土地の相続税評価額の計算方法と形状による減額補正をわかりやすく解説

土地の相続税評価額は、路線価方式または倍率方式で計算します。
市街地にある土地なら「路線価×補正率×地積」、路線価が定められていない地域なら「固定資産税評価額×評価倍率」が基本の計算式です。
不動産会社が提示する売買価格(時価)とは異なり、土地の形状や利用状況によっては評価額を減額できる補正もあります。
この記事では、路線価方式・倍率方式の計算手順と、評価額が下がる補正の具体例を、数値を入れてわかりやすく解説します。
目次
土地の相続税評価額とは
土地の相続税評価額とは、相続税を計算するときに使う土地の価格のことです。国が定めた方法で算出するため、不動産会社が提示する売買価格(時価)とは異なります。
国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、相続財産の金額の合計24兆5,415億円のうち、土地が7兆4,074億円と全体の30.2%を占めています。現金・預貯金等(34.9%)に次ぐ規模であり、土地の評価額が相続税額を大きく左右します。
土地の評価額は時価や固定資産税評価額とは異なる
土地の価格には、実際の売買で成立する時価のほか、公示価格や固定資産税評価額など複数の種類があります。相続税の計算では、このうち相続税評価額を使います。
| 種類 | 公表主体・基準 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 実勢価格 | 市場取引 | 実際の売買価格 |
| 公示価格 | 国(毎年1月1日時点) | 土地価格の指標 |
| 基準地価 | 都道府県(毎年7月1日時点) | 土地価格の補完指標 |
| 相続税評価額 | 国税庁(路線価など) | 相続税の計算 |
| 固定資産税評価額 | 市町村(3年ごと) | 固定資産税の計算 |
評価額の概念や他の財産との比較については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事
・路線価と実勢価格・公示価格の違いは?調べ方や計算方法を解説
・相続税評価額とは?土地や建物ごとの計算方法・調べ方と固定資産税評価額との違い
土地の評価単位は地目と利用状況で決まる
土地の相続税評価では、まず宅地・田・畑・山林などの地目を確認し、その地目ごとに定められた評価単位で評価します。
土地は登記簿上、「1筆(ぴつ)」「2筆」という単位で区切られています。ただし、登記上の1筆がそのまま相続税評価の単位になるとは限りません。
どこまでを1つの土地として評価するかを示す区分を、評価単位といいます。
地目は登記簿ではなく現況で判定する
まず、土地は原則として、種類(地目)ごとに分けて評価します(財産評価基本通達7)。
宅地・田・畑・山林・原野・雑種地といった土地の種類を地目といいます。地目は登記簿上の記載ではなく、相続が発生した時点の現況で判定します。登記簿では畑でも、実際には駐車場として使われていれば雑種地です。
地目が異なっていても、隣り合う複数の土地がまとまって1つの用途に使われている場合は、主となる地目の土地としてまとめて評価します。
地目ごとに評価単位の決め方が異なる
地目を確認した後は、それぞれの地目について定められた評価単位を判定します(財産評価基本通達7-2)。たとえば、宅地は利用の単位となっている1区画、田や畑は原則として耕作の単位となっている1区画、山林は原則として1筆が評価単位です。
宅地の場合は、同じ地目でも利用状況や権利関係によって評価単位が分かれることがあります。自分で使っている宅地(自用地)と、他人に借地権を設定して貸している宅地(貸宅地)は、別の評価単位として扱います。
200㎡の宅地のうち120㎡を自宅の敷地として使い、80㎡を他人に貸して家を建ててもらっている場合は、200㎡をまとめて計算せず、それぞれの利用単位に分けて評価します。
評価単位が問題となった裁決例
評価単位が実際に問題となった例として、国税不服審判所の平成29年4月7日裁決があります。
この事案では、隣り合う畑と宅地の間に最大約4メートルの高低差があるがけ地がありました。
審判所は、一体の土地として利用されているとは認められないとして、財産評価基本通達7に従い、畑と宅地をそれぞれ別の評価単位として評価しています。
このように、土地の評価単位は登記簿上の筆だけでは判断できません。複数の土地を相続した場合や土地の利用状況が複雑な場合は、地目と実際の利用状況を確認して評価単位を判定しましょう。
宅地の相続税評価額は路線価方式と倍率方式の2種類
宅地の相続税評価額は、路線価が定められている地域では路線価方式、路線価が定められていない地域では倍率方式で計算します。なお、田・畑・山林などは、土地の種類や所在する地域によって評価方法が異なります。
いずれの方式を使うかは、土地がある地域によって決まります。相続税評価額は、国税庁が定める財産評価基本通達に従って算出します。
| 評価方法 | 対象となる土地 | 計算の基準 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 路線価が定められている地域(主に市街地) | 国税庁が公表する「路線価」 |
| 倍率方式 | 路線価が定められていない地域(農村部・郊外など) | 固定資産税評価額×倍率 |
自分の土地がどちらの地域にあるかは、以下の方法で確認しましょう。
