離婚と相続!子は遺産相続可能?元妻は相続権なしで財産を取得?
- 離婚したあとの遺産相続はどうなる?割合は?
- 離婚したら元妻には相続権はない?子どもには相続権がある?
- 離婚した元夫の相続財産を貰える方法があるって本当?
離婚後に元夫が死亡した場合、自分や元夫との間の子どもに相続権はあるのでしょうか。
この記事では、離婚後に元配偶者や子どもに相続権があるかどうかをわかりやすく解説します。
相続分に不満がある場合や、元夫の財産を子どもに相続させたくない場合の対処法もご説明します。
離婚後の相続問題は、複雑な人間関係が絡むためトラブルになりがちです。問題が大きくなる前に、ぜひお早めに弁護士にご相談ください。
目次
離婚後に遺産相続する人は誰?
離婚したら元配偶者は相続できない?
離婚した場合、夫婦は法律上は他人になります。そのため、離婚した元配偶者は、相続権がなくなります。離婚した相手(元夫、元妻)が死亡して相続問題が発生しても、お互い相続人にはならず、財産を相続することはできません。
下の図の場合、A女は、B男と離婚しているため、B男が死亡しても相続人になりません。
反対に、A女が死亡しても、B男は相続人になりません。
離婚しても子供は元夫の相続人になる?
離婚した場合、別れた元妻、元夫の間に相続権が生じることはありませんでした。
しかし、元妻・元夫の間に生まれた子どもは、両親が死亡した場合に、相続権を有することになります。
離婚した場合、夫婦のどちらが親権者になったかに関係なく、子どもは父母それぞれの相続人になります。
たしかに、離婚により夫婦関係は解消することになります。
しかし、離婚によって親子関係は解消されません。
そのため、親が離婚した後も、子どもは両方の親の財産について相続権を有することになります。
上の図の場合、元夫が死亡したら、AとBが、元夫の相続人になります。
この場合、子ども達は、元夫の遺産を折半することになるので、子どもの法定相続分は、それぞれ2分の1となります。
離婚後に元夫が再婚した…前妻の子どもの相続権は?
このことは、子どもを引き取った側が再婚し、その再婚相手と子どもが養子縁組した場合も同じです。
例えば、上の図で元配偶者が再婚したとします。
その場合でも、A、Bは、元夫の相続人となります。
また、再婚相手とA、Bが養子縁組をしたとしても、元夫の相続人となることに変わりありません。
元夫の遺産を相続する場合の法定相続分は、それぞれ2分の1ずつです。
【参考】養子縁組した再婚相手と子どもの相続権
なお、上記の図のように、再婚相手と連れ子が養子縁組した場合は、再婚相手が死亡したとき、元配偶者のほか、子どもであるA、Bも、再婚相手の相続人になります。
この場合の法定相続分は、元配偶者が2分の1、子A、Bがそれぞれ4分の1となります。
【参考】法定相続分の一覧表
親族構成 | 配偶者あり | 配偶者なし |
---|---|---|
子どもあり | 配偶者 1/2 子ども 1/2 | 子ども 1 |
直系尊属あり子どもなし | 配偶者 2/3 直系尊属 1/3 | 直系尊属 1 |
兄弟姉妹あり子どもなし直系尊属なし | 配偶者 3/4 兄弟姉妹 1/4 | 兄弟姉妹 1 |
配偶者のみ | 配偶者 1 | ー |
子ども、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹が複数いる場合はさらに人数分で均等に分割します。
離婚後に子どもが死亡した…孫が元夫の相続人になる?
相続人になるはずだった元夫との間の子どもがすでに死亡していた場合は、その相続人の子ども(被相続人の孫)が代襲相続人になり、元夫の遺産を相続します。
代襲相続とは、本来相続人になる予定だった人が、死亡などの事情で相続人とならなかった場合に、その子が代わりに遺産相続をすることです。
上の図でいうと、被相続人が死亡した時点で子Aはすでに死亡しています。
この場合、Aの子であるCとDが代襲相続人になります。
したがって、法定相続人は、B、C、Dの3人になります。
法定相続分については、Bが2分の1になります。
CとDの法定相続分は、Aが取得する予定だった2分の1の遺産を折半することになるので、それぞれ4分の1となります。
なお、元夫がすでに死亡した後に、元夫の親(子どもの祖父母)が死亡した場合も同様に考えます。
父親がすでに他界している場合、子どもは父親の代わりに、死亡した祖父母の遺産を代襲相続することになります。
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離婚した元夫が再婚…相続人の範囲はどうなる?
