M&Aのデューデリジェンスとは?調査や費用は?事業譲渡のDDは?

M&A デューデリジェンス
  • M&Aのデューデリジェンスとは?タイミングは?
  • M&Aのデューデリジェンスの費用は?調査内容は?
  • 事業譲渡のデューデリジェンスはどうなる?

デューデリジェンスは、デューデリ、DD、買収監査などと呼ばれます。

M&Aにおけるデューデリジェンスは、企業買収や事業譲渡に関する最終契約を締結する前に、買い手側がおこなう調査のことです。

この記事では、M&Aのデューデリジェンスについて、その役割、調査内容、費用、手順などについて解説しています。

現在、M&Aをご検討中の方など、ぜひ最後までご覧ください。

M&Aのデューデリジェンスとは?

デューデリジェンスとは?

デューデリジェンス(買収監査/DD)とは、M&Aをおこなう際に、買収側が、譲渡対象となる会社や事業の実態を調査することです。

デューデリジェンスの役割は? 

買い手側企業にとって、デューデリジェンスは、M&A成立後の経営統合(PMI)の準備といえます。M&Aが成立した後の、会社経営がうまくいくかどうかをイメージするために、デューデリジェンスは必須です。

買い手側企業はデューデリジェンスをおこなうことで、M&Aを実行して良い相手か、M&Aの価格や取引条件をどうするかなどについて、適切な判断をくだすことができるようになります。

デューデリジェンスでおこなわれる調査の範囲は、多岐にわたりますが、なかでも事業デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、財務デューデリジェンスの3つが重要といわれています。

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デューデリジェンスの時期は?

デューデリジェンス(買収監査)は、買い手側がM&Aに応じるべきかどうかの最終判断をくだすための調査です。

そのため、基本合意の締結後、最終契約締結のための条件交渉の前に、デューデリジェンス(買収監査)は実施されます。

会社売却の流れ(書類)

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M&Aのデューデリジェンスの調査内容

事業デューデリジェンス

事業デューデリジェンスとは、対象企業のビジネス全体を詳細に調査される買収監査のことです。ビジネスデューデリジェンスとも、呼ばれます。

事業デューデリジェンスでは、ビジネスフローやシナジー効果、事業統合に関連するリスクなどが調査によって把握され、事業計画の実現可能性が精査されます。

具体的には、以下のような内容が調査されることになります。

事業DDの調査内容

  • 事業内容
  • 市場環境
  • 競争力
  • 顧客基盤
  • 仕入高や人件費、宣伝広告費などのコスト
  • 事業の成長性や持続可能性
    etc.

買い手側企業の責任者によって、当初予想していた収益が得られないと判断されれば、売り手側はM&Aの価格交渉で不利な立場になります。

売り手側としては、自社の強みとなる経営資源や、買い手に与えられるシナジー効果の予測などをおこない、交渉に臨む必要があるでしょう。

事業デューデリジェンスの担当者

事業デューデリジェンスは、ビジネスモデルの調査になるので、買い手企業の担当者がみずからおこなうことが多いでしょう。

経営コンサルタントに依頼することもできます。

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスとは、売り手側企業の財務諸表がきちんと作成されているのか、株価算定の基礎となる情報が適切かなどを買い手側が調査することです。収益性・財務健全性・将来性などを吟味される買収監査ということができます。

過去数年間の財務諸表については、過去数年分を調査されることが多いです。

財務デューデリジェンスの結果、資金繰りにリスクがあると判断されれば、M&Aの価格交渉に悪影響が生じる可能性があります。また、簿外債務や粉飾決算などが見つかった場合、M&Aの成約そのものが危ぶまれるリスクがあるでしょう。

財務デューデリジェンスの担当者

財務デューデリジェンスは、公認会計士や税理士、買い手側の財務経理担当者などによっておこなわれます。

法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスとは、売り手側企業が締結中の契約について、M&A成立後、買い手側に不利になる契約がないか、M&Aのクロージングの妨げになる問題はないかなどについて、調査される買収監査のことです。

