金の相続に税金はかかる?金や貴金属を相続財産に含める場合の相続税

更新日:
金を相続した場合
  • 金や貴金属の相続に税金はかかる?
  • 金や貴金属を相続すると、相続税にはどんな影響がある?
  • 金や貴金属を相続するときのメリットや注意点はなに?

結論からいうと、金や貴金属は相続税の課税対象です。

そして、金や貴金属を含めた相続財産の総額が、ある一定額を超えた場合には相続税がかかります。

この記事では、金や貴金属を相続した場合にかかる税金についてや、金の相続におけるメリットデメリット、注意すべき点を解説します。

また、金や貴金属を相続したときの相続税の計算方法や、実際に数字を当てはめてシミュレーション形式で紹介しているので、是非お役立てください。

金(ゴールド)を相続した場合の税金

金を相続すると相続税がかかる

金(ゴールド)を相続した場合、相続税の課税対象となります。

しかし、金を相続した時点で相続税の課税が確定するわけではありません。

金以外の現金や有価証券、不動産など、相続するすべての財産の総額が、基礎控除額を超えたときに相続税が課税されます。

基礎控除額とは、相続税の非課税枠のようなもので、相続する財産の総額が基礎控除額を超えなかった場合には、相続税の支払いはもちろん、相続税申告の必要もありません。

関連記事

相続税はいくらからかかる?基礎控除とは?相続税の計算方法は?

金の種類と相続時の評価方法

金には、金地金(金の延べ棒)や金貨、装飾品・ジュエリーなどがあります。相続財産として評価し、相続税の計算をしなければなりません。それぞれの評価方法は次のとおりです。

財産評価方法
金地金業者買取価格 1g当たり金額×質量
金貨貨幣としての金貨は額面どおり、骨とう品としての金貨は買取価格
装飾品
ジュエリー
業者買取価格1個5万円以下であれば、家財一式扱い
貴金属専門家の鑑定金額
貴金属の中に金が含まれている場合には金地金と同じ

※買取価格は「被相続人の死亡日」の買取価格

金の買取価格の調べ方

被相続人の死亡日の、金の買取価格は、各販売業者や一般財団法人日本金地金流通協会などのホームページで知ることができます。

なお、販売業者によっては同じ日の買取価格でも多少異なることがありますが、買取価格を参照する業者の指定はされていないため、ご自身に有利になる業者の数字を用いて問題ありません。

被相続人の死亡日に価格公表がされていなかった場合には、その日に一番近い日の買取価格を用います。死亡日の翌日と前日に公表があった場合には、両日の価格の平均値を用います。

相続した金を売却すると所得税が課せられる

相続によって取得した金を売却すると、譲渡所得に所得税が課せられます。

譲渡所得とは、売却して得た金額から、金の購入・売却にかかった費用や、特別控除を差し引いた金額のことです。

そのため、売却して得た金額すべてに対して、所得税がかかるわけではありません。

また、売却した金を所有していた期間が、5年以内か、5年を超えているかによって譲渡所得の算出方法が変わります。所有期間は被相続人が購入した時点から、相続人が売却するまでの期間となります。

算出した譲渡所得に対して所得税が課税されます。

所有期間が5年以内の金の売却

まずは所有期間が5年以内の金を売却したときの所得税の計算式です。

売却金額-(取得価格+売却費用)-特別控除50万円

所有期間が5年を超える金の売却

次に、所有期間が5年を超える金を売却したときの所得税の計算式です。

{売却金額-(取得価格+売却費用)-特別控除50万円}÷2

所有期間が5年以内の場合の、1/2の金額となります。

計算式からもわかるとおり、金は長く所有した方が支払う税金の負担が小さくなるため、5年以上所有してから売却するのがおすすめです。

金を相続するメリット

維持費がかからない

相続税対策として現金ではなく財産を取得する場合、購入後の維持費も確認しなければなりません。相続税対策として有利だとしても、維持費がかかりすぎると、財産が目減りしてしまいます。

