認知症患者の介護事故における施設や職員の責任と裁判事例 | 事故弁護士解決ナビ

認知症患者の介護事故における施設や職員の責任と裁判事例

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裁判事例|認知症患者|介護事故の責任は?

高齢化が進展した現代では認知症患者が多く、2025年には認知症高齢者が700万人となるものと推計されています。(参照:厚生労働省資料「認知症の人の将来推計について」)

家族に認知症患者を抱え、介護で大変な思いをしている方も少なくないでしょう。介護施設を利用している場合、施設の中で事故に遭う場合があります。

もし、介護施設側に事故の責任が認められるのであれば、損害賠償請求することが可能です。

今回は、認知症患者が見舞われる介護事故の種類や施設側の責任、裁判事例などを見ていきます。大切な家族が事故の被害者になった時にどうすべきかわかるので、ぜひご一読ください。

認知症患者の介護事故

認知症患者が見舞われる危険がある介護事故の種類を紹介します。認知症患者は認知機能が低下しているため、他の高齢者と比べても事故のリスクが高まります。

想定される事故の種類を把握し、万一の事態に備えておきましょう。

ケース(1)転倒・転落

介護事故で最も多いのが、転倒・転落事故です。歩行中に転んだり、ベッドから落ちてしまったりするケースが頻出しています。高齢者は骨がもろくなっているため、転倒・転落によって骨折してしまう事態も少なくありません。

加えて、認知症の転倒・転落事故には特有の事情があります。認知症患者は平衡感覚に異常をきたしている場合も多いため、肉体的な衰えがなくても、転倒・転落してしまうケースが多いです。

また、向精神薬を服用していると、ふらつきに見舞われる可能性が高くなります。さらに、認知症患者は自分の運動能力を正しく認識できていないため、転倒する場合もあります。本当は歩ける力がないにもかかわらず、歩き出そうとして結果的に転んでしまうのです。

ケース(2)誤嚥・誤飲

転倒・転落に続き、介護事故で多いのが誤嚥・誤嚥事故です。高齢者は飲み込む力が衰えているため、食べ物をのどに詰まらせて窒息するケースが多いです。

また、向精神薬を服用している認知症患者は、嚥下反射機能も衰えています。嚥下反射とは食べ物を噛んでちょうどいい大きさになったら、飲みこもうとする機能をさします。嚥下反射機能が衰えると飲み込むタイミングが分からなくなり、気管を通過できない大きさの食べ物も飲みこもうとしてしまうのです。

ケース(3)徘徊

認知症患者は不意に自分のいる場所が分からなくなり、不安や混乱から外に飛び出し、徘徊してしまう場合があります。実際に介護施設において重度の認知症患者が勝手に外出し、川に転落して死亡したところを発見された事案もあります。

高齢者は足腰が弱っていることもあり、徘徊によって交通事故や転落事故に見舞われるリスクは少なくありません。深夜徘徊では発見が遅れ、命に直結する可能性もあります。

ケース(4)利用者同士のトラブル

施設内で他の利用者との間でトラブルが発生するリスクもあります。わざわざ他の利用者の部屋に入っていき、ケンカ沙汰になるケースも確認されています。

認知症患者は物事の分別がつかなくなる場合が多いため、精神状態が荒れがちです。この結果、自制心が利かずにとっさの行動を取ってしまいやすいです。

周囲にはとっぴな行動に見えても、本人にとってはきちんとした理由があります。施設内で暴れることを防ぐには、メンタル面へのケアも求められます。

介護事故における施設・職員の責任

先述したような介護事故に遭い、認知症患者が負傷してしまう場合があります。転倒によって骨折したり、徘徊した末に交通事故に遭って死亡してしまったりするかもしれません。

介護施設に預けている間に発生した事故であれば、施設側が責任を負う場合が多いです。介護事故で施設側が負う原因を、法的責任と道義的責任という2つの側面から見ていきましょう。

法的責任|損害賠償請求の根拠となる

法的責任とは、事故で生じた損害について賠償金を支払う義務をさします。

介護施設側と示談交渉したり、裁判を提起したりして、施設側に責任があると認められれば、被害者側は賠償金の支払いを受けられます

しかし、請求した金額のすべてが認められるわけではありません。示談交渉なら、施設側との話し合いで金額を決める流れになります。裁判なら、双方が言い分を主張し、両者を検討した上で裁判所が請求の可否や金額を判断します。

介護事故で施設側に責任があったといえるには、安全配慮義務に違反することが必要です。安全配慮義務とは、介護施設側は利用者の安全に配慮しつつサービスを提供しなければならないという意味です。

