5ちゃんねる書き込みの特定と開示請求のやり方は?どんな訴えができる?
5ちゃんねる(5ch.net)は匿名で書き込みができるため、自由度の高い意見交換ができる一方で、誹謗中傷などの悪質な書き込みが問題になっています。
誹謗中傷されたと感じた方の中には、書き込み者を特定して何らかの法的措置を取りたいと考える人もいるでしょう。
5ちゃんねるに書き込みを行った発信者を特定する方法としては、IPアドレスを入手してからの発信者情報開示請求が有効です。
特定方法まとめ
5ちゃんねるから書き込み者のIPアドレスの開示を受けることが第1段階、つづいてIPアドレスなどを元にプロバイダーに対して発信者の情報開示を受けることが第2段階です。
書き込みをした人を特定して賠償請求することで被害の再発防止につながります。また、違法行為に対して刑事責任を問える可能性もあるでしょう。
この記事を読めば、5ちゃんねるでの書き込み者を特定する方法、特定後にとれる対応についてわかります。
身体に危害を加える旨の予告を受けたり、リベンジポルノなどの極めて私的な画像が晒されたりといった場合はより早急な対応が必要ですので、警察への相談をおすすめします。
目次
5ちゃんねるの書き込み特定|運営にIPアドレスを開示請求
5ちゃんねるへの書き込み人物の特定には、まず投稿者のIPアドレスを知ることから始めます。IPアドレスがわかれば、インターネット回線の事業者(プロバイダー)を特定できるからです。
プロバイダーが特定できれば、プロバイダーに対して契約者情報の開示を求めます。
まずは5ちゃんねるにIPアドレスの開示を求める方法について説明します。
5ちゃんねるに直接IPアドレス開示請求
5ちゃんねるは匿名ではありますが、書き込み人物のIPアドレス情報を保存しています。そのため、5ちゃんねる運営(Loki Technology, Inc.)からIPアドレスの開示をしてもらいたいところです。
しかし、5ちゃんねるは警察や裁判所以外のIPアドレス開示要請には応じない旨を明記しています。これは5ちゃんねるが匿名の掲示板であり、書き込み者の表現の自由やプライバシーを守る姿勢で運営されているためです。
このように個人が書き込み者のIPアドレスを求めても、5ちゃんねる側が応じてくれない可能性が高いでしょう。裁判所から5ちゃんねるに対してIPアドレスを開示するように命令してもらう方法を採る必要があります。
裁判所に仮処分命令を申し立てる
裁判所にIPアドレスの開示を求める仮処分を申し立て、その申し立てが認められた場合、5ちゃんねる運営者は投稿者のIPアドレスを通知してきます。
開示されたIPアドレスは数字やアルファベットの羅列ではありますが、この情報から投稿者が利用していたプロバイダーの特定が可能です。
もっとも仮処分の申立てが全て認められるわけではありません。その投稿によって申立て者の何らかの権利が侵害されていることが重要になります。
たとえば侮辱罪や名誉毀損、プライバシー侵害など、どんな法的根拠で申し立てるのかを十分に検討する必要があるでしょう。こうした法的根拠については、ネットトラブルに詳しい弁護士に相談して、どういった権利侵害にあたるのかを聞くことをおすすめします。
5ちゃんねるの書き込み特定|プロバイダーに発信者情報を開示請求
仮処分命令によって5ちゃんねるからIPアドレスの開示を受けた場合、つづいて書き込み者を特定するためにプロバイダーに対して開示請求をおこなうことになります。
プロバイダー側へ契約者情報の開示請求をおこなう
IPアドレスを元にプロバイダーを特定したら、発信者情報の開示を求めていきます。
しかしプロバイダーにとって発信者情報は契約者情報でもあり、個人の依頼を受けてすぐに開示できるものではありません。基本的には個人が開示を要求しても、任意で応じてくれる可能性は低いでしょう。
そのためプロバイダーに発信者情報を開示するよう申立てをしていくことになります。
プロバイダーに発信者情報の開示請求をもとめる
プロバイダーに発信者情報の開示請求をおこなうためには、請求の主旨、権利侵害の内容、証拠などを示す必要があります。
権利侵害の内容とは、書き込まれた人の名誉毀損にあたるとか、侮辱にあたるとか、具体的な主張が必要です。
書き込みをした人の情報を開示することは、その人のプライバシー侵害にあたるともいえます。被害者の訴えが合理的なものであるか、双方の権利をよく検討したうえで、裁判所が判断するものです。
証拠としては、書き込みのページのURLや書き込みの内容、5ちゃんねる側から開示されたIPアドレスなどがあげられます。スクリーンショットやPDFデータといった形式で証拠をおさえておきましょう。
こうした一連の手続きには約10ヶ月ほど時間を要する可能性があるので、書き込みを特定するうえでの精神的負担は非常に長く続いてしまうのです。