法務DDの調査内容

  • 会社のガバナンス
  • 会社の株式の保有者
  • 官公庁等の許認可
  • 契約書周りの不備(取引先や物件の賃貸借契約など)
  • 知的財産権の状況
  • 人事・労務の問題(人事制度、懲戒・長時間労働、ハラスメント、メンタルヘルスの問題など)
  • 訴訟・紛争のリスク
  • 環境リスク(土壌汚染、排気排水、大気汚染など)と原状回復にかかる費用
  • 反社会的勢力でないことの確認

人事・労務の問題については、人事デューデリジェンス、労務デューデリジェンスとして区分されることがあります。

また、環境リスクについては、環境デューデリジェンスとして区分されることもあります。

法務デューデリジェンスで問題が発覚した場合、買い手側が買収を断念せざるを得ない重大なリスクも多々あります。

法務デューデリジェンスの担当者

法務デューデリジェンスは、弁護士や、買い手側企業の法務担当者によっておこなわれます。

人事や労務の範囲であれば、人事コンサルタントや社会保険労務士に、デューデリジェンスを依頼できる場合もあります。

税務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスは、売り手側企業の過去の税務申告で、追徴課税などが課される心配がないかなどを調査するものです。

万一、税務デューデリジェンスで問題が見つかった場合、M&Aの最終契約書の中で、「買い手側から売り手側に対して、追徴課税に相当する金銭を請求できる」という表明・保証条項を締結することも多いでしょう。

税務デューデリジェンスの担当者

税務デューデリジェンスは、税理士や買い手企業側の財務経理担当者によっておこなわれます。

ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンスとは、情報システムや活用状況を把握して、統合の可能性を評価する調査のことです。

統合によるコスト削減ができるのかなどの見極めや、データの統合などは、今の時代、会社運営とは切り離せない重大な課題といえます。

ITデューデリジェンスの担当者

ITデューデリジェンスは、ITコンサルタントに委託することが一般的です。

M&Aのデューデリジェンスの費用はいくら?

デューデリジェンスの相場の目安としては、一般的には、約50万円~500万円程度といわれています。

ただし、依頼する専門家によっても、デューデリジェンスの手数料は異なります。

また、デューデリジェンスにおける調査内容が多ければその分、費用はかかります。

個別の調査項目について、相場の目安としては、以下のとおりです。

  • 事業デューデリジェンス(事業DD)
    およそ50万円~100万円程度
  • 財務デューデリジェンス(財務DD)
    およそ100万円~500万円程度
  • 法務デューデリジェンス(法務DD)
    およそ50万円~300万円程度
  • 税務デューデリジェンス(税務DD)
    およそ60万円~120万円程度

なお、このデューデリジェンスの費用はあくまで目安です。

会社の規模や、デューデリジェンスを依頼する範囲などによって、費用は異なります。

ご自身がデューデリジェンスを依頼する場合は、依頼する専門家から見積もりをもらうなどして、費用を確認するようにしましょう。

M&Aのデューデリジェンスの手順

調査チームの立ち上げ

まずは、買い手側企業は、各専門分野の担当者で構成される調査チームを立ち上げ、調査計画を策定します。

調査対象となる企業の規模や複雑性に応じて、弁護士、会計士、税理士、コンサルタントなどの外部専門家も必要に応じて招集します。

調査の準備

次に、買い手側企業は、調査に必要な資料リストを作成し、買収先企業に開示を依頼します。

資料は財務諸表、事業計画書、顧客情報、従業員情報、訴訟関係資料など、調査項目に応じて幅広く収集します。

資料の分析・調査の実施

買い手側企業は、収集した資料を分析し、買収先企業の実態を詳細に調査します。

事業、財務、法務、税務など様々なデューデリジェンスが実施されます。

必要に応じて、買収先企業の経営陣や従業員へのインタビューによる情報収集もおこなわれます。

調査結果の検討

買い手側企業は、調査結果を踏まえ、買収先企業の価値を評価し、買収価格や契約条件を検討します。調査で発見されたリスクや課題についても分析し、買収後の統合計画に反映します。

調査結果は報告書にまとめ、M&Aの意思決定に役立てられます。

M&Aのデューデリジェンスでよくある質問

Q1.デューデリジェンスの結果、M&Aが中止になることはある?

