棒高跳びの事故で追及できる法的責任は?請求可能な3つの損害項目
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オリンピックやインターハイ等で観たことがある人も多いと思いますが、「棒高跳び」は数多くある競技の中でも見応えのある競技の一つといっていいでしょう。
見るからに、実践するのがむずかしいと感じる競技の一つでもありますが、それと同時に、他の競技に比べ危険性が高い競技であるといえるかもしれません。
実際として、過去には棒高跳びによる事故が一定数発生しています。
危険性が高いだけに、事故が発生してしまうと大怪我につながる可能性があり、場合によっては、生命をも脅かす競技です。
棒高跳びによる事故で負傷した場合、法的責任の所在や損害賠償請求の可否はどのようになっているのでしょうか。
今回は、棒高跳びによる事故について、法的責任の根拠や、誰にどのような請求が可能となるのかについて詳しく解説を行います。
目次
棒高跳び事故における法的責任の種類
多くの学校で部活動の一環として行われているスポーツは、運動量が多いだけでなく、競技によっては器具を使用することも少なくありません。
そのため、怪我につながりやすい側面もあり、スポーツをする本人はもちろんのこと、指導教員や学校は細心の注意を払って取り組むことが必要になります。
それでは、棒高跳びを含め、学校内においてスポーツをしている過程で事故が発生した場合、どのような法的責任が生じるのでしょうか。
法的責任(1)損害賠償責任(民法709条、同415条)
加害生徒に対する請求
他人の故意・過失によって怪我を負った場合、被害者は加害者に対して不法行為による損害賠償を請求することができます。
たとえば、棒高跳びを練習している生徒に対して、他の生徒がふざけ半分で邪魔に入った結果、練習している生徒が態勢を崩して怪我を負ったとしましょう。
この場合、他人の過失行為により生徒が怪我を負ったといえるため、邪魔した生徒は加害者といえます。加害者となった生徒は、怪我を負った生徒に対して不法行為による損害賠償責任を負うことになります。
もっとも、加害生徒は学生であるために損害賠償金を支払うことが基本的にできません。
そのため、加害生徒ではなく、加害生徒の保護者に損害賠償請求を行うべきでしょう。
請求の根拠としては、加害生徒が年齢的に責任無能力者であることから監督義務者である保護者に損害賠償請求(民法714条1項)を行う、保護者が適切な監督をおなかったという過失があることから損害賠償請求を行うといったものが考えられます。
学校に対する請求
また、これとは別に、学校側に損害賠償を請求することも可能です。学校側といっても、私立学校の場合と公立学校の場合で請求先が異なります。
- 私立学校の場合:学校法人等
- 公立学校の場合:国・地方公共団体
学校や教職員は、生徒が安全かつ健康に学校生活を送ることができるように配慮すべき義務を負っています。このような義務のことを「安全配慮義務」といいます。
学校や教職員が危険の発生を予見することができたのにもかかわらず、危険を回避するための適切な措置を怠ったために生徒が負傷した場合は、安全配慮義務違反が認められ、損害賠償責任が生じるのです。
具体的には、マットの位置が不適切であったことを教員が気が付かなったために棒高跳びの練習中に地面へ直接落下してしまったり、技量が不十分な生徒に適切な跳び方を指導しなかったために生徒が負傷してしまった場合などが該当します。
法的責任(2)使用者責任(民法715条)
私立学校において、指導教員が不法行為を行った場合、指導教員を雇用している学校法人等も被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。これを「使用者責任」といいます。
たとえば、指導教員が生徒に体罰を行った場合には、指導教員の故意によって損害が発生したために、不法行為があったといえるでしょう。(教師による体罰については、関連記事『体罰を受けたら弁護士に相談すべき|教師が負う3つの責任と体罰の定義』でも詳しく解説しています。)
また、指導教員による過大な要求や不適切な指導は、安全配慮義務に違反する行為であると同時に過失によって損害が発生したという不法行為を構成する行為でもあるのです。
そのため、そのような行為が原因となって生徒が怪我を負った場合、生徒側は使用者責任による損害賠償を学校法人等に対して請求することができます。
法的責任(3)土地工作物責任・営造物責任(民法717条・国家賠償法2条)
学校の施設や設備の欠陥が原因となって事故が発生した場合、学校側は生徒側に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
- 私立学校の場合:学校法人等の「土地工作物責任」
- 公立学校の場合:国・地方公共団体の「営造物責任」
たとえば、棒高跳びで使用するポールが古くなっていたにもかかわらず学校側が確認を怠り、特に交換することもなく放置していたとしましょう。
