会社をたたむときの費用はいくらかかる?廃業かM&Aか迷ったら専門家に相談を

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会社をたたむ際には、登記の費用や清算処理の費用などが発生します。

後継者がいなくて事業承継できない場合や、業績悪化により事業の継続が困難な場合などに、廃業するかどうか検討する方も多いでしょう。

この記事では、会社をたたむ際の費用について解説します。

会社をたたむとは

会社をたたむとは廃業のこと

会社をたたむとは、会社を解散し、清算手続きを経て廃業することを指します。

近年、高齢化などにより事業の継続が困難になるケースや、後継者が不在で事業承継できないケースなどが増えており、廃業を選択する経営者も増えてきています。

会社をたたむ際には、従業員や取引先、債権者など様々な関係者に影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。

たとえ赤字であったとしても、業種・業界によっては、M&Aによる第三者承継が可能かもしれません。まずは企業価値評価から、専門家に相談してみるべきでしょう。

会社をたたむタイミングは?

会社をたたむタイミングとしては、以下のケースが考えられます。

  • 事業の継続が困難になった場合
    売上や利益が減少、資金繰りが悪化
  • 経営者の高齢化
    病気や体力の問題で経営困難、後継者不足など
  • 新たな事業への挑戦
    今の会社をたたんで次の事業を始める

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解散と清算の違い

解散と清算という2つのステップを経て、会社は廃業されます。

解散

解散とは、会社の事業をやめて債権債務を整理する「手続きに入る」ことです。廃業の準備段階ということもできます。

経営者の高齢化や後継者問題によって事業が継続できない場合や、会社法で定められている解散事由を満たした場合に、会社は解散となります。

(解散の事由)

株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。

一 定款で定めた存続期間の満了

二 定款で定めた解散の事由の発生

三 株主総会の決議

四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)

五 破産手続開始の決定

六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判

会社法471条

清算

清算とは、会社の資産を実際に処分し、債権者への弁済を行い、残余財産を株主に分配することです。清算人は、債権を回収したり財産の換価を行ったりして、債権者に弁済していきます。

残余財産の分配後は、清算完了の登記をもって、会社の法人格が消滅することになります。

なお、清算には「通常清算」と「特別清算」の2種類があります。

通常清算とは、解散した会社が、自力で債務を返済できる場合の清算であり、特別清算とは自力で債務を返済できない、債務超過の場合の清算です。

会社をたたむ際の主な費用

解散・清算費用

会社を解散する場合、解散登記費用や清算結了登記費用などを支払う必要があります。

  • 解散登記費用: 3万円
  • 清算人選任登記:9千円
  • 清算結了登記費用: 2千円

また、解散を公告する官報へ掲載するため、広告料を支払う必要があります。

この掲載費用は、1行ごとに値段が定められており、一般的には10行で依頼して約3万5,000円必要となります。

会社をたたむ手続きは複雑なため、司法書士や弁護士などに依頼する場合もあります。専門家に依頼すると、数十万円程度の費用が発生するでしょう。

その他の費用

従業員への退職金

会社が解散する前に、従業員に支払います。各従業員の勤続年数や給与によって、退職金の額は異なります。

税金

会社を解散する場合、残余財産の確定に伴い、不動産や在庫などの有形財産を売却することで収益が発生します。この際、法人税が課されます。

同様に、消費税も清算期間中の収益に課税されることがあります。例えば、土地の売却は非課税とされる一方で、建物の売却益は課税対象となります。不動産の売買が発生する場合には、消費税の納付についても考慮しなければなりません。

なお、残余財産の確定後、資本金を超える部分についての株主への分配はみなし配当と見なされ、所得税が課されます。上場株式の源泉徴収税率は15.315%であり、非上場株式や大口株主の場合は20.42%となります。

会社をたたむ際の費用を抑えるポイント

会社をたたむ前に、上記の費用を把握しておくことが重要です。費用を把握しておけば、資金繰りの計画を立てやすくなります。

費用を最小限に抑えるためには、専門家に依頼せず自分で手続きを行う方法があります。

しかし、会社の解散・清算の手続きは非常に複雑です。知識が豊富でなければあまりおすすめできません。

会社をたたむ手続きの流れ

経営者の意思で会社をたたむ際には主に次のステップを進めなければなりません。

  1. 株主総会で解散の決議
  2. 解散登記・清算人選任登記
  3. 各種窓口に解散届出などを提出
  4. 債権者保護手続き
  5. 清算手続きの実行
  6. 解散事業年度確定申告
  7. 清算事業年度確定申告
  8. 清算結了登記

1.株主総会で解散の決議

株主総会で、会社の解散を決議します。

解散の決議には、特別決議が必要です。特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成によって成立します(会社法309条2項)。

2.解散登記・清算人選任登記

解散決議が行われたら、清算人を選任します。

解散決議の完了により、会社は営業を終了し、取締役は退任しています。そのため、清算業務を行う清算人を選ぶ必要があるのです。

清算人は、定款で定められているケースや、株主総会の決議によって選任されるケースが一般的です。定款に定めがなく、株主総会の選任決議がない場合は、取締役が清算人となります。

解散決議と清算人の選任が完了したら、2週間以内に、解散登記と清算人登記を行う必要があります。

解散登記と清算人登記は、本店所在地の法務局に申請します。

解散登記には、定款、株主総会議事録、清算人の就任承諾書、印鑑届出書などの書類が必要です。

3.各種窓口に異動届出書などを提出

法務局での解散登記に加えて、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場(東京23区内は不要)などに解散の届出をしなければいけません。

