マンションの相続税はいくら?評価額の計算方法・新ルール・節税対策を解説

マンションの相続する場合の相続税の金額を計算する際は、マンションの財産評価額がいくらになるかどうかが重要となります。
2024年(令和6年)からはマンション相続税の新ルールの導入によって評価額が大きく上がるケースが増えていることから、注意が必要です。
「うちは大丈夫」と思っていても、思わぬ相続税の負担に驚くかもしれません。
本記事では、マンション相続税の基礎知識から、新ルールである「区分所有補正」の仕組み、そして2026年(令和8年)以降に検討されている最新の規制まで、分かりやすく解説します。
目次
マンションの相続税はいくら?
財産の評価額が基礎控除額以上なら課税対象
相続税は、亡くなった人(被相続人)の全財産の評価額から、税金がかからない枠(基礎控除額)を差し引いたても、0円以下とならない場合に課税されます。
基礎控除額の計算方法は、以下の通りです。
基礎控除額の計算方法
基礎控除額 = 3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )
計算例:相続人が配偶者と子2人(計3人)の場合
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
相続財産の評価額合計が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず申告も不要です。
ただし、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などの特例を適用した結果として基礎控除以下になる場合は、相続税が0円でも申告書の提出が必要です。
基礎控除の計算方法を詳しく知りたい方は『相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説』の記事をご覧ください。
以下において、マンションの評価額を計算する方法について解説を行います。
マンションの評価額を計算する方法|2024年からの新ルール
マンションの評価額は、土地部分(敷地利用権)の評価額と、家屋部分(区分所有権の)評価額の合計額となります。
マンションの相続税評価額 = 敷地利用権の価額+ 区分所有権の価額
※2024年1月以降の相続では「区分所有補正率」を乗じます(後述)。
| 部分 | 評価方法 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 土地(敷地利用権) | 路線価 × 敷地面積 × 敷地権割合 × 区分所有補正率 | 路線価図(国税庁)、登記簿 |
| 建物(区分所有権) | 固定資産税評価額 × 区分所有補正率 | 固定資産税納税通知書 |
2024年1月以降に発生した相続について、評価額の計算方法が変更されている点に注意が必要です。
新ルールでマンションの評価額がどう変わったのか?
新しいルールでは、区分所有補正率というものを利用し、評価額と市場価額との乖離を修正する仕組みになっています。
新ルールである区分所有補正は、評価乖離率と評価水準という指標を用いて計算します。
簡易的なものとなりますが、以下のような区分所有補正率による修正がなされています。
- 評価水準が1を超える場合:区分所有補正率 = 評価乖離率
- 評価水準が0.6以上1以下の場合:(補正なし)
- 評価水準が0.6未満の場合:区分所有補正率 = 評価乖離率×0.6
国税庁は計算用のExcelシートを公開しています。
この計算明細書に、マンションの築年数、総階数、所在階、建物の専有部分の面積、敷地の面積、持分割合(敷地権割合)を入力すると、具体的な区分所有補正率を知ることが可能です。
なぜ評価額の目安が60%なのか
国税庁の調査によると、戸建て住宅の相続税評価額は市場価格の約60%(乖離率1.66倍)であるのに対し、マンションは約43%(乖離率2.34倍)と大きな差がありました。
この不公平を是正するため、マンションも戸建てと同等の水準に引き上げられるようにしたのです。
マンションの土地の相続税評価額
マンションの土地部分の評価額の計算方法は、以下の通りです。
土地部分の評価額の計算方法
マンションの敷地全体の評価額×敷地権の割合×区分所有補正率
マンションの土地評価額を決定する際は、まず敷地全体の価格を求めてから、敷地権の割合と区分所有補正率を乗じることで算出されます。
敷地全体の評価額は、市街地の道路に面した土地の路線価をもとに計算されるのが一般的です(路線価方式)。
マンションが郊外にあるため、路線価が定められていない土地については、固定資産税評価額を用いる倍率方式で算出してください。
敷地権の割合については、マンションの売買契約書や登記事項証明書の「敷地権の割合」という記載から、確認することができます。
路線価方式で計算する方法については『路線価から土地の相続税評価額を計算|補正のかけ方・路線価の調べ方』の記事で詳しく知ることが可能です。
マンションの建物の相続税評価額
マンションの建物の相続税評価額の計算方法は、以下の通りです。
建物部分の評価額の計算方法
固定資産税評価額×区分所有補正率
居住用マンションについては、固定資産税評価額に区分所有補正率を適用して相続税評価額を算出します。
固定資産評価額は、市町村から毎年送られてくる「固定資産税の課税明細書」の記載から確認可能です。
マンション相続税の具体例(シミュレーション)
新ルールによる評価額の具体的な影響例
時価1億円、旧ルールでは評価額が3,000万円だったが、新ルールでは評価額が6,000万円となったタワーマンションの場合
