テニス事故|部活・授業で怪我や熱中症!補償はどうなる?学校の責任は?
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テニスは幅広い世代に親しまれているスポーツのひとつで、学校の部活動や体育の授業でも取り入れられています。そんな学生にもなじみ深いテニスですが、どんなに気を付けていても怪我をゼロにすることはできません。
では、テニス部の活動中や授業中に我が子が怪我をした場合、保護者はどういった対応をするべきでしょうか。また、学校側に補償を求めることはできるのでしょうか。
もし学校や顧問に事故発生の責任があると認められれば、テニス事故の損害賠償請求が可能です。しかし、損害賠償請求が認められるケースもあれば、認められないケースも存在します。
この記事を読めば、学校管理下で起こったテニス事故についての対応がわかります。特に、学校側に損害賠償請求を検討している方に役立つ内容として、学校や顧問の責任が認められるケース、弁護士相談のメリットも紹介するので、最後までお読みください。
目次
テニス事故|学校で起こった3つの事例
テニス中の事故といえば、プレー中に転んでしまったり、ボールやラケットが当たっての怪我を想像する人が多いでしょう。しかし、その他にもいろいろな理由で事故は起こっているのです。
たとえば、コート整備やネット貼りなどの準備中に起こってしまった事故や、屋外での練習中に熱中症となり倒れてしまう事故も起こっています。
これまでの事例をもとに学校で起きたテニス事故を紹介します。
(1)テニスネットを張る際にハンドルが顔面にあたり、歯を破折した
テニス部の活動中、中学生の生徒がテニスコートのネットを張るためにハンドルを操作していたところ、顔面にあたり、上下の前4本を破折した事故が起こりました。
歯科治療は保険診療で一定の制限を受けることになるため、生徒側は自由診療による治療費を希望しました。また、暫定的な仮歯の作成費用や将来の義歯交換費用、後遺障害部分の補償などを求めて損害賠償請求を行ったものです。(宮崎地方裁判所 平成29年(ワ)第477号 損害賠償請求事件 平成31年2月1日)
(2)コート整備中にローラーの下敷きとなり、死亡した
市立中学校のテニス部員3名がローラーを用いてコート整備を行っていました。そのうち1名が転倒してしまい、頭蓋底骨折により死亡してしまった事故です。
教諭に対して、ローラーによるコート整備が危険であったにもかかわらず生徒に任せきりの状態であったこと、適切な指導や見守りをしなかったことなどの責任を求めて損害賠償請求を行いました。(静岡地方裁判所沼津支部 昭和59年(ワ)第204号 損害賠償請求事件 昭和62年10月28日)
(3)屋外での練習中に熱中症、心停止となり重度の後遺症が残った
県立高校のテニス部員が屋外での練習中に倒れ、心停止してしまった事故です。懸命に治療やリハビリを継続しましたが、生徒には重い後遺障害が残り、介護が必要な状態になってしまいました。
家族は、熱中症から重度の心筋障害が起こり心停止したものとして、顧問教諭の注意義務違反を求めて損害賠償請求を行ったのです。(大阪高等裁判所 平成26年(ネ)第668号 国家賠償請求控訴事件 平成27年1月22日)
学校でのテニス事故には災害共済給付を活用しよう
学校の管理下で事故が発生した場合には「災害共済給付」の給付金を受けとることができます。
学校でのテニス事故で怪我をした際の治療費などは、まず災害共済給付の申請を検討してください。
災害共済給付とは?
