明確な理由はないけど離婚したい!相手に非がなくても離婚できる?

相手に非がなくても、お互いの合意があれば離婚は可能です。
しかし、一方が拒絶して裁判になった場合は、明確な理由(法定離婚事由)がない限り、離婚を成立させるのは極めて困難です。
相手に落ち度がない状況で離婚を成立させるには、金銭面での譲歩や別居といった、事実上の破綻を証明するステップが重要になります。
この記事では、相手に非がないときの離婚可否、離婚条件の調整ポイント、切り出す前の準備、成功させるコツを解説します。
目次
相手に非がなくても離婚できる?
相手に非がなくても「お互いの合意」さえあれば離婚は可能です。
ただし、どちらかが離婚を拒絶している場合は、手続きの種類によって離婚成立の難易度が大きく変わります。
まずは、以下の判定表で現在の状況を確認してください。
| 離婚方法 | 可否 | ポイント |
|---|---|---|
| 協議離婚 | 〇 | 夫婦の合意があれば理由不問 |
| 調停離婚 | 〇 | 双方が合意すれば成立 |
| 裁判離婚 | △ | 長期別居があれば可能性あり |
「相手に非はないけれど離婚したい」と悩むのは、決してわがままではありません。
以下の表は、婚姻関係事件の申立を動機別に集計したものになります。
| 夫 (申立人総数15,396) | 妻 (申立人総数43,033) | |
|---|---|---|
| 1位 | 性格が合わない(9,233) | 性格が合わない(16,503) |
| 2位 | 精神的に虐待する(3,358) | 生活費を渡さない(12,461) |
| 3位 | 異性関係(1,820) | 精神的に虐待する(11,288) |
| 4位 | 浪費する(1,764) | 暴力を振るう(7,690) |
| 5位 | 家族親族と折り合いが悪い(1,699) | 異性関係(5,743) |
(注)申立ての動機は、申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計
表を見ると、夫・妻ともに「性格が合わない」という理由が最も多い離婚理由となっており、DVやモラハラ、不貞行為よりも「性格が合わないから」ということに悩んでいる人は多いということがわかります。
「理由はないけれども離婚したい」と考えることは、そこまで珍しいことではありません。
では、実際に相手に非がない場合、どのような方法で離婚を進めればよいのでしょうか。
以下、離婚方法ごとに詳しく解説します。
合意があれば協議や調停で離婚できる
相手が離婚に合意している場合は、協議離婚というかたちで、相手に非がなかったり、とくに理由がなかったりした場合でも離婚することができます。
協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。当事者が合意さえすればどんな理由でも離婚をすることができるところが特徴です。
話し合いがまとまらず離婚調停に進んだ場合でも、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができるので覚えておきましょう。
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離婚裁判で離婚することはかなり難しい
離婚調停でも話し合いがまとまらず、離婚裁判に発展した場合、相手に非がなかったり、とくに理由がなかったりした場合は、離婚することはかなり困難になります。
裁判離婚が認められるのは、以下の5つの法定離婚事由のうちどれか1つが存在し、婚姻関係が破綻している場合です。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
そのため、とくに理由がないのに裁判離婚を申し立てても、裁判離婚をするのはかなり困難です。
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長期間の別居があれば離婚できる場合も
夫に非がない場合でも、婚姻関係が破綻しているとみなされれば、離婚裁判で離婚が認められる可能性はゼロではありません。
同居期間に比べて別居期間のほうが長ければ、婚姻関係が破綻しており、「婚姻を継続しがたい重大な事由」であると裁判所に判断してもらえて、裁判離婚ができる可能性があります。
また、婚姻関係が破綻しているかどうかは、「未成熟状態の子どもがいるかどうか」「別居後の婚姻費用の分担状況はどうか」といった観点からも判断されます。
