後継者がいない会社は61%!跡継ぎがいない会社の実態と選択肢まとめ

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  • 後継者がいない会社はどうすればいい?
  • 跡継ぎがいない会社はどうなる?
  • 後継者がいない会社が跡継ぎを探す方法は?

後継者がいない会社の経営者の方は、跡継ぎ問題に頭を悩ませてしまいますよね。

このまま廃業してよいものか、廃業を回避できる選択肢はないものか、考えを巡らせている方も多いと思います。

この記事では、そのような中小企業の経営者の方を対象に、後継者がいない会社の実態、跡継ぎがいない会社がとれる選択肢、跡継ぎ問題の相談窓口などを解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

後継者がいない会社の実態

後継者がいない会社の割合は?

東京商工リサーチの調査結果によると、後継者不在率は年々増しています。

具体的には、2019年は55.61%、2020年は57.53%、2021年は58.62%、2022年は59.90%、2023年は61.09%の企業において後継者が不在であるという調査結果がでています。

そして、2023年度についてみると、経営者が60代の企業の後継者不在率は46.18%、70代は30.5%、80歳以上は23.83%という結果がでています。

また、後継者不在の企業のうち、未定・検討中と回答した割合が一番多く48.16%、次いで、経営者が設立・交代して浅い又は若年者であるため承継先が未定と回答した割合が45.82%でした。会社売却や譲渡の方針を持っているのは全体のわずか0.2%です。

後継者不在の企業が希望する事業承継先(2023年)

2023.11.14 東京商工リサーチ「「後継者不在率」が初の60%超え 円滑な廃業実務の見直しも必要~ 2023年「後継者不在率」調査 ~」(2024.2.9現在)で公表されているデータをもとに作成。

この記事を読んでくださっている方の中にも、後継者問題の解決方針が決められず、二の足を踏んでいる経営者の方もいるのではないでしょうか。

後継者がいない会社はその後どうなる?

後継者が現時点でいない場合は、早急に親族内承継や社内承継などを検討すべきでしょう。

それでも後継者が見つからない場合は、社外から後継者を採用するという方法が考えられます。

また、さいごまで後継者不在が解消できない場合は廃業という選択肢が現実味をおびることとなるでしょう。

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後継者がいない会社の跡継ぎは…選択肢5つの特徴を解説

選択肢①親族内承継

現在、後継者がいない会社であっても、将来的には、親族内承継によって跡継ぎをたてることは可能かもしれません。

親族内承継とは、経営者が自分の子どもや孫など親戚に会社を引継がせて、会社運営をまかせる方法です。

親族内承継をするには、親族の中から早急に後継者候補を選定する必要があります。

メリット

親族内承継のメリットは、スムーズな事業承継が可能という点にあります。
血縁関係があることから、後継者以外の親族や従業員の信頼や理解を得やすいのが親族内承継です。

また、企業文化や風土の継承が容易であることも親族内承継のメリットといえるでしょう。

デメリット

親族内承継のデメリットは、親族であるというだけで、必ずしも後継者に必要な能力、経験、意欲をもっているとは限らないという点です。
適性のない親族が後継者として事業承継した場合、経営悪化や事業存続の危機につながるリスクがあります。

また、誰を後継者に選定するかによって、親族間で感情的な対立がおきて、その後の会社運営に悪影響を及ぼすおそれもあります。

そのほか、根本的な問題として、そもそも跡継ぎとなれる親族がいない場合は親族内承継はできません。
一般的に、後継者教育には3年かかるといわれており、そのような時間的余裕がない場合なども、親族内承継は難しいものでしょう。

