M&Aスキーム (手法)を比較!メリット・デメリット・手続きの違いを解説

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  • M&Aのスキームとは?どんな手法がある?
  • 株式譲渡というM&Aスキームのメリットは?
  • 事業譲渡というM&Aの手法のデメリットは?

M&Aスキーム(手法)は、大きく分けて、株式取得(株式譲渡etc.)、事業譲渡、会社分割、合併、資本提携の5つに分類できます。

それぞれのM&Aスキームには、メリット・デメリットがあります。M&Aの目的にあわせてスキームを選ぶ必要があります。

この記事では、それぞれのM&Aスキームの特徴を比較できるように、メリット、デメリット、税法上の取り扱い、法務上の留意点などを整理しました。

ぜひ最後までご覧ください。

M&Aスキーム(手法)の基礎知識

M&Aスキーム(手法)とは?

M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の略称で、会社や経営権の取得を意味します。

M&Aスキームとは、売り手側と買い手側がM&Aをおこなうために選択する手法のことです。

たとえば中小企業が、後継者不在のためにM&Aをおこなう場合などは、株式譲渡というM&Aスキームが多用されます。

M&Aスキーム(手法)一覧

M&Aスキームは、株式譲渡だけではありません。

M&Aスキームは大きく分けて、株式取得、事業譲渡、会社分割、合併、資本提携があります。

株式譲渡は株式取得に分類されるM&Aの一種です。

M&Aスキーム(手法)

  • 株式取得
    株式譲渡、株式交換、株式交換、第三者割当割当増資etc.
  • 事業譲渡
  • 会社分割
    新設分割、吸収分割
  • 合併
    新設合併、吸収合併
  • 資本提携

よく使われるM&Aの手法は?

中小企業で実施されているM&Aスキームとしては、事業譲渡、株式譲渡が主流といえそうです。

※ 2017.11 三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱「成長に向けた企業間連携等に関する調査」(2021.1.23現在)を参考に作成。

狭義のM&Aスキーム(手法)

これらのM&Aスキームのうち、株式取得、事業譲渡、会社分割、合併については、「狭義のM&A」と呼ばれます。「狭義のM&A」というのは、M&Aの本来的な意味に限定した場合のM&Aスキームを指します。

M&Aスキームは本来、会社の経営権を伴う買収、合併を意味します。そのため、買収の手法である株式取得、事業譲渡、会社分割および、合併が「狭義のM&A」と位置づけられます。

広義のM&Aスキーム(手法)

広義のM&Aでは、上記の狭義のM&Aスキームに加えて、提携も加わります。

資本提携

資本提携(資本業務提携)とは、2社以上の会社が、株式の持ち合いをおこなうなどして、協力関係を築き、事業の成長を目指すという経営戦略です。

狭義のM&Aと比較した場合、資本提携は会社の経営権が移転しない点に、狭義のM&Aとの違いがあります。

しかし、資本提携と狭義のM&Aスキームを比較した場合、株式を持ち合うなどして資本参加している共通点があります。

そのため、資本提携もM&Aスキームの一つとして整理することができます。

資本提携は、株式の移動などの資本投入がなされるため、より強固な協力関係を築けるメリットがあります。

業務提携

企業提携には、業務提携という類型もあります。

業務提携とは、経営資源を出し合って協力関係を築き、事業の成長を目指すという経営戦略のことです。

業務提携には、販売提携、技術提携、共同開発提携、生産提携といった類型があります。

資本提携と比較した場合、業務提携は株式の持ち合いなどによる資本参加をしない点に、魏資本参加との違いがあります。

業務提携は、資本提携と比べた場合、資本投入がないので提携が解消されやすいというデメリットがある一方、資本提携ほど多大なコストがかからないので柔軟かつ早期の連携が可能というメリットがあります。

M&Aスキーム(手法)は比較で選ぶ

M&Aスキームには、メリット・デメリットがあるため、対象企業の状況やM&Aの目的に合わせて、スキームの特徴を比較しながら最適なものを選ぶことが重要です。

会社の経営権を譲り渡したいのであれば株式譲渡を選択することになるでしょうし、一部の事業を切り離したいのであれば事業譲渡を選択することになるでしょう。

さてここから、代表的なM&Aスキームについて確認していきましょう。

M&Aスキーム(手法)①株式譲渡

株式譲渡とは?

