更年期障害が離婚の原因になるケースと離婚前に知るべきこと

更年期障害による心身の変化が夫婦のすれ違いを生み、離婚のきっかけになることがあります。
内閣府男女共同参画局が令和5年に実施した調査では、更年期に関連する症状を自覚している女性は、50代で32.1%、40代で14.0%にのぼり、日常生活への影響も指摘されています。
この記事では、更年期障害が夫婦関係に及ぼす影響や離婚に至るパターンを整理し、離婚前に検討したい対処法や、熟年離婚を選ぶ際に押さえておきたい財産分与・年金分割といった法的ポイントを解説します。
目次
更年期障害とは
更年期障害は、症状の現れ方や重さに大きな個人差があり、周囲に気づかれにくい特徴があります。
内閣府男女共同参画局が令和5年に行った調査では、更年期に関連する症状を自覚している女性は、そうでない女性に比べて「健康ではない」と感じる割合や心理的ストレスが高く、体調の優れない日も多い傾向が示されています。
更年期障害の定義と対象年齢
女性の更年期は、卵巣機能の低下に伴いホルモンバランスが大きく変化する時期を指します。日本産科婦人科学会によると、日本人女性の閉経の平均年齢は50歳前後で、その前後10年間(45〜55歳程度)が更年期とされています。
一方、男性にも更年期に伴う不調があり、男性ホルモンの減少によって、40歳以降に症状が現れることがあります。
こうした更年期の変化によって日常生活に支障が出ている状態を、更年期障害といいます。
女性の更年期障害の主な症状
更年期障害の代表的な症状には以下のようなものがあります。
更年期障害の症状
- ホットフラッシュ(突然のほてりや発汗)
- 疲労感や倦怠感
- 不眠や落ち込み
- イライラや怒りっぽさ
- 性欲の減退
- 集中力の低下
内閣府男女共同参画局の調査によると、更年期に関連する症状を自覚している女性のうち、半数以上が「だるさ・疲れやすさ・動悸・息切れ」を感じています。さらに、「頭痛・めまい・耳鳴り」は約4割、「のぼせ・顔のほてり・発汗」も約3割にのぼり、いずれも症状のない女性に比べて高い割合となっています。
これらの変化は、ご本人の努力や性格とは無関係に起こる生理的な現象です。しかし自覚症状があっても他人には伝わりにくく、特に家族やパートナーに理解されないことが大きなストレスとなります。
「旦那の行動すべてにイライラする」
「身体がだるくて家事ができない」
「どうしても夫と性行為をしたくなくなった」
こういったお悩みをお持ちの方は、自分自身やパートナーを責める前に更年期障害を疑ってみてもよいかもしれません。
男性にも更年期障害がある
更年期障害は女性だけの問題ではありません。男性も40歳以降、テストステロン(男性ホルモン)の分泌が低下することで、同様の不調が現れることがあります。
日本内分泌学会や日本メンズヘルス医学会のガイドラインでは、疲れやすさ、イライラ、抑うつ、集中力の低下、性欲の低下などが代表的な症状とされています。内閣府の調査でも、こうした症状を自覚している男性は40〜60代で1割弱と報告されています。
妻が更年期の症状に悩む時期には、夫も似た不調を抱えている可能性があります。
こうした変化を「性格の問題」と決めつけるのではなく、更年期という共通の背景として捉えることが、夫婦関係を見直すきっかけになる場合もあります。
更年期障害の夫婦関係への影響
更年期障害が夫婦関係に与える影響とは?
更年期障害の様々な症状は、夫婦関係に次のような影響を及ぼすことがあります。
- 妻が感情的になる理由を夫は理解できない
- 夫婦の会話が減少する
- お互いに「わかってもらえない」という不満が蓄積する
- 妻の体調不良で家事・育児に支障が出る
- 妻の不調を夫が「怠けている」と誤解する
- 妻の性欲低下・性交痛により性行為が減る
- 夫自身も更年期の不調を抱えており、お互いの変化に気づけない
イライラや性の変化から、夫婦間にすれ違いが生じやすくなります。次第に夫婦間の会話やスキンシップが減り、相手への不満や孤独感が積み重なります。
その結果、関係が冷え込み、離婚や別居に発展することもあります。
更年期障害が離婚につながるパターン
更年期障害から夫婦関係が悪化して、離婚に繋がってしまう典型的なパターンを紹介します。
- 妻の感情の起伏に夫が「またヒステリーか」などの反応を取る
- 家事や仕事が思い通りにできないことに対し、夫が「甘えだ」と責める
- 妻が性行為に応じなくなった結果、夫が不倫した
- 義実家との関係悪化と更年期障害が重なった
更年期障害が離婚に繋がる背景には、妻の心身の不調に対する夫の無理解や共感不足が大きく影響しています。
更年期障害はホルモンバランスの変化によって引き起こされるものであり、本人にはどうにもできない部分が多くあります。しかし、実際に体験していない夫が共感するのは簡単なことではありません。
感情の起伏や体調の変化が「性格の問題」と誤解され、夫婦のすれ違いが深まることで、結果的に離婚という選択に至るケースが少なくありません。
更年期障害で離婚を決断する前に考えるべきこと
一過性の関係悪化ではないか?