注意点

親族内承継の注意点は、後継者候補となる親族のモチベーションアップのために会社の魅力を可能な限り高める必要があることです。

また、後継者教育を早期から計画的におこなう必要があることも、親族内承継の注意点といえるでしょう。

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選択肢②従業員承継

現在、親族内に跡継ぎがいない会社でも、従業員承継という方法で後継者問題を解決できる可能性があります。

従業員承継とは、役員や従業員が会社経営を引き継ぐ方法です。

従業員承継には、会社の経営権だけを引き継ぐ形態のほか、経営権とあわせて会社の資産も引き継ぐ形態があります。

前者の形態、すなわち役員や従業員が社内で昇格し、経営権だけを引き継ぐ方法について、内部昇格と呼ぶこともあります。

メリット

従業員承継のメリットは、親族内承継よりも後継者候補の選択の幅が広がることです。

後継者を社内から選定することになるので、承継後も業務の円滑な遂行が期待でき、社内や取引先からの理解を得やすいという点も、従業員承継のメリットでしょう。

また、従業員の中から後継者が選定されるということで、キャリアパスとして昇進をイメージしやすくなり、従業員のモチベーション向上にもつながるメリットがあります。

デメリット

従業員承継のデメリットは、そもそも社内に後継者候補となる人材がいない場合は、跡継ぎ問題を解決できないという点にあります。

また、親族内承継と同様、適切な人材がいたとしても、後継者として育成する時間や労力がかかるという点も従業員承継のデメリットです。

注意点

従業員承継・内部昇格を成功させるには、事前にしっかりと準備することが重要です。

ある程度の時間的余裕をもって、後継者となる人材の育成を計画したり、社内評価制度を整備したりするなどの課題をクリアする必要があるでしょう。

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選択肢③外部招聘

後継者がいない会社の跡継ぎ問題を解決するための選択肢として、外部招聘(がいぶしょうへい)という方法が考えられます。

外部招聘は、社外から経営の知識・経験が豊富な人材を招いて、会社の後継者として採用する方法です。

メリット

外部招聘のメリットは、親族内承継や社内承継ができない場合に、跡継ぎがいない会社の後継者問題を解決できる点にあります。

また、最初から経営の知識・経験が豊富であるため、経営者として育成する時間はさほど必要ないというメリットもあります。

デメリット

外部招聘のデメリットは、社内での十分な理解が得られなければ親族や社員との間に摩擦が生じ、会社運営が危ぶまれる点にあります。

また、会社の規模や業種によっては、前職までの経歴を生かすことができず、会社運営に力を発揮できないおそれがあるでしょう。

注意点

外部招聘をする場合は、親族や社員への十分な説明をおこなうことが大切です。

外部招聘の対象となる人物が、自社とマッチできる人材かどうか、自社の経営者として適性のある人物かどうかという点を、見極めることもポイントです。

選択肢④M&A

親族内承継、従業員承継、外観招聘などが難しい場合、M&Aが後継者問題の解決に役立つ可能性があります。

M&Aとは、企業の合併や買収を意味します。親族や従業員以外の第三者に会社を売却し、会社の運営を引き継いでもらうという方法が、M&Aです。

買収と聞くとイメージがよくないかもしれませんが、友好的な買収も多くあり、自らの意思で会社売却をおこなう経営者も多いものです。

近年では、中小企業の事業承継を目的としたM&Aが盛んに実施されています。

メリット

M&Aのメリットは、親族や従業員に限らず、幅広く後継者を募ることができるため、後継者不足による事業存続の危機を打開できる可能性が高い点にあります。

近年では、M&A仲介業者や専門家による支援も充実しており、スムーズな後継者探しを実現できる可能性が高いでしょう。

また、新たな経営者のもとで事業が成長できる可能性や、従業員の雇用維持の可能性を残すことができる点も、M&Aのメリットです。

そのほか、M&Aの買い手側から、M&Aの対価を受け取ることができるので、将来の生活資金や新規事業立ち上げのための資金などにあてることができます。

デメリット

M&Aのデメリットは、必ず跡継ぎを見つけられるとは断言できない点にあります。

会社に魅力がなければ買い手はあらわれません。
また、売却価格をはじめとするM&Aの各種条件について、買い手側と折り合いがつかなければ、M&Aの成約には至りません。