学校の管理下において生じた損害を補填することを目的とした保険。保護者と学校で掛金を負担している給付制度。
なお、災害共済給付に未加入の学校もあるため確認が必要です。
災害共済給付の申請方法と給付までの流れ
災害共済給付の申請そのものは学校が行ってくれますが、申請書類のうち「医療機関の証明」は保護者が用意しなくてはなりません。まずは、学校から災害共済給付の申請にかかる用紙をもらいましょう。
災害共済給付のフローは以下の通りです。
災害共済給付の申請フロー
- 災害共済給付の申請書類を学校からもらう
- 医療機関の証明を受ける
- 申請書類を学校に提出して、災害共済給付を申請してもらう
請求が認められた場合には、災害共済給付の申請から約3ヶ月程度で給付金がもらえます。
なお、医療機関の証明は月ごとに必要です。療養期間が複数月にまたがる場合には、月ごとに証明を受ける必要があります。
また、災害共済給付を受ける権利には2年の時効があります。医療機関によっては書類作成に時間がかかることもあるので、余裕をもって依頼しましょう。
補足
- 医療機関の証明は療養した月ごとに必要
- 災害共済給付を受ける権利は、給付事由が生じた日から2年間で消滅する
災害共済給付の補償額には限度がある
災害共済給付からの給付金は、医療費、障害見舞金、死亡見舞金の3つの費目にわかれています。
給付の範囲は、医療費について治療費の40%、障害見舞金について88万円から4,000万円、死亡見舞金について3,000万円です。
費目 | 給付金 |
---|---|
医療費※ | 治療費の40% |
障害見舞金 | 88万円~4,000万円 |
死亡見舞金 | 3,000万円 |
※初診から治癒に要した医療費の総額が5,000円以上であること(3割負担で1500円以上)
災害共済給付は事故で負った損害を無制限にカバーするものではありません。災害共済給付の補償範囲には限度があるため、十分な補償を受けられない恐れがあります。
具体的には、死亡事故や後遺障害が残るような重大事故の場合には注意が必要です。注意すべき理由のひとつである逸失利益という損害について説明します。
逸失利益の定義
後遺障害や死亡により、将来働いて得られたはずの金銭が得られなくなったという損害
逸失利益は、事故被害にあった学生の年齢や想定される進路、後遺障害の程度などから計算可能です。算定結果しだいでは、災害共済給付の範囲を超える場合があります。
学校側に事故の原因がある場合は、災害共済給付だけでは不足している分の請求が可能です。
逸失利益を含む損害賠償請求額の相場が知りたい方は、関連記事『学校の怪我で後遺症|慰謝料や逸失利益の計算と相場は?』を参考にするほか、弁護士への見積もり依頼をおすすめします。
まとめ
- 部活動や授業中に怪我をしたら、災害共済給付の補償を受けられる
- 災害共済給付の補償額を超えた損害については、学校の責任を問い、損害賠償請求が可能である
学校や顧問に事故の責任を問えるのか
学校の管理下で起こった事故については、学校や顧問に対する損害賠償請求が認められる可能性があります。
もっとも、損害賠償請求が認められるかどうかは、学校や顧問の責任しだいです。全ての事故において学校や顧問の責任が認められるわけではなく、損害賠償請求が認められないケースも存在します。
テニス事故の損害賠償請求|学校の責任は?
テニス事故の責任を問えるかどうかは、「顧問の故意や過失が事故の原因であるケース」と「学校が管理する施設・設備に瑕疵があるケース」がポイントとなります。
顧問の故意や過失が事故の原因であるケース
顧問の故意とは、顧問が意識的に事故を発生させたケースをいいます。例えば、指導の範囲を超えて体罰を加えたり、事故を意図的に起こして生徒を負傷させるケースです。これらは大きな問題ですが、顧問があえて事故を招くというケースはやや考えづらいでしょう。
より問題になりやすいのは、顧問による過失です。事故が起こる可能性を予見していたり、予見できたはずなのに、適切な回避行動をとらなかった場合には、顧問による過失があったとされます。
以下は、顧問の過失をイメージしやすくするための一例です。
顧問の過失の例
- テニスの練習中に熱中症状が表れた生徒に対して適切な救護措置を取らなかった
- ボール拾い、コート整備、ネットの張り替えなどに伴うリスクを軽視して、怪我の防止策を取らなかった
- 生徒個人のレベルに合わせた指導をせず怪我をさせた
- ボールやラケットなどの用具を目的外で使用することのないように指導をしなかった
顧問は、学生が怪我や事故にあわないように配慮すべきであり、事故を回避するための適切な判断能力を有することが求められます。これらは安全配慮義務といわれており、安全配慮義務を怠った場合は顧問に過失があったと認められます。
こうして顧問の故意や過失があると認められた場合には、顧問を雇用する学校側の責任を問うことができるのです。
顧問の安全配慮義務違反や熱中症での損害賠償請求をより詳しく知りたい方は、関連記事も参考にしてください。
次に読みたい関連記事
施設・設備に瑕疵があるケース
施設や設備が本来備えているべき安全性に欠けた状態を瑕疵といい、学校の管理する設備や施設に原因があると認められた場合には、管理者である学校に責任を問えます。
例えば、定期検査を受けるべき施設・設備を放置した結果に事故が起こった場合や、テニスをするための設備が古くて怪我をしてしまった場合などが該当するでしょう。
まとめ
- 顧問の故意や過失がテニス事故の原因と認められた場合、損害賠償請求が通る可能性がある
- 学校施設の安全性に問題があってテニス事故が起こった場合、学校の責任を問える可能性がある
テニス事故の損害賠償請求|顧問個人の責任は?
