離婚届不受理申出とは|離婚届を勝手に出させない!

次のような状況にある方は、離婚届不受理申出の手続きをしておくことをおすすめします。
- 離婚を強く迫られているが、応じるつもりがない
- いずれ離婚するつもりだが、親権者がまだ決まっていない
- 以前に離婚届へ署名したが、今は離婚する気がなくなった
離婚の意思がないにもかかわらず、相手が勝手に離婚届を提出した場合、書類に不備がなければ市区町村の窓口でそのまま受理されてしまいます。
一度離婚届が受理されると、これを覆すには家庭裁判所に調停や裁判を申し立てる必要があり、解決まで多くの時間と手間がかかります。
離婚届不受理申出は、こうした事態をあらかじめ防ぐための手続きです。
この記事では、離婚届を勝手に提出されるとどうなるか、不受理申出に必要な手続き、もし勝手に提出されてしまった場合の対処法を解説します。
離婚届不受理申出とは?
離婚届を勝手に出させないための申請
「離婚届不受理申出(りこんとどけふじゅりもうしで)」とは、離婚届が勝手に提出されても受理されないように役所に申し出る手続きです。
夫婦のどちらかが離婚に同意していない場合や、離婚条件の折り合いがついていない場合などに、相手や第三者が勝手に離婚届を提出してしまうケースがあります。
離婚届を勝手に出されたらどうなる?
離婚の意思がないのに勝手に提出された離婚届は、法律上は原則として無効です。しかし、市区町村の窓口では届出書の記入内容が形式的に整っていれば受理されてしまうため、気づかないうちに離婚が戸籍に記載されるケースがあります。
離婚するつもりはないのに届出が受理されてしまえば混乱は避けられませんし、いずれ離婚する気はあっても、条件を決める前に届出を出されると様々な不利益が生じます。
なかでも、親権争いがある場合は特に注意が必要です。
離婚届には、未成年の子どもの親権者を必ず記入することになっています。自分を親権者として記入した届出が受理されれば、相手の同意なしに親権者として戸籍に記載されてしまいます。
一度こうした状態になってしまうと、戸籍の記載を覆すためには家庭裁判所への調停や裁判の申し立てが必要で、解決まで相当な時間と労力がかかります。
また、慰謝料や財産分与などの離婚条件についても、離婚届が受理された後は対等な立場での話し合いが難しくなります。財産分与は離婚成立の時から5年を過ぎると家庭裁判所への申し立てができなくなるため、意図しないタイミングで届出を出されてしまうことは、確実に防がなければなりません。
離婚届不受理申出の手続き
離婚届不受理申出の手続きで必要なもの
| 必要書類 | 離婚届不受理申出書、本人確認書類 |
| 書式の入手方法 | 市区町村役場または自治体ホームページ |
| 申出人 | 夫または妻(代理人不可) |
| 提出場所 | 本籍地または住所地の役所 |
| 提出方法 | 市区町村役場の窓口に直接提出(郵送不可) |
離婚届不受理申出に必要な手続きは、離婚届不受理申出書の提出のみです。申出書の書式は、役所の窓口で受け取れます。また、ホームページで書式をダウンロードできる自治体もあります。
届出ができるのは夫または妻で、第三者や代理人が提出することはできないほか、郵送での提出も原則として認められません。
なお、マイナンバーカードや運転免許証といった、本人確認書類も忘れないようにしましょう。
夜間・休日でも不受理申出を提出できる!
当直室や夜間・休日窓口が設置されている役所であれば、役所の開庁時間外に離婚届不受理申出を提出することができます。
開庁時間外に持っていった場合、その場で届出が受理されるわけではなく、窓口で届出を預かってもらう形になります。書類は翌開庁日以降に審査され、不備があれば連絡が来ます。
不備があった場合、再度役所へ行って修正を求められることもあるため、時間外に提出する際は書類の不備に気を付けてください。
離婚届不受理申出は本籍地以外でも提出できる!