維持費の負担が大きい財産といえば、アパートやマンションなどの賃貸用不動産です。

賃貸用不動産は、相続税の財産評価額を大きく下げられますが、空室率が高いと家賃収入を思うように得られず、維持費の負担が大きくなってしまいます。

具体的な維持費として、修繕費用や管理費用のほか、固定資産税などの税金が挙げられます。

対して金であれば、保管料がかかる場合はありますが、無料のケースもあるため、大きな負担にはなりません。

保有中に固定資産税のような税金もかからず、不要であれば簡単に売却できます。維持費がかからないため、長期保有も可能です。

安定資産として優れておりインフレに強い

金は株式や投資信託と比べると、その価値が安定しています。

「有事に金」といわれるように、世の中が不安定なときに人気が集まりやすい資産です。大きな値動きはしにくい資産であるため、リターンを追求するためではなく、リスク分散のための実物資産として役立ちます。

値動きが安定していれば、相続時の価値を予測しやすいというメリットもあります。たとえば株式であれば、相続時に大きく値上がりして、相続税の評価額が膨れ上がる可能性があります。株式は大きな利益を得られるという点ではメリットですが、金には安定資産としてのメリットがあります。

また、通貨の価値が下がり相対的にモノの価値があがる、インフレに強いのも特徴です。

通貨の価値が下がるということは、保有している現金や預貯金の価値が下がっていくことと同義です。

そのため、現金や預貯金の一部を、モノである金に置き換えることで、インフレによる資産の実質的な価値減少を抑えることができます。

不動産や株式と比べると分割しやすい

金の特徴を不動産や株式と比べます。

自分が保有する不動産を売却する場合は、購入希望者がいなければ売却できず、一般的に売買が成立するまでに時間がかかります。仮に早く売却したい場合には、売却価格を下げなければなりません。

また株式の場合、遺産分割で現金が必要なケースでは、株価が底値だと損をしてでも売却しなければなりません。

これらに対して、金は遺産分割しやすい資産です。

金の売却はしやすく、売りたいときに売却すれば、すぐに現金化できます。金の価格は安定していますので、金の価格で売却をためらうことも少ないでしょう。

金を相続するデメリット

保有している間に利益が生まれない

金は保有している間に利益を生むことはありません。

購入時価格より売却時価格のほうが高いときに売却する売却益しかありません。財産を増やすという観点からは不動産や株式と比べると見劣りするかもしれません。

また金地金(現物)の売買手数料は、株式取引と比べると高い傾向にあります。価格は比較的安定して推移するため、手数料分を含めて利益を出すためには中長期的な運用が求められます。

売却時に所得税がかかる

先述したように、相続した金を売却すると所得税が課せられます。

所得税は、所得に応じて税率が上がる累進課税制度を採用しているため、金の譲渡益により所得税が増える可能性があります。

金の譲渡益により所得が増え、税率が上がりそうな場合には注意が必要です。

相続税の相続税の無料相談

金を相続する場合の注意点

金相続する場合の注意点をまとめます。注意事項をよく確認して、相続財産に含めるかどうかの判断をしましょう。

金の祭具で相続税対策をするのは危険

相続税では、「祭具」は非課税財産として扱われます。

具体的には「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物」は相続税の対象外とされています。

そのため、仏壇や仏具などの祭具を金で制作し、相続すれば相続税対策になると考える方もいるかもしれません。

しかし一方で、「骨とう的価値があるなど投資の対象となるもの」や「商品として所有しているもの」は相続税の対象としています。

すなわち、相続税対策を目的に金の仏具を制作したとしても、相続税の課税対象となってしまう可能性は高いでしょう。

ただし、相続税の課税対象かどうかの判断は難しいため、個人で判断せず、相続税に詳しい税理士に相談したほうが安心です。

隠れて金を相続してもばれてしまう

たとえば、「被相続人の自宅にある金の延べ棒を、黙って自分の家に持っていけば、税務署にばれずに相続できて、相続税の課税対象にもならなくて済む」と考える方がいるかもしれません。

この場合は取引業者を通していませんので、税務署は調査しにくいとも考えられるでしょう。

しかし、税務署はさまざまな資料や資金の出し入れから、お金の流れを調査して、金を相続したことを突き止めます。

過去にさかのぼれば、被相続人が金地金を購入していることを突き止められます。また税務署は税務調査で自宅を訪問することがあります。

税務署は、これまでの税務調査の経験から、隠し場所の特定に長けています。

相続したのが金地金である場合には、刻印されているシリアルナンバーから突き止められることもあります。

長く自宅に保管してあったとしても、正しく申告するようにしましょう。

関連記事

相続税の申告漏れは「ばれる」|なぜ税務署にばれるのか税理士が解説

相続税の税務調査とは?事前に準備することや調査対象にならない方法

金が有利に働くかどうかは財産の構成次第

金のメリット・デメリットについて解説しましたが、金の売買により相続税額が軽減できるかどうかは、状況によります。

不動産であれば、自宅ではなく賃貸物件として保有することで資産価値を下げられます。さらに、評価額が最大で80%減額される「小規模宅地等の特例」を活用することもできます。