書き込みの特定を検討している方は一度弁護士に相談してみることをおすすめします。特定のメリットやかかる弁護士費用、相手を特定した後の流れなども踏まえて弁護士に任せることも視野に入れていきましょう。
関連記事『発信者情報開示請求とは?ネットの誹謗中傷の投稿者を特定する方法と要件』でも、発信者情報開示請求について詳しく説明しています。
改正プロバイダ責任制限法も施行
2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行されました。
この改正法では、既にあった発信者情報開示請求に関する手続が簡素化され、被害者の権利救済がより円滑に行われることになったのです。
これまでの方法では、5ちゃんねるへのIPアドレス開示請求とプロバイダーへの発信者情報の開示請求は別々の手続きが必要でした。これにより被害者側は二度の法的手続きが必要になり、時間もかかっていたのです。
改正法では2度の法的手続きを一度におこなえるようになりました。「非訟手続」というより簡単な手続きとなったことも時間短縮につながっています。
また改正法では、発信者情報開示請求の対象が拡大され、SNSの投稿についても開示請求が可能になりました。これまで開示されていた情報にくわえて、SNSへのログインやログアウトにおける情報、アカウントの取得や削除における情報、SMS認証時の電話番号なども開示対象になっています。
もっとも、改正プロバイダ責任制限法の場合は、5ちゃんねる運営やプロバイダー側が異議申し立てをすると、通常の裁判手続きに移行します。そのため相手方の反応によっては時間がかかってしまう場合もあるので、従来の方法を採るべきか、改正法を活用するべきかは弁護士に見解を聞いてみましょう。
【注意】ログを消去させない手続きも必要
一般的には、プロバイダー側のログ保存期間は3ヶ月から6ヶ月程度とされています。よって、5ちゃんねるの書き込みを特定したいと考えても、書き込みから時間が経ちすぎていると間に合わない場合があるのです。
よって開示請求とあわせて、ログを消去しないように求める仮処分の申立てについても、できるだけ迅速に取り掛かる必要があります。
このように被害者の状況に応じた最適な判断をするためには、開示請求の実績を多く持つ弁護士のサポートを受けることが大切です。
法律相談を無料で受け付けている法律事務所も多くあるので、まずは開示請求までの流れや弁護士費用について問い合わせてみましょう。
特定後に相手を訴えたいが何ができる?
書き込み者を特定したら、その書き込み内容に応じて損害賠償請求が可能です。相手に被害を訴えて、慰謝料や弁護士費用の請求をしていきましょう。
さらに、書き込みの内容しだいでは警察に被害を訴えて刑事責任を問うことも可能です。
書き込み人物への慰謝料請求
5ちゃんねるで誹謗中傷や悪口を書かれ、その内容が侮辱罪や名誉毀損にあたる場合、慰謝料の請求が可能です。
侮辱罪の相場は数万円程度にとどまりますが、名誉毀損の慰謝料相場は10万円から50万円程度が見込まれます。なお、企業への名誉毀損であれば50万円から100万円程度が相場でしょう。
なお特定にかかった弁護士費用については一部の請求にとどまることが多いです。
このように誹謗中傷でどんな権利侵害が起こっているかで慰謝料相場は変わります。誹謗中傷による慰謝料を請求する流れや注意点も解説しているので、関連記事『誹謗中傷の慰謝料相場はいくら?損害賠償請求の流れと注意点をおさえよう』もお役立てください。
侮辱罪と名誉毀損の違い
名誉毀損は、公然性があること、事実を摘示して名誉を毀損したことが成立要件です。
5ちゃんねるは不特定多数の人に見られている場なので公然性については要件を満たしていると考えてよいでしょう。
つまり事実を摘示して名誉を毀損したかどうかがポイントとなります。事実の摘示の例は以下の通りです。
- 「Aさんには窃盗の前科がある」との書き込みがされた場合、「前科がある」という事実が摘示されていること、Aさんの社会的評価に害を与えることから名誉毀損に該当します。
- 「Aさんはバカだ」の書き込みでは事実の摘示がないため、侮辱罪を検討していきます。
事実の摘示においては、真実かどうかは関係なく、仮に虚偽であっても名誉毀損の成立要件といえます。つまり上記の例ではAさんに窃盗の前科があってもなくても名誉毀損に該当しうるのです。
関連記事『侮辱罪の成立要件は?名誉毀損罪との違いや侮辱罪になる言葉の具体例を紹介』でも詳しく説明しているので、参考にしてみてください。
警察に訴えて刑事処罰をもとめる
警察に被害を訴えることで、刑事処罰を求める「刑事告訴」も可能です。
5ちゃんねるに書き込まれた内容が侮辱罪や名誉毀損にあたる場合、こうした犯罪は親告罪とよばれるもので、事実を知ってから半年以内の告訴が必要とされています。
告訴後は警察や検察が捜査をして刑事処分が決まっていく流れで、何らかの刑事処分を受けることになる可能性もあります。
罪名 | 刑罰 |
---|---|