株式譲渡とは、売り手側が保有する株式を、買い手側に売却するというM&Aスキームです。

たとえば中小企業の場合、オーナー経営者が自社の株式を保有したうえで、取締役として経営権を掌握しているケースが多いものです。

この場合に、中小企業のオーナー経営者が、後継者に対して事業承継をおこないたいのであれば、株式譲渡というM&Aスキームが選択されることが多いでしょう。

M&A│株式譲渡の流れ・手続き

  • 仲介会社に相談
  • 企業価値評価(バリュエーション)・マッチング
  • トップ面談
  • 基本合意書の締結
  • デュ―デリジェンス
  • 株式譲渡契約の締結
  • 取締役会・株主総会
  • PMI(経営統合)

株式譲渡は、他のM&Aスキームと比較すれば手続きは簡単であるといえそうですが、忘れてはいけない手順もあります。

株券発行会社の場合は、株券の引き渡しをおこなう必要があります。また、株主が権利行使をするには、株主名簿の書き換えが必要になります。

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売り手側のメリット・デメリット

売り手側のメリット(一覧)

株式譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなメリットがあります。

  • 譲渡益を自分が受け取れる
  • 課税金額を低額にできる
  • 比較的早期にM&Aを実行できる
    etc.

メリット①譲渡益を自分が受け取れる

自身が保有する株式を譲渡した場合、その対価は、自身で受け取ることができます。

これは他のM&Aスキームと比較した場合に、株式譲渡を選択する決め手となる最大のメリットといっても過言ではないでしょう。

他のM&Aスキームは、資金調達を目的とするM&Aには不向きです。

たとえば事業譲渡の場合、譲渡益が法人に帰属するので、自身が譲渡益の利益を享受するには、会社からの配当や退職金として受け取る必要があります。

メリット②課税金額を低額にできる

また、事業譲渡の場合は譲渡益自体に法人税がかかります。株式譲渡による譲渡益の税率は20.315%です。

一方で、事業譲渡の譲渡益にかかる税率については、少なくとも、法人税の実効税率である約34%程度を覚悟しておく必要があります。

株式譲渡の税金

  • 社長個人が保有する株式を譲渡した場合
  • 所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.3125%
  • 合計すると20.315%の税率で税金がかかる

事業譲渡の税金

  • 事業譲渡の利益は会社に帰属するので、法人税がかかる
  • 法人税の実効税率は約34%程度
  • 社長個人が譲渡益を獲得したい場合は、さらに税金がかかる

メリット③比較的早期にM&Aを実行できる

また、株式譲渡は株主が変わるだけで、対象会社の資産などに変更が生じません。そのため、他のM&Aスキームと比べた場合、比較的短期間で実行できるというメリットもあります。

手続きや税金のことを考えると、他のM&Aスキームよりも株式譲渡のほうが使いやすい手法といえるでしょう。

売り手側のデメリット

株式譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなメリットがあります。

  • 不採算事業があると、譲渡益が低額になる
  • 負債が多いと、買い手が見つからない
  • 持株比率によっては円滑な事業承継ができない
    etc.

譲渡対価は、企業の資産や収益性などの要素をもとに算定されます。不採算事業がある場合や、負債が大きい場合などは、譲渡対価が低額になるというデメリットが想定されます。

また、そもそも負債をかかえた会社の株式については、買い手が見つからないという事態も想定できます。

そのほか、事業承継を目的にする場合は、後継者の持ち株比率に注意する必要があります。

安定した経営権を握るためには、株主総会の特別総会の特別決議を単独で可決できるよう、2/3以上の持株比率が必要になります。

持株比率が低ければ、株式譲渡をおこなっても、円滑な事業承継ができないデメリットが生じます。

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買い手側のメリット・デメリット

買い手側のメリット

買い手側が株式譲渡に応じるメリットとしては、会社をそのまま引き継ぐことができることです。

そのため、株式譲渡の場合は、他のM&Aスキームと比較して、譲渡対象となる会社への影響が少なく、事業拡大や新規事業の展開に集中できる環境が早期に整いやすいでしょう。

買い手側のデメリット

しかし、株式譲渡の場合、株主総会承認決議が得られなければ、株式譲渡を受けることができないというデメリットがあります。

また、株式譲渡の場合、株式会社に簿外債務(帳簿に記載がない債務)を引き継ぐリスクもあります。

株式譲渡についてのまとめ

株式譲渡は、後継者不在を理由とする中小企業の事業承継で活用しやすいM&Aスキームです。

株式譲渡には、手続きが簡便であるというメリットがあります。しかし、デメリットもあるため、株式譲渡を行う際には、十分な検討と準備が必要です。

株式譲渡を成功させるためには、M&A仲介会社や、有資格者からアドバイスをもらえると安心です。

買い手探しや全体的なコンサルティングについては、M&A仲介会社が得意とする分野です。また、企業価値評価などは公認会計士、税務対策は税理士、株式譲渡契約書などを始めとする契約書のチェックは弁護士に相談すると良いでしょう。