金にはこのような特徴のある制度はありませんので、相続税対策としてではなく、リスク分散を図るための資産のひとつとして考えておくと良いでしょう。

金地金(金の延べ棒)の価格調査方法

相続で金地金(金の延べ棒)があることがわかったら、その価値を調べなければなりません。金地金は、インゴット、延べ棒ともよばれており、表面に刻印があります。

<金地金 刻印例>

  • 地金番号:商品管理のための番号で、これがあると調査しやすい
  • 重量表示:金地金の重量 500gなど
  • 商標:金地金を製錬した業者名・マーク
  • 素材表示:FINE GOLD(純度の高い金)
  • 製錬、分析者マーク:製錬業者と検定分析業者
  • 品位表示:品位(純度)で、999.9であれば、純度99.99%を意味する

上記の情報をもとに取引業者に確認すれば、金地金の価格を教えてくれます。

相続財産に金が含まれている場合の相続税シミュレーション

ここでは、金を含む財産を相続した場合、どのくらい相続税がかかるのかをシミュレーションをしていきます。

  • 相続人は配偶者と子2人の、合計3人
  • 分割割合は配偶者(1/2)・子(1/4)・子(1/4)
  • 金地金:1kg(被相続人の死亡日の価格9,900円/g
  • 金地金以外の遺産額:5,100万円

課税遺産総額を計算

金地金は、被相続人の死亡日の業者買取価格で求めます。被相続人の死亡日の価格が9,900円/gで、相続財産の金地金1kgなので、

 ・9,900円×10,000g=9,900万円

となります。よって、課税遺産総額は、

 ・5,100万円+9,900万円=15,000万円

となります。

法定相続分で相続した場合の相続税総額

次に、仮に法定相続分で相続したとした場合の各相続人の相続税を求め、相続税総額を算出します。

 法定相続分で相続した場合の遺産額

 ・配偶者:15,000万円×1/2=7,500万円

 ・子:15,000万円×1/4=3,750万円

 ・子:15,000万円×1/4=3,750万円

法定相続分で相続した場合の相続税額

 ・配偶者: 7,500万円×30%-700万円=1,550万円

 ・子: 3,750万円×20%-200万円=550万円

 ・子: 3,750万円×20%-200万円=550万円

 相続税総額 2,600万円

相続税の税率 早見表

実際の分割割合で相続した場合の各相続人の相続税額

先ほど求めた相続税総額を、実際の分割割合で按分します。分割割合を配偶者3/5、子それぞれ1/5とします。

 ・配偶者: 2,600万円×3/5=1,560万円

 ・子: 2,600万円×1/5=520万円

 ・子: 2,600万円×1/5=520万円

配偶者は、「配偶者の税額軽減」を適用できれば、法定相続分か1億6,000万円のどちらか多い金額までの財産の取得について相続税がかかりません。

よって、配偶者の相続税額はゼロになります。子は520万円ずつ相続税を負担しますが、相続財産に現金がなくても、金を現金化すれば、納税に充てることができます。

このように相続財産に金地金が含まれていても、ほかの財産と合算して計算します。相続税額は金の価値だけでなく、遺産総額や法定相続人の数などで決まります。

関連記事

相続税における配偶者の税額軽減|概要や注意点などを解説

相続税の相続税の無料相談

金の相続で悩んだら相続税に強い税理士に相談を

この記事では、相続財産に金が含まれていた場合の相続税シミュレーションやメリット・デメリットなどについて解説しました。金の価格はほかの相続財産と合算すればよく、さまざまな評価方法や特例がある不動産の相続と比べると、複雑に感じないかもしれません。

しかし、相続税の課税対象外となる祭具があるなど、専門的な知識や経験をもとに判断したほうが安心です。相続に関して不安や悩みがある場合は特に、相続税に強い税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

弁護士アイコン

監修者情報

アトムグループ 協力税理士

全国/電話相談可能

相続税の無料相談をする