【土地の評価方法の調べ方】
- 「評価倍率表」を確認する
国税庁HP「財産評価基準書」から、土地がある市区町村の「評価倍率表(一般の土地等用)」を開きます。 - 「固定資産税評価額に乗ずる倍率」欄を見る
該当する町名・地番を探し、倍率欄を確認します。 - 記載内容で判定する
「路線」と書かれている→ 路線価方式
「1.1」などの数字が書かれている→ 倍率方式
路線価方式による相続税評価額の計算方法
路線価方式は、道路(路線)に面する土地1㎡あたりの評価額(路線価)に、土地の状況に応じた補正をかけて評価額を計算する方法です。
路線価は毎年1月1日時点の価格として評価され、毎年7月初旬に国税庁が公表しています。地価公示価格等を基に概ねその80%程度を目安として設定されています。
路線価方式の基本の計算式
路線価方式による土地の相続税評価額の計算式は、以下の通りです。
路線価方式の基本計算式
- 相続税評価額 = 路線価(円/㎡)× 補正率 × 地積(㎡)
補正率は、土地の奥行距離や形状、接している道路の状況などに応じて決まります。
標準的な条件であれば1.0(補正なし)となりますが、奥行きが極端に長い土地や角地などでは、評価額を調整するための補正・加算が必要です。詳しくは後述します。
路線価の調べ方と路線価図の見方
路線価を調べる際には「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」を利用します。
まずは相続開始日が属する年分を選択します。
そこから該当する土地のある都道府県を選択し、路線価図を開くと、数字とアルファベットが確認できます。
数字のほうが、路線価です。
路線価は千円単位で表示され、たとえば「280」なら28万円です。
アルファベットは借地権割合を示しており、これは貸宅地や貸家建付地の評価で用います。これについては本記事内で後ほど確認しますが、自用地であれば相続税評価で使うことはありません。
路線価図の見方をさらに詳しく知りたい方は『相続税における路線価の調べ方と計算方法【土地の評価額がわかる】』の記事をご覧ください。
倍率方式による相続税評価額の計算方法
倍率方式は、固定資産税評価額に国税庁が定めた「評価倍率」をかけて相続税評価額を計算する方法です。路線価が設定されていない農村部や郊外の土地に適用されます。
倍率方式の基本の計算式
倍率方式による土地の相続税評価額の計算式は、以下の通りです。
倍率方式の基本計算式
- 相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
倍率方式は路線価方式のような形状補正等を行わないことが多く、計算はシンプルです。
ただし、地目(宅地・田・畑・山林等)や利用区分(貸宅地・貸家建付地等)によっては、利用状況に応じた評価の調整が必要になる場合があります。
固定資産税評価額と評価倍率の調べ方
倍率方式による評価額を算出する際に必要となる「固定資産税評価額」と「評価倍率」は以下のような方法で知ることができます。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税・都市計画税の課税明細書、または市区町村役場で取得できる「固定資産評価証明書」で確認できます。
固定資産税評価証明書は、東京23区内の場合は都税事務所で取得しましょう。
関連記事
固定資産評価証明書とは?相続での取得方法・取得できる人・見方を解説
評価倍率の調べ方
評価倍率は、「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」を使って確認します。
まずは相続開始日が属する年分を選択します。
そこから該当する土地のある都道府県を選択し、一般の土地等用の評価倍率表を選択し、該当する市町村を選びましょう。
倍率方式の計算例
【設定】
- 固定資産税評価額:8,000,000円(800万円)
- 評価倍率:1.1倍
【計算】
8,000,000円 × 1.1 = 8,800,000円(880万円)
この土地の相続税評価額は880万円となります。
土地の形状や道路の状況による評価額の補正
路線価は、一方のみ道路に接する標準的な形状の宅地を前提にしています。
しかし、実際の土地の形状は、奥行きが長かったり、正面と側方が道路に接していたりと様々です。
そこで、一定の事情がある場合に、それらの事情を考慮した上で相続税評価額を減額または加算する必要があります。
減額の調整に用いる数値を「補正率」、加算の調整に用いる数値を「加算率」といいます。標準的な奥行の土地では奥行価格補正率が1.00となり、補正なしとなる場合もあります。
以下では、具体例を挙げながら減額の補正と加算の方法を解説します。
なお、各補正率表は、「国税庁ホームページ」から引用したものです。
減額の補正(奥行価格・奥行長大・間口狭小・がけ地など)
奥行価格補正
奥行価格補正とは、標準的な土地と比較して奥行が長い、もしくは短い場合かかる補正のことです。
奥行とは、その土地の道路からの垂線距離のことです。
奥行が長かったり短かったりすると使い勝手が悪いため、その分路線価が減額されて、相続税評価額を下げることができます。
奥行距離に応じた補正率をかけて相続税評価額を算出します。
奥行価格補正をかける相続税評価額
評価額=路線価×奥行価格補正率×地積
【奥行価格補正率表(平成30年分以降用)】

