陸上競技中の事故|学校や顧問の先生に責任は?誰に補償を請求する? | アトム法律事務所弁護士法人

陸上競技中の事故|学校や顧問の先生に責任は?誰に補償を請求する?

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陸上競技中の学校事故|学校や顧問の責任

学校の部活動や体育の授業でも扱われるスポーツの代表格が、陸上競技です。

短距離走や走り幅跳びなど身体機能のみで結果を競うものもあれば、棒高跳び・ハンマー投げ・槍投げといった道具を使うものもあります。いずれにせよ、陸上競技は種目ごとの特徴をふまえた安全対策が欠かせません。

もし子どもが負傷してしまったら、保護者はどんな対応をとれば良いのでしょうか。事故のいきさつを聞くうちに、学校側に事故の責任を問いたいと考える方もいるでしょう。

陸上競技中の事故について、学校や顧問に原因があると判断されたときには、損害賠償請求が可能です。

この記事では、学校や顧問が負う責任という観点から損害賠償請求について解説します。相談相手として弁護士を選ぶメリット法律相談の予約窓口も紹介しますので、最後までお読みください。

陸上競技に関する事故|学校で起こった事例

走る・投げる・跳ぶといった様々な動作を伴う陸上競技ですが、競技中に怪我をしてしまうケースばかりではありません。より良い結果を出すための練習の場においても、常に怪我の危険は付きまといます。ここからは陸上競技に関連して、学校で起こった事故の事例をみていきましょう。

(1)ハンマー投げのワイヤーが切れて、部員の足に当たった

県立高校陸上部の部活動でハンマー投げを練習していたところ、部員が投てきしようとしたハンマーのワイヤーが破断し、順番を待っていた他の部員の足に当たった事故が起こりました。

生徒側はハンマーのワイヤーならびに練習の環境が、通常持つべき安全性を欠いており、施設・設備に瑕疵があったと主張して損害賠償請求を求めました。(名古屋地方裁判所 平成29年(ワ)第1300号 損害賠償請求事件 平成31年4月18日)

(2)槍投げ練習中に、他の部員が投げた槍で頭部を骨折した

高校陸上部の槍投げ練習中、他の部員が投げた槍が頭部に当たってしまい、左側頭部開放性陥没骨折などの怪我をしてしまった事故です。

生徒側は、教諭が不在のなかでも部員だけで自由に槍投げ練習をさせていたこと、安全指導の徹底を怠ったことなどを理由として、教諭の責任を求めて損害賠償請求を行いました。(神戸地方裁判所 平成12年(ワ)第291号 損害賠償請求 平成14年10月8日)

(3)ランニング中に手足のしびれ・硬直など熱中症の症状を呈した

高校の陸上競技部において、アップをした後に学校の付近を40分ほど走っていたところ、急に手足がしびれて硬直してしまいました。呼吸にも苦しさをおぼえ、走ることができなくなってしまったのです。(独立行政法人日本スポーツ振興センター 発表資料 体育的部活動のけがの事例 熱中症)

陸上競技中の怪我!学校での負傷は災害共済給付を申請

学校の管理下で怪我をした場合は、まず「災害共済給付」の利用を検討してください。陸上競技部での活動中や授業中に負った怪我も補償してくれます。

災害共済給付

独立行政法人日本スポーツ振興センターによる共済制度。学校で生じた不慮の事故で被った損害を補償してくれる。

もっとも、災害共済給付に未加入の学校もあるので注意が必要です。できるだけ早く災害共済給付の加入状況を確認して、災害共済給付の申請を進めましょう。

災害共済給付はどうやって申請する?

まず、学校から災害共済給付の申請に必要な書類を受け取りましょう。所定の用紙を入手したら、病院で医療費の証明をもらってください。この医療費の証明は療養月ごとの提出になるので、長期療養の際には都度用意が必要です。

病院に作成してもらった医療費の証明を学校に提出した後は、学校が災害共済給付の申請手続きをしてくれます。

災害共済給付の受給には、請求が認められてから3ヶ月程度かかる見込みです。

災害共済給付申請の流れ

  1. 学校から申請用紙を受け取る
  2. 所定の用紙を医療機関へ提出して医療費の証明をもらう
  3. 医療費の証明を学校に提出する
  4. 請求後3ヶ月を目安に災害共済給付を受け取る

災害共済給付さえもらえれば万全?

災害共済給付は幅広い学校事故に対応しているものの、怪我の内容しだいでは、補償が十分とは言い切れません。

災害共済給付から給付される医療費、障害見舞金、死亡見舞金の給付金額を下表に示します。

表:災害共済給付による給付内容

給付内容
医療費※治療に要した費用の40%
障害見舞金88万円~4,000万円
死亡見舞金3,000万円

※初診から治癒までの医療費総額が5,000円以上(3割負担で1,500円以上)

上表「災害共済給付による給付内容」に示す通り、災害共済給付の補償は無制限ではありません。

もし、陸上競技中の事故で生徒に後遺症が残った場合には、慰謝料とは別に、「逸失利益」の請求が可能です。

逸失利益とは、事故によって学生が将来働いて得られたはずの収入が失われたという損害のことで、後遺障害慰謝料と逸失利益を合算すると、障害見舞金だけでは不足する場合があります。

後遺症が残った時には、関連記事『学校の怪我で後遺症|慰謝料や逸失利益の計算と相場は?相手への請求方法も解説』で説明しているとおり、損害賠償請求額は高額化するのです。

このように、災害共済給付だけですべてのケースが万全とは言い難く、不足分は学校側に請求していかねばなりません。

ただし学校側への損害賠償請求が認められるのは、学校側に何らかの事故原因が認められる場合に限られます。

ここまでの要点

  • 陸上競技中の怪我は災害共済給付から補償を受けられる
  • 災害共済給付の補償には限度がある
  • 学校側に事故発生の原因があるとき、損害賠償請求が認められる可能性がある

学校や顧問の責任を追及!損害賠償請求は認められる?

