フォークリフトの労災事故|事例と慰謝料の損害賠償請求を弁護士が解説 | アトム法律事務所弁護士法人

フォークリフトの労災事故|事例と慰謝料の損害賠償請求を弁護士が解説

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フォークリフトでの労災事故が起きた

フォークリフトによる労働災害は、年間を通して複数報告されている事故です。フォークリフトから墜落・転落したり、挟まれる・巻き込まれたり、激突したりするケースが多いようです。

最悪の場合は死亡につながるケースもあるフォークリフトによる事故ですが、事故に巻き込まれたらまずは労災保険を申請してください。また、事故が起きた原因として会社に安全配慮義務違反などが認められる場合には、「慰謝料」を損害賠償請求し、適切な補償を得られるように行動しましょう。

本記事では、フォークリフト事故の発生状況および実際の労災事例の紹介から、労災保険の申請方法、慰謝料などの損害賠償請求の方法まで解説しています。

フォークリフト事故の発生状況及び事例

フォークリフトに起因する労災事故の統計

フォークリフトに起因する労災事故の発生件数

一般社団法人日本産業車両協会『フォークリフトに起因する労働災害の発生状況ー厚生労働省労働災害統計よりー』によると、ここ5年(2019~2023年)のフォークリフトに起因する労災事故の発生件数は2,000件前後を推移しており、死亡事故の件数は20~30件台を推移しています。

ここ5年(2019~2023年)の具体的な発生件数は下記表のとおりです。

年数死傷災害死亡災害
2019年2,14520
2020年1,98931
2021年2,02821
2022年2,09234
2023年1,98922

2023年の労働災害による(休業4日以上の)死傷者数は135,371人、死亡者数は755人ですので、労災事故の中でフォークリフト事故が占める死傷者の割合は約1.5%、死亡者の割合は約3%と死亡事故の割合が約2倍となっており、フォークリフト事故は危険性が高いといえます。

フォークリフト事故の類型別の傾向

ここ5年(2019~2023年)のフォークリフトに起因する死傷事故と死亡事故の事故類型別の割合は下記表のとおりです。

事故類型死傷災害死亡災害
挟まれ・巻き込まれ35.4%22.7%
激突され27.3%18.0%
墜落・転落11.9%18.0%
転倒5.7%17.2%
飛来・落下6.0%11.7%
その他13.7%12.5%

上記のとおり、挟まれ・巻き込まれ事故が最も多く、それに次いでフォークリフトに激突される事故が多くなっています

もっとも、墜落・転落による死亡事故の割合は死傷事故の割合の約1.5倍、転倒による死亡事故の割合は死傷事故の割合の約3倍となっており、墜落・転落や転倒による労働災害が発生した場合は、死亡に至る可能性が高い点には注意が必要です。

なお、フォークリフトやそれ以外の機械への挟まれ・巻き込まれ事故についてより詳しく知りたい方は、下記関連記事をご確認ください。

続いては、実際のフォークリフトに起因する労災事故の判例を紹介します。

会社でフォークリフトにひかれて骨折した事例

金属プレス業務に従事していた被災労働者が、フォークリフトにひかれて足を開放骨折するなどの傷害を負った事例を紹介します。被災労働者が業務で使用する金型を工場の外にある置き場まで手でもって運ぼうと小走りで外に出たところ、従業員Aが運転するフォークリフトに両足を引かれたという事故です。(東京地方裁判所立川支部 平成29年(ワ)第1751号 損害賠償等請求事件 令和2年2月25日)

この事故で被災労働者は、両側足関節の可動制限などの後遺障害が残ることとなりました。労災保険の障害等級認定においては併合第11級に認定されましたが、自賠責保険の後遺障害等級認定においては併合第9級に認定されています。

フォークリフトを運転する従業員Aが進行方向の安全を十分に確認せずに後進したとして、裁判所は従業員Aの注意義務違反による過失があると認めました。さらに、従業員Aの使用者である会社側に損害賠償責任があるとしています。