名誉毀損罪 | 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金 |
侮辱罪 | 拘留(1日以上30日未満の拘置)または科料(1,000円以上1万円未満) |
刑事告訴のくわしい手続きや費用相場については、関連記事『刑事告訴の方法と告訴費用を解説!ネットトラブル・誹謗中傷を警察に訴えたい』もあわせてお読みください。
5ちゃんねるの投稿者を特定する上での注意点
5ちゃんねるの書き込み特定にあたっては様々な注意点があります。
必ず特定できるとは限らない
5ちゃんねるに書き込まれた内容によっては、裁判所への仮処分申立てが認められない場合もあります。これは書き込みをした人の表現の自由であったり、氏名や住所などの個人情報保護が優先されることが理由です。
また、海外のプロバイダを経由しているときには特定が困難になる恐れもあります。
あるいは書き込みから時間が経過していてプロバイダー側のログ保存期間を過ぎていると特定は難しい可能性が高いです。
書き込みの特定には時間がかかる
書き込んだ人物を特定するためには、5チャンネル側にIPアドレスを開示請求し、その後にプロバイダーに発信者情報を開示請求するという2段階になります。そのため特定まで10ヶ月程度はかかるでしょう。
もっとも改正プロバイダ責任制限法にもとづいて「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続」を活用すれば、一度に開示請求ができるぶん、時間短縮が期待できます。
いずれの方法を採用するかは弁護士の見解を聞いてみましょう。
特定にかかる費用を回収できない恐れもある
5ちゃんねるに書き込んだ相手を特定するための弁護士費用としては、相談料、着手金、報酬金、実費がかかります。
弁護士費用のうちの着手金は、5ちゃんねるへのIPアドレスを開示請求する場合と、プロバイダーに発信者情報開示請求をする場合の2段階で、それぞれ発生する可能性があります。また、成功報酬も同様でそれぞれの開示請求が成功した場合に発生するでしょう。
こうした弁護士費用の一部は損害賠償請求できる可能性があります。ただし、そもそも特定した相手にお金がないと十分な賠償を受けられない可能性もあるのです。
書き込みの特定にかかる費用も安くないので、弁護士に相談する際には費用の見通しについてもしっかり聞いて、最悪のケースについても納得しておくことが必要といえます。
開示請求にかかる費用の内訳や相場については、関連記事『発信者情報開示請求の費用相場と内訳は?弁護士費用は相手に請求できる?』にて詳しく解説しているので参考にしてみてください。
担保金も必要になる
また裁判所の仮処分手続きにおいては担保金が必要です。この担保金は、情報を開示することで何らかの不利益を受けた場合の補償に充てられる金銭とされていて、正当な開示請求であれば後日返還されます。
ただし仮処分手続きをする場合にはすぐに納める必要があるので、あらかじめ準備しておかねばなりません。
特定に必要な証拠は十分に保全しておく
5ちゃんねるの書き込み特定においては証拠が重要です。
書き込みのあったページやスレッドのURL、書き込みのスクリーンショットやPDFデータ、書き込み者のIPアドレスは必ず保存しておきましょう。
5ちゃんねるの書き込み特定にくわしい弁護士に相談して、どういった証拠が重要になるのかアドバイスをもらい、証拠をしっかり押さえることが大切です。
5ちゃんねるの書き込み特定を弁護士に依頼するメリット
5ちゃんねるの書き込み特定はログが消去されてしまう前に取り掛かる必要があるので、迅速かつ的確な対応力が求められます。
5ちゃんねるの書き込み特定や開示請求の実績・ノウハウが豊富な弁護士を選びましょう。
5ちゃんねるの書き込み特定を弁護士に任せることには次のようなメリットがあります。
- 先を想定したスピーディな対応が可能
- 特定に必要な証拠集めをサポート
- 法的根拠に基づいた訴えができる
- 特定後の交渉も代理できる
書き込み特定に関する法律や手続きは煩雑ですが、迅速な対応が可能です。被害者一人でかかえこまずに、まずは弁護士に相談して、5ちゃんねるの投稿者が特定ができそうか、弁護士費用の見積もりについて見解を聞いてみましょう。
なお、5ちゃんねるの誹謗中傷内容の削除について検討している方は、『5ch(5ちゃんねる)の削除依頼|書き込みの削除方法を弁護士が伝授』の記事もお役立てください。
もっとも削除によって特定に必要な証拠が失われるケースもあるため、削除のタイミングについても弁護士にアドバイスを受けておきましょう。
ネットトラブルにくわしい弁護士であれば、これまでのノウハウを生かした最適なアドバイスが可能です。相談先を探したいという方は、下記バナーより、弁護士探しのポイントをおさえるようにしておきましょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了