空手の事故|部活中の怪我は学校や顧問の責任?損害賠償請求は認められる?
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空手・空手道は、型と組手を基本とした武道です。年齢・性別問わず広く親しまれており、学校の部活動や体育の授業でも扱われています。
自分の子どもが部活や体育の授業で怪我をしてしまったとき、保護者はどんな対応がとれるのでしょうか。また、学校や空手部の顧問が負う責任とはどのようなものがあるでしょうか。
学校側に空手事故が起こった原因があるなら、その責任を追及し、損害賠償請求が可能です。
本記事では、空手事故で損害賠償請求できるケースや弁護士に相談するメリットを解説します。学校管理下での怪我を補償してくれる災害共済給付についても触れていますので、併せてお役立てください。
目次
空手の事故|学校で起こりうるケース
空手部での練習中や授業中に事故が起こる可能性はゼロではありません。ここからは、学校で起こりうる空手事故のケースを考えていきましょう。
なお、以下に示す3つのケースはあくまで一例にすぎず、個々の事情によって状況は異なります。学校側に事故の責任があるとお考えの場合は、一度弁護士に相談して、見解をたずねてみてください。
(1)空手の練習中に熱中症になる
公益社団法人日本空手協会による「熱中症予防のお願い」が出ていることからも、空手にも熱中症のリスクはつきものといえるでしょう。
熱中症は死亡事故や重大な後遺障害につながる恐れのあるものです。実際に、学校の部活中に熱中症になってしまったり、死亡にいたる事故は起こっています。
学校の先生は、空手の練習をするのに適した環境であるかを見極めなくてはなりません。また、熱中症の症状を呈した生徒に対しては、応急処置を施すとともに救急車を呼ぶなどの迅速かつ適切な対応が求められます。
学校や先生に事故の責任があると判断される場合にかぎって、損害賠償請求が認められます。どういった場合に学校や先生の責任を問えるのかは本記事でも解説しますので、このまま読み進めてください。
(2)空手部の活動前にふざけていて怪我
空手部の練習前や体育の授業前に、生徒同士がふざけていて怪我をしたり、ふざけて遊んでいる生徒の行為に巻き込まれて怪我をするケースも起こりえます。
部活や授業の開始前または終了後に起こった事故について、学校側は関係がないと考える人もいるかもしれませんが、学校や先生にも責任があるものとして、損害賠償請求が認められる可能性は十分あります。
どういった場合に学校側に対して責任が問えるのかは後述しますので、このまま読み進めてください。
(3)空手道場の老朽化が事故を招く
学校が管理する施設・設備が安全性に欠けていたり、なされるべき定期点検に不備があったことで事故が発生したと認められるようなケースでは、学校側に責任を問えます。
詳しい解説は後述していますので、このまま読み進めてください。
空手の事故では災害共済給付を利用する
学校の管理下で空手をしていて負傷した場合や、授業中に怪我をした場合には、独立行政法人日本スポーツ振興センターの「災害共済給付」の補償を受けられます。
災害共済給付とは?
学校の管理下で起こった事故の補償を目的とした共済制度
なお、学校によっては災害共済給付に加入していないケースもありますので、まず共済加入状況を確かめる必要があります。
災害共済給付の申請から受給までの流れ
災害共済給付の申請から受給までの流れは次の通りです。
- 学校から申請に必要な書類を受けとる
- 医療機関に医療費の証明をもらう(学校から受けとった所定用紙を使う)
- 医療費の証明を学校に提出する
- 学校が災害共済給付の申請をおこなう
- 申請から3ヶ月程度で災害共済給付金をもらえる
保護者は学校に対して医療費の証明を提出する必要があります。医療費の証明は治療を受けた月ごとに必要とされるため、長期療養の際には各月で証明をもらいましょう。
災害共済給付の補償にも限度がある
災害共済給付には、医療費、障害見舞金、死亡見舞金という3つの給付金があります。それぞれ下表のように給付金額が定められています。
給付金額 | |
---|---|
医療費※ | 治療費の40% |
障害見舞金 | 88万円~4,000万円 |
死亡見舞金 | 3,000万円 |
※初診から治癒にかかる医療費が総額5,000円以上となること(3割負担で1,500円以上)
上表「災害共済給付の補償限度額」に記載の通り、災害共済給付は比較的軽傷の事故から重大な事故まで、幅広く補償の対象としているものです。
しかし、災害共済給付の金額は必ずしも十分とは言い切れません。特に、障害見舞金や死亡見舞金の対象となる重大事故の場合、災害共済給付の補償を超えた損害が発生する可能性があります。
重大事故の被害者に生じる損害のひとつ「逸失利益」を例に説明します。
逸失利益とは?