離婚した元夫が再婚…相続人は誰になる?
元夫が再婚しても、前妻との間の子どもは相続人になります。
一方、離婚した元配偶者は相続人になりません。
上の図でいうと、被相続人が死亡した場合、相続人は再婚相手と、前妻との間の子であるA、Bになります。
法定相続分は、再婚相手が2分の1、AとBがそれぞれ4分の1となります。
元夫と再婚相手との間に子供がいる場合の相続人は?
再婚後、元夫と再婚相手との間に子どもが生まれた場合、その子どもも元夫の相続人になります。
相続分は、前妻との間の子どもと再婚相手との間の子どもで変わりません。
上の図でいうと、被相続人が死亡した場合、再婚相手とその子どもCに加え、前妻との間の子どもA、Bが相続人になります。
法定相続分は、再婚相手が2分の1になります。
子A、B、Cの法定相続分は、残りの2分の1を3人で平等に分けることになるので、それぞれ6分の1となります。
【参考】離婚後の遺産分割でトラブル!?対処法は?
前妻の子ども、再婚相手、再婚相手との間の子どもで遺産分割協議をすることになった場合、感情的な対立が起こりがちです。
そのような場合、遺産分割について、なかなか合意できないことも少なくありません。
仮に合意でき、自分たちで遺産分割協議書を作成したとしても、「そんなことは言っていない」など後々トラブルになる可能性があります。
相続トラブルを避けるには、最初から弁護士などの専門家を介して、相続人全員が納得した上で法的に不備のない遺産分割協議書を作成しておくのがおすすめです。
元夫の再婚相手に連れ子がいた場合の相続人は?
養子縁組した場合
元夫が、再婚相手の連れ子と養子縁組した場合、連れ子は元夫の相続人になります。
上の図でいうと、被相続人(元夫)が死亡した場合、相続人は、再婚相手と連れ子C、前妻との間の子どもであるA、Bになります。
法定相続分は、再婚相手が2分の1、A、B、Cがそれぞれ6分の1になります。
養子縁組しなかった場合
一方、元夫が再婚相手の連れ子と養子縁組しなかった場合、連れ子は元夫の相続人になりません。
下の図でいうと、被相続人(元夫)が死亡した場合、相続人は、再婚相手と、前妻との間の子どもA、Bになります。
法定相続分は、再婚相手が2分の1、A、Bがそれぞれ4分の1になります。
離婚後、元夫と暮らす子供を相続人にしない方法
離婚した元夫と暮らす子供を「廃除」する
離婚後、元配偶者と暮らす我が子を、自分の相続人にしたくないというケースもあるでしょう。
離婚後、元配偶者と暮らす我が子に遺産相続させたくない場合、相続廃除という方法をとることも考えられます。
廃除とは、遺留分を有する推定相続人の相続資格を剥奪する制度です。
廃除されると、その人の取り分はゼロになります。
ただし廃除原因は限定されており、被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他著しい非行がある場合のみ、廃除が可能です。
特定の相続人に相続させる「遺言書」を作成
離婚した夫と暮らす自分の子どもに、遺産相続させたくない場合、特定の相続人に相続させる旨の「遺言」を残すという方法も考えられます。
遺産を取り戻すという手続き(遺留分侵害額請求)が実行されなければ、相続させたい人に、相続させたい分だけ、遺産を取得させることができます。
遺留分侵害額請求については、次の項目で詳しく述べます。
遺産の取り分に不満があれば遺留分侵害額請求が可能?
遺産の最低限の取り分(遺留分)が侵害されたらどうする?
離婚後の相続では、父親や母親が新しい家庭を作っていることも多く、元配偶者との間の子どもを相続人にしたくないと考えるケースも多いものです。
そのため、離婚後に元夫が死亡して相続が発生した場合、前妻と元夫との間に生まれた子どもの遺留分が侵害されていないか必ず確認してください。
例えば、離婚した元夫が「再婚相手とその間に生まれた子どもにのみ遺産を相続させる」という内容の遺言書を書いている場合もあるでしょう。
この場合、前妻との間に子どもがいれば、その子どもは父親の遺産の最低限の取り分(遺留分)を侵害されることになります。
遺留分
遺留分とは、一定範囲の相続人について、最低限の取り分を法律上確保する制度。
そのため、前妻との間の子は、父親の再婚相手とその子どもに対し、遺留分侵害額請求を行うことができます。
※遺留分権利者は誰?