もっとも、確認なしに小走りで外に出た被災労働者にも4割の過失があるとしています。休業損害・逸失利益・慰謝料などを合計した損害賠償額から、過失相殺・既払い金の控除・弁護士費用などを合計し、会社が被災労働者に対して約106万円を支払う判決となりました。

裁判で認められた損害賠償額

金額
休業損害約508万円
後遺障害逸失利益約1,003万円
慰謝料640万円
小計約2,151万円
過失相殺、既払い金控除、弁護士費用など最終合計約106万円

フォークリフトのパレットにぶつかって負傷した事例

倉庫内で作業に従事していた被災労働者が、フォークリフトのパレットで足を骨折した事例を紹介します。資格獲得に向けて従業員Aが倉庫内でフォークリフトの前にパレットを置き、積み重ねる練習をしていたところ、パレットが押し出されて被災労働者の足に当たり、傷害を負ったという事故です。(東京地方裁判所 平成29年(ワ)第26440 損害賠償請求事件 令和元年12月25日)

この事故で被災労働者は、足関節の機能障害や受傷部位の疼痛といった後遺障害が残ることとなりました。労災保険の障害等級認定において、併合第11級に認定されています。

フォークリフトでパレットを積み重ねる練習をしていた従業員Aが前方や周囲の安全確認を十分に行っていなかったとして、裁判所は従業員Aに注意義務違反があったことが明らかであるとしています。

もっとも、従業員Aが倉庫内でフォークリフトの練習をしていたことを把握していた被災労働者にも2割の過失があるとしています。通院交通費・文書料・休業損害・逸失利益・慰謝料などを合計した損害賠償額から、過失相殺・既払い金の控除・弁護士費用などを合計し、会社が被災労働者に対して約563万円を支払う判決となりました。

裁判で認められた損害賠償額

金額
通院交通費約8万円
文書料4,000円
休業損害約510万円
後遺障害逸失利益約363万円
入通院慰謝料124万円
後遺障害慰謝料290万円
小計約1,295万4,000円
過失相殺、既払い金控除、弁護士費用など最終合計約563万円

フォークリフト事故にあったらどうする?

フォークリフト事故によって怪我したり障害が残ったりしたら、労災保険の申請を行いましょう。もっとも、労災保険による給付を受けるには、労災認定される必要があります。

労災保険の申請を行い給付を受ける

労災認定されると、労災保険からはさまざまな給付が受けられます。

  • 療養補償給付
  • 休業補償給付
  • 障害補償給付
  • 遺族補償給付
  • 葬祭料給付
    など

労災保険給付を受給するには、給付の内容ごとに決められた様式の申請書を労働基準監督署に提出して申請する必要があります。

さらに詳しい労災保険の申請方法については、関連記事をご確認ください。

どんなフォークリフト事故なら労災認定される?

労災事故は、業務中に発生する「業務災害」と通勤中に発生する「通勤災害」の2種類に分けられます。フォークリフトは業務で使用することが多いので、フォークリフト事故は基本的に業務災害として分類されることになるでしょう。

もっとも、業務時間中に起こった事故のすべてが業務災害に認定される訳ではありません。業務遂行性と業務起因性という2つの要件を満たした事故が業務災害として認定されることになるのです。

どのような事故であれば労災に認定されるのかについては、関連記事『労働災害の認定基準』でさらに詳しく解説しています。

フォークリフト事故で慰謝料をもらうことはできる?

フォークリフト事故によって怪我したり後遺障害が残ったら、さまざまな種類の「慰謝料」をもらうことができます。ただし、労災保険から慰謝料が給付されることはないので注意が必要です。

フォークリフト事故で生じる慰謝料の種類

フォークリフト事故で負傷したら、怪我そのものの痛みはもちろん、治療がつづく辛さ、これから仕事に復帰できるのかといった不安など、さまざまな精神的苦痛を味わいます。このような精神的苦痛を慰めるために支払われるのが慰謝料です。

慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類があります。

  1. 入通院慰謝料:入通院で感じた精神的苦痛に対する慰謝料
  2. 後遺障害慰謝料:後遺障害が残った精神的苦痛に対する慰謝料
  3. 死亡慰謝料:死亡したことによる精神的苦痛に対する慰謝料

