離婚後の生命保険はそのままでいい?手続きと見直しポイントを解説

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離婚したら保険は?

離婚後も生命保険はそのまま続けられます。ただし、受取人を変更しておかないと、万が一のときに元配偶者へ保険金が支払われてしまう可能性があります。

また、積立型の生命保険は、解約返戻金が財産分与の対象になることもあります。財産分与の請求には期限があるため、早めの対応が重要です。

この記事では、離婚時に必要となる生命保険の手続きや、損を防ぐための見直しポイントを弁護士がわかりやすく解説します。

離婚したら生命保険はどうなる?

離婚しても生命保険はそのまま継続できる

離婚後も生命保険はそのまま継続できます。離婚によって保険契約が自動的に解約されたり、内容が変わったりすることはありません。

ただし、契約内容によっては受取人や契約者の変更が必要になる場合があります。変更手続きを行わないまま放置すると、万が一の際に元配偶者へ保険金が支払われてしまうなど、将来トラブルが生じるおそれがあります。

離婚前に契約内容を確認し、必要な手続きを済ませておくことが重要です。

生命保険の解約返戻金は財産分与の対象になる

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産を離婚時に公平に分け合うことをいいます(民法第768条)。

積立型・貯蓄型の保険に入っている場合、解約返戻金が財産分与の対象になります

離婚時に生命保険を解約した場合は実際の解約返戻金を、解約しない場合は、仮にその時点で解約した場合に受け取れる返戻金を、財産分与の額に含めることができます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

2026年4月1日施行の民法改正により、財産分与の請求期間は離婚後5年以内に延長されました。ただし、2026年3月31日以前に離婚した場合は従来どおり離婚後2年以内が適用されます。

掛け捨て型の生命保険は解約返戻金がないため、財産分与の対象にはなりません。

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離婚後に後悔しないための生命保険の手続き

離婚前に生命保険の契約内容を確認する

離婚時に生命保険の契約内容を見直しておかないと、将来損をしてしまう可能性があります。契約者・被保険者・保険金受取人が誰であるか、保険料、保障の内容を必ず確認しておきましょう。

確認した結果、何らかの手続きが必要と分かった場合は、離婚前に手続きを済ませておくことを強くおすすめします。

生命保険の変更手続きは契約者本人でなければできませんが、配偶者が契約者であった場合、離婚後に連絡が取れなくなってしまうおそれがあるためです。

生命保険の契約者を変更する

生命保険には、契約者・被保険者・保険金受取人という3つの立場があり、契約者と被保険者が異なる場合があります。

例えば、契約者が夫で、妻が被保険者の場合、離婚の際に契約者を夫から妻に変更しておく必要があります。契約者が夫のままになっていると、離婚後に夫が勝手に保険を解約し、解約返戻金を持ち逃げしてしまう可能性があります。

生命保険の契約者を変更するには、保険会社に連絡して所定の手続きを行います。一般的に求められる書類は次のとおりです。

  • 契約者変更請求書(申請書)
  • 本人確認書類
  • 保険証券
  • 被保険者の同意書

必要書類や手続きの詳細は保険会社によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

保険金受取人を変更する

多くの夫婦は互いを生命保険の受取人にしていますが、離婚後も元配偶者のままにしていると、万が一の際の保険金はそのまま元配偶者に支払われます。

保険金は受取人固有の財産として扱われるため、現在の家族(子どもや再婚相手)には渡りません。受取人の元配偶者がすでに亡くなっていた場合でも、保険金の受取権は元配偶者の相続人(再婚相手や親族など)に移ります。

こうした不本意な結果を防ぐため、離婚時には必ず保険金の受取人を見直し、子どもや親、再婚相手など適切な人に変更しておくことをおすすめします。

保険金の受取人の変更は、契約者であれば原則としていつでも可能です。ただし、手続きが完了する前に万が一のことが起きた場合、保険金は変更前の受取人に支払われるおそれがあります。変更を決めたら、速やかに保険会社へ連絡して手続きを進めましょう。

指定代理請求人を変更する

被保険者と受取人が同一の保険契約では、指定代理請求人に配偶者を指定しているケースがあります。

指定代理請求人とは、被保険者が意識不明や病名の未告知などの事情により自ら保険金を請求できない場合に、本人に代わって請求手続きができる人のことです。多くの保険会社では指定代理請求人の範囲を「戸籍上の配偶者」や「三親等内の親族」などに限定しているため、離婚により要件を満たさなくなる可能性があります。