離婚届不受理申出書の提出先は、本籍地または住所地の役所です。本籍地の市区町村役場への提出が望ましいとされています。
遠方に住んでいるなどで本籍地に提出するのが難しければ、現在の住所地の役場でも構いませんが、本籍地以外に提出した場合は、本籍地との照会手続が必要となるため、処理に時間を要する場合があります。
処理に時間がかかっている間は、相手が離婚届を提出すると受理されてしまうことになるため、できるだけ本籍地に提出することをおすすめします。
離婚届不受理申出に有効期限はない
離婚届不受理申出に有効期限はなく、申出をした本人が取り下げない限りずっと有効です。
申出後に引っ越したり本籍地が変わったりしても、不受理申出の効力は失われません。
不受理申出の効力が失われるのは、次の4つの場合に限られます。
離婚届不受理申出が効力を失うとき
- 申出をした本人が取下げの手続をした
- 申出をした本人が窓口に出頭して離婚届を提出し、受理された
- 裁判により離婚が成立した
- 申出人が死亡した
離婚届不受理申出を取り下げる方法は?
離婚届不受理申出を取り下げるためには、申出をした本人が「不受理申出取下書」を記入して役所に提出する必要があります。このときに、本人確認書類が必要です。郵送による取下げの手続きは、原則的には認められません。
無事に離婚の話し合いが決着し、自分で離婚届を提出しに行く場合は、不受理申出を取り下げなくても離婚届の提出ができ、不受理申出は自動的に失効します。
離婚届不受理申出をしたら相手にバレる?
離婚届不受理申出をしたこと自体が相手に通知されることはありません。
相手が不受理申出に気づくとしたら、離婚届を提出しようとして受理されなかった時です。
なお、仮に不受理申出を行ったことが相手にバレたとしても、相手方は異議を申し立てたり強制的に取り下げさせることはできません。
とはいえ、不受理申出を行ったことで逆恨みされたり、嫌がらせを受けるなどの可能性はゼロではありません。
また、こちらが離婚届不受理申出をしたあと、相手が離婚届を提出した場合には、こちら側に「相手が離婚届を提出した」という連絡が来ることになっています。
相手が離婚届不受理申出を出すと離婚できない?
「逆にこちら側が離婚したいのに、相手が離婚届不受理申出をしていて困っている」という方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、相手が離婚届不受理申出を出したときの離婚の進め方について解説します。
まずは相手に申出を取り下げてもらうよう相談する
まずは、相手に申出を取り下げてもらうよう相談してみましょう。可能性は低いとは思いますが、場合によっては取り下げてもらえるかもしれません。
相手に離婚届を提出してもらうよう相談する
相手に離婚届を提出してもらうよう相談するというのも一つの手です。
不受理申出を出した本人が離婚届を提出しに行く場合は、不受理申出を取り下げなくても離婚届の提出ができ、不受理申出は自動的に失効することになります。
ただし、「相手に申出を取り下げてもらう」「相手に離婚届を提出してもらう」というのは、なかなか難しいということがあるでしょう。
説得するのが難しかったり、相手と顔を合わせるのも嫌だったりする場合は、弁護士に相談して、相手と交渉してもらうというのも有効です。仮に弁護士の交渉で相手が拒否したとしても、次の調停や裁判といったステップで、弁護士は心強い味方になってくれます。
離婚調停や離婚裁判をする
相手が離婚届不受理申出を取り下げず、こちらも離婚したいという気持ちが変わらない場合は、離婚調停や離婚裁判で離婚を目指すことになります。
離婚調停は、夫婦間の話し合いでは離婚に関して合意ができなかったときに、裁判所の調停委員会のもとで話し合いを行う離婚の方法です。
離婚調停によって夫婦間で合意があった場合は、離婚届不受理申出を出していたとしても、離婚をすることができます。
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離婚調停でも話がまとまらなかったという場合は、離婚裁判に進むことになります。なお、いきなり裁判を起こすということは原則できず、先に調停をおこなってから裁判を起こすという流れになることに留意してください(調停前置主義)。
離婚裁判で離婚が決定した場合は、離婚届不受理申出は効力を失います。そのため、もし相手が離婚届不受理申出を出していたとしても、離婚裁判で離婚が認められれば、離婚できるということになります。
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離婚届を勝手に出されたらどうすればいい?