計算例

250千円(路線価)×0.97(奥行価格補正率)×400㎡(地積)=9,700万円(評価額)
奥行長大補正
奥行長大補正とは、奥行が間口の2倍以上ある場合にかかる補正のことです。
間口とは、その宅地の道路に接する部分のことです。
奥行が間口に比べて長すぎる場合、宅地の利用価値は低くなるため、その分路線価が減額されて相続税評価額を下げることができます。
奥行が間口の2倍以上ある場合は、補正率をかけて評価額を算出します。
奥行長大補正をかける相続税評価額
路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率×地積
【奥行長大補正率表】

計算例

400千円(路線価)×0.93(奥行価格補正率)×1.00(間口狭小補正率)×0.98(奥行長大補正率)×525㎡(地積)=1億9,139万4,000円(評価額)
間口狭小補正
間口狭小補正とは、間口が狭い場合にかかる補正のことです。
間口とは、その宅地の道路に接する部分のことです。
間口距離に応じた補正率をかけて評価額を算出します。
間口狭小補正をかける相続税評価額
評価額=路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×地積
【間口狭小補正率表(平成19年分以降用)】

計算例

200千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.97(間口狭小補正率)×90㎡(地積)=1,746万円
がけ地補正
がけ地補正とは、土地に通常の用途に使用できないがけ地が含まれる場合にかかる補正のことです。
がけ地とは上記画像のように、傾斜が急で、宅地としての利用などが困難な土地のことです。

そのため、通常の用途に使用できないがけ地が含まれる土地の相続税評価額は、その土地に含まれるがけ地の部分が、がけ地でないと仮定した場合の価額に、がけ地補正率をかけて算出します。
【がけ地補正率表】

