第三者承継の方法は?メリットは?3つの注意点も解説!
- 第三者承継とは?方法は?
- 第三者承継のメリットは?
- 第三者承継の注意点は?相談先は?
後継者不在が原因で、黒字廃業となる中小企業は意外と多いものです。
このような後継者問題に対処する方法として、第三者承継は非常に有用です。
この記事では、第三者承継のメリット、具体的な方法、注意点など徹底解説していきます。また、第三者承継の相談先についてもご紹介します。
現在、後継者不在のお悩みをお持ちの中小企業の経営者の方など、ぜひ最後までお読みください。
目次
第三者承継とは?
第三者承継とは?
第三者承継とは、会社経営やある事業を、親族や従業員以外の第三者に引き継ぐことをいいます。
親族内承継や従業員承継ができない場合、選択肢の一つとして、第三者承継があります。
第三者承継で引き継ぐものは?
第三者承継を行うと、経営権や資産、知的資産を主に引き継ぎます。
事業承継の構成要素
- 経営権
- 資産の承継
株式、事業用資産(設備・不動産など)、資金(運転資金・借入など) - 知的資産の承継
経営理念、従業員の技術技能、ノウハウ、経営者の信用、取引先との人脈、顧客情報、特許、許認可
etc.
第三者承継の現状は…全体の何%?
経済産業省の調査によると、2025年までに、70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人となり、そのうち約半数の127万人が後継者未定となっている現状です。
この現状を放置した場合、2025年までの累計で650万人の雇用が失われる可能性があるということです。
こうした中、第三者承継は脚光を浴び、年々増加傾向にあります。帝国データバンクの調査によると、M&Aほか(買収や出向など)による2023年度の第三者承継は、全体の約20.3%でした。
第三者承継の方法
第三者承継のおおまかな流れ
第三者承継のおおまかな流れとしては、以下のようなものです。
事業承継問題をかかえている場合まずは、民間のM&A仲介会社や、国が設置した支援機関である「事業承継・支援引継ぎセンター」に相談をしてみるとよいでしょう。事業承継先の探し方や、事業承継の手続きの進め方などを相談することができます。
現在の会社の価値を算定する、企業価値評価の工程も大切です。公認会計士などの専門家の力を借りながら、資産、債務、収益などを分析して、会社の売却価格を算定していきます。
そして企業価値評価と平行しながら、買い手探しもおこないます。事業承継先の候補となる企業があらわれたら、双方の経営陣同士で顔合わせ(トップ面談)をおこないます。
事業承継先となる企業から、M&Aを進めたいという意向表明を受けた場合、当事者間でM&Aを進めることについて基本合意を締結します。
売り手側企業の買収監査(デューデリジェンス)を経て、最終条件交渉をおこない、最終契約(株式譲渡契約、事業譲渡契約etc.)を締結すれば、クロージングとなります。
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株式譲渡による事業承継
第三者承継をおこなう方法として、株式譲渡という手法があります。
株式譲渡による第三者承継は、現経営者が保有する譲渡対象会社の株式を、後継者に対して譲渡することによって、会社を引き継がせる方法です。
中小企業の場合、所有と経営が分離されておらず、経営者が議決権の3分の2以上を確保していることが多いものです。
そのため、現経営者の株式を後継者に譲渡すれば、会社の所有権のみならず、経営の実権までも譲渡できるケースが一般的となります。
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事業譲渡による事業承継
会社の事業の一部を、第三者に承継させたい場合などには、事業譲渡による事業承継という手法があります。
事業譲渡の手法によれば、自社の事業のうち存続・成長が難しい事業のみを第三者に譲渡して、会社そのものは現経営者の手元に残すということも可能です。
そのため、事業譲渡は、主力事業に注力したい場合や、会社再建を図る場合に向いている手法といえるでしょう。
また、負債がある場合は、株式譲渡では買い手がつかないときでも、事業譲渡であれば買い手が見つかることもあるでしょう。
というのも、株式譲渡の場合は、会社の負債もすべて引き継ぐことになります。一方、事業譲渡の場合は、会社の事業のうち負債の大きい部門を避けて、承継したい事業のみを取引できます。そのため、事業譲渡のほうが、買い手にとってリスクが小さい取引になるからです。
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株式譲渡による第三者承継のメリット
ここでは、株式譲渡による第三者承継のメリットについて、お話ししていきましょう。
株式譲渡による第三者承継には、以下のようなメリットがあります。
①譲渡益を得られる
株式譲渡による第三者承継には、譲渡益(株式譲渡の対価)を得られるというメリットがあります。
この譲渡益は、老後の資金や新たな事業への投資など、自由に活用できます。
会社の売却価格は?相場はいくら?
会社の売却価格の相場は、業種、規模、資産、財務状況、成長性などの要素によって算出されます。
中小企業の場合は、時価純資産に営業利益の1~5年分程度を加算した金額が、譲渡益の目安とされることも多いでしょう。
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売却しやすい会社とは?