遺留分権利者は、被相続人の配偶者、子、直系尊属(父母など)です。これらの者は、被相続人の遺産について、法律で最低限の取り分が確保されています。
なお、兄弟姉妹に遺留分はありません。
遺留分 | |
---|---|
配偶者 | ○ |
子 | ○ |
直系尊属(父母など) | ○ |
兄弟姉妹 | ✕ |
※注意点
前妻の子どもが、相続人から「廃除」されていた場合、相続分はゼロになるので遺留分侵害額請求はできません。
※父親の再婚相手から遺産分割協議の連絡がきたら…
父親の再婚相手から前妻の子どもに対し、「相続が発生したので遺産分割協議を進めたい」旨の連絡がくる場合もあります。
しかし、その場合も、再婚相手の言い分どおりに遺産分割協議を進めてよいかどうか慎重な検討が必要です。
というのも、再婚相手は、被相続人と同居し相続財産の内容をよく知っているものです。これに対し、前妻の子どもは、離婚して離れて暮らすことになった親とは疎遠になる場合が多く、相続財産の内容をよく知らないのが一般的だからです。
再婚相手から遺産分割協議の連絡がきた場合は、相続財産の内容や、相続割合が適正かどうかについて、弁護士に一度相談するのがおすすめです。
離婚後はどうやって遺留分侵害額請求をおこなう?
遺留分侵害額請求をする場合、まずは相手方に対し、内容証明郵便を送るのがおすすめです。
相手方が任意に支払わない場合、家庭裁判所に対し、遺留分侵害額請求調停を申し立てます。
調停不成立の場合、最終的には民事訴訟を提起することになります。
遺留分は相続財産の何%?具体例で計算方法を解説!
遺留分は法律で定められています。
相続人が配偶者と子どもの場合、遺留分は相続財産の2分の1です。
各法定相続人は、この遺留分を法定相続分の割合だけ取得します。
下の具体例をご覧ください。
こちらの具体例の場合、相続人は、再婚相手、再婚相手との間の子B、前妻との間の子Aです。
それぞれの遺留分は、再婚相手が4分の1、AとBが8分の1ずつとなります。
遺留分の計算方法としては、以下のとおりです。
遺留分の計算の仕方
まず、各人の法定相続分について確認をします。
各人の法定相続分は、再婚相手が2分の1、AとBがそれぞれ4分の1となります。
次に、遺留分の割合を計算します。
各人の遺留分は、以下のように計算することができます。
【各人の遺留分】
- 再婚相手:1/2×1/2=1/4
- A:1/2×1/4=1/8
- B:1/2×1/4=1/8
よって、相続財産の総額が4,000万円の場合、各人の遺留分相当額は、以下のとおりとなります。
【各人の遺留分相当額】
- 再婚相手:4,000万円×1/4=1,000万円
- A:4,000万円×1/8=500万円
- B:4,000万円×1/8=500万円
以上より、被相続人が、相続財産は前妻との間の子Aには取得させないという内容の遺言書を遺していた場合、前妻との間の子Aは、500万円相当の遺留分を侵害されていることになります。
この場合、Aは、再婚相手と子Bに対し、遺留分侵害額請求として500万円の支払を請求できます。
なお、遺言を残した被相続人の意思を尊重して、遺留分侵害額請求をしないこともできます。遺留分侵害額請求をおこなうかどうかは、遺留分権者の選択にゆだねられています。
遺留分侵害額請求の期限は?
次のいずれかの期間を経過すると、遺留分侵害額請求はできなくなります。
請求期限
- 遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ってから1年
- 相続開始から10年
上記の期間が経過する前に内容証明郵便を送るなどして、遺留分侵害額請求の意思表示ができるよう、請求期限にご注意ください。
離婚した元夫の財産を子供に相続させない方法
子供にとって相続しないほうがよい場合とは?