そのため、長期間にわたって別居しているという場合は、相手に非がないときでも離婚できる可能性はあります。
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非がない相手と離婚するときの離婚条件
財産分与は譲歩が必要になることも
「非がない夫と離婚しても財産分与はできるのか」と心配になる方もいると思います。相手に非がない場合でも財産分与をすることは可能です。
財産分与は、夫婦の財産を寄与割合に応じて分け合うものです。そして、寄与割合は原則として2分の1ずつであり、離婚原因は割合に影響を与えないのが通常です。専業主婦の場合であっても変わらず、割合は2分の1となります。
ただし、相手が離婚することを拒否しているケースでは、財産分与をするときに金銭面でこちらが譲歩することも必要になります。
夫に非がないのに離婚するという場合は、財産分与をすることはできるけれども、こちら側の財産分与の取り分が少なくなるおそれもあるということを理解しておきましょう。
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・離婚の財産分与とは?割合はどうなる?夫婦の財産の分け方を解説
離婚解決金を支払うことも
相手に非がない場合や、とくに理由がない場合での離婚を相手に認めてもらうために、離婚条件の調整という名目で、交渉材料として金銭の支払いをするケースがあります。
これを離婚解決金といいます。
離婚を求める側から「解決金として〇〇万円払うから早く離婚してほしい」と申し入れたり、離婚を求められた側が「解決金として××万円払ってくれるならすぐに離婚してもいい」などと提案したりします。
解決金の価格に明確な相場はなく、当事者間の合意があれば金額は自由です。
専業主婦で貯金がなく、解決金を支払うことが難しいという場合は、財産分与の金額を譲歩するといったことが必要になるでしょう。
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親権や養育費に影響はない
親権は離婚原因とは直接的な関係がなく、子どもの将来的な成長と福祉にかなうかが観点となります。
そのため、「相手に非がないのに離婚したいと言っている」からといって、親権を取得するうえで不利になるということはありません。
親権は、「今までどちらが継続的に子どもの世話をしていたか」「どちらが母性的なかかわりをもって子どもに接してきたか」といったことが重要視されます。
基本的には、母親が有利です。
もし親権を取得した場合は、相手から養育費を受け取ることができます。
養育費についても、「相手に非がないのに離婚したから」という理由で減額されたり、もらえなかったりすることはありません。もちろん、交渉次第で金額が増減することはあります。
養育費を支払う側としては、一方的に離婚を求められたうえに養育費まで請求されて、理不尽に感じるかもしれません。
しかし、離婚理由がどのようなものであっても、子どもの親であるという事実は変わらないため、子どもを扶養し続ける義務があります。
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・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
慰謝料請求は難しい
基本的に、理由がないときや相手に原因がないときに離婚する場合、慰謝料請求は認められません。
離婚慰謝料とは、離婚の原因をつくったほうが、もう一方の精神的苦痛を補償するために支払うお金です。
離婚の慰謝料は、すべての場合で支払われるものではありません。請求できるのは、基本的に相手に不倫などの不法行為がある場合が前提となります。
そのため、相手に非がないときに慰謝料請求しても、基本的には認められないでしょう。
なお、急に離婚を切り出したからといって、逆に相手に慰謝料を請求されてしまうということもありませんので、その点はご安心ください。
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・離婚慰謝料の相場は?慰謝料がもらえるケース・種類・条件を弁護士が解説
非がない相手に離婚を切り出す前にしておくべきこと
離婚理由を明確にしておく
非がない相手に対して離婚を切り出す前に、離婚理由を明確にしておくことをおすすめします。
