M&Aの契約書の種類や内容は?契約の流れに沿って解説!

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M&A
  • M&Aの契約とは?
  • M&Aで必要になる契約書とは?
  • M&Aの契約の流れは?

M&Aでは、秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書の締結が最低限必要となります。

また、M&Aといっても株式譲渡や事業譲渡など様々なスキームがあるので、それらの手法にあわせた契約締結も必要です。

そのほか、大半の方はM&A仲介を利用することになるので、M&Aアドバイザリー契約の締結も必要になります。

この記事では、中小企業の事業承継をご検討中の方などに向けて、M&Aで必要となる契約の種類、契約書の記載内容、契約の流れ、契約締結のタイミングなどを解説していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

M&Aの契約書とは?種類と内容を解説

M&Aの契約書の種類は?サンプルはある?

M&Aには、3段階のフェーズがあります。まず初めに検討・準備のフェーズ、次に相手企業との交渉のフェーズ、最後にクロージングのフェーズです。

会社売却の流れ(書類)

このようなM&Aの流れにおいては、おもに以下の4つの契約書が必要になります。

M&Aの契約書(一例)

  • M&Aアドバイザリー契約書
  • M&Aの基本合意書
  • M&Aの最終契約書
  • M&Aの秘密保持契約書

M&Aのスキームが株式譲渡であれば、最終契約書は株式譲渡譲渡契約書になります。また、事業譲渡によるM&Aが成立した場合は、事業譲渡契約書の締結が必要になります。

M&A契約書のサンプル

これらの契約書のサンプルについては、経済産業省のホームページでも公開されています(2024.1.22現在)。

専門的な用語が記載されていて難しいものですが、気になる方は、上部のリンクを確認してみてください。

M&Aのアドバイザリー契約書

アドバイザリー契約とは?

M&Aをおこなう場合は、自社の企業価値を分析し、現在のM&A価格を算定し、企業価値を高めるための対策を講じたうえで、買い手企業とのM&A交渉をおこない、所定の手続きを踏んで、成約を目指すという流れになります。

しかし多くの場合、買い手探しに苦労したり、企業価値評価(バリュエーション)の方法やM&Aの手続きの進め方が分からないといったお悩みがあるのも事実です。

その場合、M&A仲介会社やM&Aアドバイザーのサポートを求めるケースが多いでしょう。

相談だけなら無料といったケースもありますが、より本格的なサポートを受けたい場合は、アドバイザリー契約を締結します。

アドバイザリー契約を締結すると、自社の企業価値向上についてアドバイスをもらえたり、シナジー効果が高い買い手を探してくれたりするので、M&Aをスムーズに進められる可能性が高まるメリットがあります。

アドバイザリー契約のメリット

  • M&Aの企業価値評価をサポート
  • M&Aの相手企業を探してくれる
    etc.

契約の規定内容

多くの場合、M&A仲介会社が契約書の書式を準備してくれるので、書面の内容をよく確認して問題がなければ契約の締結に応じることになります。

アドバイザリー契約の内容(一例)

  • 目的
  • 業務の範囲
  • 報酬の種類
  • 中間報酬
  • 成功報酬
  • 契約の有効期間
  • 直接交渉の禁止
  • 解除
  • 賠償
  • 合意管轄・準拠法
    etc.

契約の手数料

M&A仲介を依頼する場合は、委託先によって手数料が異なるので注意する必要があります。

M&Aのアドバイザリー契約を締結するときは、ニーズや費用に応じて、検討しましょう。

M&A仲介の態様には、両手取引(譲渡側と譲受側の双方のアドバイザーを兼ねる仲介)片手取引(譲渡側と譲受側のいずれかの専任アドバイザーになる仲介)、M&Aマッチングプラットフォームの提供など様々です。

一般的にみると、片手取引のほうが、仲介手数料が高額になる傾向があるでしょう。

なお、M&Aアドバイザリー契約で発生する可能性がある手数料としては、以下のようなものがあります。

アドバイザリー契約の費用(一例)

