贈与税の税務調査とは?申告漏れがバレる理由からペナルティまで解説

「贈与税を申告していないけれど、税務調査が来る可能性はある?」「何年も税務署から連絡がなければ、もう大丈夫?」と不安に感じている方もいるでしょう。
税務署は、銀行口座の入出金や不動産の登記など、さまざまな情報から申告されていない贈与を把握することがあります。
この記事では、贈与税の税務調査が行われるきっかけや調べられる内容、税務署から「お尋ね」が届いた場合の対応、申告漏れが判明した場合のペナルティについて解説します。
贈与税の無申告や税務調査に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
贈与税の税務調査がくる確率は?
贈与税の税務調査がくる確率として公表されている統計はありませんが、たとえば令和5年度・6年度はともに、約2,800件の実地調査が行われています。
実地調査とは、税務署の職員が納税者の自宅や事務所などを訪問し、申告内容や財産の状況を確認する税務調査です。
| 令和5事務年度 | 令和6事務年度 | |
|---|---|---|
| 実地調査件数 | 2,847件 | 2,778件 |
| 申告漏れ等の非違件数 | 2,630件 | 2,582件 |
また、実地調査によって判明した申告漏れなどの非違件数はともに約2,600件で、90%を超えています。
贈与税の無申告はなぜバレる?税務調査のきっかけ
贈与税を申告していなくても、税務署が把握しているさまざまな情報から贈与の事実が発覚することがあります。
特に、銀行口座の入出金や不動産の登記、法定調書、相続税の税務調査などは、申告していない贈与が税務署に把握される主なきっかけです。
「申告しなければわからない」「現金で渡せばバレない」とは限らないため、どのような経路から贈与が把握されるのか確認しておきましょう。
銀行口座のお金の動きからバレる
税務署は、税務調査などの必要がある場合、金融機関に照会して預貯金口座の入出金履歴を確認できます。
たとえば、親の口座から多額の現金が引き出され、その後、子どもの口座にまとまった入金があれば、そのお金が贈与されたものではないかと確認される可能性があります。
また、現金を手渡しした場合でも、贈与するために銀行口座から多額の現金を引き出していれば履歴は残ります。現金手渡しだからといって、贈与の事実を税務署に把握されないとは限りません。
不動産の購入・登記からバレる
住宅などの不動産を購入したことが、贈与税の申告漏れを把握されるきっかけになることもあります。
不動産を購入すると登記が行われるため、税務署は不動産を取得した事実を把握できます。その際、購入者の収入や預貯金などに対して購入金額が大きい場合には、「購入資金をどのように用意したのか」を確認されることがあります。
たとえば、子どもが住宅を購入する際に親から資金援助を受け、その贈与について必要な申告をしていなければ、資金の出所を確認する過程で申告漏れが発覚する可能性があります。
実際に、不動産を取得した人に対して税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」などが届き、購入資金の調達方法について回答を求められることもあります。
【補足】
住宅資金の贈与は、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」によって非課税になることがあります。
ただし、この非課税措置を適用する場合は、たとえ贈与税がかからなくても申告が必要です。
法定調書など税務署が収集した情報からバレる
税務署には、金融機関や保険会社、事業者などからさまざまな情報が集まります。その一つが「法定調書」です。
税務署には、給与や一定の報酬、保険金、不動産等の譲受け、金地金等の譲渡対価などについて、法令で定められた支払者から、一定の要件を満たす場合に「法定調書」が提出されます。
税務署は、こうした法定調書などの情報も申告内容の確認や税務調査に活用しています。
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相続税の税務調査で過去の贈与がバレる
親などが亡くなった後に行われる相続税の税務調査をきっかけに、生前の贈与が発覚することもあります。
税務署は、相続税の調査の際に亡くなった方の銀行口座の動きを確認しています。そのため、生前に親族に対して金銭を贈与していないかも併せて確認することができるのです。
例えば、子供が自宅を購入する際に両親からの資金援助があったような場合、一般的には子供宛に振り込みでお金を渡していることが多く、銀行口座の調査をきっかけに資金援助の事実が確認され、贈与税の申告が必要だったと判断される可能性があります。
確認された内容によっては、贈与税の期限後申告や、相続税の修正申告などが必要になることがあります。
贈与税の「お尋ね」は税務調査とは別
お尋ねが届いても税務調査が来るとは限らない
税務署から「お尋ね」という書面が届くことがありますが、お尋ねは税務調査とは別のものです。
お尋ねは、税務署が申告内容の確認や申告が必要かどうかの判断などに必要な情報を収集するために送付するものです。お尋ねが届いたからといって、贈与税の申告漏れを疑われている、あるいは今後必ず税務調査が行われるというわけではありません。