たとえば、なぜ離婚したいと思っているかを紙に書き出してみましょう。
「価値観が合わない」「性格が合わない」といった理由が考えられると思います。
自分自身の感情を整理できるほか、離婚の手続きを進めていくのか、それとも踏みとどまるのか、これからとるべき行動が見えてくる場合もあるでしょう。
紙に書くのが難しいという場合は、信頼できる友人や、カウンセラーに相談してみるのもよいでしょう。
離婚理由を考えていくうちに、「自分では理由がないと思っていても、法律的に見れば十分離婚事由に該当する」といったこともあるかもしれません。
予想される相手の反論に答えを用意しておく
いざ離婚を切り出すということになったとき、相手は離婚することを予想していないでしょうから、「離婚したくない」という反論を受けることになると思います。
離婚を切り出す前に、予想される相手の反論について、具体的な答えを用意しておくようにしましょう。
離婚のデメリットを理解しておく
非がない相手に離婚を切り出す前に、非がない相手と離婚することのデメリットについて理解しておきましょう。
とくに理由がないのに離婚することのデメリットについては、以下のようなものがあります。
とくに理由がないのに離婚するデメリット
- 経済的に不安になる
- 周りの目線が気になる
- さみしい思いをするおそれ
- 子どもの父親がいなくなる など
経済的に不安になる
相手が離婚を認めてくれても、離婚後ひとりになったとき、あるいは子どもを連れて生活していくことを考えたときに、経済的に不安になってしまうということが挙げられます。
そもそも相手に非がないのに離婚するという場合は、財産分与で譲歩したり、解決金を払う必要があったりと、通常の離婚よりも金銭面の条件を妥協しなければならないことが多いです。
ただでさえ離婚で受け取れるお金が少ない状態だと、経済的に苦しくなってしまうリスクがあるでしょう。
周りの目線が気になることも
「相手に何も非がないのに離婚した」ということで、世間体が悪くなってしまうことも考えられます。
「不貞行為を受けた」「DVを受けた」というような、夫の言動に起因する理由で離婚すると、実家や友人も同情してくれることが一般的だと思います。しかし、相手に非がない場合は、なかには「わがままな離婚」だと考える人もいるかもしれません。
さみしい思いをするおそれも
とくに理由がないのに離婚してしまうと、再婚が必ずできるかどうかもわからないため、場合によってはさみしさを覚えてしまうということもあるでしょう。
また、離婚することで、身近に頼る相手がいなくなってしまうというのもデメリットです。
子どもの父親がいなくなる
とくに理由もなく離婚すると、子どもは突然父親を失うことになります。
父親がいないことで、金銭的に苦労を強いる可能性が高いですし、寂しい思いをさせてしまうリスクがあるでしょう。
また、学校行事に父親が来なかったりすると、子どもは周りの目が気になると感じます。自分の家庭が普通ではないことを、コンプレックスに感じる子どももいるようです。
金銭面のデメリットやほかの条件を譲歩する準備をしておく
相手に非がないときに離婚する場合は、財産分与などの金銭面の条件で譲歩することがカギになります。
場合によっては、金銭面の条件だけでなく、「親権はどうするのか」「養育費や面会交流についてはどうするのか」といったことも譲歩しなければならない場合があります。
相手が希望する条件について納得できる場合は、離婚の話がスムーズに進む可能性は高いです。
ただし、どうしても条件を飲むことができないという場合は、離婚について考え直すことも重要になってくるでしょう。
離婚後の住まいやお金などの準備をしておく
準備をすることなく離婚をしてしまうと、不利な条件での離婚を強いられたり、離婚後の生活が苦しくなってしまったりといったリスクがあります。
そのため、離婚を切り出す前に、「離婚後の住居はどうするか」「離婚後の生活の収入源はどうするのか」といった点について準備しておきましょう。
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非がない相手と離婚するときのポイント
離婚の意思は冷静に伝える
いざ離婚を切り出すというときは、感情的にならないよう冷静に伝えることが重要です。
一度の話し合いで離婚条件を詰めようとするのではなく、「離婚をしたい」という意思を相手に伝えましょう。
このとき、「もともとそんなに好きじゃなかった」「気持ち悪い」といったように、相手を侮辱したり、冷たい発言をしたりすることは避けるべきです。