労災事故が発生すると、以上のような精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができるのです。

関連記事『労災事故の慰謝料相場と計算方法!仕事中の怪我で損害賠償金はいくら?』では、慰謝料の相場についても詳しく解説していますのであわせてご確認ください。

慰謝料は労災保険からもらえない

労災事故が発生すると、慰謝料を請求できることがわかりました。しかし、注意しなければならいのは、慰謝料は労災保険からもらえないという点です。労災保険では、法律で決まった一定の範囲内の給付しか補償されません。

慰謝料を手にするためには、会社などに対して損害賠償請求しなければならないのです。

労災給付で補えない損害は会社に損害賠償請求する

慰謝料をはじめとする労災保険の給付だけで補えない不足分の損害については、会社など事故が起きた原因となった者に対して損害賠償請求する必要があります。

損害賠償請求とは?

損害賠償請求とは、ある相手によって損害を受けた時、その損害に対する補償を求めることをいいます。

損害賠償(そんがいばいしょう)

債務不履行・不法行為などの違法行為によって、他人に損害を与えた者が被害者に対してその損害を填補し、損害がなかったのと同じ状態にすること

労災保険からもらえない慰謝料は、損害賠償請求をしないと手にすることができません。そのほかにも、労災保険の休業損害は60%程度の補償にとどまるので、残りの40%は損害賠償によって補償を請求しなければすべての損害を回収できないのです。

関連記事『労災の損害賠償算定と請求方法!労災と民事損害賠償は調整される』では、労災事故で損害賠償請求できるケースや損害賠償請求の方法などについて解説しています。

根拠となる使用者責任と安全配慮義務違反

どのような労災事故でも、会社に対して損害賠償請求できるわけではありません。損害賠償請求を通して慰謝料などの補償をもらうには、事故によって受けた損害の責任を会社が負う必要がある場合に限られます。

フォークリフト事故に関する責任を会社が負う必要があると主張するための根拠としてあげられる法律上の理由には、不法行為に関する「使用者責任」と「安全配慮義務違反」などがあります。

使用者責任

従業員が業務中に不法行為を行い、第三者に損害を与えてしまった場合の損害賠償責任を会社も負うというのが使用者責任です。

例えば、フォークリフト作業中であった同僚の従業員の不注意(過失)により轢かれてしまったケースを考えてみましょう。このような場合は、直接の加害者である従業員が負うべき損害賠償責任を使用者である会社も負うことになります。

従業員が働くことで会社は利益を得られる反面、従業員が業務中に起こした事故の損害は、会社が賠償する義務があるので、上記のケースでは会社にも損害賠償請求できるのです。

使用者責任は民法715条で定められている法律が根拠となります。

安全配慮義務違反

会社は、従業員が快適に働ける環境を整え、安全と健康を確保する安全配慮義務を負っています。このような安全配慮義務に違反している場合、会社に損害賠償責任を問うことができるのです。

フォークリフト事故においては、労働安全衛生関係法令に違反している場合や厚生労働省が作成した「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」で定められた事故防止対策をしっかり行っていない場合には、会社(事業者)の安全配慮義務違反が認められる可能性が高いです。

具体例としては、フォークリフトを用いて作業を行うときは、あらかじめ作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければなりません(労働安全衛生規則151条の3第1項)。

そのため、作業計画を定めずにフォークリフトを用いて作業中に事故が発生した場合、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性が高いといえます。

その他にも、フォークリフトを定期的に点検していなかったり、整備不良のために事故が起きたような場合は安全配慮義務違反があると考えられるでしょう。

安全配慮義務は民法709条と民法415条で定められている法律が根拠となります。

安全配慮義務違反の判断基準や具体的なケースについて、さらに詳しくは、関連記事『安全配慮義務違反は損害賠償の前提|慰謝料相場と会社を訴える方法』で解説中です。

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弁護士に相談するメリットについては関連記事『労働災害は弁護士に法律相談』で深掘りしていますので、あわせてチェックしてみてください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了