安全配慮義務は施設の利用契約書に記載されているため、契約を締結した時点で権利義務関係が生まれます。安全配慮義務の具体的な内容は「予見可能性」と「結果回避性」です。

事故が起きるリスクを把握していた上で、回避措置を何ら講じていなかったとすれば、発生した事故について施設側の安全配慮義務違反があったといえます。

損害賠償を請求するには、被害者側が安全配慮義務違反を証明する必要があります。

道義的責任|人としての責任を尽くすこと

道義的責任とは、被害者やその家族に対し、誠意を尽くした対応を行ったかという意味です。事故の被害者に対してしっかりと謝罪を行うこと、事故の状況をきちんと説明することなどが道義的責任の具体的な内容です。

施設側から謝罪があったとしても、法的責任が認められるわけではありません。

つまり、謝罪があったことを理由に、損害賠償請求が可能になるわけではないのです。道義的責任はあくまでも人としての責任を尽くしたかを問うているにすぎません。

認知症にまつわる介護事故の判例で損害賠償額を確認

介護事故に見舞われると、入院費や通院費など思わぬ出費が生じます。賠償金をどの程度得られるのか、気になるところでしょう。

ここでは判例を参考に、損害賠償で得られる額を見ていきます。

判例(1)グループホームの窓から転落

認知症患者が、グループホームの窓から転落した事案です。窓はストッパーが設置され、平常時はまったく開かないように配慮されていました。

とはいえ、ロックがかかった状態でも、押したり引っ張ったりすれば開閉可能だったため、施設側の安全配慮義務違反が肯定されています。

裁判所は約3,784万円の請求額のうち、約1,075万円の支払いを命じました。被害者は事故から3年後に亡くなってしまいましたが、事故と死亡との因果関係は否定されています。

後遺症に関する慰謝料が考慮された結果、請求額の3割程度が実際の賠償額となりました。

判例(2)徘徊の末、電車にはねられ亡くなった

認知症の高齢男性が家を飛び出し、電車にはねられ亡くなってしまった事案です。遺族側はJR東海から、高額な損害賠償を請求されました。

認知症の患者を抱えていると、自宅でも徘徊の危険があります。監視の目が不足していると家族が事故に遭い、本事例のように、相手方から逆に損害賠償を請求される可能性もあります。

本事例では一審で監督者に過失が認められ、720万円の損害賠償命令が発出されました。しかし、最高裁においてJR東海の請求が棄却され、遺族側は損害賠償を払わなくていいこととなりました。防ぎきれない事故まで家族が責任を負う必要はないと判断されています。

【認知症の介護事故】困ったときの相談先

「施設側の説明に納得いかない部分がある」
「提示された賠償額が低いと感じる」

介護事故に遭い、施設側と交渉をしていると不満や疑念を抱く場合があります。

事故に関して不明な点があるならば、1人で何とかしようとはせず、第三者の手を借りた方がいいでしょう。ここでは介護事故で困った時の相談先を紹介します。

(1)行政の窓口

市役所の介護保険課や都道府県に設置された国民健康保険団体連合会の窓口を利用できます。施設の利用契約時に締結する重要事項説明書には、連絡先が記されています。

お金をかけずに悩みや問題を解決したい方は、行政の窓口を利用するといいでしょう。

(2)弁護士

手厚いサポートを受けたい方は、弁護士の手を借りるのが一番です。弁護士は豊富な法律の専門的知識を活用し、適正な賠償額を判断したり、施設側との交渉を対等な立場で進めたりすることが可能です。

いざ裁判になった時、そのまま法定代理人を依頼できる点もメリットの一つといえます。

弁護士に依頼することで得られるメリットについては、こちらの関連記事『介護事故で弁護士に相談する代表的なメリット』でさらに具体的に解説しています。あわせてご確認ください。

無料法律相談のご案内

アトム法律事務所では、弁護士による無料法律相談を実施しています。
介護事故の被害に遭われ、今後の対応にお悩みの場合は無料法律相談をご活用ください。

  • 介護施設側との話し合いで専門用語が飛び交い、不安なので代わりに対応してほしい
  • 介護施設側から提示された賠償額が妥当なものかわからないので、適正な金額を教えてほしい
  • 介護施設側との話し合いで納得できないので、裁判を検討している

介護事故に関する疑問について、どのような解決方法があるのか弁護士に聞いてみましょう。

アトムの弁護士による無料法律相談は、まず相談の予約をお取りください。予約の受付は、24時間いつでも可能です。土日祝も対応中なので、気軽にお問い合わせください。

岡野武志

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。現在は「刑事事件」「交通事故」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

英語:TOEIC925点