければなりません。

しかし、会社解散・清算をすることで、税金がかかることはなくなります

会社解散に際して専門家に手続きを依頼した場合には、最低でも数十万程度の費用が発生するでしょう。しかし、休業状態で法人税を支払い続けるよりは低コストで終了する場合もあります。

役員重任登記が不要になる

会社が事業活動を行っていなかったとしても、役員の任期が終了した場合には重任登記を行わなければなりません。

この手続きを行わないままだと、代表者は100万円以下の過料に処される可能性があります。過料はあくまで行政上の制裁であり、刑罰ではありませんが、会社解散・清算の手続きを完了させることで、過料を徴収されるリスクを回避することができるでしょう。

決算申告が不要になる

株式会社は事業を行っていなかったとしても、存続している限り、決算申告を行わなければなりません。

収益がゼロの場合はその旨を申告しなければなりませんが、会社を解散・清算することで、このような申告の手間もなくなります

会社解散・清算の手順

株主総会による解散決議

経営者自身の意思で会社を解散しようとする場合には、株主総会による特別決議を得る必要があります。

特別決議とは、会社の根幹に関わるような重要な事項を決める際の決議方法です。

特別決議は、株主総会で行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の三分の二以上による多数の賛成によって成立します。

次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(略)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(略)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

・・・略。

十一 
第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

会社法309条2項

会社解散の要件となる株主総会決議について定めた会社法471条は、「第八章」に規定されています。

すなわち、上記規定の適用対象となるため、特別決議が必要なのです。

解散登記・清算人選任登記

解散決議が可決されたら、清算人を選任する必要があります。

清算人は予め定款に記載されているケースや、株主総会の決議によって選任されることが多いです。いずれの方法でも清算人が決まらない場合には、取締役が清算人となります。

解散決議と清算人選任が完了したら、解散が決まった日から二週間以内に、解散登記と清算人選任登記を行わなければなりません(会社法915条)。

解散、清算人選任登記を行う場合には、「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」を本店所在地を管轄する法務局に提出します。

登記事由や登記すべき事項などを記載し、定款や株主総会議事録などを添付します。

登記費用についても同じタイミングで支払います。

法務局が公開している申請書のサンプルを参考にしてください。

解散の届け出

会社を解散した場合、法務局への解散・清算人選任登記だけではなく、税務署や各都道府県の税事務所に解散の届け出を提出する必要があります。

税務署には「異動届出書」、「給与支払事務所等廃止届」、「履歴事項全部証明書」などを提出します。

「異動届出書」の提出期限は定められていませんが、解散後、遅滞なく行わなければなりません(法人税法施行令第18条)。

他にも、社会保険や雇用保険、労働保険などに関連する書類の提出が必要な場合もあります。これらは原則として提出期限が定められているため、自分の会社で提出しなければならないのか、きちんと確認しておきましょう。

解散時に提出が必要な主な書類

社会保険雇用保険労働保険
書類名健康保険厚生年金保険
適用事業所全喪届
雇用保険
適用事業所廃止届
労働保険
確定保険料申告書
提出先日本年金機構管轄ハローワーク労働基準監督署
期限事業所を廃止した日
から5日以内
事業所を廃止した日の翌日から10日以内事業所を廃止した日の翌日から50日以内

官報公告・個別催告

公的機関への届け出を終えたら、官報で解散の事実を公告します。

官報公告は、債権者に対して会社の解散を通知する目的があります。

債権者が判明している場合には、個別催告も必要です。

官報公告を行ってから2ヶ月が経過しなければ、清算手続きに進むことはできません。

財産目録・貸借対照表の作成

会社の解散が決まると、清算人は会社の財産目録と賃貸対照表を作成しなければなりません(会社法492条1項)。

財産目録を作成する際には、会社が所有する全ての資産(土地、建物、機械など)をリストアップし、その詳細を記録します。一方、賃貸対照表には、会社が負っている債務や未清算の請求などの負債を示します。

