体操の事故|部活や授業で負傷、学校や先生に責任は?共済の申請方法も解説 | アトム法律事務所弁護士法人

体操の事故|部活や授業で負傷、学校や先生に責任は?共済の申請方法も解説

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体操の学校事故。共済の申請方法

体操は、技の難易度や完成度に磨きをかけて競うもので、器械体操や新体操といったジャンルにもわかれて親しまれているスポーツです。

その一方で、より高度な技への挑戦や器械を使った日々の練習は怪我のリスクと隣り合わせともいえるでしょう。

もし学校に通う子どもが体操の練習や競技中に怪我をしてしまったら、親はどのように対応し、どういった補償を求めるべきなのでしょうか。

体操事故の発生原因について、学校や先生の責任が認められれば、学校側に損害賠償請求できます。

この記事では、学校管理下でおきた実際の体操事故の事例、体操事故で利用できる保険のほか、学校や先生への損害賠償請求時のポイント弁護士への依頼が有効な理由を説明していきます。無料の法律相談予約フォームも案内しますので、気兼ねなくご利用ください。

体操事故の事例|学校の部活動で負傷

体操事故は、日々の練習の中で起こってしまいます。ここでは、実際に学校で発生してしまった体操事故の事例を紹介します。

なお事例は個別の事情を反映したものであり、すべてのケースにおいて同じ判決が出るとは限りません。その点にご留意ください。

事例(1)体操部で平行棒の練習中に負傷し、重い障害が残った

市立高校の生徒が体操部の部活動中に平行棒演技の練習をしていたところ負傷し、後遺障害が残ってしまいました。後遺障害は第3級と重く介護が必要な状態となってしまい、被害者ならびにご家族の生活が一変してしまったのです。

判決では、マット敷設状況といった環境整備への配慮が不十分であったことを指摘するなど、指導監督の注意義務違反を認めました。(大阪地方裁判所 平成20年(ワ)第14195号 損害賠償請求事件 平成22年9月3日)

事例(2)器械体操部員が鉄棒から落下して、将来にわたる介護が必要になった

公立高校に通う生徒は、器械体操部の部活動中に鉄棒から落下し頸部を負傷してしまいました。事故の結果、学生には両下肢機能全廃、両上肢機能障害及び神経因性膀胱直腸障害が残り、常に介護を要するものとして別表第1の第1級という極めて重い後遺障害が残ったのです。

判決は、コーチが事故発生防止策をとっていなかったことなど、指導者が負うべき注意義務を怠った過失があったと認定しました。(大阪高等裁判所 平成28年(ネ)第2098号 損害賠償請求控訴事件 平成29年12月15日)

事例(3)体操部員が跳馬の練習中に頭部を強打した

県立高校の体操部員が跳馬の練習中に頸髄損傷の傷害を負い、完全四肢麻痺、直腸膀胱障害などの後遺症が残ってしまいました。残った生涯の程度は重く、将来にわたり完全看護を要し、就労することもできなくなったのです。

判決では、生徒の習熟度に合わせた指導を怠ったこと、事故発生時に立ち会いをしていなかったこと、安全に練習するための物的・人的整備を整えていなかったことなど顧問教諭の安全配慮義務違反が認められました。(横浜地方裁判所 平成3年(ワ)第812号 損害賠償請求事件 平成9年3月31日)

体操事故で使える共済|災害共済給付を申請しよう

部活動や体育の授業で体操をしていて事故が起こった場合には「災害共済給付」に給付金を申請できる場合があります。

災害共済給付とは?

独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施する保険制度のこと。学校と保護者で共済掛け金を支払うことで、学校の管理下で起こった事故の補償を受けられる。

災害共済給付の制度は、学校を通じて保護者が加入契約を行っている必要があります。
そのため、制度を利用する際には加入状況を確認しましょう。

学校事故の補償|災害共済給付の申請

災害共済給付の申請から給付を受けるまでの大まかなステップは次の通りです。

  1. 学校から申請用紙を受けとる
  2. 医療機関を受診したら証明をもらう
  3. 証明を受けた用紙を学校に提出する
  4. 申請から3ヶ月後をめどに給付が受けられる

災害共済給付の申請は学校を通して行いますが、医療機関の証明を提出するなど、保護者による対応が必要な部分もあります。

さらに詳しく知りたい方は、関連記事『学校で起きた事故で怪我をした場合に利用できる保険』も併せてお読みください。

災害共済給付だけでは不十分なケースもある

体操事故が学校の管理下で発生した場合、その損害は災害共済給付の補償対象となるでしょう。災害共済給付項目には、医療費、後遺障害に対する障害見舞金、死亡見舞金があります。支払われる金額は下表の通りです。

災害共済給付金の金額

給付金額
医療費※治療にかかった費用の40%
障害見舞金4,000万円~88万円
死亡見舞金3,000万円

※初診時から治癒までの医療費総額が5,000円以上(3割負担で1,500円以上)であること

医療費や見舞金が支払われるので安心できる側面もありますが、体操事故で負った損害によっては、災害共済給付だけですべての補償がなされない恐れがあります。

もし体操事故で寝たきりになってしまったら、生涯にわたる介護費用が必要になるでしょう。介護費用の例としては、介護をする家族への補償、介護に必要な設備費や居宅のリフォーム費用、おむつやウロバックなどの消耗品があげられます。

また、学生が将来働いて得られたはずの収入も体操事故によって失われることになり、損害のひとつといえるのです。この損害を「逸失利益」といい、被害にあった学生の状況を踏まえて損害額を算定する必要があるので、弁護士に金額算定を依頼して請求するべきでしょう。

逸失利益を請求するために必要な要件や損害額の計算方法については、以下の関連記事で確認可能です。

ただし、災害共済給付金の不足分を学校側に損害賠償請求するなら、体操事故の原因が学校側にあると認められる必要があります

体操事故の損害賠償請求|学校や先生の責任

体操事故で負傷した場合、学校や先生に対する損害賠償請求は認められるのでしょうか。結論として、学校で生じた体操事故については、損害賠償請求が認められる可能性があります。

しかし、全ての体操事故において損害賠償請求が通るとは限りません。学校の責任と先生の責任の点から損害賠償請求が認められるためのポイントを考えていきましょう。

体操事故の損害賠償請求|学校の責任は?