学校や顧問に対する損害賠償請求は認められる可能性があります。

陸上競技に怪我はつきものとはいえ、事故のいきさつを聞くうちに「学校や顧問に損害賠償請求をしたい」と考える方もいるでしょう。

ここからは、学校の責任と顧問の責任に分けて、損害賠償請求が認められる可能性を検討していきます。

陸上競技中の事故|学校に責任を問える?

陸上競技中に起こった事故に「顧問による故意や過失がある」、「施設や設備の安全性に問題がある」と判断された場合には、損害賠償請求が認められる可能性があります。

顧問による故意や過失が認められる場合

顧問による故意とは、顧問が意図して生徒に損害を与えることをいいます。たとえば、体罰を与えるなどの度を超えた指導もその一つです。(体罰の定義については、関連記事『体罰を受けたら弁護士に相談すべき|教師が負う3つの責任と体罰の定義』で詳しく解説しています。)

一方、顧問の過失とは、陸上競技中に事故が起こる可能性を予見していたにもかかわらず、事故発生を未然に防ぐための対策をとったり、回避するための行動を起こさなかったことをいいます。

顧問による過失については少しイメージしづらいため、以下に一例を示します。

顧問による過失の例

  • 熱中症の症状を示している生徒を見過ごし、救急車を呼ぶなどの適切な処置を怠った
  • 陸上競技初心者に対して難しい練習メニューを課した
  • ハンマー・槍・砲丸などの扱い方や危険性の教育が不十分であった
  • 以前から危険性が指摘されていた練習方法だった

顧問は、生徒に危険がおよぶことのないように注意しなければならないという義務を負います。この義務を「安全配慮義務」といい、安全配慮義務に違反した顧問には過失が認められるのです。

そして、顧問による故意や過失が事故を招いたと判断された場合には、その顧問を雇用する学校にも責任を問えます。

学校に対する損害賠償請求の可否には、顧問の故意や過失が大きく関係しています。学校に責任を問えるのかどうか、より個別にまとめた関連記事も併せてお役立てください。

施設や設備の安全性に問題がある場合

学校が管理する施設や設備が、従来備えているべき安全性を欠いている状態のことを「施設や設備に瑕疵がある状態」といいます。

たとえば、運動場に設置された防護ネットが老朽化しているにもかかわらず放置されていて、事故を引き起こした場合などが該当するでしょう。

陸上競技を安全に行えない環境にある場合、管理者である学校の責任を問えるのです。関連記事『学校の老朽化による事故で生じる法的責任は?損害賠償請求はできる?』では、学校施設の老朽化を原因とした損害賠償請求について、事例を交えて解説しています。

陸上競技中の事故|顧問個人に責任を問える?

顧問による故意や過失が認められた場合には、顧問個人に責任を問うことができます。

しかし、国公立学校の場合には顧問個人への損害賠償請求は認められません。なぜなら、学校の設置者である国や地方公共団体が損害賠償責任を負うためです。

一方で、私立学校の場合には顧問個人への損害賠償請求も認められる可能性があります。

ここまでの要点

  • 顧問による故意や過失で事故が起こった場合、学校側の責任を問える
  • 国公立学校の場合、顧問個人への損害賠償請求は認められない

関連記事『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』では、だれに、どんな方法で、いくら請求ができるのかを解説しています。より具体的に損害賠償請求について知りたい方は、関連記事も参考にしてください。

陸上競技中の事故をめぐる損害賠償請求は弁護士に相談

陸上競技中に起こった事故について、学校側に損害賠償請求を検討している方は、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士への相談は最初の一歩

弁護士に相談してはじめて「弁護士に依頼するメリット」が具体的にみえてきます。弁護士に依頼するメリットの一例は以下の通りです。

  • 損害賠償額の相場がわかる
  • 損害賠償請求に向けた書面作成や証拠収集を任せられる
  • 学校側との連絡窓口を弁護士に一本化できる

弁護士に依頼するメリットは多数あります。なかでも、損害賠償額の交渉において根拠を持った金額交渉ができること、保護者や生徒の負担を減らせることは非常に大きいです。

損害賠償額を交渉するときには、闇雲に金額を提示しても通らないでしょう。弁護士であれば、損害額の算定をしたうえで、これまでの裁判例や事例をふまえた賠償金額の交渉が可能です。

また、学校側への対応を弁護士に一任することで、ストレスを大幅に減らせます。おひとりで困難に立ち向かう必要はありません。

そうはいっても、弁護士への相談となると何となく躊躇してしまう人が多いのも事実です。関連記事では、弁護士に依頼するメリットや、学校を訴えたいと考えているへの情報をもっと詳しく解説しています。弁護士への相談・依頼を悩んでいる方は併せてお役立てください。

無料の法律相談窓口|学校での陸上競技事故

学校で起きた陸上競技中の事故で、お子さまに重い後遺症が残ってしまったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

法律相談は正式契約とは異なりますので、正式契約するかどうかは決めていないという方も、気軽に法律相談をご利用ください。その後正式な契約を検討いただける場合には、弁護士費用についてもきちんとご説明します。

  • 学校側から提案された示談内容で示談していいか分からない
  • 陸上部での怪我で重い後遺症が残りどうしていいか分からない
  • 学校側との示談交渉対応に苦慮しているので弁護士に任せたい

こういったお悩みはあくまで一例ですが、無料の法律相談を通してお困りごとを解消できる可能性があります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了