顧問による故意や過失が認められた場合のみ、顧問個人に対して責任を求めることができます。では、顧問個人に対して損害賠償金の支払いを求めることができるのかというと、学校ごとに違いがあります。
国公立学校の場合には、学校を設置した国や地方公共団体が損害賠償金責任を負うことになるので、顧問個人に対してテニス事故に関する金銭の請求はできません。
一方、私立学校の場合には、顧問個人に対する損害賠償請求が認められる可能性があります。
関連記事では、学校事故での損害賠償請求の請求相手、請求内容、請求方法にわけて解説しています。より詳しく知りたいところをお役立てください。
学校でテニス事故が起こったら弁護士に相談
学校で起こった事故について、学校や顧問個人への損害賠償請求を考えているなら、弁護士への相談が有用です。その理由をご案内します。
弁護士へ相談すると何が変わるのか
弁護士に相談・依頼すると、保護者やお子さんにとってどんなメリットがあるのかをみていきましょう。
適切な損害賠償請求額の実現
弁護士に相談すると、テニス事故で負った怪我について適切な損害賠償額がわかります。適切な損害賠償額を把握するためには、損害をくまなく算定すること、これまでの事故事例の相場を考慮することが重要です。
弁護士ならばどんな損害が発生しているのかをもれなく算定できます。個別の事情を反映するだけでなく、過去の判例や事例の損害賠償額も考慮するなど、被害者や保護者が損をすることのない金額をで請求可能です。
最終的には学校側との話し合いや裁判で金額確定となりますが、請求段階で損をしないために弁護士のサポートは有効といえるでしょう。
書類の収集を任せることができる
損害賠償請求に必要な書類の作成や収集を弁護士に任せることができます。どういった資料が必要なのかもアドバイスが受けられるので、保護者の方も先が見通せて安心です。
普段見慣れない書類の作成にあたって、保護者が負担を感じるのは当然です。弁護士に任せることで、保護者は煩わしい想いをすることなく不備のない書類を用意できます。
学校側との話し合いから裁判まで一任できる
学校事故の解決には、学校側との話し合いは避けられません。しかし、保護者は子どもの入院・通院付き添い、仕事や家事にも対応を迫られて疲弊してしまいます。弁護士に学校側との交渉窓口を任せることで、保護者の精神的・身体的なストレスは軽減可能です。
弁護士への相談・依頼で、今のお悩みや不安が解消できる可能性があります。関連記事『学校を訴えたいなら弁護士に相談すべき|無料の相談窓口も紹介』では、弁護士相談のメリットや学校を訴えたいと考えている方に向けた基本事項を解説していますので、併せてお役立てください。
無料相談のご案内|学校でのテニス事故
「弁護士費用が心配」「まだ依頼するとは決めていない」といった理由で、弁護士への相談に不安を感じる人もいるでしょう。
学校で起こったテニス事故によって、お子さまが大きな後遺障害を負ったり、亡くなられてしまった場合は、アトム法律事務所の無料法律相談をご活用ください。
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アトム法律事務所 岡野武志弁護士
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了