デューデリジェンスの結果、M&Aが中止になることはあります。

たとえば、売り手側企業に多額の簿外債務などがあり、M&Aを実行すれば、買い手側の企業価値をそこなうと判断されるような場合です。

また、中止とまではいかなくても、デューデリジェンスの結果、期待した企業価値を手にすることができないと判断されれば、買い手側企業からM&Aの対価を値切られることもあるでしょう。

Q2.デューデリジェンスにあたって、M&Aの売り手側の心得は?

売り手側の心得としては、デューデリジェンスの前に、会社の磨き上げをおこない、事前にM&Aの懸念点を払拭しておくことです。

会社を良く見せようと思って、その場しのぎで会社の抱える問題を隠したとしても、あとからバレて重大な責任を負う可能性があります。

M&Aの最終契約では、表明・保証条項を締結する例も多いものです。

表明・保証条項とは、一定の事項について売り手側企業が真実であることを表明・保証するという条項です。

売り手側が買い手側に開示した情報が、あとになって真実ではなかったと判明した場合、買い手側企業から損害賠償を請求されるリスクが生じます。

売り手側としては、適切な情報開示ができるように、懸念点を払拭しておく必要があります。

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Q3.事業譲渡のデューデリジェンスはどうなる?

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、一定の目的のために組織化された有機的一体をなす機能的財産を譲渡する取引のことをいいます。

分かりやすく言い換えると、事業譲渡は、売り手側企業が、買い手側に対して、会社の事業の一部または全部を譲り渡すというものです。

売り手側企業の経営権そのものは、売り手側に残り、個別の財産を買い手側に譲渡するというM&Aスキームになります。

事業譲渡と株式譲渡の比較

中小企業で事業承継型M&Aをおこなう場合、株式譲渡という方法が取られることが多いものです。株式譲渡の場合、買い手側は簿外債務(帳簿に記載のない債務)を知らないうちに承継するリスクがあります。

一方で、事業譲渡の場合は、承継する財産を個別に選択できるので、そのようなリスクは限りなく低くなるといわれています。

事業譲渡のDDのポイントは?

買い手側がもっとも気になる点としては、売り手側企業に簿外債務があるのかということです。これは財務デューデリジェンスの範囲です。

さきほど述べたとおり、事業譲渡の場合、買い手側が簿外債務を引き継ぐリスクは限りなく低いといわれています。

そのため、買い手側が財務デューデリジェンスにおく比重は小さいものといえます。そして、その分、売り手側の調査協力の比重も軽減されるでしょう。

とはいえ、完全に簿外債務のリスクがないとは言い切れません。そのため、商号を継続利用する買い手の場合、想定外の簿外債務に対するリスクヘッジとして、免責登記をおこなう場合が多いのではないでしょうか。

第二十二条 事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。
2 前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。(以下、略)

会社法22条1項、同2項前段

Q4.セルサイドDDとは何ですか?

デューデリジェンスは、従来、買い手側が主導するのが通常でしたが、近年、売り手側もデューデリジェンスをおこなうケースが増えてきました。

売り手側企業が交渉に入る前に、売却価値の最大化を目的として、自社の実態や問題点を見直すために実施するデューデリジェンスが、セルサイドDDです。

セルサイドDDを専門家に依頼する場合、その手数料は、売り手側企業の経営者が負担することになります。

しかしその分、買い手主導のDDが実施される前に、買い手が問題視する点を把握することで、売却価格の減額を主張されたり、M&Aの交渉の長期化・決裂を回避するための対応策を立てられるメリットがあります。

セルサイドDDは、買い手主導のDDに備えるものです。そのため、実施するDDの種類は、事業DD、法務DD、財務DDなど多岐にわたり実施することが多いでしょう。

まとめ

M&Aのデューデリジェンスは、買い手側が売り手側企業のビジネスモデルや、財務状況、法律関係などを調査するプロセスです。

デューデリジェンスを主導するのは、買い手側ですが、売り手側も協力する必要があります。

適切な情報開示をすることができなければ、買い手側から損害賠償を請求されたり、M&Aの中止につながったりする可能性があります。

もし現在、自社のビジネスモデルや、財務状況、法務などについて不安がある場合は、民間のM&A仲介会社や、公的機関である事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談してみるのはいかがでしょうか。

M&Aの専門家に相談する中で、M&Aを成功させるための課題が見えてくるでしょう。

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