元夫に多額の借金があると分かっている場合、何もしないままだと、元夫との間の子どもが元夫の借金も相続してしまいます。
この場合、子どもは、元夫の借金について返済義務を負います。
このような事態を避ける方法は2つあります。
「相続放棄」と「限定承認」です。
以下、それぞれの方法について詳しく解説します。
①相続放棄の方法
相続放棄とは、被相続人の財産を一切受け継がないことを意味します。
相続放棄をした人は、その相続に関して、当初から相続人にならなかったものとみなされます。
その結果、被相続人の借金を負担する義務はなくなります。
相続放棄の効果を生じさせるには、必ず家庭裁判所の手続きを経る必要があります。
相続放棄の申述は、単独で行うことができます。
管轄の家庭裁判所や必要書類の確認、相続放棄申述書のダウンロードは、裁判所のホームページから可能です。
申述期限は、自己のために相続開始があったことを知ったときから3か月以内です。
相続放棄をした人は、相続財産を一切受け継がないので、相続税を支払う義務も原則としてありません。
ただし、生命保険金を受け取った場合、相続放棄をしても、例外的に相続税の支払義務が生じる場合があります。
不安な方は、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
②限定承認
限定承認は、プラスの相続財産の範囲でマイナスの相続財産を引き継ぐことを意味します。
マイナスの財産を返済した後、プラスの財産が残っていれば相続できます。
被相続人の債務がどの程度あるか分からない場合は、限定承認を選択するのも一つの方法です。
限定承認の効果を生じさせるには、必ず家庭裁判所の手続きを経る必要があります。
限定承認の申述は、相続人全員が共同して行う必要があります。
管轄の家庭裁判所や必要書類の確認、限定承認の申述書のダウンロードは、裁判所のホームページから可能です。
申述期限は、自己のために相続開始があったことを知ったときから3か月以内です。
離婚時なら前妻も財産がもらえる?
離婚時の財産分与とは?
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して蓄えた財産を、離婚時に分配する制度です。
離婚時の財産分与の対象となるものは、夫婦の共有財産です。
なお、婚姻前に各自が蓄えていた財産は、特有財産と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。
また、婚姻中であっても、各自が、相続や贈与などによって独自に取得した財産についても、特有財産となり、財産分与の対象にはなりません。
相続財産が財産分与の対象になるって本当?
すでに触れましたが、離婚してしまえば、元夫を相続することはありません。
ましてや離婚時に元夫が死亡しているわけではないので、元夫の遺産を財産分与することもあり得ません。
相続財産が財産分与の対象になるかという問題提起は、「婚姻中、一方の配偶者が親などの遺産を相続した場合、離婚する時、その遺産の財産分与は可能か」という意味になります。
通常、遺産は夫婦の共有財産にならないと考えられるため、原則的には、財産分与の対象にはなりません。
しかし、例外的に、遺産であっても、夫婦の共有財産と考えることができるケースもあります。
そのようなケースでは、夫婦の一方が相続した財産も、離婚時に財産分与の対象とすることができます
相続財産が財産分与の対象になるケース
相続財産が、離婚時に財産分与の対象になるケースとしては、夫が相続した財産を夫婦の生活費にあてていたなどのケースが考えられます。
- 夫が相続した遺産を、夫婦の生活費にあてていた
- 夫が相続で取得した実家について、夫婦のお金で修繕した
- 夫が相続した事業を、夫婦で共同経営していた
etc.
夫が相続した遺産であっても、妻がその維持・管理などにかかわり、価値の向上に貢献したと評価できる場合は、離婚時に財産分与の対象とできる可能性があります。
財産分与について詳しく知りたい方は、「離婚時の財産分与とは?対象となる財産と分け方を解説!」の記事もご覧ください。
離婚後の相続に関するお悩みは弁護士へ
離婚をした場合、元配偶者の間では相続はおこりませんが、お子様との親子関係は切れないため、親子間の相続は問題になります。
離婚後の財産、相続の問題については、法律の専門的な知識を用いて対策を講じる必要があります。
また、離婚後の相続問題は、そもそも相続すべきかどうかで悩む方が多いのが通常です。
ご自分で判断がつかない方は、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、相続財産や相続人を調査できます。そのため、相続する、相続放棄する、限定承認するなどの方法のうち、どれを選択すべきかについて、適切なアドバイスをすることができます。
なお、元夫、元妻の間で婚姻期間中の財産の清算をしたい場合は、財産分与という制度を活用することが考えられます。
弁護士が間に入ることで、冷静な交渉が可能になるメリットがあるでしょう。
相続放棄や限定承認、離婚時の財産分与には期限がありますので、少しでも不安のある方は、ぜひお早めに弁護士にお問合せください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了