労災で休んでいる間は欠勤扱い?休業中の賃金・賞与に関する不安を解決 | アトム法律事務所弁護士法人

労災で休んでいる間は欠勤扱い?休業中の賃金・賞与に関する不安を解決

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休業中の賃金・賞与|労災で休んでる間は欠勤扱い?

「労災で休んでいる間は欠勤扱いになるの?」
「会社が労災の休業期間は有給を使用してほしいと言ってくる…」

上記のような疑問や悩みを抱いてはいませんか?

労災による傷病が原因で働けなくなり、休業中の生活を心配されている方は少なくありません。なかには、本来ならきちんと休養を取るべき状態であるにも関わらず、賃金への不安から無理して働き続ける方もいるようです。

今回は、労災で休んでいる間に受け取れる賃金や労災保険による給付、ボーナスや有給休暇との関係について、詳しく解説します。労災で休業中の生活補償に関する不安を取り除くことができるので、ぜひご一読ください。

労災で働けなくなったら欠勤扱いで給与が減る?

出勤する義務があるにも関わらず会社を休むと欠勤となります。労働契約上の義務を果たしていない状態なので、欠勤日については給与の支払いを受けられずに欠勤控除により給与が減るのが通常です。

ただし、労災が原因で出勤できない労働者は、労働基準法や労災保険法に基づく補償が受けられます。両方から給付を受けるのではなく、基本的には労災保険からの保険金を受けると考えてください。なぜなら労災保険から休業補償給付を受ける方が、手厚い補償を受けられることが多いです。

もっとも、労災の中でも通勤災害に該当する場合には例外が存在します。ここからは、労災で働けない時の補償の基本情報をみていきましょう。

会社は災害補償義務に基づいて休業補償を支払う

まず、労働基準法による補償から説明します。

労働基準法75~77条には災害補償の規定によると、労働者が労災による療養のために出勤できない場合、会社は労働者に対して休業補償を支払わなければならないとあります。

休業補償の金額は平均賃金の60/100相当であり、基本的に療養による休業中は継続して支払いを受けることが可能です。

例外として、次のような場合に会社は災害補償の義務を免れます。

  1. 傷病の原因が労働者の重大な過失にあり、かつ使用者が行政官庁の認定を受けたとき
  2. 療養開始後3年を経過しても傷病が治癒しない場合、使用者は平均賃金の1,200日分相当の打切補償を行うことで災害補償の義務を免れる

上記2つの事例は特別なケースなので、業務災害で休んでいる期間も一定の給与は補償されると認識してもらってかまいません。ただし原則として、休業4日目から、会社からの補償ではなく、労災保険からの補償に切り替わります。

労災保険から休業補償給付が受けられる

療養が終わるまでの期間、会社から給与の支払いを受け続けられるのだろうかと疑問を抱く人もいるでしょう。結論から言いますと、休業の4日目からは労災保険からの「休業補償給付」に切り替わるものの、引き続き補償は受けられるので安心してください。

労災保険は、法人であれば従業員が1人以上いる時点で強制的に加入するものです。労災保険による給付金額は、労働基準法上の平均賃金とほぼ同等の項目である「給付基礎日額」の80%です。

労働基準法に定められていた「災害補償義務」では平均賃金の60%であったため、労災保険からの休業補償給付の方が労働者にとってはメリットが大きいです。

具体的な休業補償給付の計算方法は、関連記事を参考にしてください。

労災保険の休業補償給付|待期期間は3日間

労災保険には待期期間が設定されており、休業開始から最初の3日間は対象外となっています。

このため、休業開始日から3日間は災害補償、4日目以降は労災保険へ切り替わるという流れが一般的なのです。

労災保険は正社員のみならずアルバイトやパートなども対象となっており、労働者を雇用している事業主には原則として労災保険に加入して保険料を負担しなければなりません。
そのため、基本的に労災認定を受けることで労災保険から休業補償給付を受けることが可能となります。

通勤災害は要注意|欠勤扱いで補償がないケース

注意すべきは、通勤災害のときです。労災には業務災害と通勤災害の2つがあります。通勤災害というのは、職場までの通勤経路で怪我をした場合などをさし、業務中に生じる業務災害とは区別されるものです。

会社側は、業務災害に対する災害補償義務を負っていますが、通勤災害への補償義務はありません。そのため通勤災害で欠勤をした場合には会社側に補償の義務はなく、欠勤控除がなされても致し方ないでしょう。有給休暇を利用して収入を確保するのも一つの方法になります。

もっとも、通勤災害であっても労災保険からの休業補償給付については休業4日目から受けとることができます。ずっと補償が受けられないというわけではありません。

労災が通勤災害にあたるのかなど、通勤災害に関してもっと詳しく知りたい方は関連記事も併せてご覧ください。

また、通勤災害の場合は業務災害の場合と異なり、休業中や休業終了後30日間は解雇することができないという解雇禁止の規定の対象外となっています。

そのため、休業中に解雇が可能な合理的理由が発生した場合には、解雇が可能となってしまう恐れがあることに注意しなくてはなりません。
詳しく知りたい方は『通勤災害にあった労働者は解雇になる?解雇の条件や対処方法を紹介』の記事をご覧ください。

ここまでのまとめは次の通りです。

まとめ

  • 業務災害の場合、休業1日目から3日目は会社から一定の補償を受けられる(労働基準法の災害補償)
  • 休業4日目からは会社からの休業補償ではなく、労災保険による休業補償給付に切り替わる
  • 通勤災害の場合、会社は休業1日目から3日目の補償の義務を負わない。欠勤控除を受けるか有給休暇を使うのかは労働者が選択する

労災を使うとボーナスが減る?