贈与税との関係では、不動産を購入したときや、相続が発生したときなどにお尋ねが届くことがあります。
ただし、お尋ねへの回答などから贈与税の申告漏れが判明することもあります。書面が届いた場合は内容を確認し、事実に基づいて回答することが大切です。
不動産購入後のお尋ねでは資金の出所を確認される
不動産を購入すると、「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」などの書面が税務署から届くことがあります。
このお尋ねでは、不動産の購入価額だけでなく、購入資金をどのように用意したのかについても確認されます。
たとえば、自己資金や住宅ローンの金額、親族から受けた資金援助などを回答することになります。親から住宅購入資金の援助を受けている場合などには、その内容から贈与税の申告が必要かどうかを確認されることがあります。
また、不動産そのものを贈与によって取得した場合にも、贈与税の課税対象となる可能性があります。
相続についてのお尋ねでは生前贈与も確認される
人が亡くなると、相続人に対して税務署から「相続についてのお尋ね」などの書面が届くことがあります。
相続についてのお尋ねは、亡くなった方の財産や債務などを記載し、相続税の申告が必要かどうかを確認するためのものです。
確認事項には、亡くなった方から相続人などへの生前贈与に関する項目が含まれることもあります。そのため、お尋ねへの回答をきっかけに、過去の贈与について確認を求められる可能性があります。
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申告漏れに気づいたら早めに期限後申告する
税務署からのお尋ねを確認している途中で、「過去に受けた贈与について申告が必要だったのではないか」と気づくこともあるでしょう。
暦年課税による贈与税は、原則として1年間に受けた贈与の合計額が基礎控除額の110万円を超える場合に申告が必要です。ただし、贈与税がかからない特例を利用する場合など、別途申告が必要となるケースもあります。
贈与税の申告期限は、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日です。まだ申告期限前であれば、期限までに申告しましょう。
すでに申告期限を過ぎている場合でも、そのまま放置せず、できるだけ早く期限後申告をすることが重要です。申告・納付が遅れると、無申告加算税や延滞税などが課される可能性があります。
お尋ねへの回答方法や過去の贈与について申告が必要か判断できない場合は、税理士への相談も検討しましょう。
贈与税の税務調査では何を調べられる?
贈与した人・もらった人の銀行口座
贈与税の税務調査では、贈与した人と贈与を受けた人の銀行口座について、入出金の状況を確認されることがあります。
たとえば、親の口座から多額の出金があり、同じ時期に子どもの口座へ入金されていれば、そのお金が贈与されたものではないか確認される可能性があります。
また、多額の現金を引き出している場合には、その使い道について説明を求められることもあります。
贈与契約書や贈与税の申告内容
贈与契約書を作成している場合は、その内容と実際のお金や財産の動きが一致しているか確認されることがあります。
すでに贈与税を申告している場合には、申告書に記載した贈与財産の種類や金額、適用した特例などが正しいかも調査の対象です。
贈与契約書があるだけで贈与の事実が認められるとは限らず、契約内容どおりに財産が移転しているかも重要になります。
不動産などを購入した資金の出所
住宅など高額な財産を購入している場合、その購入資金をどのように用意したのか確認されることがあります。
購入した人自身の収入や預貯金だけでは資金を用意することが難しいと考えられる場合、親族から資金援助を受けていないかなどが確認されます。
親から住宅購入資金を受け取っていたにもかかわらず、必要な贈与税の申告をしていなければ、税務調査で申告漏れを指摘される可能性があります。
財産を実際に誰が管理していたか
形式上は贈与したことになっていても、贈与を受けた人が実際に財産を管理・使用していなければ、贈与が成立していたのか確認されることがあります。
たとえば、親が子ども名義の預金口座にお金を入れていても、通帳や印鑑を親が管理し、子ども自身が預金の存在を知らなかったようなケースです。
こうした「名義預金」と判断されると、そのお金は子どもに贈与されたものではなく、親の財産として扱われる可能性があります。
この場合、贈与自体が成立していないと判断されるため、贈与税ではなく、親の財産として相続税の課税対象になります。
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お尋ねや税務調査で申告漏れ、過少申告が判明した場合のペナルティ
税務署からのお尋ねに回答した結果、贈与税の申告漏れが判明した場合や、相続税などの税務調査で贈与税の過少申告が判明した場合に、どのようなペナルティがあるのか解説いたします。
無申告加算税
贈与税の申告期限である翌年3月15日までに申告をしなかった場合、以下の税率で無申告加算税が課されます。
- 税務調査の事前通知前に自主的に申告した場合:5%
