労災事故で警察が介入する場合と事業主側が負うべき責務を解説 | アトム法律事務所弁護士法人

労災事故で警察が介入する場合と事業主側が負うべき責務を解説

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労災事故|警察が介入。事業主側が負うべき責務

労災事故では必要性に応じて、労働基準監督署や警察が現場検証や関係者への意見聴取手続きを実施します。特に警察は業務上過失致死傷に該当するか判断を下す役割があるのです。

今回は労災事故で警察や事業主側が負うべき責務や労災事故の解決の流れについて解説します。この記事を読めば、警察が出動するような労災にはどんな事例か確認できるでしょう。

労災事故で警察が出動する重大災害とは

規模が大きく、被害の程度も著しい重大災害においては、警察が出動する可能性も高まります。まずは重大災害の定義をチェックしましょう。

重大災害の定義

労災における重大災害とは、一度に3人以上の労働者が死傷した業務災害のことです。

厚労省が行った統計調査によると、2008年は281件の重大災害がありました。1968年は480件だったので、相当な件数が減少したといえます。

業種別では建設業が多く、事故のタイプでは交通事故や中毒等が多いです。交通事故による重大災害の発生件数は139件、飛行機や船舶によるものが1件ずつ、電車によるものが2件となりました。

数は多くありませんが、墜落による重大事故も生じています。機械等や乗物、建築物、路肩等の多様なシーンで墜落事故が発生していました。さらに爆発による重大事故も年間に数件程度生じています。

労災事故で事業主側が負うべき責務

労災事故が起きた時、事業主側はさまざまな対応に追われます。実際に対応する立場ではないとしても、従業員としても企業が負うべき責務を知っておくと有事の際に役立ちます。

なぜなら、事業者が法令に則って対処できているか判断する材料となるためです。ここでは、労災事故で事業主側が負うべき5つの責務を解説します。

被災者の救助

労災事故が発生した場合、まず考えるべきなのは被災者の治療です。事業者は近隣の労災指定病院等で治療を受けるよう、被害者に伝えましょう。

ケースによっては救急車に出動要請をかける必要もあります。事故が発生した時は、落ち着いて対処し、二次災害の発生を防ぐことに注力しましょう。

事実関係の把握

事業者は事故が発生した時、事実関係の把握に努める必要もあります。場所や時間帯、事故の原因、目撃者の有無等、できる限り詳しい情報を入手しましょう。これらの情報は労働災害の認定や保険給付の不服申し立てや行政訴訟、損害賠償請求訴訟等で役立ちます。

事故に関する事実認定は、できる限り迅速に行うことがポイントです。事業者との認識の相違や後のトラブルを防ぐためにも、被災者側でも情報を収集できるといいでしょう。

また、可能な限り、現場の状況を事故発生当時のまま維持できるよう注意しましょう。

警察や労働基準監督署の調査への協力

労働災害を認定するのは、労働基準監督署です。労働基準監督署は、被災者や関係者からの事情聴取、会社へのヒアリング、事故現場の立ち入り調査、事業者から提出を受けた労災申請書等の情報から、事実関係を把握します。

労働基準監督署だけでなく警察も立ち入り調査を実施するのは、チェックするポイントが異なるためです。労働基準監督署は労働安全衛生法に違反する行為はないか、確認します。対して警察は刑法における業務上過失致死傷事件に当たるか判断します。

労基署や警察の調査には、事業主だけでなく従業員も、できるだけ協力しましょう。

届出や申請

労働災害が発生したら、労働基準監督署に対する災害発生報告や保険給付の手続きを取る必要があります。労働者が労働災害により死亡・休業した時は、労働者死傷病等報告書を行政に提出する必要があります。

事業主が労災事故の発生を隠すために、労働者死傷病等報告書を提出しなかったり、虚偽の記載をしたりするケースが労災隠しです。企業イメージの失墜を恐れて、労災の事実を隠ぺいしようと考える場合があります。

しかし、労災隠しは犯罪行為に該当します。どんな場合であっても、事業主は労災の事実を届出・申請しなくてはなりません。

再発防止策の検討

労災事故の発生を防ぐために、事業主側は再発防止策を検討・導入する必要があります。機械の不良や故障が事故の原因を作ったとすれば、メンテナンスの方法や頻度を見直す必要があるでしょう。