また、企業文化の違いによる摩擦などが生じる懸念も、M&Aのデメリットとしてあげられます。

譲渡側企業の従業員の雇用を維持できたとしても、譲受側企業の文化についていけないことで、圧力を感じることもあるでしょう。
加えて、勤務地の変更などの事実上の不利益をこうむるケースもあるようです。

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注意点

M&Aを成功させるためには、自社の企業理念をよく理解してくれ、かつ誠意をもった対応をしてくれる買い手を見つける必要があります。

M&Aは、親族内承継や従業員承継などとは違い、後継者教育にかかる時間はおさえられますが、M&Aの相手探しに時間がかかるので注意が必要です。

M&Aの交渉では、譲れない条件がある場合、早期に提示して、話し合いをしておく必要があるでしょう。後出しジャンケンでは交渉が不利になる可能性がある点にも、注意が必要です。

また、中小企業の場合、株式譲渡によるM&Aが多用されますが、その法的手続きや契約書作成についても、不備なく進められるよう注意をはらう必要があります。

適宜、弁護士やM&A仲介業者のアドバイスをもらうとよいでしょう。

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選択肢⑤廃業

廃業とは、会社をたたむことです。

後継者がいない会社の経営者が、一生懸命跡継ぎを探したところ、その甲斐もなく最終的に廃業を選択するというケースも、当然のことながら存在します。

メリット

廃業のメリットは、社長としての重責から解放される点にあります。
後継者教育をおこなう時間、気力、体力などがない場合は、廃業という選択肢にメリットを感じるものでしょう。

また、廃業を前向きにとらえる場合、廃業は、社長も従業員も新しいスタートを切るための機会になるといえるのではないでしょうか。

デメリット

廃業のデメリットは、従業員の雇用喪失につながる点です。
事業承継ができれば、従業員の失業を回避できる可能性はありますが、廃業になれば、解雇するしかありません。

また、廃業により会社がなくなることで、地域経済へ少なからず影響がおよぶことも考えられます。

そして、その企業しか持ちえない独自の技術や、ノウハウが失われるというデメリットも、廃業にはあります。

注意点

廃業をする場合も、タイミングの見極めが非常に重要です。経営状態がきびしい中で廃業を選択した場合では、負債が多く清算できず、廃業ではなく倒産になるケースもあります。

また、廃業すれば会社の存続はかないません。育ててきた会社を消滅させることが惜しいと感じるなら、廃業という選択をする前に、後悔しないかどうかもう一度考えてみてください。

廃業が適切かどうか、M&Aによる事業承継の可能性があるかといった判断には、判断の基礎となる情報を収集することや冷静な決断が必須です。

M&Aの専門家などの意見も考慮したうえで、落ち着いて判断をくだすようにしましょう。

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後継者がいない会社が跡継ぎを探す方法

後継者問題の相談できる窓口は?

後継者がいない会社がM&Aによって跡継ぎを探す場合、以下のような相談窓口があります。

後継者問題の相談窓口

サービス内容や利用手数料などを見比べて、相談しやすい窓口を活用してみてください。

M&Aの相談窓口について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考になさってください。

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跡継ぎを探すための最善の準備とは?

後継者がいない会社が、M&Aによって跡継ぎを探すためには、M&Aの相手があらわれるような魅力的な会社に磨き上げることがポイントです。

企業価値を高めるための対策を立てて、実行することが最善の準備といえるでしょう。

企業価値を高めるためには、現状の企業価値を知ることも大切です。

M&A仲介会社の無料相談なども活用しつつ、現状の把握と企業価値向上に努めましょう。

まとめ

後継者がいない会社は、株式公開(IPO)をおこなう方法も考えられますが、中小企業では現実的ではないでしょう。

自社のことを大切に考えてくれる買い手を見つけて、M&Aによる事業承継を目指すのがおすすめです。

後継者不在でお悩みの場合は、この記事でもご紹介した相談窓口に問い合わせるなどして、跡継ぎ問題を解決していきましょう。

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