- 税務調査の事前通知後、税務調査で指摘を受ける前に申告した場合
- 納付すべき贈与税額のうち50万円以下の部分:10%
- 50万円を超える部分:15%
- 300万円を超える部分:25%(2024年1月1日以後に法定申告期限が到来する贈与税から)
- 税務調査で指摘を受けて申告した場合
- 納付すべき贈与税額のうち50万円以下の部分:15%
- 50万円を超える部分:20%
- 300万円を超える部分:30%(2024年1月1日以後に法定申告期限が到来する贈与税から)
贈与税の無申告加算税について詳しくは、関連記事『贈与税申告を忘れると無申告加算税の対象|ほかの加算税もあわせて解説』をお読みください。
過少申告加算税
過少申告加算税の税率は、修正申告をするタイミングなどによって異なり、原則として5%~15%です。
ただし、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は原則として課されません。
重加算税
贈与財産を意図的に隠すなど、課税の基礎となる事実を隠蔽・仮装して過少申告や無申告をした場合には、重加算税の対象となることがあります。
この重加算税は、先の無申告加算税や過少申告加算税に代えて課されます。
隠蔽・仮装を伴う過少申告の場合、原則として追加で納税することになる贈与税額の35%が加算されます。
また、隠蔽・仮装を伴う無申告の場合、原則として本来の贈与税額の40%が加算されます。
このように、財産を隠すなどして申告をしなかった場合や、実際より少なく申告した場合のペナルティは非常に厳しいものとなっています。
延滞税
贈与税の申告漏れや過少申告があった場合、延滞税も発生します。
令和3年から令和8年の延滞税の税率は、以下のとおりです。
| 期間 | 納期限の翌日から2か月以内 | 納期限の翌日から2か月経過 |
|---|---|---|
| 令和8年1月1日~令和8年12月31日 | 年2.8% | 年9.1% |
| 令和7年1月1日~令和7年12月31日 | 年2.4% | 年8.7% |
| 令和6年1月1日~令和6年12月31日 | 年2.4% | 年8.7% |
| 令和5年1月1日~令和5年12月31日 | 年2.4% | 年8.7% |
| 令和4年1月1日~令和4年12月31日 | 年2.4% | 年8.7% |
| 令和3年1月1日~令和3年12月31日 | 年2.5% | 年8.8% |
| (参考)原則の税率 | 年7.3% | 年14.6% |
参考:国税庁「延滞税の割合」
納期限は贈与税の納付期限とは別で、ケースにより異なります。詳しくは関連記事『贈与税の延滞税の計算方法を解説|ケース別の計算例つきでよくわかる』にてご確認ください。
贈与税の税務調査についてよくある質問
贈与税の税務調査は何年後まで来る可能性がある?
贈与税は、原則として法定申告期限から6年を経過すると課税できなくなります。ただし、偽りその他不正の行為によって贈与税を免れた場合などは、7年まで延長されます。
そのため、贈与から数年経って税務署から何も連絡がなくても、申告漏れを指摘される可能性はあります。
なお、相続税の税務調査で過去の贈与が判明することもあり、生前贈与加算の対象となる場合などは相続税に影響する可能性があります。
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現金手渡しの贈与なら税務署にバレない?
現金を手渡ししたからといって、税務署にバレないとは限りません。
贈与のために銀行口座からまとまった現金を引き出していれば、その履歴は残ります。また、贈与を受けた人が不動産などの高額な財産を購入すれば、購入資金の出所から贈与が判明する可能性もあります。
現金手渡しによる贈与について詳しくは、関連記事『現金手渡しに贈与税はかかる?課税される条件や未申告のペナルティ』をご覧ください。
贈与税の税務調査はいきなり家に来る?
贈与税の税務調査で、税務署の職員がいきなり自宅に来るケースは一般的ではありません。
通常の税務調査では、原則として事前に調査を行う旨や日時、場所などの通知があり、日程を調整したうえで実施されます。
ただし、事前に通知すると正確な事実を把握できないおそれがある場合などには、事前通知なしで税務調査が行われることもあります。
贈与税について不安があるなら税理士へ
贈与税を申告していなくても、銀行口座の入出金や不動産の登記、法定調書などから贈与の事実を税務署に把握される可能性があります。また、贈与した人が亡くなった後、相続税の税務調査をきっかけに過去の贈与が確認されることもあります。
税務署から連絡が来ていないからといって、申告漏れが発覚しないとは限りません。
「過去に受けた贈与は申告が必要だったのではないか」「税務署からお尋ねが届いたけれど、どう回答すればよいかわからない」といった不安がある場合は、そのまま放置せず早めに確認することが大切です。
申告漏れに気づいた場合、自主的に申告・修正するタイミングによっては加算税の負担を抑えられることもあります。贈与税の申告が必要か判断できない場合や、税務調査への対応に不安がある場合は、税理士への相談を検討しましょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士