これらの文書は、解散後の清算手続きを円滑に進めるために不可欠です。

債務の弁済・残余財産の分配

財産目録・貸借対照表を作成したら、清算人は残っている債務を返済していきます。清算手続きでは、会社が所有している財産を売却し、その収益を使って債務を返済するケースが一般的でしょう。

債務の返済が完了し、残余財産が確定した場合、その後は残余財産を企業の株主に分配する必要があります。

残余財産とは、すべての債務が返済された後に企業に残る資産を指します。残余財産を株主に分配する際には、通常、これらの資産を現金化します。

非上場株式や固定資産が多い場合など、資産を現金化するまでに時間がかかる可能性があるため、計画的な処理が必要です。

残余財産を適切に処理するためには、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切な助言を受けることが重要です。

確定申告

会社が解散・清算した場合、「解散事業年度確定申告」と「清算事業年度確定申告」の2種類の確定申告を行わなければなりません。

事業年度開始の日から解散日までを解散事業年度と呼びます。作成した財産目録と貸借対照表を基にして、解散の翌日から2ヶ月以内に、清算人は解散事業年度に関する確定申告を行います。

解散後は、その日から1年間が清算事業年度となり、毎年事業年度が終わるごとに、清算中の所得を申告しなければなりません。確定申告書は、各事業年度の終了後2カ月以内に税務署に提出します。

清算結了登記

清算事務が完了した後は、精算株式会社は遅滞なく決算報告の作成を行う必要があります(会社法507条1項)。

また清算人は、この決算報告を株主総会に提出し、承認を受けなければなりません(会社法507条2項)。

清算の承認を受けた場合、2週間以内に、法務局に清算結了登記を申請し、清算手続きは終了します。

会社解散・清算にかかる費用

会社を解散する場合、各種登記のための費用や、従業員への退職金の支払い、税金納付などの負担がかかる可能性があります。

登記費用

会社を解散・清算した場合の登記にかかる費用は以下の通りです。

会社解散・清算の登記でかかる費用

  • 解散登記費用:3万円
  • 清算人選任登記:9千円
  • 清算結了登記費用: 2千円

従業員への退職金

会社が解散する前に、従業員に退職金を支給します。

従業員の勤続年数や給与に応じて、退職金の額が変わります。

税金

会社を解散する際には、不動産や在庫などの有形資産を売却して収益を得ることがあります。この際、売却によって得られた収益には法人税がかかります

また、清算期間中の収益には消費税が課税されることがあります。たとえば、土地の売却は非課税とされますが、建物の売却益は課税されます。不動産の売買が行われる場合には、消費税の支払いも考慮する必要があります。

残余財産が確定した後、資本金を超える部分を株主に分配する場合、これはみなし配当と見なされ、所得税が課税されます。上場株式の場合は源泉徴収税率が15.315%であり、非上場株式や大口株主の場合は20.42%になります。

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官報公告費用

解散を公告する官報へ掲載するため、広告料を支払う必要があります。

この掲載費用は、1行ごとに値段が定められており、一般的には10行で依頼して約3万5,000円必要となります。

会社をたたむ手続きは複雑なため、司法書士や弁護士などに依頼する場合もあります。専門家に依頼すると、数十万円程度の費用が発生するでしょう。

M&A・会社売却で会社解散を回避できる?

経営状況の悪化によって会社解散を余儀なくされる場合や、親族内承継や社内承継が困難で、仕方なく解散・清算手続きを進めて廃業する場合などでも、M&A・会社売却の可能性が残っているかもしれません

経営難で赤字状態であっても、業種や業界、事業を展開している地域などによっては、買い手候補が見つかる可能性があります。

事業の継承を諦めて、会社解散・清算手続きを進める前に、M&A・会社売却を検討してみてはいかがでしょうか。

初回無料相談を行うM&A仲介会社やアドバイザリー会社なども近年増えてきています。

会社や事業を後世に残したいという意思があるなら、専門業者に相談してみましょう。

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