従業員の意識の低さや怠慢から事故が引き起こされたのであれば、徹底した従業員教育を施す必要があります。労働災害の発生リスクを低下させるために、安全パトロールの実施や危険因子を除去する施策も有効です。

労災事故発生から解決までの流れ

労災事故発生から解決までの流れを見ていきましょう。

(1)労災事故発生

どういった状況が労災事故に該当するか見てみましょう。労働安全衛生法第2条では、労働災害とはガスや蒸気、粉じん等、または作業行動に起因して、労働者が負傷・疾病・死亡してしまうことと定義されています。

労働災害は業務中に起きる業務災害と、通勤による通勤災害の2つに区別が可能です。業務災害の認定では、使用者の支配下で起きた事故なのか、使用者の支配下における業務中に起きた事故なのかという点が問われます。

また、通勤災害は合理的な経路および方法によって行われた通勤が対象となります。作業場内で発生した事故であれば、業務災害に該当するケースが少なくありません。通勤災害の場合は、合理的な経路および方法で行われたかが争点になります。

条件を満たさなければ、どんなに重大な怪我を負っても、労災事故とはならないでしょう。

(2)労災保険給付申請

被災労働者は、労災保険給付申請書を労働基準監督署へ提出する必要があります。請求書は所轄の労働基準監督署や厚生労働省のホームページから、所定の様式を入手できます。

請求書の署名欄には、事業主の証明をもらわなければならないので注意しましょう。
事業主の証明がなくても、労働基準監督署へ請求書を提出可能です。ただし、その場合は労働基準監督署へ事前に相談しましょう。

また、給付の手続が完了するまでには時間がかかるので、治療を受ける時点では立て替え払いが必要です。労災病院や労災指定病院で受診すれば、窓口での支払いが不要で治療を受けられます。

労災保険の申請手続きについて詳しく知りたい方は『労働災害の手続き・流れと適切な給付をもらうポイント』の記事をご覧ください。

(3)損害賠償請求

事故によって被った損害について、損賠賠償請求できる場合もあります。労災事故による損害賠償請求が認められるためには、事業主の安全配慮義務違反を立証する必要があります。

会社側が事故の発生を予測できる状況であったにも関わらず、危険回避の対策を怠ったといえる事情が必要です。
建設業における労災事故では、2,000万円以上の損害賠償金が認められるケースも多々見受けられます。請求できる項目には慰謝料や治療費のほか、本来ならば受け取れるはずであった給料等の補償も含まれます。

労災における損害賠償請求について詳しくは、こちらの関連記事『労災でも損害賠償請求できる?』でも詳しく解説しています。

(4)裁判

まずは会社との間で、事故の責任や損害賠償額に関する話し合いが進められます。会社との交渉がまとまらなければ、裁判で責任を追及することになります。

すでに労災保険から給付を受けている時は、損害額からその金額を控除する場合もあるので注意が必要です。

裁判では弁護士に訴訟代理人を依頼する必要があります。裁判が決まった段階でなく、早いうちに弁護士へ相談しておくことをおすすめします。会社との交渉や適切な損害賠償額の算定等の業務を依頼できるからです。

労災の問題を解決する手段として裁判を検討されている方は、こちらの関連記事『労災で裁判は起こせる?』もあわせてご確認ください。

労災事故で損害賠償請求するなら弁護士に相談しよう

労災事故が発生した場合には、労災保険の申請手続きだけではなく、損害賠償請求を行う可能性もあります。警察が介入するような重大な労災事故では、請求できる金額も高額となるでしょう。

そのため、適切な請求を行うために専門家である相談すべきです。
労災事故について弁護士に相談・依頼することで様々なメリットが生じます。
詳しく知りたい方は『労働災害は弁護士に法律相談|無料相談窓口と労災に強い弁護士の探し方』の記事をご覧ください。

もっとも、弁護士に相談することで生じる費用が気になり、相談すること自体を躊躇する方も多いでしょう。相談費用が気になる方は、無料の法律相談を行っている弁護士に相談することをおすすめします。

労災事故で大きな後遺障害が残ったりご家族を亡くされたりして、損害賠償請求を検討している場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。

相談費用の負担を気にせず労災事故に関する不安や疑問点について相談が可能です。相談の際に、依頼した場合に生じる費用を確認したうえで、依頼するかどうかをご判断ください。

法律相談の予約受付は24時間体制で行っているので、いつでも気軽にご連絡が可能です。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了