| 項目 | 旧ルール | 新ルール |
|---|---|---|
| 時価 | 1億円 | 1億円 |
| 相続税評価額 | 3,000万円 | 6,000万円以上 |
この結果、相続財産の総額が基礎控除を上回り、納税額が数百万円単位で増える可能性があります。
相続税額はいくら変わる?|具体的な計算例
時価1億円のタワーマンションを、配偶者と子1人で相続するケースで試算します。(マンション以外の財産:預貯金3,000万円、その他なし)
| 項目 | 旧ルール | 新ルール |
|---|---|---|
| マンション評価額 | 3,000万円 | 6,000万円 |
| その他財産 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 遺産総額 | 6,000万円 | 9,000万円 |
| 基礎控除(2人) | 4,200万円 | 4,200万円 |
| 課税遺産総額 | 1,800万円 | 4,800万円 |
| 相続税総額(税率適用後) | 約180万円 | 約620万円 |
※配偶者控除・小規模宅地等の特例を適用しない場合の概算。実際の税額は個別の状況により異なります。
上記の例だと、新ルール適用により、相続税が約440万円増加しています。ただし、これは特例を一切使わない場合の試算です。
実際には以下の特例を組み合わせることで、税額を大幅に軽減できる可能性があります。
- 小規模宅地等の特例
土地部分の評価額を最大80%減額 - 配偶者の税額軽減
配偶者の取得分は1.6億円まで非課税
特例の適用可否や最適な遺産分割については、早めに専門家へ相談しましょう。
マンション相続税を減額するための制度
制度①|小規模宅地等の特例(最大80%減)
一定の要件を満たしている場合に、亡くなった人が住んでいたマンションの「土地(敷地利用権)」部分については、330㎡までの面積が80%減額される特例です。
適用できる主な人と条件
| 相続人 | 主な条件 |
|---|---|
| 配偶者 | 無条件で適用可能 |
| 同居していた親族 | 申告期限まで居住・保有を継続 |
| 家なき子(別居家族) | 3年以上持ち家なし 被相続人に配偶者・同居親族がいない等 |
小規模宅地等の特例の適用要件については『小規模宅地等の特例の要件をわかりやすく解説。計算方法や注意点もわかる』で詳しく知ることが可能です。
マンション特有の計算方法
マンションの場合、土地の評価額は「マンション全体の敷地面積 × 敷地権割合×区分所有補正率」で計算されます。例えば、マンション全体の敷地が1,000㎡、敷地権割合が1%、区分所有補正率は0の場合、評価対象となる土地は10㎡です。
計算例
- 敷地全体の路線価評価額:5億円
- 敷地権割合:1%(1/100)
- 土地評価額:5億円 × 1% = 500万円
- 特例適用後:500万円 × 20% = 100万円(80%減額)
特例の利用のためには申告が必要
この特例を適用するには、相続税が0円でも申告書の提出が必須です。また、申告期限(10ヶ月)までに遺産分割が完了している必要があります。
申告期限までに分割できない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、後から適用可能です。
制度②|配偶者控除(最大1.6億円)
配偶者控除を使えば、配偶者が相続する財産のうち、以下のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
配偶者控除の適用要件は、以下の通りです。
- 戸籍上の配偶者であること
- 遺産の隠蔽がないこと
- 遺産分割が確定していること
- 期限内に相続税の申告をしていること
具体例(1)
遺産総額2億円、相続人が配偶者と子1人の場合
- 配偶者の法定相続分:2億円 × 1/2 = 1億円
1億6,000万円 > 1億円 なので、1億6,000万円まで非課税
具体例(2)
遺産総額5億円、相続人が配偶者と子1人の場合
- 配偶者の法定相続分:5億円 × 1/2 = 2.5億円
2.5億円 > 1億6,000万円 なので、2.5億円まで非課税
配偶者控除については二次相続まで検討が必要
配偶者控除を利用して今回の相続(一次相続)に関する税金をゼロにすることだけを考えると、家族全体のトータル納税額が増える可能性があります。
一次相続: 父が亡くなり、母が全ての財産(マンション含む)を無税で受け取る。
二次相続: その後、母が亡くなり、子供がマンションを受け取る。
上記の二次相続の際、母がもともと持っていた財産に、父から受け取ったマンションが合算されるため、子供が支払う税率が一段階高くなってしまうリスクがあります。
また、二次相続では配偶者の税額軽減も使えません。
控除のためには申告書は必ず提出する
配偶者控除を適用するには、小規模宅地等の特例と同様に相続税が0円でも申告書の提出が必須です。
配偶者控除の適用要件や計算方法については『相続税の配偶者控除とは?適用の要件は?計算方法を具体例付きで解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
マンションを相続する際の流れ
マンションを相続する際の手続きの流れ
マンションを相続する際には、以下のような流れで手続きを行う必要があります。
- 遺言書の確認
- 相続財産の調査・評価
- 遺産分割協議
- 相続登記
- 相続税の申告・納付
遺言書の確認
被相続人(亡くなった方)が遺言書を残しているかどうかを確認します。