無料相談に応じてくれる場合もあるので、上手に活用して、M&Aの成功を目指しましょう。

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M&Aスキーム(手法)②事業譲渡

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、企業が営む事業の全部または一部を他の企業に譲渡するM&Aスキームのことです。

M&A│事業譲渡の流れ・手続き

  • 仲介会社に相談
  • 企業価値評価(バリュエーション)・マッチング
  • トップ面談
  • 基本合意書の締結
  • デュ―デリジェンス
  • 取締役会決議
  • 事業譲渡契約の締結
  • 株主総会の特別決議
  • 事業譲渡の効力発生

事業とは、一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産のことを指します。

具体的には、無形の財産・債務、人材、組織、ノウハウ、ブランド、取引先などが事業に含まれます。

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売り手側のメリット・デメリット

売り手側のメリット

事業譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなメリットがあります。

  • 経営再建に向いている
  • 譲渡益が高額になる
  • 買い手が見つかりやすい

事業譲渡では会社全体ではなく、特定の事業だけを売却できます。したがって、これ以上成長する見込みのない事業は譲渡し、主力事業に経営資本を集中させることができます。

事業譲渡では、譲渡益は会社が受け取ることになるため財務の健全化が見込めます。事業譲渡は、経営再建をおこなうための環境調整がしやすいM&Aスキームといえるでしょう。

また、不採算事業を切り離して特定の事業のみを譲渡することもできます。そのため、事業譲渡の方が高額での会社売却がかなう、買い手が見つかりやすいといったメリットもあるでしょう。

売り手側のデメリット

事業譲渡というM&Aの手法を選択することについて、売り手側には以下のようなデメリットがあります。

  • 負債が残るリスクがある
  • 従業員の転籍がうまくいくとは限らない
  • 法的規制が多岐にわたる

デメリット①負債が残るリスクがある

事業譲渡は経営再建に適したM&Aスキームである一方、不採算事業のみが自社に残ることになり、経営再建どころではなくなるリスクもあります。

デメリット②従業員の転籍がうまくいくとは限らない

事業譲渡をおこなう場合、買い手企業に従業員の雇用関係を引き継ぐと定めたときは通常、個別に転籍の同意を取り付ける義務が課されます。

しかし、場合によっては従業員から反感を買ってうまくいかないこともあるでしょう。

経営統合を進めるうえでキーマンとなる従業員が転籍に同意してくれない場合、従業員の大半が転籍に同意してくれない場合などは、事業譲渡自体がとん挫してしまう、事業の売却益が下がってしまうといったリスクが考えられます。

デメリット③法的規制が多岐にわたる

事業譲渡をおこなう場合、基本的には、取締役会決議や株主総会の特別決議が必要である旨法律で規定されています。

また、事業譲渡をおこなった場合、売り手側には法律で競業避止義務が課されます。その結果、売り手企業は、同一市区町村などで一定期間、同様のビジネスをおこなうことが禁じられます。

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買い手側のメリット・デメリット

買い手側のメリット

事業譲渡について、買い手企業には、必要な事業、従業員、取引先などを考慮して、買収したい事業のみを選択できるメリットがあります。

そのため、負債を避けて、低コストで新規事業に着手することができます。株式譲渡のように、簿外債務を引き受けるリスクは、基本的にはありません。

買い手側のデメリット

しかし、上記のようなメリットがある分、事業譲渡の譲渡対価は高額になりやすく、買収するための資金の準備に苦労することもあるでしょう。

また、従業員や取引先については、株式譲渡のように何もしないで引き継がれるのではなく、個別に契約を締結する必要があります。

許認可についても引き継ぐことができないため、あらためて許認可申請が必要になります。そのため、譲渡を受けた事業について、スピーディーに引き継ぐことができない可能性があります。

事業譲渡についてのまとめ

事業譲渡は、企業の経営戦略を実現するために有効な手段ですが、譲渡する事業の資産や負債の評価が難しいことや、譲受会社との調整が必要な場合があることに注意が必要です。

事業譲渡をおこなう際も、十分な検討と準備をしましょう。

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M&Aスキーム(手法)③会社分割

会社分割とは?

