会社の身売り(M&Aによる会社売却)のメリットは?注意点は3つ!

会社の身売り
  • 会社の身売りとは?
  • 会社の身売り(会社売却)にはメリットがある?
  • 会社売却の注意点は?具体的な方法は?

会社の身売りとは、会社の特定の事業や、会社そのものを、会社とは関係のない第三者に売却することです。

身売りと聞くと、会社の経営状態が悪く、第三者に買いたたかれるような否定的なイメージがつきまとうかもしれません。

しかし昨今、後継者問題をかかえる中小企業が、従業員の雇用維持や会社の存続のために、第三者に会社を売却するケースが増えています。

もはや身売りというネガティブな表現は、ふさわしくないでしょう。

この記事では、会社売却(会社の身売り)の方法、メリット、デメリットについて解説していきます。

現在、後継者不在の悩みをお持ちの経営者の方など、ぜひ最後までお読みください。

会社の身売りとは?

会社の身売りとは?

会社の身売りとは、会社売却(会社そのものや会社の事業を第三者に売却すること)を指します。裏を返せば、第三者に会社やその事業が買収されることです。

たしかに、会社売却のことを「身売り」と表現してしまうと、マイナスイメージがつきまといます。会社経営をあきらめて、会社を手放し、従業員を見捨てた社長という悪いレッテルがつきそうで、抵抗を感じる方もいるでしょう。

しかし、昨今、会社売却は、M&A(Mergers and Acquisitions)の一種として、会社の存続・成長をうながす経営戦略のひとつであるという認識が、徐々に広まりつつあります。従業員の雇用を守るという観点からも、「身売り」は有益です。

会社売却には、「身売り」という表現ではあらわせない、プラスの側面があるのです。

会社の身売りの目的・きっかけは?

会社の身売りの典型例としては、先行き不安をかかえた会社が、事業の存続や経営資源を確保する目的で、会社を売却するものでしょう。

サブウェイは2月、他社への身売りを検討していると発表していた。(略)サブウェイが自社売却を決めた背景には、同業他社との競争激化や社員の不祥事によるイメージ悪化で経営が傾いていたことがある。

2023.8.25日本経済新聞「サンドイッチ大手サブウェイ、身売りで合意 1兆円超か」(2024.3.4現在)

ヤマダ電機は12日、経営再建中の大塚家具を30日付で子会社化すると発表した。(略)大塚家具は販売が低迷し、赤字経営が続いていた。店舗閉鎖などリストラを進めたが財務体質は改善せず、身売りに追い込まれた。

2019.12.13埼玉新聞「大塚家具が身売り、ヤマダ電機の子会社に 唯一、大塚家具の店舗が残る八木橋「協力関係深めたい」」(2024.3.4現在)

また昨今では、後継者問題をかかえる経営者が、会社を存続させる目的で、第三者に「身売り」をする例も増えています。

会社の後継者不在による身売りは何%?

さて後継者不在のために、身売りをする会社は全体の約何%にのぼるのでしょうか。

こちらの円グラフは、2023年度に選択された事業承継の方法について、帝国データバンクの調査結果をもとにまとめたものです。

2023年度の事業承継では、内部昇格(従業員承継)が一番多くて全体の約35.5%、次いで、同族承継が約33.1%でした。

そして、3番目に多かったのが、M&Aほか(買収・出向など)で、全体の約20.3%を占めています。

「身売り」という言葉のイメージにとらわれ、会社売却(M&Aによる事業承継)という選択肢を捨てるのは、時代にそぐわないものでしょう。

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会社の身売りのメリットは?

①譲渡益を得られる

会社売却によって得られる譲渡益は、経営者にとって大きなメリットとなります。

会社売却は、経営者が築き上げてきた事業の価値を換金できる機会となります。

会社売却によって得られる譲渡益は、安定した老後生活の糧となるほか、新規事業の立ち上げなど次なる挑戦への資金として、活用することができます。

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②企業の存続・成長

会社売却は、主力事業への経営資源の集中や、シナジー効果による事業の成長を実現する有効な手段となる点も、メリットとなります。

不採算事業のみを売却し、主力事業に経営資源を集中させることで、経営を再建できる可能性もあるでしょう。

先行き不安をかかえる場合でも、会社売却をおこなうことで、事業規模の拡大や市場シェアの獲得がかない、第三者の手によって事業そのものを永続的に存続・成長させることができるかもしれません。

③後継者不足の解決

会社売却は、後継者不足を解決できるというメリットもあります。

我が子や兄弟姉妹などの親族から後継者を選ぶことができない場合や、経営手腕のある従業員がおらず内部昇格をさせることができない場合などは、第三者に「身売り」をして会社の後継者になってもらうことで、後継者不足の問題を解決することができます。

④従業員の雇用維持

会社売却は、従業員の雇用維持の可能性がある点でも、メリットがあります。

廃業してしまえば、従業員は露頭に迷うことになります。しかし、会社売却をおこない廃業をまぬかれることができれば、ただちに食い扶持を失うことにはならないでしょう。

会社の身売りの方法が株式譲渡であれば、従業員の待遇はそのまま引き継がれるのが基本です。また、事業譲渡の場合でも基本的には、従業員が移籍に同意すれば、新しい会社でも雇用関係が継続します。

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⑤経営者の責任・個人保証から解放

社長としての誇りをお持ちである反面、会社経営をもうやめたいと思われている方は、意外と多いものかもしれません。

会社売却のメリットには、経営者としての重責から解放されることで、精神的な負担を軽減できるという点があります。

また、会社経営から離れることができれば、会社の保証人の地位をからも離れられる可能性が高まります。借金返済の心配をかかえて老後を過ごすというリスクを回避できる可能性があります。

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会社の身売りの3つの注意点とは?