離婚届を勝手に出されたらどうやって分かる?
離婚届を提出する時にその場にいなかった当事者には、後日「離婚届受理通知」が送付される場合があります。送付の有無や運用は自治体によって異なります。
その受理通知が届いたときや、戸籍謄本を取得したときなどに、離婚届を勝手に提出されたと知ることになるでしょう。
離婚届を偽造して勝手に出すのは罪になるおそれ
協議離婚の離婚届は、夫婦の双方と2名の証人がそれぞれ自筆で署名する必要があります。
署名を偽造して離婚届を勝手に提出する行為は、「有印私文書偽造罪・同行使罪」や「電磁的公正証書原本不実記載罪」などの犯罪にあたるおそれがあります。
また、「離婚の意思がないのに勝手に離婚届を出されてしまい、精神的苦痛を被った」として、慰謝料を請求されるおそれもあります。
「別居中で離婚の話が進まない」「離婚を認めてくれない」といった事情があったとしても、離婚届を偽造して勝手に提出する行為は絶対にやめましょう。
勝手に出した離婚届は無効?
協議離婚の場合、離婚届を提出する時点で双方に離婚の意思がなければ、離婚届は無効であるというのが原則です。以前に署名した離婚届があったとしても、それを提出するときに離婚したくないと考えているならば、離婚は無効なのです。
しかし、役所の窓口で離婚の意思を確認することはありませんので、書面が正しく書かれてさえいれば、離婚届は受理されてしまいます。
勝手に出された離婚届は無効であるとはいえ、一度受理された以上、覆す手続きは簡単ではないという点に留意してください。
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勝手に出された離婚届を無効にするには?
必要な手続きを踏めば、勝手に届け出られた離婚を無効にできる可能性があります。正確には、離婚がもとから無効であったことを確認し、戸籍を訂正する手続きです。
成立してしまった離婚を取り消したい場合は、家庭裁判所に「協議離婚無効確認調停」を申し立てます。
調停では、家庭裁判所の調停委員会を介して、当事者同士の話し合いを行います。調停の中で双方が離婚が無効である旨の合意ができ、裁判官もそれを正当と認めれば、裁判官は合意にしたがって審判をします。
もし調停が不成立になったら、「離婚無効確認訴訟(協議離婚無効の訴え)」を提起して、裁判で争うことになります。
参考
勝手に決められた親権者を変えるには?
離婚届を勝手に提出されると、子どもの親権者もあわせて決められてしまいます。これを覆すためには、家庭裁判所に調停や裁判を申し立てる必要があります。
ただし、こうした手続きは時間も手間もかかるうえ、親権者の変更が必ず認められるとは限りません。
裁判所は「子どもの利益のために必要かどうか」を基準に判断するため、勝手に決められたという事情だけで変更が認められるわけではないためです。親権を守るうえで最も確実な方法は、やはり勝手に離婚届を出されることを事前に防ぐことです。
なお、離婚自体は受け入れつつ、親権者の決め方だけが納得できない場合は、「離婚の成立」と「親権者の指定」を切り分けて争うことも、実務上は可能とされています。
離婚届を勝手に出されそうなら弁護士に相談!
相手との話し合いが上手くいかず、勝手に離婚届を提出されてしまいそうな状況なら、まずは離婚届不受理申出を行い、弁護士に相談しましょう。
いずれ離婚に応じるつもりの方も、離婚届を提出する前にしっかりと離婚条件の話し合いを行うことが重要です。弁護士は、依頼者の代理人となって相手方との離婚交渉ができます。
離婚でご不安なことがあれば、まずは弁護士にご相談ください。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
相手方に離婚届の提出を任せたい場合は、必ず自身で不受理申出取下げの手続きを行ってからにしましょう。