がけ地補正をかける相続税評価額
路線価×奥行価格補正率×がけ地補正率×地積
計算例

総面積に対するがけ地部分の割合は、60㎡/(180㎡+60㎡)=0.25
200千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.92(がけ地割合0.25の場合の南向きのがけ地補正率)×240㎡(地積)=4,416万円(評価額)
利用価値が著しく低下している土地
以下のように、利用価値が著しく低下していると認められる土地は、そのマイナス状況が現在の路線価に反映されていない場合に限り、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額が、10%減額されます。
利用価値が低下していると認められる土地
- 道路より高い位置にある土地または低い位置にある土地で、その付近にある土地に比べて著しく高低差のあるもの
- 地盤に甚だしい凹凸のある土地
- 震動の甚だしい土地
- 1から3までの土地以外で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるもの)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められる土地
※土地の近くに、斎場、墓地、汚水処理施設等の施設がある場合など
(出典:国税庁タックスアンサー「No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価」)
この10%減額が実際に認められるかどうかは、個別の事情によって判断されます。
国税不服審判所の令和2年6月2日裁決では、鉄道の線路から10〜30メートルの範囲にある土地について、列車走行による騒音が日常的に発生していること、市町村が固定資産税評価でも鉄道騒音による減価補正を適用していることなどを理由に、土地全体について10%の減額が認められました。
判断の根拠となったのは、財産の価額に影響を及ぼすすべての事情を考慮するという財産評価基本通達1(3)の定めです。その事情が路線価にすでに反映されている場合は減額されない点にご注意ください。
不整形地
土地の形がいびつな場合、一定の補正率を適用して土地の評価額が減額されます。
不整形地の評価は特に複雑ですので、専門家への相談が重要です。
特別警戒区域補正
急傾斜地の崩壊等が発生した場合、建築物に損壊が生じることで住民の生命または身体に著しい危害が生ずるおそれがある区域である、土砂災害特別警戒区域に指定されている区域内の宅地が対象となります。
補正率は宅地の総面積のうち、特別警戒区域内の面積割合が大きいほど小さくなり、具体的な数値は以下の通りです。
| 特別警戒区域の地積÷総地積 | 補正率 |
|---|---|
| 0.10以上0.40未満 | 0.90 |
| 0.40以上0.70未満 | 0.80 |
| 0.70以上 | 0.70 |
※特別警戒区域内の地積が総地積の0.10未満である場合は、この補正の対象になりません。
土砂災害特別警戒区域に該当するかどうかについては、対象地の都道府県や市区町村のホームページで確認することができます。
この補正は、原則として路線価方式で評価する宅地に適用します。倍率地域にある宅地には、特別警戒区域による減価が固定資産税評価額に反映されていると考えられるため、原則として追加適用しません。
また、がけ地補正も適用される場合は、両方の補正率を乗じます。乗じた後の補正率の下限は0.50です。
都市計画道路の予定地になっている土地
将来的に道路になる計画が定められている区域内にある宅地は、建築に制限がかかるため、評価額を減額できます(財産評価基本通達24-7)。
補正率は、その宅地の地積のうち都市計画道路予定地となる部分の割合、地区区分、容積率の3つに応じて定められています。計画がいつ実行されるかが未定であっても、区域内にあれば適用の対象です。
自分の土地が都市計画道路の予定地に含まれているかどうかは、市区町村の都市計画課や、自治体が公開している都市計画図で確認できます。
地積規模の大きな宅地の評価
面積が広い土地は、そのままでは1区画として使いにくく、宅地として分譲する際に道路を通すなどの負担が生じます。そこで一定の要件を満たす宅地は、規模格差補正率をかけて評価額を減額できます(財産評価基本通達20-2)。
対象となるのは、次の面積以上の宅地です。
| 所在地 | 対象となる地積 |
|---|---|
| 三大都市圏 | 500㎡以上 |
| 三大都市圏以外の地域 | 1,000㎡以上 |
あわせて、路線価方式で評価する地域では、その宅地が「普通商業・併用住宅地区」または「普通住宅地区」にあることが必要です。地区の区分は路線価図で確認できます。
さらに、地積の要件を満たしていても、次の宅地は対象になりません。
- 市街化調整区域内にある宅地(一定の開発行為ができる区域内にあるものを除く)
- 工業専用地域内にある宅地
- 指定容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の地域にある宅地
- 大規模工場用地に該当する宅地
路線価方式で評価する場合は、これまで説明した各種の補正をかけたうえで、さらに規模格差補正率を乗じて計算します。
なお、地積規模の大きな宅地の評価は、倍率地域の宅地にも適用されます。倍率地域では、「固定資産税評価額×評価倍率」で求めた価額と、規模格差補正率などを反映して計算した価額のうち、いずれか低い方で評価します。
減額の幅が大きい補正のため、広い土地を相続した場合は適用できるかどうかを必ず確認しましょう。
加算の補正(側方路線影響加算・二方路線影響加算)
側方路線影響加算
正面と側方の2方向に道路が接している角地・準角地は、土地の相続税評価額が加算されます。
これを側方路線影響加算といいます。

