会社の経営者をもうやめたいと思ったらどうする?経営をやめる場合の3つの対応方法とは
経営をもうやめたいと思ったら、会社の経営者はどうすればいいのでしょうか。従業員がいて取引先との関係もある以上、思い立ってすぐに経営をやめることは難しいものです。
「後継者がいないので今後が不安」「赤字続きなので廃業したい」など、経営から離れたいと考えるきっかけは様々あるでしょう。
しかし、長年経営して育ててきた会社を廃業してしまうのは、もったいない選択です。
M&Aによる事業承継を行うことで、これまでの資産や事業を後の世代に残すことができるかもしれません。
自社の価値に自信がない場合であっても、まずは専門家に会社売却について相談してみましょう。
目次
経営者をやめたいと思う主な理由
経営者をやめたいと思う理由は、人によってさまざまです。よく挙げられる理由としては、以下のようなものがあります。
経営者をやめたいと思う主な理由
- 経営状態・業績が良くない
- 心理的な重圧から解放されたい
- 後継者がいない
- 会社を売ってお金にしたい
経営状態・業績が良くない
会社の業績が悪化する理由は様々です。
景気の変動や競争激化などによって、経営環境が厳しくなっているケースや、技術革新や企業を取り巻く状況の変化に追いついていないケースなどがあるでしょう。
業績がよくない要因の中でも、外部要因が大きいと自社でコントロールできる部分は少なくなります。このような状況下では、経営者をやめたいと考えてしまう方が増えるでしょう。
ちなみに、企業が廃業するケースとしては、黒字企業の休廃業が過半数を超えています(2023年の東京商工リサーチの調べによる)。
つまり、経営状態が悪いから廃業するというケースよりも、高齢でもう企業経営ができないケースや、後継者が見つからないために廃業するパターンが多いのが実情です。
心理的な重圧から解放されたい
日々の業務に伴うストレスや責任の重圧から解放されたいと感じることも、経営者をやめたいと思う理由の一つです。
企業の成功や失敗に常に影響を与える立場であるため、経済的な不安や孤独感などが重圧となってしまうことがあります。
これらの要因が複合的に組み合わさり、モチベーションが低下すると、経営者をやめようと考えてしまうでしょう。
後継者がいない
企業を承継してくれる後継者がいないと、経営者をやめて、会社をたたもうと考える人もいるでしょう。
後継者不足は、中小企業にとって深刻な問題です。
子供や孫が承継を希望していなかったり、従業員や役員に適する後継者候補がいなかったりすると、経営者をやめて自分の代で会社を終わらせようとする場合があります。
しかし、後継者が身近にいないのであれば、廃業ではなく、M&Aなどの代替方法を検討すべきです。M&Aの専門家であれば、ネットワークを駆使して幅広い分野から後継者候補となる企業や個人を見つけてくれる可能性があるからです。
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会社を売ってお金にしたい
自社の業績が良好な場合、買い手から高く評価されている内に売却してお金を得ることを目的に、経営者をやめようとする人もいます。
ベンチャーやスタートアップなどでは、起業した時点から売却することを考えている経営者も増えてきています。
この場合も、M&A仲介会社などに相談して、可能な限り売却額を上げていくように交渉していく必要があるでしょう。
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経営者をやめたい場合の主な対応方法
親族内承継
親族内承継は、経営者の子をはじめとした親族に会社の経営を引き継ぐ形式の事業承継です。
事業承継の手法の中でも、最も一般的な事業承継ですが、M&Aが広まるにつれて、親族内承継を行う経営者は減少傾向にあります。
2022年の事業承継における親族内承継の割合は34%です。
※2022年 中小企業白書第2-3-20図より作成
また、親族内承継を行う場合は、候補者の選定や教育など、長期間にわたる準備が必要となります。
経営者としての経験が浅い人を後継者にする場合は、5~10年ほどかけて教育するのが一般的です。
事業承継は、先代の経営者が健康なうちから計画的に進めなければなりません。
親族内承継のメリット
- 社内外から心情的に受け入れられやすい
- 信頼できる家族に事業を承継できる安心感がある
- 相続等により財産や株式を一括で移転できる
(所有と経営の一体的な承継が期待できる)
親族内承継は、親族が事業承継に積極的であれば最も成功しやすい事業承継といえるでしょう。仲介会社などに高額の費用を払う必要もなく、後継者の金銭的な負担も抑えられます。
特に、自分の子供に引き継いでもらいたいと考える経営者にとっては、親族内承継により安心してリタイア後の生活を送ることができるかもしれません。
しかし、親族の中に後継者候補がいない場合や、承継を断られてしまった場合などは、従業員に事業承継を行うか、第三者に承継するしかありません。いずれも難しい場合は、廃業を迫られることとなります。
親族内承継のデメリット
- 後継者に適した人物がいるとは限らない
- 後継者候補が多いと、親族間で経営権を争うリスクがある
- 個人保証をめぐる問題がある
親族という理由だけで後継者に指名しても、経営者として素質がなければ、事業承継後に業績が悪化する可能性があります。
また後継者を親族の中から探す場合、複数の候補者がいるケースがあるでしょう。
