養育費の請求に時効はある?取り決めのありなしや内容で変わる!

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養育費の時効

「養育費に時効はあるのか」
「養育費の時効はいつからなのか」

令和3年度全国ひとり親世帯等調査(厚生労働省)によると、養育費を現在も受け取っている母子家庭は全体の3割未満にとどまり、半数以上が一度も受け取れていない実態が明らかになっています。

養育費を受け取れていない方は、早めに動くことをおすすめします。養育費の請求権には時効があり、取り決め方法によって5年または10年で消滅するためです。

時効が迫っている場合でも、諦める必要はありません。内容証明郵便で支払いを求めたり、家庭裁判所に調停を申し立てたりすることで、時効の完成を阻止できる場合があります。

この記事では、養育費の時効期間(取り決めがある場合・ない場合)と、時効が迫っているときの具体的な対処法について解説します。

①養育費の取り決めがある場合

養育費の請求権には、消滅時効と呼ばれる期限があります。一定期間、権利を行使しないままでいると、その権利が消滅してしまうというルールです。

養育費に当てはめると、支払いを受けずに一定期間が経過した場合、その分の養育費を請求できなくなります。

養育費の時効期間は、あらかじめ取り決めがあったかどうか、またその取り決め方法によって異なります。取り決めがある場合の時効期間をまとめると、以下の通りです。

取り決めの内容時効注意点
合意のみ5年証明するものがないと合意の存在が認められないことも
公正証書ありの合意5年とくになし
調停10年とくになし
判決10年とくになし

未払い養育費の時効期間は5年または10年

養育費の時効期間は、取り決め方法によって5年または10年に分かれます。

  • 話し合いで取り決めた場合:5年
  • 調停や審判・裁判で取り決めた場合:10年
    (将来発生する養育費は各支払期日から5年)

根拠は民法166条です。

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

民法第166条

養育費を受け取る権利は毎月生じるため、「権利を行使できることを知った時」と「権利を行使できる時」は同じタイミングです。この場合、より短い期間が採用されるため、時効は5年となります。

ただし、裁判所の判決や調停などで養育費が確定している場合は例外で、時効が10年に延長されます。根拠は民法169条です。

(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

民法第169条

「確定判決と同一の効力を有するもの」には、裁判の判決のほか、裁判上の和解・調停・審判が含まれます。

なお、10年の時効が適用されるのは、調停や審判・裁判が成立した時点ですでに未払いになっている分のみです。将来発生する養育費については、話し合いで決めた場合と同じく5年の時効が適用されます

養育費の時効はいつから数える?

養育費の時効は、離婚した日や最後の支払い日からではなく、毎月の支払期日の翌日から進行が始まります。

養育費は毎月発生する債権のため、古い月の分から順に個別に時効を迎えます。一気にすべての養育費が時効を迎えるわけではない点に注意が必要です。

夫婦間で取り決めた養育費の時効

養育費の時効は延ばせる!

時効が迫っている場合でも、一定の行為を行うことで時効の完成を阻止できます。その仕組みには「完成猶予」と「更新」の2種類があります。

完成猶予とは、特定の行為を行うことで、一定期間中は時効が完成しなくなる制度です。以下の行為が完成猶予の事由に当たります。

時効の完成猶予事由猶予期間
裁判上の請求等
(裁判や支払督促、調停など)
事由が終了するまで
(取り下げた場合はそこから6か月)
強制執行の申し立て強制執行が終了するまで
(取り下げた場合はそこから6か月)
仮差押え・仮処分の申し立て事由の終了から6か月
催告催告から6か月
協議を行う旨の合意次のうちいずれか早い時まで
①合意から1年経過時
②合意による協議期間経過時
③協議続行拒絶通知から6か月経過時

たとえば、あと3か月で時効が切れるタイミングで養育費請求調停を申し立てた場合、調停中に3か月が経過しても請求権は失われません。調停が終了するまでの間、時効の完成が猶予されます。

一方、更新とは、特定の行為によって5年・10年の時効期間がゼロから数え直しになる制度です。以下の事由が発生すると、時効が更新されます。

時効の更新事由

  • 裁判上の請求等で権利が確定した
  • 強制執行が終了した
  • 義務者が債務を承認(支払い義務があると認めること)した

②養育費の取り決めがない場合

養育費の取り決めをしていない場合の時効

養育費の取り決めをしていない場合、時効のカウントはまだ始まっていません。毎月いくら支払うという具体的な金額と支払期日が決まって初めて、時効が進行を始めるためです。

養育費は一般的に、子どもが20歳になるまで、または経済的に自立するまで支払うものとされています。取り決めをしていない間は、その時期が来るまでいつでも請求できます。

養育費を請求時よりさかのぼって支払わせるのは難しい

取り決めがない状態で時間が経過した場合、請求時より前の養育費をさかのぼって支払わせるのは難しいといえます。これは実務上、「過去の期間は養育費がなくとも養育できていた」とみなされやすいためです。