指定代理請求人が配偶者となっている場合は、離婚前に変更しておきましょう。

住所や氏名(姓)を変更する

離婚により旧姓に戻る場合は、保険契約の氏名変更も必要です。旧姓のままでは、将来、保険金の受け取りや契約の管理でトラブルが生じるおそれがあります。

また、引っ越しをする際は住所や電話番号の変更も忘れずに行いましょう。

生命保険を解約する場合の注意点

離婚して独身になるからといって、むやみに生命保険を解約するのはおすすめできません。

後で再加入したくなった時、健康状態によっては加入できなかったり、保険料が高くなってしまう可能性があるため、子どもがいなくても解約は慎重に考えなければなりません。

また、仮に自分が子どもを引き取らなかった場合も、養育費を支払う義務は残ります。しかし、自分が働けなくなったら養育費を支払うことができません。そういった時のために、保険金の受取人を子どもとして生命保険に加入し続けるというような取り決めを離婚時に行うことがあります。

離婚後の生活に合わせて保障内容を見直そう

生命保険の保障を厚くするケース

生命保険の契約者や受取人だけでなく、保障内容も見直しましょう。

ひとり親家庭になる場合は、自分が働けなくなってしまったら子どもの生活が立ち行かなくなるおそれがあるため、保障を厚くしておくと安心です。

生命保険の保障内容を厚くするには、主に3つの方法があります。

①追加契約

現在契約している生命保険に加えて、新たに保険を契約する方法です。

②特約の中途付加

現在契約している生命保険に、新たに特約を付ける方法です。死亡保障を増額するための定期保険特約や、病気やケガに備えるための疾病入院特約などが代表例です。

③転換

現在契約している生命保険を解約し、より手厚い保障のある生命保険に入り直す方法です。

現在契約している保険の積立部分や積立配当金を「転換(下取り)価格」として、新しい契約の保険料に充てることができるため、保険料の負担を抑えられる場合があります。

生命保険の保障を減らしてもいいケース

一方、離婚によって養うべき家族が減る場合は、保障内容を減らすことで保険料の負担を少なくすることができます。

保障内容を減らすには、以下の2つの方法があります。

①一部解約(減額)

現在契約している保険の一部分のみを解約する方法です。保障内容は少なくなりますが、保険料を安く抑えることができます。解約した部分について、解約返戻金が支払われる場合もあります。

②特約の解約

現在契約している保険の特約のみを解約する方法です。特約部分の保障は受けられなくなりますが、保険料を安く抑えることができます。

離婚時の生命保険についてよくある質問

Q. 離婚後に生命保険の受取人を変更し忘れたらどうなる?

受取人を変更しないまま被保険者が亡くなった場合、保険金は元配偶者に支払われます。離婚によって配偶者の地位を失っても、変更手続きがない限り受取人としての地位は維持されるためです。保険金は受取人固有の財産として扱われるため、子どもや再婚相手が受け取ることはできません。離婚後に気づいた場合でも手続きは可能なため、速やかに保険会社へ連絡しましょう。

Q. 子どもを生命保険の受取人にできる?

未成年の子どもでも受取人に指定できます。ただし、未成年者は自ら保険金の請求手続きができないため、親権者または未成年後見人が手続きを行います。離婚後に子どもを受取人にする場合、元配偶者が親権者となるケースでは、保険金の受取手続きを元配偶者が担うことになります。事前に手続きの流れを確認しておくとよいでしょう。

Q. 元配偶者が契約者の場合、離婚後に自分で保険を管理できる?

契約者が元配偶者のままでは、解約や契約内容の変更は元配偶者にしか行えません。知らないうちに解約されたり、契約者貸付を利用されたりするリスクもあります。離婚後に連絡が取れなくなると手続きが困難になるおそれがあるため、離婚前に契約者を自分に変更しておくことが重要です。変更には元配偶者(契約者)の申し出と被保険者の同意、さらに保険会社の承諾が必要です。早めに保険会社に確認しておきましょう。

Q. 離婚したら生命保険は解約すべき?

離婚したからといって、必ずしも生命保険を解約する必要はありません。安易に解約すると、将来あらためて加入しようとした際に、健康状態によっては加入できなかったり、保険料が高くなったりすることがあります。解約時には解約控除として一定額が差し引かれるため、契約期間が短いほど損になるケースもあります。特に子どもがいる場合は、万が一働けなくなったときの生活保障として保険を継続しておくと安心です。解約を考える前に、まずは受取人や契約者の変更を行ったうえで、保障内容の見直しを検討しましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了