本来なら将来得られたはずの収入が得られなくなったという損害。原則、後遺障害が残ったり、死亡してしまった場合に認められる。
逸失利益は、学生が得られたであろう本来の年収、働けたであろう年数(就労可能年数)、労働能力がどの程度失われたかなどを考慮して算定します。逸失利益だけで、災害共済給付から支払われる障害見舞金の補償限度額を超えることもあるのです。
学校側に事故の原因がある場合には、災害共済給付を受けてもなお不足する損害部分を請求できます。
チェックポイント
- 学校管理下の事故は災害共済給付を利用して補償を受けられる
- 災害共済給付の補償にも限度があり、補償が足りない場合も存在する
- 学校側に事故の責任があるとき、災害共済給付の補償だけで足りない部分を請求できる
逸失利益を含む損害賠償請求額の見積もりは弁護士にご相談ください。
空手事故の損害賠償請求|学校や顧問に責任を問う
学校や顧問に対する損害賠償請求は認められる可能性があります。
もっとも、学校で生じるすべての事故に対して損害賠償請求が認められるわけではありません。学校や顧問に事故の責任があると認められた場合には、損害賠償請求が可能です。学校や顧問が負う責任についてみていきましょう。
学校に空手事故の責任を問える場合
学校に責任を問えるのかどうかは、事故が起こった原因によります。
事故の原因に「顧問の故意や過失が認められる場合」、「学校の施設や設備に問題があった場合」には、学校に責任を問えるのです。
顧問の故意や過失が認められる場合
顧問が意図して生徒を傷つけたり、体罰を与えるなどの行き過ぎた指導の結果に生徒が負傷した場合には、顧問の故意により事故が起こったものと判断されるでしょう。
少し想像しづらいのが、顧問の過失です。
顧問の過失とは、事故発生を予見したり、予見できたはずなのに、予防・回避するための適切な対策をとらなかったことをいいます。
イメージしやすいように、顧問の過失に関する2つの例を紹介します。
顧問の過失例1
空手の練習中に、生徒が熱中症を疑うべき症状で倒れた。しかし、顧問は十分に状況を確認せず練習を続行させ、生徒の体調が悪化して病院に搬送された。
顧問は生徒の状況を見極めて適切な処置をしなくてはなりません。また、熱中症の危険性を十分に理解しておく必要があります。それらを見過ごし、生徒を危険な目に合わせてしまったとして、顧問に責任が認められる可能性があります。
顧問の過失例2
部活前にいつもふざけて遊んでいる生徒がいた。顧問はそのことを知っており、注意をしたものの状況は変わっていなかった。ある日、ふざけている生徒の手が他の生徒の目にあたり、怪我をしてしまった。
部活前の事故であっても、顧問に対して責任を問える可能性がある例です。顧問はふざけて遊んでいる生徒に注意はしていましたが改善されず、結果として事故が起こってしまったのです。顧問の注意の仕方や行動が適切だったのかという点で、顧問の責任を問える可能性があります。
顧問は、生徒が怪我をすることなく、安全に過ごせるように注意しなくてはなりません。この義務を「安全配慮義務」といい、安全配慮義務を怠った顧問に過失があったと判断されます。
そして、顧問による故意や過失が認められた場合には、顧問を雇用する立場として学校の責任も問えるのです。
学校事故の責任が誰にあるのかを検討する上で、安全配慮義務は重要なポイントとなります。安全配慮義務については、関連記事『学校事故における安全配慮義務とは?』でも詳しく解説していますので、併せてお役立てください。
学校の施設や設備に問題があった場合
学校の施設や設備が本来もつべき安全性に欠けていて、事故の原因となった場合には、管理者である学校に対して責任を問えます。
安全性に欠けている状態は「瑕疵がある状態」ともいいます。具体的には、空手道場の老朽化や、必要な設備の定期点検が行われずに事故を招いたケースなどが該当するでしょう。