角地とは、2本の道路が交わる交差点(十字路・T字路)の角に位置する土地のことです。
準角地とは、交差点の角地ほどではないものの、角地に準じた利便性(=角地に近い効用)がある土地をいいます。
たとえば、L字路・くの字路など道路が曲がる場所に位置し、2方向の道路に接している土地が準角地の代表例です。
角地や準角地は日当たりや風通し、出入りやすさに優れ、建物の設計自由度も高くなるという利点があるため、通常よりも相続税評価額が高くなります。
角地・準角地の場合、次の手順で相続税評価額が加算されます。
側方路線影響加算する場合の相続税評価額
- 正面路線がどちらになるか判断
「路線価×奥行価格補正率」で計算した価額が高い方の路線が「正面路線」、正面路線ではない方の路線を「側方路線」とする。 - 「正面路線価×奥行価格補正率」を算出
- 「側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率」を算出
- (②+③)×地積=相続税評価額
【側方路線影響加算率表(平成19年分以降用)】

計算例

- 正面路線がどちらになるか確認します。
400千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=40万円
350千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=35万円
したがって、路線価400千円の路線が正面路線になります。 - 「正面路線価×奥行価格補正率」を求めます。
400千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=40万円 - 「側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率」を求めます。
350千円(路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.03(側方路線影響加算率)=1万500円 - (②+③)×地積=評価額
(40万円+1万500円)×120㎡=4,926万円
二方路線影響加算
土地の正面と裏面に道路がある場合は、利用価値が高くなり、通常より相続税評価額が加算されます。
そのような土地は、次の計算式により評価額が加算されます。
二方路線影響加算する場合の相続税評価額
- 「正面路線価×奥行価格補正率」を算出
「正面路線」とは、路線価に奥行価格補正率を掛けた後の金額が高い方の路線のこと。 - 「裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率」を算出
「裏面路線」とは、路線価に奥行価格補正率を掛けた後の金額が低い方の路線のこと。 - (①+②)×地積=評価額
【二方路線影響加算率表(平成19年分以降用)】

計算例

- 「正面路線価×奥行価格補正率」を求めます。
300千円(正面路線価)×1.00(奥行価格補正率)=30万円 - 「裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率」を求めます。
250千円(裏面路線価)×1.00(奥行価格補正率)×0.02(二方路線影響加算率)=5千円 - (①+②)×地積=評価額
(30万円+5千円)×300㎡=9,150万円
土地の相続税評価額の出し方は用途によって変わる
同じ土地でも、その土地をどのように使っているか(利用状況)によって評価額が変わります。
基本的にはここまで解説してきた路線価方式・倍率方式での評価額がベースとなるものの、さらに計算を加えるようなケースもあるのです。
以下の場合に分けて確認していきましょう。
- 自用地
被相続人が自宅や事業用として使用していた土地など、他人の権利による利用の制約がない土地 - 貸宅地
他人に土地を貸し、その上に借主が建物を所有している土地 - 貸家建付地
自分が所有する土地に賃貸アパートや賃貸マンションなどを建て、第三者に貸している土地
自用地の評価額
自用地は、路線価方式・倍率方式で算出した価格がそのまま相続税評価額となります。
自用地の計算例
路線価20万円の道路に面した、地積300㎡の土地を例に計算します。分かりやすくするため、土地の形状などによる補正は行わず、補正率は1.0とします。

上図の道路に記載されている「200C」のうち、「200」が路線価を表しています。路線価は千円単位で表示されるため、「200」は1㎡当たり20万円という意味です。
「C」は借地権割合を示す記号です。今回は自用地の評価であり、借地権割合は使用しないため、計算には影響しません。
したがって、自用地の評価額は次のとおりです。
20万円(路線価)×300㎡(地積)=6,000万円(評価額)
貸宅地の評価額
貸宅地とは、他人の借地権などの対象となっている宅地です。ここでは、土地を他人に貸し、借り手がその土地に建物を所有している一般的なケースを説明します。
土地が定期借地権等を除く通常の借地権の目的となっている場合、所有者は土地を自由に利用できません。そのため、自用地としての価額から借地権の価額を差し引いて評価します。
貸宅地の相続税評価額
自用地としての価額×(1-借地権割合)
自用地としての価額は、その土地に適用される評価方式で計算します。路線価地域では路線価方式、倍率地域では倍率方式を用います。路線価方式では、路線価に奥行価格補正率などの補正・加算を反映し、地積を乗じて計算します。補正や加算がなければ、「路線価×地積」で求められます。
借地権割合は地域によって異なり、路線価図や評価倍率表で確認できます。路線価図では、路線価を示す数字の横にアルファベットで表示されています。