①競業避止義務など制約がある

会社の身売りをした場合、売り手側には競業避止義務やキーマン条項による制約が課される可能性があります。また、スキームによっては、負債が残るリスクがあります。

競業避止義務

競業避止義務とは、譲渡対象の会社がおこなっている事業と競業する行為をおこなわない義務のことです。

会社売却後、売り手側には、一定期間、競業避止義務が生じるという取り決めがなされることが一般的です。

業務内容はもちろんのこと、地域的な限定をもうけることが多く、競業避止義務を負う期間についても相手方と話し合いの上、決定することになります。

競業避止義務に違反すれば、損害賠償を請求される可能性もあるので、注意が必要です。

キーマン条項によるロックアップ

キーマン条項とは、経営者や重要な業務にたずさわる従業員などの事業運営に不可欠な人材については、会社が買収された後、一定期間、退職が禁じられ、売却先企業の業務に従事するという取り決めのことです。

キーマン条項が設けられた場合、すぐには会社運営から離れられません。

退任後の人生を謳歌しようとしている経営者の方にとっては、注意点といえるでしょう。

スキームによっては負債が残る

企業価値を評価してもらえる一部の事業のみを売却した場合、残りの赤字事業の負債をかかえることになるかもしれません。

身売りの対価として譲渡益が入るため、返済にあてることもできるでしょうが、譲渡益でまかなうことができなかった分は、保証人として経営者個人の資産からお金を捻出して、返済する必要があります。

②関係者からの非難

会社売却は、経営者にとって重要な決断であると同時に、従業員、顧客、取引先など、様々な関係者に影響を与える出来事です。特に、事前に十分な説明や配慮が欠如していると、関係者からの反発や不安が生じる可能性があります。

とくに、キーマン条項やCOC条項に関する遵守事項の違反は、M&Aの中止につながるリスクがあるので、注意が必要です。

COC条項に関する遵守事項

COC(チェンジオブコントロール)条項に関する遵守事項とは、身売りをする側の企業が、その取引先企業から、M&Aの実施についての承諾を得るよう義務付ける取り決めのこと。

COC条項がある場合、経営者の変更を理由として、一方的に取引を停止することができます。

仮に、身売りをする企業とその取引先の間の取引が停止になった場合、M&Aの買い手側企業は、得られるはずだった経営資源を得られなくなります。

その結果、買い手側企業が、M&Aに応じるメリットが半減するため、M&Aの中止につながる可能性が高くなります。

③身売りができない会社もある

身売りをしたくても、身売りができない会社も、なかにはあります。

買い手探しで失敗するケース、会社売却のタイミングを逃してしまうケース、交渉が決裂してしまったケースなど様々です。

身売りができない事態を打開するには、まず早い段階から買い手探しや企業価値評価にに着手することです。そして、情報を収集しながら、身売りにそなえておく必要があるでしょう。

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会社売却の流れは?身売り後の影響は?

会社の身売りの手続きの流れは?

中小企業の経営者の方が、会社売却をおこなう場合、その流れとしては、以下のようなものになるでしょう。

会社売却の流れ(書類)

まずは、M&A仲介会社などへの相談や、M&Aマッチングサイトへの登録をおこない、企業価値評価や買い手探しに着手します。

その後、買い手候補となる企業があらわれたら、経営陣同士の顔合わせ(トップ面談)をおこない、買い手の意向表明を受け、互いにM&Aを進める意思を固めて基本合意を締結します。

その後、身売りをする側の企業の会計、税務、法務などについて買収監査(デューデリジェンス)が実施され、その結果を踏まえながら、最終的な条件交渉をおこないます。

交渉がまとまれば、最終契約の締結をして、クロージングに向けて各種手続きを進めていきます。

会社売却の方法には、株式譲渡や事業譲渡がありますが、選択する手法しだいで必要となる手続きが違います。
M&A仲介会社や、M&Aを支援する公的機関に相談しながら、一歩ずつ進めていきましょう。

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会社の身売りの後はどうなる?

会社の身売りの後、経営者や役員、従業員など、関係者には様々な影響があるでしょう。

経営者の方は多くの場合、退任することになりますが、場合によっては顧問として活躍される方もいます。

役員や従業員の方は、通常、新しい雇い主に引き継がれ、買い手企業において業務に従事することになるでしょう。
しかし、身売りの後、買い手側から不利な条件をつきつけられる場合もあります。

身売りをする側の企業の経営者として、従業員の方のために最後にやるべきことは、従業員の待遇についての交渉です。
そして、従業員の処遇についての条項を、最終契約書に盛り込む必要があるでしょう。

会社の身売りの後どんな影響について、もっと詳しく知りたい方は「会社売却後の人生はどうなる?会社売却で経営者・社員等のその後は?」の記事もご覧ください。

会社の身売りを成功させる秘訣

会社の身売りを成功させる秘訣は、会社売却(会社の身売り)について、引け目を感じないことです。

そして、経営者として最善の選択ができるよう、情報収集をおこないましょう。

会社売却の方法・メリット・デメリットを理解したうえで、失敗事例や成功事例のパターンを把握しつつ、しかるべき手順で迅速に進めることが大切です。

会社売却にともない、譲れない条件がある場合は、買い手候補とうまく交渉していく必要もあります。

事業承継・引継ぎセンターや、顧問税理士など、会社売却の相談先はたくさんあります。
会社売却にご興味のある方は、一度ご相談なさってみるのはいかがでしょうか。

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