相続税における土地の計算方法|評価額の出し方がわかる

親や配偶者から土地を相続するとき、「この土地の相続税はいくらになるのだろう」と不安に感じる方は多いでしょう。
相続税額を明らかにするために必要な土地の評価額は、路線価方式または倍率方式という方法で算出されるのであり、不動産会社が提示する売買価格(時価)とは異なります。
また、土地や所有する土地に建てられた宅地を貸している場合の計算方法や、評価額を減額する特例についても知っておく必要があるでしょう。
この記事では、路線価方式・倍率方式の計算手順を具体的な数値例とあわせてわかりやすく解説します。税理士に依頼する前に基礎知識を整理したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次
土地の相続税評価額と計算方法
相続税計算のために相続税評価額の算出が必要
相続税の計算では、土地の価値を「時価(実際の売買価格)」ではなく、税法上のルールに基づいて算出した「相続税評価額」で評価します。
土地の時価は売買のたびに変動し、客観的な基準がなければ納税額に不公平が生じてしまいます。
そこで国税庁が定めた「財産評価基本通達」というルールに従って評価額を算出し、全国で統一した基準のもとに相続税を計算するしくみになっているのです。
相続税評価額を含めた土地の価格には以下の5種類があり、混同してしまう場合もあるのでここで整理しておきましょう。
| 種類 | 公表主体・基準 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 実勢価格 | 市場取引 | 実際の売買価格 |
| 公示価格 | 国(毎年1月1日時点) | 土地価格の指標 |
| 基準地価 | 都道府県(毎年7月1日時点) | 土地価格の補完指標 |
| 相続税評価額 | 国税庁(路線価など) | 相続税の計算 |
| 固定資産税評価額 | 市町村(3年ごと) | 固定資産税の計算 |
評価額の概念や他の財産との比較については、以下の記事も参考にしてください。
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相続税評価額とは?土地や建物ごとの計算方法・調べ方と固定資産税評価額との違い
土地の相続税評価額の計算方法は2種類
土地の相続税評価額を計算する方法は、次の2つです。
| 評価方法 | 対象となる土地 | 計算の基準 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 路線価が定められている地域(主に市街地) | 国税庁が公表する「路線価」 |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域(農村部・郊外など) | 固定資産税評価額×倍率 |
どちらの方式を使うかは、土地の所在地によって決まります。
自分の土地がどちらに該当するかは、国税庁が公開している「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で確認できます。
路線価方式による土地の評価額の計算方法
路線価方式とは
路線価方式は、道路(路線)に面する土地1㎡あたりの評価額(路線価)に、土地の形状に応じた補正をかけて評価額を計算する方法です。
路線価は毎年1月1日時点の価格として国税庁が公表し、地価公示価格等を基に概ねその80%程度を目安として設定されています。
路線価方式の基本計算式
- 相続税評価額 = 路線価(円/㎡)× 補正率 × 地積(㎡)
整形地でまっすぐな土地であれば補正率は原則1.0(補正なし)ですが、土地の形状や場所によっては補正をかけて評価額を調整する必要があるのです(詳しくは後述)。
路線価を調べる際には「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」を利用します。
この際に、相続開始日が属する年分の路線価を確認する点に注意してください。
路線価の調べ方や補正の詳細については、『相続税の路線価とは?調べ方と計算方法を解説【土地の評価額・補正まで】』の記事で詳しく解説しています。
土地の形状・場所次第では補正が必要
路線価は、一方のみ道路に接する標準的な形状の宅地を前提にしています。
しかし、実際の土地の形状は、奥行きが長かったり、正面と側方が道路に接していたりと様々です。
そこで、一定の事情がある場合に、それらの事情を考慮した上で相続税評価額を減額または加算する必要があります。これらの調整に用いる数値を「補正率」といいます。
実際の土地は形状や接道状況がさまざまです。代表的な補正・加算の種類を以下にまとめます。
| 補正・加算の種類 | 内容 | 評価への影響 |
|---|---|---|
| 奥行価格補正 | 道路からの奥行距離に応じて調整 | 奥行が極端に長い・短い土地は減額 |
| 不整形地補正 | 三角形・L字形など整形でない土地に適用 | 使いにくい分だけ減額 |
| 側方路線影響加算 | 角地など2方向に道路が接している場合 | 利便性が高い分だけ加算 |
| 二方路線影響加算 | 前後2方向に道路が接している場合 | 加算 |
| 間口狭小補正 | 道路に面する幅(間口)が狭い土地 | 減額 |
補正率・加算率の数値は国税庁ホームページ「奥行価格補正率表」で公表する補正率表から確認できます。
標準的な奥行を持つ整形地では奥行価格補正率が1.00となるため、結果として補正なし(評価額=路線価×地積)となる場合が多いです。
路線価方式による相続税評価額の計算例
【設定】
- 路線価:300,000円/㎡
- 地積:150㎡