労災が原因で働けない期間は、ボーナスは受け取ることができるのか心配になるはずでしょう。ボーナスや賞与は労働者が一生懸命働いた事実に対し、報いとして支給される金銭です。

休業中は労働義務を提供していないため、ボーナスがストップするのではと疑問を抱くのは当然です。こちらでは、労災で休業中のボーナスに関する取扱いについて解説します。

休業中の賞与に関する扱いは使用者が決定できる

労災による休業期間中の賃金については会社に支払い義務が課せられていますが、賞与までは対象に含まれていません。業務災害によって休業中の従業員に対して、賞与を支払うかどうかは使用者が決定できるのです。

業務上の災害が原因の休業は、私傷病や休職とは性質が異なるといえます。労働基準法の災害補償や労災保険による給付は賃金の全額が支払われるわけではありません。死傷病や休職と同様の扱いを取るのは酷だといえるでしょう。

労災では労働者に落ち度がない場合が多いので、一定の基準を設定し、休業中の従業員へ賞与支給を行うという扱いを取る企業もあります。

いずれにせよ、労災による休業期間中の賞与については、会社ごとに処理の仕方が異なります。就業規則や労働契約書などを見て、取扱いを確認しましょう。

休業補償給付と有給休暇のどちらを使用すべき?

賃金を受けながら休暇を取ることができる制度として有給休暇も存在します。賃金の二重取りが発生する危険があるため、休業補償給付と有給休暇の併用は禁止されています。

では、労災で休業する場合、休業補償給付と有給のどちらを利用すべきなのでしょう。この点について、必要な知識や判断基準を解説します。

決定権は労働者側にある

休業補償と有給のどちらを利用するかについては、労働者が選択できるようになっています。

有給休暇の使用方法は労働者個人に委ねられているため、請求するなら基本的に使用者は拒むことができません。

会社は有給の使用を強制してはいけない

働き方改革に関連して、有給の使用方法について労働基準法が改正されたばかりです。有給休暇を取得する権利が10日以上ある労働者に対して、会社は5日以上、現実に与える義務が設けられたのです。

つまり、有給休暇の取得が年間に5日未満の労働者がいるならば、会社は無理やりにでも休暇を取らせる必要があります。

しかし、注意してもらいたいのは、労災による休業に関しては、会社は有給の使用を強制してはいけないことです。休業補償を行わずに有給を取得するよう要請する行為は、労働基準法第39条5項や第76条に違反する可能性があります。

上記のような扱いを会社から受けた時は、労働基準監督署に通報すれば、しかるべき対応を取ってくれます。労災による休業について有給休暇を取得するかどうかは、あくまでも労働者が選択の権利を有すると理解しておきましょう。

有給を使用すると給与が全額支給される

有給を取得すべきか、労災保険の休業補償を利用すべきか迷われる労働者の方もいるでしょう。判断基準として知っておくべきなのが、有給を取った方が1日に受けられる支給額は大きいことです。

前述の通り、労災保険では賃金基礎日額の8割までしか支払われません。一方、有給を取得した期間については、賃金の全額相当を受けられます。短期的な金額で考えてみれば、有給の方が得をする形です。

ただし、有給は1年に最高でも40日しか利用できないので、有給をすべて使用したとしても、その後すぐに会社へ復帰できるとは限りません。また、何かあった時のために、有給を残しておきたい人もいるでしょう。

上記の事柄を認識した上で、本当に有給を使うべきか検討してください。

労災の原因次第では損害賠償請求も視野に入れるべき

労災認定を受ければ休業に関して一定の補償が受けられます。しかし、労災保険の給付は、労災前の約8割程度にとどまるため減収は避けられません。

労働者のケアレスミスでも労災認定はおりますし、「自分にも落ち度はあったな」と納得できる部分もあるでしょう。しかし、自分以外に労災発生の原因があるときには、もっと十分な補償を受けたいと思うのも自然なことです。

損害賠償請求の相手は誰になる?

もし、通勤途中や営業回りなどの移動中に交通事故にあった場合は、通勤災害や業務災害として労災保険から給付を受けられるほか、事故の相手に損害賠償請求できます。

また、それ以外に職場で起こったケースの多くは、会社が請求相手となるでしょう。もっとも、会社が安全配慮義務に違反している場合に限ります。

このように誰に対していくらの損害賠償を請求するべきか、法的根拠に基づく検討と交渉が必要となるので、弁護士のサポートが欠かせません。

労災で損害賠償請求できるケースを具体的に解説した関連記事も併せて読むと、さらに理解が深まります。

弁護士に無料で相談できる窓口はこちら

労災によって欠勤となっている以上、金銭的な余裕がない方も多いと思いでしょう。労災については弁護士と相談をする際には、無料の法律相談から始めることで初期費用を抑えることが可能です。

関連記事『労災に強い弁護士に相談するメリットと探し方|労災事故の無料相談はできる?』でも紹介しているように、労災トラブルの損害賠償請求において弁護士が果たす役割は大いにあります。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了