借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権割合を20%として計算します。
借地権割合の求め方について詳しく知りたい方は、関連記事『借地権割合とは?路線価図での調べ方と相続税評価への使い方』をご参照ください。
なお、ここで紹介した計算式は定期借地権等を除く通常の借地権が設定されている場合の原則的な評価方法です。定期借地権等や地上権などの対象となっている宅地は、異なる方法で評価します。
一時使用目的の借地権や使用貸借など、契約内容によっても評価方法が変わることがあります。個別の土地については、契約内容や権利関係を確認したうえで評価する必要があります。詳しくは、関連記事『貸宅地の相続税評価はいくら?計算方法と貸家建付地・借地権との違いも解説』をご覧ください。
貸宅地の計算例
路線価20万円の道路に面した地積300㎡の土地を、借地権を設定して他人に貸していた場合で計算します。

上図の「200C」のうち、「200」は1㎡当たり20万円の路線価、「C」は借地権割合70%を示しています。
貸宅地は、自用地としての価額から借地権の価額を差し引いて評価します。
この例では、自用地としての価額が6,000万円、借地権割合が70%なので、相続税評価額は次のとおりです。
6,000万円×(1-70%)=1,800万円
※自用地としての価額:20万円×300㎡=6,000万円
貸家建付地の評価額
貸家建付地とは、自分が所有する土地に建物を建て、その建物を第三者に貸している場合の敷地です。アパートや賃貸マンションの敷地などが該当します。
貸家の入居者には借家権があるため、土地の所有者はその土地を自由に利用できません。この制約を考慮し、自用地としての価額から一定額を差し引いて評価します。
貸家建付地の相続税評価額は、次の式で計算します。
貸家建付地の相続税評価額
自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は、現在30%です。
賃貸割合は、原則として課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積をもとに「賃貸割合=課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷各独立部分の床面積の合計」で求めます。
ただし、継続的に賃貸されてきた部分が課税時期に一時的に空室となっている場合は、一定の要件を満たせば賃貸中として扱えることがあります。
すべての独立部分を賃貸している場合、賃貸割合は100%です。
同じ自用地としての価額や借地権割合を前提とした場合、通常は貸宅地よりも貸家建付地のほうが減額幅は小さくなります。
関連記事
貸家建付地とは?相続税評価額の計算や小規模宅地等の特例との併用を解説
貸家建付地の計算例
路線価20万円の道路に面した地積300㎡の土地に、アパートを建てて他人に貸していた場合で計算します。