その結果、競技中にポールが折れて生徒が怪我を負った場合、生徒側は学校法人等や国・地方公共団体に対し、損害賠償を請求することが可能です。
棒高跳び事故で可能な請求内容とは
学校内における棒高跳び事故により怪我をした場合、被害者は一定の条件を満たしていれば、学校法人や教員、国・地方公共団体に損害賠償を請求することができます。
この場合、「損害」として請求できる項目は、主に以下の3つです。
治療や入通院に要した費用|積極損害
棒高跳び事故で怪我をした場合、怪我の程度によっては、治療や入通院が必要となります。
治療や入通院のために支出した費用は、棒高跳び事故が原因となって生徒側が負担せざるを得なかった費用です。
このように、事故に起因して支出した費用を「積極損害」といい、生徒側は相手方に対してその賠償を請求することができます。
逸失利益と休業損害|消極損害
「逸失利益」とは、事故に遭わなければ得られたはずであった利益のことを指します。一方で、「休業損害」とは、事故により働くことができなくなったことで減ってしまった収入のことです。
棒高跳び事故により後遺障害が残ってしまったような場合には、学校側に対し逸失利益を「損害」として請求することができます。
また、普段からアルバイトをしていて、棒高跳び事故により働くことができなくなった場合は、一定の条件を満たすことにより休業損害を請求することも可能です。
慰謝料の種類と算定方法
請求可能な慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」、そして「死亡慰謝料」の3つの種類に分かれています。
たとえば、棒高跳びによる事故で入院や通院が必要となった場合は、入通院の日数に応じて「入通院慰謝料」を請求することが可能です。
また、後遺障害が残ってしまった場合には、障害の等級に応じて「後遺障害慰謝料」を請求することができます。
災害共済給付制度を利用しよう
体育の授業や部活動中に生じた事故については、災害共済給付制度による補償を受けることが可能です。
被害生徒の保護者が加入契約を行っているのであれば、必要な書類を学校に提出することで請求手続きを行うことができます。
治療費用や見舞金を得ることが可能になるので、損害賠償請求がスムーズに進まず、治療費用の負担が気になる場合には、利用すべきでしょう。
災害共済給付制度に関する情報については『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険は?』の記事で確認可能です。
棒高跳び事故が起きたら弁護士に相談した方がいい?
学校事故が発生すると、損害の賠償をめぐって学校側と交渉を行うことがほとんどです。
ですが、怪我が治らないうちから、学校側との交渉を自力で進めていくことは大変な負担となります。
この点、弁護士に相談・依頼することにより、以下のように、本人の負担を軽減することが可能です。
弁護士に相談するメリット
交渉の窓口になってくれる
学校側と交渉を自力で対応しようとすると、交渉の場に出向かなければならないことはもちろんのこと、電話で何度もやり取りをしなければならない場合もあります。
怪我の状態を問わず、基本的に自分ですべて対応しなければならないのです。
この点、弁護士に交渉を依頼すれば、本人に代わって弁護士が窓口として交渉をすべて行ってくれるため、基本的に本人が矢面に立つということはありません。
等級認定申請手続や裁判手続にも対応してくれる
後遺障害が残ってしまった場合、相手方に慰謝料を請求するためにも等級認定の申請手続を行う必要があります。
また、学校側との交渉が決裂してしまえば、裁判手続によって解決を図るほかありません。
いずれの手続きも、書類を作成したり資料を集めたりしなければならず、はじめての人はそこに多くの時間と手間がかかってしまいます。
その点、弁護士はこれらの手続に慣れているため、代理人としてスムーズに手続を進めてもらうことができるのです。
まずは無料の法律相談を受けよう
弁護士に相談・依頼するメリットが分かったとしても、相談や依頼を行うことで生じる費用が気になってしまう方は多いのではないでしょうか。
まずは、無料の法律相談を受けることをおすすめします。
法律相談において今後弁護士に依頼する必要性があるのか、依頼する場合にはどの程度の費用が掛かるのかを確認し、最終的に依頼を行うかどうかを判断しましょう。
無料の法律相談であれば相談費用の負担を気にせずこのような判断が可能です。
アトム法律事務所の無料相談
棒高跳びによる事故で、お子さまが大きな後遺障害を負ってしまったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。
法律相談の予約受付は24時間体制で行っているので、一度気軽にご連絡ください。
無料法律相談ご希望される方はこちら
アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了