会社分割とは、1つの会社を2つ以上の会社に分けることをいいます。

会社分割は企業再編や、事業の売却、提携の手段として使われます。

会社分割には、新設分割、吸収分割があります。

また、分割型分割と分社型分割という分類もできます。

会社分割の種類

  • 吸収分割
    吸収分割会社がその事業について有する権利義務の全部又は一部を、既存の会社(吸収分割承継会社)に承継させるもの。
  • 新設分割
    新しく会社を設立して、権利義務の全部または一部を承継させるもの。

会社分割の類型

  • 分社型分割
    承継会社から交付された分割会社の株式の対価が、分割会社に交付されるもの。
  • 分割型分割
    承継会社から交付された分割会社の株式の対価が、分割会社の株主に交付されるもの。

つまり、会社分割には少なくとも、吸収分割、新設分割、分社型分割、分割型分割の組み合せにより、4通りの類型があるということです。

分社型分割分割型分割
吸収分割分社型吸収分割分割型吸収分割
新設分割分社型新設分割分割型新設分割

中小企業では、分社型新設分割をおこなった後、新設分割会社の株式を譲渡することで、新設分割会社の経営権を後継者に譲渡するというM&Aスキームが用いられることもあるでしょう。

売り手側のメリット・デメリット

売り手側のメリット

このM&Aスキームを用いることで、一部の事業を切り離して、承継させることができる点で、事業譲渡と同様の効果を得ることができます。

しかし会社分割の場合は、権利義務を包括的に承継することになるので、譲渡対象の事業ごとに承認を得たり、従業員ごとに移籍の同意をとるなどの手間を省略することができるメリットがあります。

売り手側のデメリット

会社分割というM&Aスキームのデメリットとしては、債権者保護手続きを実施しなければならない点で、時間やコストがかかる点があげられます。

会社分割で必要になる手続きには、以下のようなものがあります。

M&A│会社分割の流れ・手続き

  • 分割契約・分割計画の作成
  • 事前の開示
  • 株主総会による承認
  • 債権者保護手続
  • 登記

会社の債権者の利益を害するおそれがある場合、債権者を守るための手続き(債権者保護手続)を踏む必要があります。

会社分割の場合は、資産や債務が変動するので、債権者の利益を害するおそれがあり、債権者保護手続が必要です。
その結果、少なくとも1ヶ月間程度、会社分割について異議を述べる機会を債権者に与える必要があります。その間は、会社分割の手続きを進めることはできません。

そのほか、会社分割では、M&Aのクローズにおいて、登記をすることになりますが、通常、登記は司法書士に依頼するので、費用がかかります。

買い手側のメリット・デメリット

買い手側のメリット

会社分割により、買い手側は承継する範囲を限定できるというメリットがあります。

また、ケースによってはのれん代は、承継会社の経費として計上できることがあります。つまり、5年間かけて、のれん代を損金算入できるため、節税のメリットがあります。

買い手側のデメリット

ただし一方で、移転対象事業に不動産が含まれている場合、不動産取得税と登録免許税を課税される可能性があります。

会社分割を実施すれば、すべてにおいて必ず節税効果が得られるというわけでも無さそうです。

会社分割についてのまとめ

会社分割は、事業のスリム化や効率化、事業の承継を図るために用いられる有効な手段です。

しかし、分割に伴う手続きや費用が発生することや、分割後の経営に影響を与える可能性があることに注意が必要です。

M&Aスキーム(手法)④合併・株式交換・株式移転・第三者割当増資

合併

会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社になることです。

合併は、グループ企業の再編などの場面で用いられるM&Aスキームです。

M&A│合併の流れ・手続き

  • 合併契約書を締結
  • 事前の情報開示
  • 株主総会の承認決議
  • 反対株主などの株式買取請求
  • 債権者保護手続き
  • 合併の効力発生

合併には、吸収合併と新設合併があります。

合併の種類

  • 吸収合併
    合併をおこなう会社のうち、一社のみ残して、他の会社は存続会社に吸収されて消滅するというスキーム。
  • 新設合併
    新しい会社を設立して、合併する会社の権利義務のすべてを新設会社に承継させて、もとの会社はすべて消滅するというスキーム。 