相手に恨まれて離婚することがさらに難しくなってしまったり、逆に慰謝料を請求されてしまったりするリスクもあります。
相手が離婚に応じない理由を見定める
離婚を切り出しても、相手が離婚に同意してくれないことがあると思います。そのときは、相手が離婚に応じない理由について考えることが必要です。
「離婚そのものに反対しているのか」「世間体のために離婚したくないのか」「自分の人生を否定された気になるから離婚を認めないのか」といった、どの部分で離婚について同意できないのかを見定めましょう。
離婚を成立させるためには、相手が離婚に反対している理由を考え、できるだけこちら側の離婚条件も譲歩するよう準備しておくことが重要です。
相手が気持ちを整理する時間をつくる
非がない相手と離婚するという場合は、相手が気持ちを整理する時間をつくるようにしましょう。
相手にとっては、思い当たる理由もないのに離婚を切り出されるというのは突然の出来事です。どうしてよいかわからず、混乱してしまうこともあると思います。
こちら側の「離婚したい」という意思をはっきりと伝えることも大事です。
しかし、相手の立場に立って考え、気持ちを整理する時間を取ってあげることが大切といえるでしょう。
準備として別居してみる
離婚を切り出してもらちが明かないという場合は、思い切って別居してみるのも一つの手です。
長期間にわたって別居しているという場合は、相手に非がないときでも離婚できる可能性はあります。
別居をするときは、できれば事前に相手の同意を得ることが望ましいです。
何も言わず家を出てしまうと、夫婦の同居義務(民法752条)に反する「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に当たると主張され、慰謝料を請求されるおそれがあります。
もっとも、現実には事前の同意を得るのが難しいケースが大半だと思いますので、置き手紙などを残して別居するようにしましょう。
弁護士に依頼する
離婚をしたいけれども話し合いがまとまらないという場合は、弁護士に依頼するのもよいでしょう。
こちらが弁護士に依頼すれば、相手には内容証明郵便や普通郵便のかたちで、「ご連絡」「協議離婚申入書」「受任通知」というタイトルで書面が送られます。
「こちら側が弁護士を立てた」ということが相手に伝わりますので、相手に「本気で離婚したいと思っている」ということを示すことができます。
また、弁護士に依頼することで、離婚の話し合いを有利に進めることができるかもしれません。
相手に非がない離婚についてよくある質問
Q.一方的に離婚を切り出したら慰謝料を請求される?
離婚を切り出しただけで慰謝料を請求されることはありません。
ただし、不倫(不貞行為)や暴力などの有責行為がある場合は別です。
相手を侮辱する発言やモラルハラスメントが、暴力に準ずる言動や重大な侮辱として認定されれば、慰謝料が認められる可能性があります。
そのため、話し合いは冷静に進めることが重要です。
Q.相手に非がないのに離婚する場合、慰謝料は払うべき?
法的に支払う義務はありません。
慰謝料は、配偶者の有責行為(不法行為)によって婚姻関係が破綻し、離婚を余儀なくされた場合に、精神的苦痛の損害賠償として認められるものです。
ただし、相手に納得して離婚届を書いてもらうための解決金や和解金として、一定の金銭を支払って円満解決を図るケースは実務上多く見られます。
Q.相手に非がない離婚の解決金の相場は?
法的な相場はなく、当事者間の合意によって自由に決まります。
実務上は数十万円から数百万円で合意に至る例が多く、場合によっては財産分与の調整によって解決を図ることもあります。
理由がないけれど離婚したい場合は弁護士に相談!
相手が同意すれば、相手に非がないときでも離婚することは可能です。ただし、こちら側が財産分与などの離婚条件で譲歩する必要はあるでしょう。
理由がないけれど離婚したいという場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、「離婚する理由がない」と思っていても、法的に見れば十分離婚理由になるような事実を指摘してくれる場合があります。
また、相手に「自分が本気で離婚したいと思っている」ということを示すことができるほか、離婚の話し合いもスムーズに進められる可能性がぐっと高くなります。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