遺品のほか、公証役場や法務局が預かっていないかどうかについても確認しましょう。
相続財産の調査・評価
相続人と相続財産を調べて確定します。
相続人は、子供がいてもおかしくない年齢から死亡までの戸籍謄本の記録から確認しましょう。
相続財産は預貯金・有価証券・不動産などに関する資料を調べる必要があります。
遺産分割協議
遺言書がない場合は、マンションを含めた遺産の分け方を、相続人全員で話し合います。
原則として相続人全員の同意が必要であり、同意内容は遺産分割協議書にまとめましょう。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用します。
マンションの分割方法は、以下のようなものがあります。
- 現物(共有)分割:相続人同士の共有とする
- 換価分割:マンションを売却して現金化して分割する
- 代償分割:相続人の1人が相続して他の相続人に現金を支払う
相続登記
遺産分割の内容に従って、マンションなど不動産を相続した人に、名義変更するための相続登記の申請を行います。
2024年4月1日以降に生じた相続については、不動産の相続を知った日から3年以内の相続登記が義務化されているので、速やかな登記が必要です。
登記申請を行う際には、登録免許税が生じます。
相続税の申告・納付
税務署に対して相続税の申告を行い、その内容に従って相続税を納付します。
相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告・納付が必要です。
納付書の入手方法や書き方については『【相続税の納付書の書き方がわかる】見本付きで簡単に作成できる!』の記事をご覧ください。
マンションの相続税が支払えない場合の対処法
相続税の支払いに充てる現金が足りないときは、延納や物納の申請、または不動産の売却によって納税を完了させることが可能です。
延納とは分割払いを認める制度になります。
預貯金および将来の収入状況に関する詳細な確認が条件です。
また、利子税が課されるため、支払う金額が高くなります。
物納とは不動産をそのまま納めることで、相続税の支払いを行うという方法です。
現金納付が困難な場合に利用が可能であり、納められるのは相続した財産に限定されます。
これら二つの制度はあくまで緊急的な救済措置であるため、適用の審査は非常に厳しく、必ずしも希望が通るわけではないことを理解しておかなければなりません。
そのため、住み続ける予定がないのであれば、マンションを早期に売却して現金化する方法が、手続きの確実性と速やかさの観点から最も推奨される場合があります。
売却の際は、譲渡所得税など他の税金が発生する点に注意が必要です。
延納や物納の詳しい利用条件や手続きについては『相続税の延納・物納|利用条件や利子税、担保、申請手続きを解説』の記事をご覧ください。
【2027年~】貸付用不動産の5年ルール
2026年度税制改正により、賃貸アパートや投資用マンションなどの貸付用不動産の相続について、新たな規制が導入される予定です(2027年1月1日以降適用)。
| 対象となる不動産 | 対象外の不動産 |
|---|---|
| 賃貸アパート(一棟) | 自己居住用マンション |
| 投資用マンション(区分・一棟) | 自己居住用戸建て |
| 賃貸オフィスビル | 事業用不動産(自社使用) |
| 不動産小口化商品 | 相続・贈与で取得した不動産 |
5年ルールの概要|評価額の計算方法について
被相続人が相続開始前5年以内に購入した貸付用不動産については、従来の路線価・固定資産税評価額ではなく、以下の方法で評価される予定です。
新評価額 = 取得価額 × 地価変動率 × 0.8(80%)
つまり、購入価格の約80%が相続税評価額となり、従来のような評価額の圧縮はできなくなります。
5年ルールの適用時期と経過措置
5年ルールが適用開始が開始されるのは、2027年(令和9年)1月1日以降の相続・贈与です。
ただし、以下の両方を満たす場合は、従来の評価方法(固定資産税評価額)が適用される予定です。
- 通達改正日の5年前から所有している土地の上に建築
- 通達改正日までに新築(または建築中)であること
※通達改正日は現時点で未定です(2026年中に国税庁から発表予定)
自宅マンションはどうなる?
この規制は亡くなる直前に賃貸物件を購入して相続税を圧縮するという節税スキームを封じるためのものです。
ご自身がお住まいのマンションを相続する場合は、2024年に導入された新ルールが適用されます。
一方で、以下のケースでは注意が必要です。
- 自宅を賃貸に出している場合 → 貸付用不動産に該当する可能性
- 親が投資用マンションを所有している場合 → 5年ルールの対象
- 相続対策として収益物件の購入を検討している場合 → 5年以上の長期保有が前提に
今後、収益物件を活用した相続対策を行う場合は、5年以上の長期保有を前提とした計画を立てることが重要です。直前対策ではなく早期対策が鍵となります。
マンションの相続税がいくらかは税理士に相談
マンションの相続税を計算する方法は簡単ではないため、相続税額を知りたい場合には、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
税理士に相談すれば、具体的な税額だけでなく、相続税額を減額する方法を知ることが可能となり、相続人の負担を軽減することができるでしょう。
相続により生じる負担を少しでも減らすために、一度税理士への相談を行いましょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士