たとえば、養育費の取り決めをせずに離婚し、3年後にはじめて「養育費を支払ってください」と請求した場合、3年目以降の養育費は認められる可能性が高い一方、離婚時にさかのぼった3年分については認められないケースが多いです。

ただし、令和8年(2026年)4月1日以降に離婚した場合は、取り決めがなくても離婚日から子1人あたり月額2万円の「法定養育費」が自動的に発生する制度が新設されました。この制度が適用されるケースでは、未払いの法定養育費を含めて後から請求できます。

令和8年4月1日より前に離婚した方には法定養育費は適用されないため、従来通り早急な請求が必要です。

なるべく早く養育費を請求する

養育費をさかのぼって請求するのは難しいため、取り決めをしていない方はなるべく早く動くことをおすすめします。

請求には内容証明郵便などを用い、「いつ請求したか」の証拠を残すことが重要です。また、すぐに養育費請求調停・審判を申し立てる方法もあります。

話し合いや調停などで取り決めを行ったあとの時効については、①で説明した通りです。

養育費の時効が迫っている時にすべきこと

すでに取り決めのある養育費の時効が迫っている場合は、以下のいずれかを実施して時効の完成を先延ばしにし、その間に養育費を回収しましょう。

相手方に催告する

催告とは、相手方に養育費を請求する旨を通知する行為です。裁判上の請求や強制執行の準備が間に合わないという場合に、まず催告を行うことで6か月間は時効の完成が猶予されます

ただし、催告による完成猶予期間中に再度の催告を行っても、猶予期間が延びることはありません。また、催告には時効をリセットする更新の効果はないため、6か月の猶予期間内に調停の申し立てなど次の法的手続きを行う必要があります

催告には内容証明郵便を用いるのが一般的です。

裁判上の請求などを申し立てる

養育費請求調停や審判を申し立てることで、調停や審判が確定するまでの間、もしくは取り下げてから6か月の間は時効の完成が猶予されます。

いきなり裁判を起こすことも可能ではありますが、先に調停や審判を申し立てるのが一般的です。

調停や審判、判決が確定したら時効が更新され、そこから10年間の時効が再スタートします

また、簡易裁判所に支払督促を申し立てると同様の効果が得られます。支払督促とは、申し立てに基づいて裁判所から相手方に対し養育費を請求する手続きです。

強制執行の申し立て

公正証書で養育費の取り決めをしている方や、裁判上の請求で養育費の権利が確定している方は、強制執行によって強制的に支払いを履行させることができます。

なお、令和8年(2026年)4月1日以降は、公正証書がなくても父母間で作成した養育費の合意書があれば、月額8万円に子の数を乗じた額を上限として強制執行を申し立てることができるようになりました。これにより、強制執行による時効の完成猶予を利用できるケースが広がっています。

強制執行の申立先は、家庭裁判所ではなく地方裁判所である点に注意してください。

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未払い養育費と時効に関するトピック

時効期間を過ぎても請求できる場合がある

養育費の時効は、義務者(支払う側)が援用という行為をしないと適用されません。援用とは、「時効が過ぎたから支払わない」という意思表示のことです。

5年・10年が経過したからといって、自動的に養育費を受け取れなくなるわけではありません。義務者に支払う意思があったり、義務者自身が時効について知らなかったりすれば、時効期間経過後でも養育費を受け取ることは可能です

民法改正で時効を延ばす仕組みが変化した

2020年4月1日の民法改正によって、消滅時効の期間が一部変更されました。ただし、養育費の時効期間自体に変更はありません

時効を延ばす仕組みについては変更点があります。時効の完成が猶予される事由のひとつとして、「協議を行う旨の合意」が新たに追加されました。

これにより、裁判所の手続きをとらなくても、当事者間で「これから話し合いをする」と書面で合意するだけで、時効の完成を先延ばしできるようになっています

また、改正前の民法では時効の完成を阻止する手段として「中断」と「停止」が定められていましたが、改正後は実際の効果に合わせて「更新」と「完成猶予」という用語に改められました。内容が変わったわけではなく、名称が整理されたものです。

取り決め別養育費の時効まとめ

以下は、養育費の時効について取り決め別にまとめた表です。ご自身の状況に照らし合わせて確認してみてください。

取り決め内容時効
合意のみ5年
公正証書ありの合意5年
調停10年
判決10年
今から請求するなし
取り決めていなかった
(令和8年3月31日以前に離婚)
さかのぼっての請求は難しい
取り決めていなかった
(令和8年4月1日以降に離婚)
離婚日から子1人あたり月額2万円の法定養育費を請求可能

未払いの養育費がある方は弁護士に相談!

養育費は、話し合いで取り決めた場合には5年、調停や審判・裁判で取り決めた場合には10年で時効を迎えます。

時効が間近に迫っていても諦める必要はありません。内容証明郵便を送ったり、調停を申し立てたりすることで、時効の完成を阻止できる場合があります。

未払いの養育費がある場合は、弁護士への相談をおすすめします。現在の状況を整理したうえで、内容証明郵便の送付や調停の申し立てなど、次にとるべき手続きを一緒に検討できます。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了