体操事故発生の原因が「先生に故意や過失がある場合」「学校の施設・設備などに瑕疵がある場合」には、学校に責任を問うことができます。

先生に故意や過失がある場合

先生の「故意」と「過失」について考えていきましょう。

先生の故意とは、体罰などの行き過ぎた指導を行ったケースが該当します。

先生の過失とは、注意義務違反があった場合に認められます。
先生は、生徒が怪我をしたり事故に巻き込まれることがないように注意しなければならないとする安全配慮義務という注意義務を負っているので、先生に安全配慮義務違反がある場合には過失が認められるのです。

具体的には、体操事故が起こる可能性を予見していたのに、事故発生を回避するための適切な対策を怠ったといえるのであれば、先生に安全配慮義務違反による過失が認められます。

例えば、以下のような状況で体操事故が起こったなら、先生の過失にあたる可能性があるでしょう。

  • 練習時に適切な補助員を配置していなかった
  • 安全確保のためにマットを敷くなどの対策が不十分だった
  • 生徒のそばを離れており練習を見ていなかった

先生に過失があったと認められるかは、事故の原因が「安全配慮義務違反」にあると認定されるかどうかによります。
安全配慮義務についてもっと詳しく知りたい方は、関連記事『学校事故における安全配慮義務とは?教師が負う2つの責任』も併せてお役立てください。

学校の施設・設備などに瑕疵がある場合

瑕疵がある場合とは、学校の施設・設備などが本来保持すべき安全性に欠けている状態をさします。

器械体操は、鉄棒、跳馬、平均台や跳び箱などの器械を用いる競技です。また、体操・器械体操・新体操はいずれも体育館などの学校施設内で練習・演技をするでしょう。
部活動や授業がおこなわれる施設や器具・設備に瑕疵があり、事故を招いた原因と認められた場合には、施設管理者としての学校に責任を問えるのです。

体操事故の損害賠償請求|先生個人の責任は?

先生個人への損害賠償請求が認められるかどうかは、体操事故が教師の故意や過失を原因とする場合に限られます。

さらに、公立学校か私立学校かでも扱いが異なります。公立学校の場合は、先生個人に対する損害賠償請求はできません。その理由は、公立学校の場合には設置した国・地方公共団体が損害賠償責任を負うためです。

ポイント

  • 公立学校の先生個人に対する損害賠償請求は認められない
  • 私立学校の先生個人に対する損害賠償請求は認められる可能性がある

損害賠償請求権により請求可能な内容については、関連記事『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』でわかりやすく解説しています。

体操事故|学校での事故は弁護士相談のメリットあり

「お子さんが学校で怪我をされました」と突然の連絡を受け、どんな怪我をしたのか、怪我はちゃんと治るのかと居ても立っても居られないこととお察しします。
そして話を聞いているうちに、体操事故の原因が学校や先生にあるのではないかと感じる人もおられるでしょう。

部活動や体育の授業中に体操事故が起こり、学校や先生個人に対する損害賠償請求を考えている場合は、まず弁護士への相談がおすすめです。

弁護士相談を始めてほしい理由

ご家族から相談を受けた弁護士は、個別の事情をしっかり伺ったうえで、弁護士に正式に依頼するメリットを説明します。例えば、弁護士が説明するメリットは次の3つです。

  1. 適切な損害賠償請求額がわかる
  2. 損害賠償請求にかかる証拠の収集を一任できる
  3. 学校側との交渉や裁判も任せられる

損害賠償請求をするには、実際の損害額をくまなく算定することにくわえ、これまでの判例や事例に関する知識が必要です。相場の判断はご家族だけでは難しい面もあるので、弁護士に相談することをおすすめします。

また、弁護士であれば、どんな証言や証拠をそろえる必要があるのかも十分に検討可能です。

さらに、学校事故の解決には学校側との話し合いが欠かせません。
しかし、お子さんの付き添いにくわえて、仕事や家事もせねばならない状況では心身ともに疲弊してしまいます。そういった親御さんの負担軽減にも弁護士によるサポートが有効です。

関連記事では弁護士に相談するメリットの詳細や解決の流れをより詳しく説明しています。「弁護士相談は敷居が高く感じる」と不安な方は、関連記事も併せてご覧ください。

学校事故の無料相談|体操事故のお悩みはこちら

学校で起こった体操事故によって、お子さまが大きな障害を負ってしまったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の弁護士による無料の法律相談をご活用ください。弁護士に相談して今後取るべき対応がみえてくれば、今の不安やお悩みが和らぐ可能性があります。

「まだ正式に依頼するとは決めていないのに、法律相談してもいいの?」と躊躇する方もいるでしょう。法律相談と契約はセットではありませんので、相談後に正式に依頼するかを検討してみてください。その際には弁護士費用がいくらぐらいかかるのかも含めて丁寧に説明します。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了