  • 相談料
    アドバイザリー契約の締結前におこなうM&Aの相談の際に必要な費用。無料相談をおこなってくれることも多い。
  • 着手金
    M&A仲介業務に着手してもらうために支払う費用。アドバイザリー契約の締結時に発生する。アドバイザリー契約を解約しても、返金されない。
  • 中間報酬
    M&Aの交渉相手と基本合意を締結できたときに必要な費用。
  • 成功報酬
    最終契約を締結できたときに必要な費用。
  • 月額報酬
    M&Aの仲介業務について毎月発生する手数料。契約が終了するまで継続して支払う。

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M&Aの秘密保持契約書

M&Aでは秘密保持契約書を締結することも一般的です。

秘密保持契約書とは、当事者が相互に開示する機密情報を第三者に開示しないこと、目的外利用しないことを誓約するための契約書です。

M&Aでは、企業の存続に関わる重大な情報を共有することになるため、その情報が不当に流出し、悪用されることを防ぐ必要があります。そのため、M&Aにかかわる当事者間においては、秘密保持契約を締結することが必須です。

秘密保持契約書の内容(一例)

  • 秘密情報の定義
  • 秘密保持義務の内容
  • 情報開示が許される範囲
  • 目的外使用の禁止とその例外
  • 秘密情報の返還・廃棄
  • 契約の有効期間
  • 賠償
  • 合意管轄・準拠法
    etc.

秘密保持契約書の締結の相手方

秘密保持契約書は、先ほどご紹介したアドバイザリー契約を締結する時や、買い手企業との交渉に先立って、締結します。

アドバイザリー契約書とともに秘密保持契約書を締結することで、M&A仲介業者から企業の秘密が漏れるリスクを防ぐことができます。

また、M&Aの相手方の候補となる企業との間で秘密保持契約を締結することも重要です。

買い手企業を探す段階では、企業の名前をふせて概略のみ記載したノンネームシートを用います。

その後、M&Aにふさわしい相手方があらわれた場合は、譲渡企業の詳細な情報が記載された企業概要書(IM・インフォメーション・メモランダム)という資料をもとに、お互いにとってシナジー効果の高いM&Aなのかなどを緻密に検討する段階に進みます。
この段階では、企業秘密にも深く情報をあつかうことになるので、秘密保持契約を締結する必要があります。

秘密保持契約書のサンプル

秘密保持契約書のサンプルは、先ほどの経済産業省のホームページでも紹介されているほか、中小機構のホームページでも確認することができます(2024.1.22現在)。

専門家に相談なさる前に目を通しておきたいという方は、中小機構の「支援者向け事業承継支援マニュアル令和5年度版」の80~81ページに秘密保持契約書のひな型が掲載されているので、チェックしてみてください。

M&Aの基本合意書(基本合意契約書)

基本合意書とは?

M&Aの基本合意書は、売り手企業と買い手企業の間で、最終契約に至る前の中間段階で締結する書面です。

基本合意書は、M&Aの対象、価格、スキーム、時期などの基本的な条件について合意が形成できたことを、確認する意味合いで作成されます。

締結のメリット①成約の動機付け

基本合意書は、基本合意契約書とも呼ばれることはあります。

しかし、通常は、独占交渉権、秘密保持義務、買収監査(デューデリジェンス・DD)の付与、裁判管轄、準拠法などの一定の条項を除いては、法的拘束力を生じません。(法的拘束力がある条項に違反した場合は損害賠償などの法的措置をとられる可能性はありますが、それ以外では法的責任は問われません。)

とはいえ、法的拘束力はなくても、基本合意書を締結する意味はあるでしょう。なぜならば、基本合意書の締結が、売り手と買い手の双方を心理的・道義的に拘束し、M&A成約を目指す動機付けとなるからです。

締結のメリット②スケジュール管理

また、基本合意書には、M&Aのスキームを実行する日の目途、基本合意書の有効期間などについて記載されるので、M&A成約までのスケジュールを明確にすることができます。

この点は、後継者問題でお悩みの売り手や、退任を急ぐ売り手にとっては、とくにメリットを感じるものでしょう。

基本合意書の注意点

ただし基本合意書の締結は、買い手側にメリットが多いということも覚えておくべきです。

基本合意書に規定されることが多い独占交渉権は、売り手が他の買い手候補とM&A交渉をすることを禁止する条項です。

また基本合意書に規定されたM&A価格がアンカーとなり、その後のDDしだいで金額が下がることもあります。

基本合意書の締結は、実際の流れによっては省略するケースもありますが、多くの場合、避けては通れないものです。

売り手としては、基本合意書を締結する相手として、ふさわしい買い手がどうかを見極める必要があるでしょう。

基本合意書の記載内容

M&Aの基本合意書に記載される内容としては、次のような事項が一般的です。

基本合意契約書の内容(一例)