- 土地の形状:整形地(奥行補正率1.00)
【計算】
300,000円 × 1.00 × 150㎡ = 45,000,000円(4,500万円)
この土地の相続税評価額は4,500万円となります。
倍率方式による土地の評価額の計算方法
倍率方式とは
倍率方式は、固定資産税評価額に国税庁が定めた「評価倍率」をかけて相続税評価額を計算する方法です。路線価が設定されていない農村部や郊外の土地に適用されます。
倍率方式の基本計算式
- 相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
倍率方式は路線価方式のような形状補正等を行わないことが多く、計算はシンプルです。
ただし、地目(宅地・田・畑・山林等)や利用区分(貸宅地・貸家建付地等)によっては、利用状況に応じた評価の調整が必要になる場合があります。
固定資産税評価額と評価倍率の調べ方
倍率方式による評価額を算出する際に必要となる「固定資産税評価額」と「評価倍率」は以下のような方法で知ることができます。
| 情報 | 確認方法 |
|---|---|
| 固定資産税評価額 | 毎年送付される固定資産税・都市計画税の課税明細書、または市区町村役場で取得できる「固定資産評価証明書」※ |
| 評価倍率 | 国税庁「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」(国税庁ウェブサイトで公開) |
※東京23区内の場合は都税事務所で取得できる
倍率方式による相続税評価額の計算例
【設定】
- 固定資産税評価額:8,000,000円(800万円)
- 評価倍率:1.1倍
【計算】
8,000,000円 × 1.1 = 8,800,000円(880万円)
この土地の相続税評価額は880万円となります。
土地の利用状況による評価額の違い
同じ土地でも、その土地をどのように使っているか(利用状況)によって評価額が変わります。
自分で使用している土地(自用地)なら路線価方式・倍率方式で計算した評価額がそのまま適用されますが、他人に貸している土地や、賃貸建物が建っている土地は、所有者が自由に使えない分だけ評価額が下がるのです。
また、土地上にマンションを所有している場合も、評価額の計算方法が異なってきます。
貸宅地の評価額を計算する方法
他人に土地を貸し(借地権を設定し)、その上に借り手が建物を建てているケースです。所有者は土地を自由に使えないため、自用地評価額から借地権割合に相当する分が差し引かれます。
- 貸宅地評価額 = 自用地評価額 ×(1 - 借地権割合)
借地権割合は地域によって異なり、路線価図や評価倍率表に記載されています(30~90%)。
なお、上記の式は通常の借地権が設定されている場合の原則的な計算方法です。
契約の内容(一時使用目的・使用貸借・権利金の授受状況・地上権か賃借権かの別など)によって評価方法が異なる場合がありますので、個別の事情に応じて確認が必要です。
計算例(借地権割合60%の場合)
5,000万円 ×(1 - 0.6)= 2,000万円
貸家建付地の評価額を計算する方法
自分が所有する土地に建物を建て、その建物を他人に貸しているケースです(アパート・賃貸マンションなど)。
完全には自由に使えない分だけ評価額が下がりますが、貸宅地よりは減額幅が小さくなります。
貸家建付地評価額 = 自用地評価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
- 借地権割合:地域ごとに設定(路線価図等で確認)
- 借家権割合:借家権割合:全国一律30%(財産評価基本通達94条による)
- 賃貸割合:建物のうち実際に貸し出されている部分の割合
計算例(借地権割合60%・借家権割合30%・賃貸割合100%の場合)
5,000万円 ×(1 - 0.6 × 0.3 × 1.0)
= 5,000万円 × 0.82
= 4,100万円
マンションの評価額を計算する方法
土地の上にマンションを所有している場合、マンションの相続税評価額は以下のように算出されます。
- マンションの相続税評価額 = 敷地利用権の価額+ 区分所有権の価額
※居住用区分所有財産については、2024年1月1日以後の相続等から、国税庁の定める区分所有補正率等による補正が行われる場合がある
| 部分 | 評価方法 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 土地(敷地利用権) | 路線価 × 敷地面積 × 敷地権割合 × 区分所有補正率※ | 路線価図(国税庁)、登記簿 |
| 建物(区分所有権) | 固定資産税評価額 × 区分所有補正率 | 固定資産税納税通知書 |
※路線価が定められていない土地については倍率方式で算出
新ルールによる区分所有補正率を乗じると、旧ルールよりも評価額が大幅に増額する可能性があるため、正確な金額を専門家である税理士に算出してもらうことをお勧めします。
マンションの相続税額を計算する際の方法については『マンションの相続税はいくら?評価額の計算方法と新ルールを解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
土地の相続税額を減額するための特例や対策
小規模宅地等の特例|評価額の減額
土地の評価額が算出できたら、小規模宅地等の特例が使えるかどうかも確認しましょう。この特例を使うと、一定の要件を満たす土地について評価額を大幅に減額できます。
各土地における、小規模宅地等の特例の限度面積・減額割合は以下のとおりです。
| 土地の種類 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