業績が安定している企業などは、売却しやすいと言えるでしょう。
売却しやすい会社の特徴(一例)
- 業績が安定している
- 成長性の高い市場に参入している
- 独自の技術やノウハウを持っている
- 財務状況が良好
- 経営陣が優秀・誠実
- 事業の透明性が高い
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②会社の存続・成長につながる
自社の成長には限界があると感じた場合、会社をたたむという選択肢もあるかもしれません。
しかし、ここまで育ててきた会社をたたむというのは、苦渋の決断となるでしょう。
このような場合、第三者承継を実行すれば、会社を存続させることができ、後継者に会社の成長をたくすことができます。
また、廃業手続きには、費用や時間などの手間がかかります。
それなら、いっそのこと、信頼できる買い手を見つけて、M&Aをおこない、譲渡益を得るほうが賢い選択肢といえるのではないでしょうか。
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③後継者問題を解決できる
後継者問題を解決することができるという点も、株式譲渡による第三者承継のメリットです。
親族や従業員の中から後継者を選べない場合は、第三者を後継者にすることで、後継者不在の問題を解決することができます。
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④従業員の雇用維持
従業員の雇用維持の可能性をあげる点も、株式譲渡による第三者承継のメリットです。
株式譲渡の場合、従業員の雇用要件は、基本的には、新しい経営者に引き継がれます。
ただし、早いうちから、従業員の雇用維持の条件について、買い手企業との間で話し合いの機会をもうけたほうが、より安心です。条件がまとまったら、最終契約書に規定しておきましょう。
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⑤経営者の責任・個人保証からの解放
株式譲渡による第三者承継をおこなう場合、後継者に経営権が承継されるため、現経営者(先代)は社長の重責から解放され、落ち着いた生活を送ることができるようになります。
また、中小企業の場合はとくに、経営者が、会社の保証人となっていることが多いものです。その場合、会社が借金を返済できなければ、代わりに経営者が、個人資産から返済することになります。
しかし、株式譲渡による第三者承継によって、後継者に経営権が承継された場合は、交渉しだいで、金融機関から先代の個人保証をはずしてもらえるケースも多いでしょう。
事業譲渡による第三者承継のメリット
事業譲渡による事業承継についても、譲渡益を得られること、企業の存続・成長につながること、後継者問題を解決できること、従業員の雇用維持に資することなどのメリットがあります。
事業譲渡のメリット
- 譲渡益を得られる
- 企業の存続・成長につながる
- 後継者問題を解決できる
- 従業員の雇用維持に資する
etc.
ただし、株式譲渡と事業譲渡は異なるスキームです。
そのため、前述の株式譲渡の場合における説明が、事業譲渡の場合に、すべてあてはまるわけではありません。
事業譲渡の場合は、とくに以下のような点に注意が必要です。
譲渡益について
まず、事業譲渡は会社の取引行為であることから、その譲渡益は会社に入ることになります。したがって、先代経営者は直接、譲渡益を得られるわけではありません。
後継者問題の解決について
譲渡対象となった事業については、後継者に引き継ぐことができます。
一方で、譲渡できなかった事業や、会社そのものについては別の後継者を見つけるか、廃業という道をたどることになるでしょう。
従業員の雇用維持について
従業員の雇用維持については、買い手企業に従業員を移籍させるには、従業員ごとに同意をとる必要があります。
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第三者承継の注意点
①買い手探し
第三者承継の注意点としては、必ずしも買い手が見つかるとは限らないという点です。
たしかに、第三者承継の場合、親族内承継や従業員承継に比べて、後継者候補の選択の範囲は広がります。
しかし、売り手側の条件にあった買い手が見つかるという保証はありません。
そのため、できるだけ早い時期に、買い手探しを始めることが大切です。
また、買い手が見つからない場合は、企業価値を高めるなどして、魅力的な会社に育てることも必要になるでしょう。
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②取引先への対応
第三者承継をおこなえば、当然のことながら、経営者は変わります。
中小企業の場合は、社長同士の信頼関係から取引に応じているケースも多く、見ず知らずの第三者が経営者になることで、取引先から取引停止を言い渡されるリスクがあります。
取引先との取引関係は、売り手企業の収益力を支える大切な経営資源です。
もし取引停止になれば、売り手企業の収益力の低下が見込まれるため、買い手側から、会社の売却価格の値下げを提案されたり、M&Aそのものの中止に発展したりする可能性があります。
そのため、第三者承継の場合、とくに取引先への対応が重要となります。
通常、取引先に事業承継について報告するのは、クロージングの段階に入ってからとなります。
あまりに早い段階で取引先に伝達してしまうと、売り手企業の信用不安につながる恐れがあるでしょう。
そもそも買い手や仲介会社などと秘密保持契約を締結しているため、M&A成約の見込みがかなり高い段階でなければ説明できないこともあります。
適切なタイミングを見計らって、第三者承継を決断した理由や、取引関係を継続したいことなど、できる限り丁寧な説明をおこない、取引先の理解を得る必要があります。
③契約書の作成・M&A手続き
第三者承継をおこなう過程では、秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書など様々な契約書が必要となります。
また、第三者承継を実行するための手続き、経営者の変更に伴う登記手続き、会社売却の対価にかかる税金の手続き、経営者の個人保証をはずすための交渉など、法律の専門家の手助けが必要な場面が沢山あります。
法的に不備のない手続きを踏んで、第三者承継を手順よく進めていくには、弁護士、司法書士などに相談すると良いでしょう。
第三者承継を成功させるには?相談先は?
第三者承継は、事業の存続、経営者の責任解放、譲渡益の獲得など、多くのメリットがあります。
一方で、そのメリットを享受するには、取引先への配慮をおこたらないこと、必要な契約や手続きを理解することなど、注意点も存在します。
そして、第三者承継をするには買い手探しが必要になるので、とくに早期に動きだすことが重要です。
まずはM&A仲介会社のマッチングサイトに登録するなどして、はじめの一歩を踏み出してみましょう。
第三者承継の相談先については、「事業承継の相談窓口は?事業承継成功の秘訣は専門家への無料相談?」の記事をご参考になさってください。