  • 取引対象(株式、事業、資産etc.)
  • 譲渡価格
  • 附帯条件(役員・従業員の雇用条件、ロックアップetc.)
  • デューデリジェンスの実施
  • 最終契約の締結日
  • 費用負担
  • 公表
  • 独占交渉権・買収監査
  • 秘密保持義務
  • 基本合意書の法的効力(有効期限、法的拘束力etc.)
  • 裁判管轄・準拠法

※独占交渉権、秘密保持義務、有効期限、裁判管轄、準拠法などの条項は、一般的に法的拘束力を有する条項。規定内容によっては違約金を支払う義務が生じることもある。

M&Aの最終契約書

最終契約書とは?

M&Aの最終契約書とは、M&Aの条件をまとめて実行するために締結する最終的な契約書のことです。

最終契約までの流れとしては、まず買収監査を終えた後に、売り手と買い手の双方が、M&Aを実行する意思を固めるというプロセスが必要です。

買収監査


買収監査は、買い手がM&Aを実行するか判断するために、対象会社の財務、法務、税務などに重大なリスクをかかえていないかについて詳細に調査すること。

通常、実際の調査については、公認会計士、弁護士、税理士などの専門家に委託する。

デューデリジェンス、DDともいう。

そして、双方がM&Aの成約に向けて、さらに詳細な条件交渉をおこないます。

条件交渉がまとまったら、最終契約を締結するという手順になります。

最終契約書は、M&Aに関する契約を履行するために締結するものになります。

そのため、M&Aを実施するにあたり、必ず必要になる具体的な条件を盛り込む必要があります。たとえば、株式譲渡の承認決議を経ること等です。

契約違反の効果

最終契約書の場合、基本合意書とは異なり、法的拘束力は全ての条項に生じることになります。

すなわち、終契約書に違反した場合、損害賠償請求や、M&A契約の解除をされる可能性が非常に高くなります。

最終契約書の記載内容

M&Aの最終契約書には、以下のような内容を規定することになります。

最終契約書の内容(一例)

  • 取引対象(株式、事業、資産etc.)
  • 譲渡価格、支払方法
  • クロージングの実施方法
  • 表明保証(譲渡対象に問題がないこと)
  • クロージングの前提条件(株主総会決議、取締役会決議etc.)
  • クロージングにともなう誓約事項(ロックアップ条項、競業避止義務、従業員の勧誘禁止etc.)
  • 個人保証・担保提供の解消
  • 賠償/解除/費用負担/公表/裁判管轄・準拠法
    etc.

最終契約書のひな形については、M&Aの手法ごとに紹介します。

次の目次にお進みください。

株式譲渡によるM&Aの流れと契約書

株式譲渡によるM&A契約とは?流れは?

株式譲渡とは、自身の保有する株式を譲渡することで、オーナー経営者としての地位も譲渡するというM&Aの手法のことをいいます。

中小企業の事業承継をおこなう場合、株式譲渡というM&Aの手法が代表的なスキームです。

基本的には株式譲渡は株式を売却すればよいものですが、中小企業の場合、株式に譲渡制限がついていることがほとんどでしょう。

その場合、株式譲渡によるM&Aをおこなうには、株主総会や取締役会の承認決議が必要になります。

流れとしては、TOP面談をおこない買収監査を終え、いよいよM&Aが現実味を帯びたという時点で株主からの譲渡承認請求をおこなうことになるでしょう。

最終譲渡契約書には、クロージングの前提条件として会社の承認決議を要することを記載しておく必要があります。

株式譲渡契約書の記載内容・注意点

株式譲渡契約書の記載する項目としては、前述のとおり、取引対象、譲渡対価、クロージングの条件など多岐にわたります。

具体的な規定方法としては、たとえば、株式譲渡の譲渡対価であれば、「金〇〇円(1株あたり金〇〇円)」などと記載しておくことになるでしょう。

また譲渡対価の支払いと引き換えに、銀行印・通帳、印鑑証明書、株券の交付をおこなうなどの条件も定めておく必要があるでしょう。

契約書のサンプル

株式譲渡契約書のサンプルについては、サイト上で公開されていることも多いものです。

ただし、案件ごとに重要なポイントに違いがある可能性もあります。

相手方との間でまとまった条件を不備なく規定しておくために、念には念を入れて契約書を作成したいとお考えの場合は、M&A仲介会社や弁護士に相談してみても良いでしょう。