上図の「200C」のうち、「200」は1㎡当たり20万円の路線価、「C」は借地権割合70%を示しています。
貸家建付地は、自用地としての価額から、借地権割合・借家権割合・賃貸割合を掛け合わせた割合に相当する額を差し引いて評価します。
この例では、自用地としての価額が6,000万円、借地権割合が70%、借家権割合が30%、賃貸割合は満室のため100%なので、相続税評価額は次のとおりです。
6,000万円×(1-70%×30%×100%)=4,740万円
※自用地としての価額:20万円×300㎡=6,000万円
マンションが建っている土地の評価額
マンションを相続した場合、土地部分は敷地利用権として評価します。敷地利用権とは、マンションの専有部分を所有するために、その敷地を利用する権利です。
ここでは、敷地利用権が土地の所有権である一般的な分譲マンションを前提に説明します。
土地部分の評価額は、まずマンションの敷地全体を自用地として評価し、その価額に敷地権割合を乗じて求めます。
マンションの土地部分(敷地利用権)の評価額
マンション敷地全体の自用地としての価額×敷地権割合×区分所有補正率
マンション敷地全体の自用地としての価額は、路線価地域では路線価方式、倍率地域では倍率方式で計算します。
敷地面積と敷地権割合は、登記事項証明書などで確認できます。敷地権割合は、マンション全体の敷地に対して、その部屋に対応する敷地権が占める割合です。
なお、敷地利用権が借地権や定期借地権であるマンションは、土地の所有権を持つマンションとは評価方法が異なります。
居住用の分譲マンションについては、2024年1月1日以後の相続等から、一定の場合に区分所有補正率による補正が行われます。この補正により、従来の評価方法より評価額が高くなる場合があります。
マンション全体の相続税評価額は、敷地利用権(土地部分)と区分所有権(建物部分)の評価額を合計して求めます。建物部分にも、一定の場合は区分所有補正率による補正が行われます。建物部分の評価方法やマンション全体の計算については、関連記事『マンションの相続税はいくら?評価額の計算方法と新ルールを解説』をご参照ください。
小規模宅地等の特例で評価額を最大80%減額できる
ここまでの手順で土地の評価額が算出できたら、最後に小規模宅地等の特例が使えるかどうかを確認しましょう。この特例は評価額そのものを計算し直すものではなく、算出した評価額から一定割合を減額する制度です。
減額できる割合と面積の上限は、その土地の使われ方によって4つの区分に分かれています。最大80%の減額が受けられるのは自宅や事業用の敷地などで、それぞれ限度面積が定められています。
各土地における、小規模宅地等の特例の限度面積・減額割合は以下のとおりです。
| 土地の種類 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
- 特定居住用宅地等:被相続人(または生計を一にする親族)の自宅などとして使用
- 特定事業用宅地等:被相続人が個人事業で使用
- 特定同族会社事業用宅地等:被相続人などが同族会社に貸し付け、その会社が事業用として使用
- 貸付事業用宅地等:被相続人が貸地や貸家など貸し付け用として使用
たとえば、相続税評価額4,000万円の自宅の敷地(330㎡以内)に特例を適用すると、評価額が800万円まで下がります。
4,000万円 ×(1 - 80%)= 800万円
注意したいのは、この特例を適用するには相続税の申告書を提出する必要がある点です。特例を使った結果、納める相続税が0円になる場合でも、申告書の提出は欠かせません。申告しなければ特例そのものが適用されず、減額を受けられません。
ただし、特例の適用には「誰が相続するか」「相続後も住み続けるか」など細かい要件があります。
特に相続開始前3年以内に新たに貸付を開始した土地は、原則として貸付事業用宅地等の特例の対象外です。ただし、被相続人等が相続開始前から3年を超えて一定の貸付事業を継続していた場合には、例外的に対象となることがあります。
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土地の評価でよくある3つの失敗
土地の相続税評価は、財産の種類のなかでも特に判断を誤りやすい分野です。ここまで解説してきた内容のうち、実際の申告で見落とされやすい3つのポイントを整理します。
評価単位の区分を誤る
登記簿上の1筆を、そのまま1つの評価単位として計算してしまうケースです。
土地は原則として地目ごとに区分したうえで、それぞれの地目に定められた評価単位で評価します。たとえば、自用地と貸宅地のように利用状況や権利関係が異なる宅地は、別々に評価することがあります。
一方、地目が異なっていても、一団の土地が一体として利用されている場合は、主となる地目の土地としてまとめて評価します。
たとえば、自宅の敷地に隣接する土地を、自宅敷地とは独立した貸駐車場として利用している場合、自宅部分は宅地、駐車場部分は雑種地として別々に評価することがあります。反対に、自宅の庭続きの畑を自宅と一体で利用している場合は、地目が異なっていてもまとめて評価することがあります。