具体的には「異動届出書」などを、税務署や税事務所などの公的機関に提出します。

解散登記後の主な提出書類

  • 異動届出書
  • 給与支払事務所等廃止届
  • 履歴事項全部証明書(コピー)
  • 解散事業年度にかかる確定申告書
  • 清算中の各事業年度における確定申告書

※会社の状況に応じて、提出書類は変更

また、社会保険や雇用保険などに関する書類を、年金機構や労基署などに提出する必要があります。それぞれ書類の種類によって提出期限が異なるため注意してください。

社会保険雇用保険労働保険
書類名健康保険厚生年金保険
適用事業所全喪届
雇用保険
適用事業所廃止届
労働保険
確定保険料申告書
提出先日本年金機構管轄ハローワーク労働基準監督署
期限事業所を廃止した日
から5日以内
事業所を廃止した日の翌日から10日以内事業所を廃止した日の翌日から50日以内

4.官報公告・個別催告

解散の届出をしたら、次は債権者に対して解散を知らせるために官報で公告します。債権者が判明している場合には、個別に催告もしなければなりません。

官報公告は、債権者の中に解散を知らない人がいる可能性があるためで、債権の回収を促すため、公告から2カ月以上の期間が経過しなければ、次の手続きには進めません。

5.清算手続きの実行

清算の段階では、清算会社は所有する財産を売却し、その売却代金で債務を完済します。

残余財産は、全ての債務が清算された後に企業に残る資産を指します。

清算人が債務の完済を達成し、残余財産が確定すると、その後は企業の株主に残余財産を分配する必要があります。

株主に残余財産を分配する際には、原則として、これらの資産を全て現金に換金する必要があります。

非上場株式が含まれる場合や、固定資産が多い場合などでは、資産を現金化するまでに時間がかかる可能性があります。

計画的に残余財産を処理するためには、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

6.解散事業年度確定申告

事業年度の開始日から解散日までの期間を解散事業年度といいます。

解散時点での財産目録と貸借対照表を清算人が作成し、解散日の翌日から起算して2カ月以内に、解散事業年度の確定申告を行います

7.清算事業年度確定申告

解散した会社は、解散日の翌日以降は清算会社となり、解散日の翌日から1年間を清算事業年度といいます。

事業年度が終わるごとに、清算中の所得を申告し、消費税の納付が必要になる場合があります。

確定申告書は、事業年度の終了後2カ月以内に税務署に提出します。

8.清算結了登記

清算手続きが完了したら、株主総会で清算の承認を受けてから2週間以内に、法務局に清算結了登記を申請します。

会社をたたむ前にM&A・会社売却をすべき?

会社をたたむという選択は経営をやめる手段の一つですが、M&A・会社売却という選択肢も存在します。

会社売却とは、自社の事業や会社そのものを、他の会社や経営者に譲渡または売却することです。長年経営してきた会社を廃業することなく、事業を継続できる選択肢として注目されています。

M&A・会社売却で廃業を回避できる?

買い手企業との交渉がまとまり、M&Aが成約となった場合、廃業を回避し、企業や事業を残すことができます。

従来、廃業ではなくM&Aを選択する場合、会社の身売りであるとネガティブにとらえられてきました。

しかし、現在では、事業承継・引継ぎ支援センターや、事業承継・引継ぎ補助金など、国が中小企業のM&Aを支援する体制を強化したおかげで、会社売却の件数は増加傾向にあります。

会社売却を成功させるためには、自社の事業の成長性や収益性、将来性などを考慮し、適切な売却先を見つける必要があります。

ただし、M&A・会社売却は、必ずしも廃業を回避できる方法ではありません。

売却先が見つからず、結果的に廃業となるケースもあります。早期に動き出すことが大切です。

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会社売却のメリット・デメリット

会社売却には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

会社売却のメリット・デメリット

メリット
  • 会社や事業を譲渡することで、廃業を回避し、事業を継続できる
  • 企業価値評価の結果次第で、高い売却益を獲得できる

デメリット
  • 売却完了までの間、買収企業との交渉期間が必要となる
  • M&A仲介業者などの専門家に手数料を支払う必要がある

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会社売却を成功させるためのポイント

会社売却を成功させるためには、以下のポイントが重要です。

  • M&Aの初期段階から専門家に相談する
  • 企業価値を正しく評価する
  • シナジー効果を意識した自社のアピール
  • 複数の買い手候補を探す

早めの準備と専門家の活用により、スムーズな売却プロセスを進めることができます。また、企業価値を正しく評価し、複数の買収候補を探しておくことで、より良い条件での売却を目指せる可能性があります。

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会社をたたむデメリット

従業員の雇用喪失

会社をたたむと、従業員は仕事を失うことになります。

従業員の中には、転職先を見つけられずに困窮してしまう人もいる可能性があります。

事業の価値の喪失

会社をたたむと、事業の価値が失われます。事業には、ブランドやノウハウ、顧客基盤など様々な価値がありますが、会社をたたむとこれらの価値はすべて失われてしまいます。

特に、将来的に成長が見込まれる事業であった場合、その価値を失うことは大きな損失となります。

経営者自身の社会的信用低下

会社をたたむと、経営者自身の社会的信用が低下する可能性があります。会社を経営する能力や責任が問われることになり、新たな事業を立ち上げたり、融資を受けたりすることが困難になる場合もあるでしょう。

M&A・会社売却は専門家に相談しよう

M&A・会社売却は、専門知識や経験が必要となる複雑な手続きです。専門家に相談することで、適切なアドバイスを受けることができ、成功確率を高めることができます。

会社をたたむ前に、M&A・会社売却という選択肢を検討し、専門家に相談することをおすすめします。

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