株式譲渡の基本合意書、最終契約書(株式譲渡契約書)についても、経済産業省のホームページのほか、中小機構の「支援者向け事業承継支援マニュアル令和5年度版」の82~91ページでも紹介されています(2024.1.22現在)。

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事業譲渡によるM&Aの流れと契約書

事業譲渡によるM&Aとは?流れは?

会社の重要な財産の全部または一部の譲渡については、原則として、取締役会決議および株主総会の特別決議が必要となります。

これらの承認決議を経ることで、株式譲渡によるM&Aを実行することができるようになります。

事業譲渡契約書の内容

譲渡対象に関する規定

事業譲渡契約では、特に譲渡の対象となる事業の範囲については、具体的に細かく規定しておく必要があるでしょう。

また、資産、債権、債務のほか、従業員の雇用関係についての規定も必要です。

譲渡した事業に従事していた従業員が、引き続き業務に従事するには、M&Aの相手方企業への移籍について従業員個人の承諾を得ることと、事業譲渡契約書に従業員の処遇について明記しておくことが必要になります。

善管注意義務に関する規定

そのほか譲渡日までは引き続き事業を運営しておく必要があるので、買い手が損失を被らないように、事業譲渡の実行日まで善管注意義務が規定されることが一般的です。

損害賠償請求される可能性があるため、売り手としては善管注意義務に違反しないように注意する必要があります。

善管注意義務とは、一般的にその立場にある人であれば可能であろう注意を払うという義務です。

かりに事業譲渡の実行日までに何らかの損失がでてしまった場合、その判断の前提となる事実の認識に重要な誤りがあったり、意思決定の内容が企業の経営者として著しく不合理だったりするときは、善管注意義務違反に問われる可能性が生じます。

事業譲渡契約の注意点まとめ

  • 譲渡の対象となる、資産・債権・債務の範囲を明確にする。
  • 従業員の雇用関係について忘れずに規定する。
  • 事業譲渡の実行まで善管注意義務に配慮する。

契約書のサンプル

一般的な契約書のサンプルを流用していると、そのまま鵜呑みにしてしまって、自身が注意しておくべきことについて認識できないこともあるでしょう。

契約締結の際には、不備のない契約書の作成は不可欠であるとともに、契約書の規定内容について十分に把握しておくことが重要です。

事業譲渡に関する基本合意書・最終契約書についても、経済産業省のサイト、および中小機構の「支援者向け事業承継支援マニュアル令和5年度版」の92~96ページで、サンプルを確認することができます。

M&Aの契約の流れ・契約書で悩んだときは

M&Aをおこなう場合、M&Aアドバイザリー契約、基本合意、最終契約、秘密保持契約などの契約を締結する必要があります。

契約によって、契約の締結時期や、契約書の規定内容も違います。

昨今、中小企業のオーナーがM&Aによる事業承継をご検討されるケースが増えています。

人生において何度もM&Aをご経験される訳ではないので、不慣れな手続きに不安をお持ちの方も多いものです。

M&Aの契約の流れや契約書の作成でお悩みの際は、頼れる専門家に相談するというのが一つの手です。

M&A仲介会社であれば、必要に応じて契約書のひな型を提供してくれたり、専門家を紹介してくれたりするので、安心です。

M&Aの契約書で悩んだときは、弁護士に相談して一緒に作成できるケースもあるでしょう。

まずは無料のお問合せなどを活用して、頼りになるM&Aのパートナーを見つけてみてください。

M&Aを進めるうえでの注意点については「M&Aにおける注意点とは?会社売却側・買収側のリスクや確認事項を解説」の記事でまとめていますので、あわせてご覧ください。

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