評価単位を誤ると、その後の計算にも影響します。評価額が本来より高くなる場合もあれば、低くなる場合もあります。
評価額が高すぎれば相続税を納めすぎる可能性があり、低すぎれば申告漏れを指摘されることがあります。計算に入る前に、評価単位を確認しましょう。
適用できる補正を見落とす
奥行が長い、間口が狭い、がけ地を含むといった土地では、その形状などに応じた補正を適用できる場合があります。騒音や高低差などによって周辺の宅地より利用価値が著しく低下している土地も、一定の場合は減額の対象です。
土地の状況が補正の要件に該当するかを確認せずに申告すると、本来より高い評価額で計算してしまう可能性があります。
たとえば、路線価20万円・地積400㎡の土地では、補正をしない場合の評価額は8,000万円です。奥行価格補正率0.97を適用すると7,760万円となり、評価額に240万円の差が生じます。
複数の補正を適用できる土地や、地積規模の大きな宅地、都市計画道路予定地などでは、評価額の差がさらに大きくなることもあります。
小規模宅地等の特例の要件を満たさない
小規模宅地等の特例は、一定の宅地について相続税評価額を最大80%減額できる制度です。ただし、宅地の用途や取得者などに応じて適用要件が定められています。
たとえば自宅の敷地では、誰が取得するか、相続後も居住や保有を続ける必要があるかなどによって、特例を適用できるかが変わります。
減額割合が大きいため、適用の可否によって評価額に大きな差が生じます。たとえば、評価額4,000万円の自宅敷地の全体に80%の減額を適用できる場合、相続税の計算上の価額は800万円になります。適用できない場合は4,000万円となり、その差は3,200万円です。
また、小規模宅地等の特例の適用によって相続税額が0円になる場合でも、特例を受けるには相続税の申告が必要です。適用要件だけでなく、申告手続きも忘れずに確認しましょう。
土地の相続税評価額についてよくある質問
Q. 土地の相続税評価額は自分で計算できる?
路線価に地積を掛けるだけで求められる土地であれば、ご自身でも算出できます。
ただし、奥行や間口による補正、貸宅地・貸家建付地の判定が必要な土地は、財産評価基本通達に基づく個別の判断が必要になります。
Q. 土地が複数筆あるときの相続税評価額はどう計算する?
登記簿上の筆ごとではなく、まず地目を確認し、それぞれの地目に定められた評価単位で計算します。
地目が異なっていても、一団の土地が一体として利用されている場合は、主となる地目の土地としてまとめて評価することがあります(財産評価基本通達7、7-2)。
Q. 固定資産税評価額をそのまま相続税評価額として使える?
使えません。倍率地域の土地は固定資産税評価額に評価倍率を掛けて算出し、路線価地域の土地は路線価をもとに計算します。
固定資産税評価額は固定資産税の計算に用いるもので、相続税の計算にそのまま使うことはありません。
Q. 土地の評価額が出た後、相続税額はどう計算する?
土地以外の財産も含めた課税価格の合計額から基礎控除額を差し引き、残りの金額をもとに相続税の総額を計算します。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(相続税法15条)。
土地の相続税評価を自分で行う判断の目安
土地の相続税評価額は、基本的な手順を理解すれば概算を把握できます。ただし、土地の条件によって難易度は大きく変わります。
自分でも計算しやすいケース
次のような土地は、この記事で解説した手順で概算を算出できます。
- 路線価地域にある、四角に近い形状の土地
- 一方だけが道路に接している土地
- 被相続人が自宅として使っていた土地(自用地)
- 相続した土地が1か所だけの場合
補正が必要ない整形地であれば、路線価に地積を掛けるだけで評価額を求められます。
税理士への依頼を検討したいケース
次のような土地は、判断を誤ると評価額が大きくずれる可能性があります。
- 形がいびつな土地や、間口が狭く奥行が長い土地
- 角地や、正面と裏面が道路に接している土地
- がけ地や高低差を含む土地
- 複数の土地を相続した場合や、1つの土地を複数の用途で使っている場合
- 他人に貸している土地、アパートなどを建てて貸している土地
- 小規模宅地等の特例を適用する場合
特に、複数の補正が重なる土地や、評価単位の判断が必要な土地は、専門的な知識がないと適切な評価が難しくなります。
土地を含む相続では、土地の評価額が相続税額に大きく影響することがあります。まずは概算を把握し、評価方法や特例の適用に迷う場合は、相続税に詳しい税理士への相談を検討しましょう。
アトム相続税理士事務所では、相続税申告の初回相談を無料で承っています。土地の住所が分かれば、路線価をもとにした概算の評価額をご案内することも可能です。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