候補者が多ければ多いほど、候補者同士が経営権を争うリスクが高くなります。
また、中小企業では、経営者が融資を受ける際には、自らが保証人となったり、担保を提供したりすることがよくあります。
もし現経営者が後継者に経営権を譲る場合、これらの個人保証を外す必要がありますが、後継者がその個人保証を継ぐだけの資金力を持っているとは限りません。
また、後継者が経営の実績がない場合、個人保証の変更が難しいこともあり、円滑な経営譲渡が難しくなる場合があります。
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社内承継
社内承継は、親族以外の経営陣や従業員に経営権を譲渡する形式の事業承継です。
経営陣が承継する場合をマネジメント・バイアウト(MBO)、従業員が承継する場合をエンプロイー・バイアウト(EBO)といいます。
2022年の中小企業白書によると、事業承継における社内承継の割合は33.9%です。親族内承継とその割合はほとんど変わりません。
社内承継のメリット
- 経営能力のある人材を見極めてから承継できる
- 従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすい
- 社内の適任者に承継させるため、社内外の関係者に受け入れてもらいやすい
これまで一緒に働いてきた従業員の中から後継者を決めるため、性格や考え方、能力などを吟味して誰に承継するかを決められるのは大きなメリットでしょう。
自社の業務内容や、取引先との関係などを熟知している役員や従業員であれば、スムーズに経営を引き継ぐことができます。
社内承継のデメリット
- 抜本的な経営面の改善が難しい
- 資金面での後継者の負担が重い
- 個人保証の引継ぎが必要となる
従業員承継も親族内承継と同様、先代の経営手法が踏襲されるケースがよくあります。抜本的な経営面の改善は難しくなる可能性が高いです。
社内承継の場合は、資金面に関する後継者の負担が大きく、後継者候補に株式取得等の資金力が足りないケースが少なくありません。
また、社内承継においても、個人保証の引継ぎが必要になるケースがあります。
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第三者承継(M&A・会社売却)
第三者承継は、M&Aによる事業承継のことです。親族や従業員以外の者に会社売却を行い、経営権を譲渡します。
M&Aを身売りと捉えるマイナスイメージが減り、有用性が社会的に認知されるにつれて、実施される件数は増えてきています。
2022年の中小企業白書によると、事業承継における第三者承継の割合は27.8%です。
少子高齢化などにより、子供や孫、従業員などを後継者にできない企業は今後も増えていくことが予想されます。第三者承継はこれからも広まっていくでしょう。
第三者承継のメリット
- 後継者不足の問題を解決できる
- 売却益を得られる
- 従業員の雇用を維持できる
第三者承継では、マッチングポータルや仲介会社を利用することで、承継の候補企業を幅広く探すことができます。
これにより、後継者不在を解決できる可能性が高まります。
M&Aによる第三者承継を行うと、売却益を得られるのも大きなメリットです。
税金はかかりますが、手取り額を元手に新たにビジネスを始めたり、生活資金にしたりできます。
廃業する場合でも、残った事業資産を売却すれば相応の資金にはなりますが、一般的に第三者承継の方が得られる利益は大きくなるでしょう。
廃業を選択した場合、そこで働いていた従業員は新たな職を探さなければいけませんが、事業承継の場合は経営者が代わるものの、従業員はそれまでの仕事を続けられます。
引き継ぎ相手によっては、譲渡後の方が待遇が改善する場合もあるでしょう。
第三者承継のデメリット
- 買い手探しが難しい場合がある
- 売却益には税金がかかる
- 取引先との関係性が悪化する可能性がある
- 仲介会社への費用が発生する
第三者承継を行う場合、売り手優位の業種や業界であれば、買い手は比較的見つかりやすいといえます。しかし、業績が悪化して経営が厳しい場合のM&Aは、簡単には買い手が見つからないこともあるでしょう。
複数のM&A仲介会社に登録して、どのくらいの候補企業が見つかるかを確認してみましょう。
また、M&Aで、事業内容や契約内容に大幅な変更が発生すると、取引先から苦情が入ったり、最悪の場合、取引が停止されたりする可能性があります。
M&Aの買い手は、既存の取引先からの収益なども含めて、企業価値を評価している場合もあります。取引先との関係は会社売却後も良好なものになるよう努めなければなりません。
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経営をやめるべきか迷ったら専門家に相談!
経営者をやめてリタイアしたいと思ったら、まずは親族内承継か社内承継を検討することでしょう。
しかし、親族に候補者がいなかったり、後継者候補となる従業員がいても家族が反対していたりして、事業承継が進まないケースも多いです。
親族や従業員への承継が難しくても、会社売却であれば承継の候補者が見つかるかもしれません。
M&Aの市場は、買い手候補となる企業が増えています。
自社に買い手がつかないと考えていても、専門家に相談することで、想像以上に評価してもらえる可能性もあります。
長年育ててきた会社の廃業を選択する前に、M&Aの専門家に相談してみてください。