メリット

合併をおこなうことで、組織構造がシンプルになり、迅速な意思決定が可能になります。

また、子会社同士の合併により、企業の経営の効率化を図れるというメリットも考えられます。

ほかにも、合併により、競争力の強化による収益力向上や、既存事業の強化や新記事業の展開など事業の拡大に寄与することが期待できます。

デメリット

たとえグループ企業であっても、会社ごとに独自のルールや企業文化は形成されているものです。そのため多かれ少なかれ合併にともなう社内ルールの統合は、難しいものでしょう。

また、合併により従業員が増加することになるため、人員配置の課題は避けられません。

合併というM&Aスキームを実施すること自体のコストや手間のほかにも、組織統合や人員配置などの課題があるということを認識しておく必要があります。

合併についてのまとめ

合併は、企業の成長や経営の効率化を図るための有効な手段です。
なお、実務では、吸収合併と新設合併を比較した場合、吸収合併のほうが多用されるM&Aスキームといえます。

新設合併では、新しく設立された会社に許認可や免許を引き継ぐことができないため、新たに申請をおこなう必要があります。
一方、吸収合併では、消滅会社の事業を包括承継できるので、この点を捉えると、吸収合併のほうが使い勝手が良いM&Aスキームといえそうです。

ただし、新設合併、吸収合併のいずれのスキームを選択する場合でも、合併にはコストや人事・組織の統合などのデメリットも伴うため、慎重に検討する必要があります。

株式交換・株式移転

株式交換・株式移転とは、ある株式会社が、他の株式会社の100%子会社(完全子会社)となるM&Aスキームです。

株式交換の場合は、既存の会社が、完全親会社(子会社のすべての株式を保有する会社)となります。

株式交換の流れ・手続き

  • 株式交換契約の締結
  • 事前の情報開示
  • 株主総会の承認決議
  • 反対株主などの株式買取請求
  • 債権者異議手続き
  • 株式交換の効力発生

株式移転は、新しく会社を設立し、既存の会社が子会社になります。

株式移転の流れ・手続き

  • 株式移転計画の作成
  • 事前の情報開示
  • 株主総会の承認決議
  • 反対株主などの株式買取請求
  • 債権者異議手続き
  • 株式移転の効力発生

メリット

株式交換や株式移転には、企業再編を円滑に進められるというメリットがあります。

また、買収企業にとっては、M&Aの対価を現金で準備する必要はないので、銀行からの融資などを受けなくても、M&Aを実施できるというメリットもあります。

デメリット

株式交換や株式移転は、M&Aの対価が株式になるため、既存株主の議決権割合に影響を及ぼすおそれがあります。

またM&Aの対価として交付された株式が、非上場企業のものであれば、換価が難しいといったデメリットも考えられるでしょう。

株式交換・株式移転についてのまとめ

株式交換と株式移転は、企業の再編を行うための有効な手段です。

企業再編を検討している場合は、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、適切な手法を選択することが重要です。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、特定の第三者に新株を有償で割り当てて増資をおこなうというM&Aスキームです。

企業が資金調達をおこなうなどの目的のために実施されることが多いです。

第三者割当増資の目的

  • 新規事業や設備投資などのための資金調達
  • 特定の企業との資本提携・業務提携強化など関係性強化
  • 経営再建のための資金調達
  • 買収防衛策(敵対的買収の対象となった会社が、友好関係にある会社に対して第三者割当増資をおこなう)
    etc.

メリット

第三者割当増資には、公募増資などと比較すると資金調達が容易であることや、第三者割当増資をした相手方との関係性強化を図れるといったメリットがあります。

デメリット

一方、既存株主の持株比率の低下により、既存株主が議決権を行使できなくなる、企業と既存株主の関係性が弱体化するおそれが生じるなどのデメリットがあります。

第三者割当増資についてのまとめ

第三者割当増資は、企業の資金調達や関係性強化に効果的な手段ですが、既存株主の利益保護や経営への介入防止などの点に注意して行う必要があります。

全体のまとめ

M&Aスキーム(手法)は、それぞれにメリット・デメリットがあります。

そのため、M&Aを検討する際には、自社の状況や目的に合わせて、それぞれのスキームを比較しながら、適切なスキームを選択することが重要です。

具体的には、以下の点に留意して、M&Aスキームを選択するとよいでしょう。

M&Aスキーム(手法)の比較の視点

  • M&Aの目的(資金調達・経営再建・企業再編etc.)
  • 対象企業の状況
  • 対象企業の経営権を取得するのか、事業を取得するのか?

M&Aは、企業の将来を左右する重要な経営戦略のひとつです。

そのため、M&Aを実施する際には、専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう。

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