更年期に感じる不安や夫への怒りは、一時的な感情である可能性があります。
更年期を過ぎたときに「夫のことが嫌いになったわけではなく更年期障害だった」「やっぱり離婚すべきではなかった」と後悔することのないよう、離婚を決断する前に一度立ち止まって考えてみてください。周りの人や専門家に相談するのもよいでしょう。
離婚を決断する前に試したい対処法
- 症状や悩みを正直に共有し、夫に協力を求める
- 婦人科や心療内科など医療機関での治療
- サプリメントや食事、適度な運動など生活習慣の改善
- カウンセラーや心理士に相談する
- 一度別居してみる
更年期障害は病院で治療することが可能です。更年期障害を疑ったら、まずは病院を受診して治療を受けることで症状が緩和され、夫婦関係の改善につながる可能性があります。
その他、カウンセリングや話し合いを通じて更年期障害の症状への理解を促したり、一度別居して冷静に夫婦関係を見つめ直すという方法もあります。
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それでも離婚を選ぶ場合の注意点
どうしても共に過ごす未来が見えず、心身を壊してしまうような状況であれば、離婚という選択肢も決して否定されるものではありません。ただし、熟年離婚には以下のようなリスクがあります。
- 離婚後に経済的に苦しくなる
- 子どもや親族と疎遠になり、いざというときに頼れない
- 離婚時に財産分与や年金分割で揉める
- 1人になってみると寂しい
特に、長年専業主婦やパート勤務をしてきた方が、離婚後すぐに経済的に自立するのは簡単ではありません。そのため、離婚時に財産分与や年金分割についてしっかりと取り決めておくことが重要です。
熟年離婚の場合、財産分与の額も大きくなるため、その金額をめぐって揉めるケースが多くみられます。
女性の熟年離婚を成功させるために必要な準備については『熟年離婚したい!必要な準備を徹底解説』をご覧ください。
更年期障害の症状を抱えながら離婚の準備をしたり話し合いに臨むのは難しいことです。熟年離婚に不安がある場合は、弁護士に相談しましょう。
更年期障害と離婚についてよくある質問
Q. 更年期障害を理由に離婚できますか?
更年期障害そのものは、民法第770条に定める裁判離婚の直接の理由には含まれません。ただし、夫婦関係が実質的に破綻していると認められれば、協議や調停、裁判を通じて離婚が成立する可能性があります。
Q. 更年期障害で離婚した場合、財産分与はどうなる?
更年期障害は財産分与の割合に直接影響しません。婚姻中に築いた共有財産を原則2分の1ずつ分与するのが実務上の基本です。専業主婦の場合も、家事・育児による貢献が認められるため同様に扱われます。
Q. 更年期障害で離婚は後悔する?
更年期の不調や感情の変化が、離婚などの大きな判断に影響することもあります。まずは産婦人科(婦人科)や心療内科で相談し、必要に応じて治療を受けることが大切です。そのうえで離婚を考える際は、財産分与や年金分割の条件について弁護士に確認しておくと安心です。
まとめ
更年期障害は夫の無理解により夫婦のすれ違いを深刻化させ、離婚の危機を招く可能性があります。
しかし、更年期に感じる夫への怒りは一時的な感情変化である場合が多く、症状が落ち着いた際に「離婚すべきではなかった」と後悔するケースも少なくありません。
更年期障害で離婚を検討する際は、まず医療機関での治療やカウンセリングを試し、どうしても離婚を選ぶ場合は弁護士などの専門家に相談することが大切です。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