顧問個人に空手事故の責任を問える場合
空手事故の背景に、顧問の故意や過失が認められた場合、顧問個人に責任を問えます。
しかし、学校が国公立学校の場合には、顧問個人に対する損害賠償請求はできません。なぜなら、国公立学校の場合には、学校を設置した国・地方公共団体が損害賠償請求を負うからです。
顧問への損害賠償請求 | |
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国公立学校 | できない※ |
私立学校 | できる |
※学校設置者である国・地方公共団体への請求
請求相手は誰か、請求額はいくらになるのか、もっと具体的に知りたい方は関連記事『学校事故の損害賠償|請求相手と請求内容は?示談についても解説』も参考にしてください。
チェックポイント
- 顧問が意図的に生徒を傷つけたり、事故発生を予測しながら適切に回避しなかった場合には、学校側に責任を問える
- 学校が管理する設備や施設の安全性に問題があった場合、学校側に責任を問える
- 国公立学校に所属する顧問個人への損害賠償請求は認められない
学校での空手事故は弁護士に相談
空手部の活動中や授業中に起こった事故について、学校や顧問の責任を問い、損害賠償請求を検討している方は、一度弁護士に相談してみましょう。
弁護士相談をおすすめする理由
弁護士に相談することで、弁護士に依頼する効果がより明確にみえてきます。そうすると、今抱えている疑問が解決できたり、弁護士依頼でどんな変化が起こるのかがわかるでしょう。
たとえば、弁護士に相談したり、正式に弁護士に依頼をすることで、保護者にとって次のようなメリットがあります。
- 適切な損害賠償額の相場がわかる
- 損害賠償請求に向けた書類の作成や証拠の収集をサポートしてもらえる
- 学校対応のアドバイスがもらえる
- 学校側との話し合いから裁判の対応まで一任できて負担が減る
学校事故に関する話し合いをするにしても、いったいいくら請求するべきかと悩んでしまうでしょう。弁護士ならばもれなく損害を算定し、適正額を算定します。
また、学校側との連絡窓口を弁護士に一本化することも可能です。子どもの通院の付き添いや仕事・家事などの日常生活にきちんと時間を確保できるように、弁護士に任せられるところは任せてしまいましょう。
無料の法律相談|学校で空手事故が起こった
学校で空手事故が起こり、お子さまに重い後遺障害が残ったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料相談をご活用ください。相談に要する費用が心配な方も安心してご利用ください。
無料法律相談ご希望される方はこちら
アトム法律事務所 岡野武志弁護士
無料の法律相談をご希望される場合は、上記のフォームから予約をお取りください。予約は24時間365日体制でスタッフが対応しています。相談窓口は電話だけでなくLINEなど複数の窓口を用意していますので、いずれか利用しやすい方法で気軽にお問い合わせください。
ポイント
- 契約前の相談なので、弁護士依頼の検討段階で利用できます
- 正式に契約する場合の費用もきちんと説明します
学校事故に関する無料の法律相談で注目していただきたいポイントを、簡単にご説明します。
- 法律相談は正式契約前に利用できます
アトム法律事務所の無料法律相談は、正式契約前に利用いただけます。法律相談の利用後、正式に契約するかどうかを考えて頂ければ十分です。法律相談を利用したからといって、無理に契約を迫ることはありません。
- 弁護士費用をきちんと説明します
法律相談は無料で利用いただけます。正式なご依頼を検討していただく際には、弁護士費用がどれくらい必要になるかもご案内します。
お問い合わせお待ちしております。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了