- 特定居住用宅地等:被相続人(または生計を一にする親族)の自宅などとして使用
- 特定事業用宅地等:被相続人が個人事業で使用
- 特定同族会社事業用宅地等:被相続人の会社(同族会社)として使用
- 貸付事業用宅地等:被相続人が貸地や貸家など貸し付け用として使用
たとえば、相続税評価額4,000万円の自宅の敷地(330㎡以内)に特例を適用すると、評価額が800万円まで下がります。
4,000万円 ×(1 - 80%)= 800万円
ただし、特例の適用には「誰が相続するか」「相続後も住み続けるか」など細かい要件があります。
特に貸付事業用宅地等については、相続開始前3年以内に貸付を開始した土地には適用が制限されるなど、追加的な要件がありますので注意が必要です。
また、小規模宅地等の特例を利用するためには、特例利用によって納税額が0円となった場合でも申告書提出が必要となります。
関連記事
小規模宅地等の特例とは?要件・計算方法をわかりやすく解説【フローチャート付き】
生前贈与による相続税対策も検討すべき
土地を生前贈与することで相続財産を事前に減らし、相続税の負担を減らすという対策も検討するとよいでしょう。
特に、収益性のある土地や、将来値上がりが期待できる土地などは、生前贈与することで相続税対策になる可能性が高くなります。
また、「贈与税の配偶者控除」や「相続時精算課税制度」などを利用することで贈与時に生じる贈与税の負担を軽減することも可能です。
どのような制度を利用した生前贈与が効果的となるのかは、専門家である税理士に相談して確認を取りましょう。
土地の生前贈与による相続税対策の方法や注意点については『土地の生前贈与は相続税対策になる?生前贈与すべきケースは?相続とどちらが得?』の記事で詳しく知ることが可能です。
相続税額の計算や申告の方法
土地の評価額から相続税額を計算する流れ
土地の相続税評価額が算出できたら、それを使って相続税額を計算します。大まかな流れは以下のとおりです。
ステップ1:すべての遺産の評価額を合計する
土地以外の財産(現金・預金・株式・建物など)の評価額もあわせて、遺産総額を計算します。
債務や葬式費用を差し引き、「みなし相続財産」や一定の生前贈与分も含めて算出する必要があります。
ステップ2:基礎控除額を差し引く
相続税には「基礎控除」があり、遺産総額がこの金額以下であれば相続税はかかりません。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
たとえば法定相続人が3人であれば、基礎控除は4,800万円です。
ステップ3:課税遺産総額に税率を適用する
基礎控除を超えた金額(課税遺産総額)に対して、法定相続分に応じた税率を適用して相続税の総額を計算します。その後、実際の相続割合に応じて各相続人の納税額を按分します。
相続税の計算は複数の手順があり、やや複雑です。詳しい計算方法は以下の記事をご参照ください。
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相続税を計算したのなら申告と納付を
相続税を計算した結果、相続税の申告や納付が必要な場合は、「被相続人(亡くなった方)が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」に申告や納付を行いましょう。
被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に、申告書や必要書類を提出してください。
期限内の申告や納付を怠ると、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される恐れがあります。
期限内に確実な申告や納付を行いたい場合は、税理士に相談するとよいでしょう。
申告のやり方については『相続税申告のやり方・申告方法を解説|手続きの流れや期限を網羅』の記事でも確認できます。
土地の相続では相続税以外にも税金がかかる
土地を相続した場合には相続税だけでなく、相続人に登記名義を移転する際に登録免許税がかかります。
土地を相続した場合の登録免許税の金額は「不動産の価格(課税価格)×0.4%」となります。
不動産の価格とは、相続登記を申請する年度における不動産の固定資産税評価額のことです。
土地を相続した場合の相続登記は、2024年4月1日から義務化されているので、相続発生後には速やかな登記が必要になります。
また、相続した土地を所有するのであれば固定資産税が、売却する場合は所得税を負担することとなるでしょう。
相続登記による登録免許税に関しては『相続登記にかかる登録免許税の計算方法と免税措置を解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
土地の相続税計算は税理士への相談がおすすめ
土地の相続税評価額の計算は、基本的な手順を理解すれば概算を把握することができます。
しかし、実際の申告では次のような点でミスが起きやすく、過大申告・過少申告のリスクがあります。
- 補正率の選択・計算の誤り
- 貸家建付地・貸宅地の判定ミス
- 小規模宅地等の特例の適用要件の見落とし
- 複数の土地が絡む場合の評価の複雑化
特に土地を含む相続は評価額が高くなりやすく、相続税額への影響も大きくなります。概算の把握後は、相続税に詳しい税理士や弁護士に相談することを強くおすすめします。
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監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
